水汲みから戻った私の傍には、三浦という研修医・・・。
そして約束を果たすべく、”忍足”がいてくれていた。
「前さん、手際がいいね。家でも料理してるの?」
「あ~実家出てるんで料理するしかないから」
「そうなんだ、家庭的な女の子って俺好きだなぁ」
さりげなく「好き」という単語を挟みながら、私の隣から離れない三浦・・・
(マジ勘弁・・・)(いや、ホント鳥肌立つから)
「よっしゃ!じゃがいもの皮むきなら任せとき!」
そう言って、こいつが隣にいてくれるのが非常に心強い
(救世主!)
「あんた料理出来るの?」
「おーうち共働きやしな、たまにオカンの代わりにしてたで」
「へーそうなんだ」
「めっちゃ早く皮むくで!」
「うける、確かにモタモタ皮むかれるよりいいけど」
「せやろ!ほっ!ほっ!」
「ちょwww早いのは早いけど、ムダに厚いな!!www 実もかなり削れてるwww」
「え!?言うほどやないで!?」
「言うほどだよ!www じゃがいもどんどん小さくなってるしょ!www」
「えー、そんなにー?」
「・・・2人とも仲良いね」
三浦が会話に入ってこれないくらいのテンポで2人で話していると、三浦がそんなことを呟き始めた
(こ、こわ!!)(何その言い方!)
「・・・そういえば2人の司会面白かったもんなぁ、息ピッタリで」
「い、いや、こいつボケれるしツッコミできるし、関西人よりやねん!」
「こいつって言うな!あとアタシはボケ!」
「そんなことないやろ!?ツッコミも完璧やで!?」
「いやいや、それお前が変なこと言うからだわ!」
「え、俺変なこと言うてへんで!?」
「天然かよ」
「・・・・・・」
またまた始まった私と忍足の会話についていけなくなったのか、三浦は無言のままその場を立ち去った。
残った私たちはぽかーん
「・・・ちょっと何アレ、すごい感じ悪いんだけど・・・」
「いや、あいつちょお変わってんねん、イケメンやけど」
「同期って言ってたけど、本当に仲良いの?」
「あーせやなー・・・まぁ2人きりでは・・・遊んだことないなぁ・・・」
「それ仲良いって言わないね」
「いや、普通に喋んねんけどな、2人きりになると会話に困る・・・ことも・・・モゴモゴ」
「うけるwww本音出たwww」
「いや、嫌いやあらへんで!?ええ奴やねん!ええ奴やけど、ちょお会話が通じないとこがあるっちゅーか・・・」
「あーわかる、そんな感じする。おとなしい顔して、実はかなり自己主張激しいよね・・・」
「あー・・・まぁ否定はでけへんけど・・・でもええ奴やねん!そこはホンマに!」
「わかったって!」
「趣味も合うとこあんねん」
「趣味ってどんな?」
「んー・・・」
「考えてんじゃんwww」
「いや、そういうわけやないけど・・・」
そう言って、忍足は目を反らした
なんだこいつ、変なやつ
そうこうしてると、
「忍足せんせー!」
友だちがやってきた
(え?まさか・・・!)
友だちの後ろには三浦の姿が・・・!
「もう、忍足先生、あっちで炭おこそうって言ったじゃないですか!」
「あ、せやったっけ?すまん」
「ほら、うちわで火種扇ぐの手伝ってください!」
そういって、忍足を連れて行こうとする友達
(うわ~~~~!!!)
(三浦の奴!!友達に言いに行ったとか!!)
(女々しい!!)(キモイ!!!)
友達は「まなみ、ごめんね、今度こそゆっくり三浦先生と話してね」と耳元で小さく言った
(ち、違うから!!)
(やめて!!)
(忍足連れて行かないで・・・!)
「まえさん、さ、野菜切る続きしよう?」
そうして、友達に手を引っ張られ、連れて行かれそうになっていた忍足と入れ替わるように、私の隣に来たのは三浦
(最悪・・・!)
行ってしまう、
いやだ、こんな奴と2人きりになるのは
(2人きりにしないって約束したじゃん・・・)
(・・・いかないでよ・・・)
自分がどんな顔をしていたのか、わからない
わからないけど、
くるりと振り返った忍足は、
目を大きく見開いて、
そして、
友だちの手を振りほどいた
「すまん・・・!俺ここから離れられへん!!」
そういうと、私の隣にまた走って戻って来てくれた
それと同時に戻ってきた”安心感”
「すまん」
ぼそっと耳元で囁いたその人の声はいつまでも頭の中から離れなかった