ep.006

その後は、ずっと私の隣にいてくれたあいつのおかげで、私もずっと笑っていられたと思う

 

 

 

「じゃあ、お疲れ」

「また明日!」

 

 

そう言って各自解散し、友達カップルに家まで送ってもらった

車の中では、友達に「まなみモテモテじゃない♥」といろいろと詮索されてしまった

 

(はぁ・・・疲れた)

(別にモテモテとかじゃなく、約束したからだよ)

(アイツ・・・すごく優しいんだ)

 

忍足の顔が浮かぶ

 

(いつも白衣着てるからわかんなかったけど)(医者なんて勉強ばっかのガリガリな奴のイメージしかなかったけど)

(すごい筋肉だったし、)(重たい水も軽々と持ってくれたし)

(気を使ってたくさん話かけてくれるし)

 

(・・・いい奴だよな・・・)

 

 

( ゚д゚)ハッ!

 

 

(いかんいかん!)(あやうく筋肉に萌えるところだった!)

(もう、やめようあいつのこと考えるの!)

 

・・・と思っても、浮かんでくるのは”忍足の顔”

 

浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返すあいつの顔を思い出さないように必死になりながら、

家についた私は、玄関の扉を開けた

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

「ただいまー」

「あれ・・・早かったね」

 

まだ午前中だよ

 

 

 

そういうさおちゃんの顔は、

 

 

 

「もう少し遅くなると思っていたよ」

「・・・・・・・・きみ泣いてたね」

「え?」

「目と鼻真っ赤だよ」

 

 

そう、アタシが指摘するとさおちゃんは「うそ!」と鏡を見に行った

戻ってきたさおちゃんはトボトボと落ち込んだ様子だった

 

 

「何があったのさ」

「・・・いや、何もないよ」

「何か合ったしょ、泣いてんだから」

「・・・いや、映画見たのさ」

「・・・」

「A.I.見たのさ。そんで号泣したのさ」

「・・・」

「私のことは気にしなくていいよ」

「・・・」

「それよりどうだったキャンプ、虫大丈夫だったかい」

「・・・きみの嘘はバレバレだよ」

「・・・」

「きみ、正直に言いなよ」

 

 

そうアタシが言うと、さおちゃんは涙をポロポロ流して、

 

 

「大丈夫、疲れちゃっただけだから」

 

 

そう言った

 

 

「何に疲れたのさ」

「・・・仕事とか」

「とかってなにさ」

「・・・人間関係?」

「会社でつらいことあったのかい」

「・・・大丈夫だよ、慣れてるよ」

「慣れてないしょ、きみは人見知りもしないし、優しいし、みんなの人気者なんだから!」

「いや、きみ私を高評価しすぎだから(笑)」

「ホントのことでしょ!」

「いや、違うんだよ、ホント大丈夫なのさ・・・ちょっと思い出したくないからまた今度話すよ、全然大したことではないんだわ」

「会社の誰さ、上司かい」

「いや、後輩」

「あ、例の後輩?」

「うん」

「何さ、告られた?」

「え!?告られるはずないしょ!」

「そうかい、後輩ムカつくね」

「むかつくんだよ、もういいよあの人のことは・・・忘れたいから一緒にゲームでもしようよ」

「アンジェがいいね」

「アンジェがいいよね」

「もうキャンプなんて言ってる場合じゃなかったよ、女王候補だったから真面目に育成しなきゃいけなかったわ!」

「いや、きみデートばっかりしてあんまり真面目じゃないしょwww」

「そうか」

 

 

 

さおちゃんの泣き顔を見てそんなことを話していたから、キャンプであったことを話すこと忘れた

(まぁいいけど)(三浦キモいからアタシも思い出すのやめよ!)

 

その日はのんびりさおちゃんとアンジェをして、

そして次の日―――――――――

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

「おはよう、まえさん」

 

 

(でた!)

(朝一でコイツの顔はキツイ・・・)

 

 

まだ開院前。

準備のために受付に座ったアタシに奴は話しかけてきた・・・

 

 

「・・・おはようございます」

「昨日は楽しかったね?」

 

 

そういってニコニコするこいつのその一言で、受付にいた他の社員がこちらを向いた

 

 

(やめろ!!)(変な事いうな!!)

(一応、お前もイケメン研修医の一人なんだから!!)

(居づらくなるわ!!)

 

 

「あー、そうですね・・・楽しかったね?ね?」

 

私はすかさず隣の席の友だちに助けを求めた

 

「あーうんうん、楽しかったですねみんなでキャンプ!」

 

さすがに鈍い友達も察してくれて、そう会話を続けてくれた(良かった!)

 

「あー・・・三浦先生、もう患者さんがいらっしゃいますよ?」

「大丈夫大丈夫、俺本当は午後からだから」

「あ、そうなんですか?」

「仕事の打ち合わせでさー・・・」

 

 

そんな話をしていた時、

院内の時計が鳴った

 

開院の合図だ

 

 

「あ、先生、もう患者さんが・・・」

「あ、ホントだね・・・じゃあもう行こうかな」

 

 

(やっと解放される・・・)

 

 

アタシがホッと胸をなでおろした時、

 

 

 

「きゃあああああ!!!!!」

 

 

 

と叫び声が響きわたった

 

 

 

(え?)

 

 

 

入口の近くにいた案内の社員が悲鳴をあげて逃げるように走ってきた

 

 

 

入口を見ると、

 

 

 

 

(え!?)

 

 

 

 

刃物を持った男がそこに立っていた

 

 

 

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