月9(2-1)10【白石】

 

「へぇ、白石部長が女と番号交換とか珍しいやないっすか」

「せやねん」

 

 

今日は久々のテニス部飲み会。

 

 

「どんだけおもろい女なんすか」

「んー、どんな、て・・・りんごみたいな感じで、ごっつ真面目でおもろいねん」

「りんごてわけわからん。けど、からかいがいありそっすね」

「からかうっちゅーんとまた違うんやけどな」

 

 

財前とそんな話をしとったら

だいぶベロベロになった謙也が割り込んできよった(飲むペース早いねん!)

 

 

「ほんでそのりんごちゃんが俺のキンタマ蹴り飛ばしたアホ女の姉やて!世の中狭すぎやで!」

「えぇ~!謙也くんの大事なお玉ちゃんがぁ!?いややわぁ、あたしもまだ拝んでへんのにっ!」

「小春お前浮気か!死なすど!」

「ええ加減しつこいでユウくん、もう何年同じこと言い続けんねん」

「俺はずぅーっと一途なんやぁ小春ぅぅぅ!!!」

「ウザイわボケ!!!!」

 

 

(ここは変わらんなぁ)

 

 

いつまでも一途に小春を思う一氏は物まね芸人(まだ売れてへんけど)

小春は今や最新ファッションを発信するファッションリーダー。

 

 

「なぁなぁ、ケンヤー!その女、強いん?」

「強いなんてもんやないで!気ぃ強いわ口悪いわ確実に急所ついてくるわ、サイッアクや!」

「ホンマかー!会うてみたいなー!ワイ、強いやつ好きやねんー」

 

 

金ちゃんは世界で活躍するテニスプレーヤー(ほんま、さすがやで)

謙也はオヤジさんの病院継ぐ前に大学病院で経験積んでんし

 

 

「ねぇねぇ、光も会社勤めなんてやめて動画サイトの作曲有名なってんやからそっちの道行けばええのにぃ」

「いーんスわ、それは趣味やし」

「ええなぁ、仕事もあって趣味も充実しとって!俺なんてまだテレビに出るチャンスもないわ」

「ファイトよユウくん!ユウくんが売れたら見直してあげるわ☆」

「こ、小春!任せとけ!小春の為にがんばって売れるからなぁ!ほんだら結婚しよな、な!小春!」

「売れたら、考えてあげるわ ネ!」

「あーウッザ、先輩ら変わってないっすわ。ほんまウッザイ」

「いやーん、光ってば!ヤ・キ・モ・チ?」

「お前こそ可愛げないとこ変わってへんやんけ!!」

 

 

財前はネット関係の会社員。

 

大人になってもこうして会うっちゅーんは

やっぱ中学時代に築いた「絆」が深かったっちゅーことやと思う。

 

 

(恥ずかしいから絶対言われへんけどな)

 

 

「そう言や千歳はー?白石ー千歳来ぃへんのかー?」

「ん?来る言うてたで?そういや遅いなぁ、もう結構みんな飲んでんしなぁ」

 

 

そういえば、千歳があの双子と隣の家や 言うてたっけ。

ホンマに狭い、世間は狭すぎや。

 

 

(隣の家、て)

(どんな生活送ってんのやろ)

(随分親しげやったけども)

 

 

「ちょ、電話してみぃ白石!」

「おぉ、ちょお待ち今・・・」

 

 

その時 ご予約の忍足様、3名様ご来店です! いらっしゃいませー! なんて居酒屋のノリで大声が聞こえてきた。

 

 

(お、来たか?)

(忍足なんて珍しい苗字、謙也しかおらへんしな)

(・・・ん、ちょお待てよ?)

(3名様・・・って)

(3名て)

 

 

今日は小石川も石田もオサムちゃんも来れへんはず、よなぁ?

 

 

(ほんじゃ一体誰が・・・)

 

 

「おぉ、久しぶりたいねー、って謙也はこん間あったけんね」

「千歳ーーー!!遅いでーー!待っとったわーー!」

「おぉ金ちゃん、またデカくなったと?こん前の試合見たばい」

「・・・千歳」

「なんね?白石」

「・・・説明してくれへんかな」

「ん?」

「・・・なんで・・・」

 

 

 

なんでおんねん、まえ姉妹・・・・!!!!!!

 

 

 

「「「「あーーーーーーー!!!!!」」」」

 

 

 

俺が言う前に、大声が響いた(うっさいな!)

 

 

 

「おま・・・暴力みかん女!!」

「変態痴漢男!!!」

「前先輩・・・!!!」

「財前くん・・・・!!!!」

 

 

謙也とまなみちゃんがいがみ合うのはまぁわかる話として

 

 

「え、財前・・・知り合いなん?」

「・・・同じ会社の先輩っすわ」

 

 

 

えーーーーー!!! と口を揃えたのは その場にいた全員やった・・・・。

 

 

 

「何やねんソレ!世間狭すぎる以前の問題やろ!おかしいやろ、テニス部4人が知り合いて!」

「ホンマすごいなぁ、さおりんとまなみんね☆アタシ小春よ!ヨロシクネ!」

「すごいなぁ、ホンマそんなことあんねんな」

「ちゅーか!!千歳!なんでこの暴力女ここに連れてきてん!?」

「それはこっちのセリフだよ!! たまには3人で飲みに行くばい~ なんて言うからついてきたのに!!」

「ハハハ~」

「笑いごとやないっちゅー話や!!」

「そうだよ、千歳!さおちゃんなんてあまりの衝撃に固まっちゃったしょ!!」

「・・・(茫然)」

「さおちゃんこうゆうの慣れてないのに!!可哀想でしょいきなりこんな男たちに囲まれて!」

「いや~さおりとまなみんば話聞いちょったら謙也だけやなくて白石も知り合いって知ったけん、面白かと思うたばい」

「「おもろくないわ!」」

「ハハハ~息ピッタリたい!」

 

 

 

のんきに笑う千歳と、動揺するメンバー。

さおりちゃんにいたってはホンマにガッチガチに固まって全然会話についていけへん。

 

 

 

(まなみちゃんはなぜかもう馴染んでんな・・・さすがやで・・・)

 

 

 

「ホンマ、おもろくないっすわ」

 

 

 

ほんで

ボソっとつぶやいたんは、財前。

 

 

 

(なんやこいつ、急にピリピリしだして)

 

 

 

「結局そのリンゴちゃん言うんが前先輩て。そりゃクソ真面目でからかいがいあるもんな、納得やわ」

「どないしてん財前ー?なんで怒ってるんー?」

「せや、財前どうし・・・」

「一つ言うとくけどなぁ、からかいがいあっても、おもろくはないからな前先輩は!!」

 

 

ハッキリと財前が言うて(容赦ないな、ホンマこの子は!)

さおりちゃんが ズーン と落ち込んだ(あああ)

 

 

「さ、さおりちゃん、そないなことないで?ちゅうかおもろいだけが全てやないし!」

「何言うてんねん、あんたら笑かしたもん勝ちや 言うてるやないすか、いつも」

「なんで財前もそないに機嫌悪いねん、さおりちゃんに謝りー」

「さおりちゃんさおりちゃんて・・・俺の方が先輩とおる時間長いっちゅーねん、なんでアンタが、」

 

 

ボソっと言うた財前の言葉は

 

 

「ああん!?勝負つけたらぁ、このクソみかん女!!」

「上等じゃねーか、受けてたってやらぁ!!!変態痴漢男!!」

「せやから!!!痴漢ちゃう言うてるやろ!!」

「はぁぁ?今更言い訳?見苦しいっつーの!いい加減罪を認めろ!そして懺悔しろ!!」

「万が一!俺が痴漢やとしてもなぁ!!お前のそんな貧相なケツ触ったりせーへんわ!ただデカイだけの色気のないケツ!」

「な・・・・・なんだとっ!!?お前・・・!!」

 

 

そんな二人の言葉にかき消され

 

 

(ん?財前今なんか言うたか?)

 

 

謙也に噛みついたまなみちゃんを止めるためにみんなが大騒ぎ

結局俺も気にせずに二人の喧嘩を止めに入った。

 

 

 

「もー!謙也、やめぇよ!!女の子にいつまでも絡むなんてお前らしくないで!」

「この女がアホでムカつくだけや!!」

「アホはお前だろうがこのヒヨコ頭ーーーー!!!」

 

 

 

ギャーギャーと騒いで このままじゃ収集つかへんからいったん二人を引き離そう

 

そう思うた時、

 

 

天の助け っちゅーか

鶴の一声 っちゅーか

 

俺としては、目が真ん丸になったんやけど。

 

 

「まぁちゃん、いい加減にしな」

 

 

その声が聞こえると まなみちゃんは渋々 わかったよ と謙也から離れた。

 

 

(え、ウソォ?)

 

 

その場でオタオタしていた誰よりも 凛々しく、かっこよく

 

まなみちゃんを制したんは

 

 

「帰るなら帰ろうよ」

 

 

さおりちゃんやった。

 

 

(あれ、なんかキャラちゃうくない?)

(そんなハキハキしとったん?)

(リンゴの国のお姫様はどないしたん?)

 

(ちゅーか・・・)

 

(この双子、おもろ)

 

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