月9(1-9)9【さおり】

 

「ここのチーズリゾット、むっちゃ美味いねん」

 

 

白石さんオススメのイタリア料理店は本当にオシャレで美味しくて

こんなお店に彼女と来てるのかな って思うと 胸が痛くなった。

 

 

「あの、私、携帯拾ってくれたお礼してなくて・・・ありがとうございました」

「ええねんええねん、ホンマたまたまやし」

「あと・・・カバンで殴ってスイマセンでした」

「あー、あれは効いたで!自分格闘技のセンスええなぁ!」

 

 

みぞおちにバッチシ・・・ と言った白石さんは まぁちゃんの冷たい視線に気付いて ハハッ と苦笑いをした。

 

 

「あ、そうや。さおりさんがお姉さんなんやろ?」

「ハ、ハイ」

「妹さんはなんて名前なん?」

「あ・・・まぁちゃんは まなみ です」

「へぇ!名前も似てへんのなぁ」

「似てる名前の双子は縁起が悪いらしくて・・・」

「そーなんや!」

 

 

 

まぁちゃんはただジーっと私達の様子を観察していて

なんとなくたわいもない会話を白石さんと話していた。

こうしてぎこちないけど前より話ができるのは

この場にまぁちゃんがいるから(いてくれるだけで心強い)

白石さんは 何年生まれ? とか 仕事は? とか

会話が途切れないように上手く話をしてくれていて こうゆうの慣れてるのかな、と思わずにはいられなかった。

それでも今日わかった白石さんの情報は超貴重!↓

 

 

 

~最新☆白石さん情報~

・同い年!

・大手製薬会社に勤めている

・チーズリゾットが好き!

・まぁちゃんの会社に週に1・2回来る

・住んでる駅が近い

 

 

 

 

(わー、すごい!)

(携帯を拾ってくれた時には、こんなにお話出来る日がくるとは思わなかったよ)

 

 

 

 

「・・・って、なんでそないに不機嫌そうやねん妹の前サン」

「妹ってゆーな!」

「(あ、まぁちゃんしゃべった!)」

「せやかて・・・双子やし両方前さんやったらわかりにくいやん?」

「いいよ別にアンタと会うのはこれっきりだし」

「なんで!?冷たいな、俺なんか嫌われるようなことした!?」

「す、すいません・・・まぁちゃんは大体こんな人です・・・」

「え、大体こんななん!?かなわんな・・・」

「何かすいません・・・」

「ほな、プライベートん時はさおりちゃんとまなみちゃん て、どお?」

 

 

 

さ、さおりちゃんって・・・・・!!!!!!

 

 

 

(心臓止まりそうでしょ!!!!!)

(名前で呼ぶとかどーゆうこと!?)

 

 

 

 

「ちょっと!!馴れ馴れしく呼ばないでよ!!」

「こわ」

「ま、まぁちゃん落ち着け」

「なんかもー、話聞いてて思ったけど女慣れしてるっつーか女たらしっつーか!」

「え、俺が!?」

「イケメンはこれだからっ!!」

「イケメン!?誰!?俺!?そないなことないよ!慣れてへんし!」

「大体見た目がチャラい!なんかチャラい!そういえばアンタの友達の金髪の男もすごいチャラい!」

「え、金髪・・・?」

「ヒヨコみたいな頭してて、すごい嫌なやつ!痴漢のくせに痴漢じゃないってゆーし!」

「・・・え、謙也んこと!?ちゅうかアレまなみちゃんやったん!?」

「まなみちゃんって呼ぶなーーー!!!」

「ハハ、謙也の股間蹴り飛ばしたんまなみちゃんやったんか!アイツむっちゃ怒って俺にすぐ電話してきてん!」

 

 

 

白石さんは むしろ納得やまなみちゃんが蹴り飛ばしたん、なんか安心した!! と腹を抱えて大爆笑した。

まぁちゃんは まなみちゃんって言うな!大体友達もろともロクでもねーな! って怒ってたけど

白石さんはまぁちゃんと話をしているときなんだか 素 というか、楽しそうにしているから 無性に切なくなってしまった。

 

 

 

(どうして私は上手く話せないのかな)

(なんで言葉が出てこないんだろ)

(話すの下手だし、つまらない女だし、笑えない・・・)

(ヤバイ、落ち込む)

 

 

 

「イヤー、おもろすぎんな!ホンマ偶然や、こわいわー」

「怖いのはこっちだわ」

「謙也、俺のキンタマ蹴りよった女が痴漢扱いしてきてむっちゃムカつくって言うてたで」

「ムカつくのはこっちだわ!あの痴漢ヤロー!」

 

 

 

(おそらく 千歳が言ってた謙也って人のことなんだろうけど)

(てことは白石さんもテニス部?千歳と知り合いなのかな?)

(聞きたいけど、2人の会話に入れない)

(どーしよ・・・)

 

 

 

「・・・ん?さおりちゃん、どないしたん?」

 

 

 

ニコ っと、白石さんが笑って

息が一瞬止まってしまった(か、かっこいい!)

こうゆう気遣い、とゆーか

人の話を聞くのが上手いところとか

自然と私たちのことを名前で呼んじゃうところとか

まぁちゃんの言うとおり 女慣れしてるチャラい奴 だからなのか

 

 

 

(私にはわからないや)

(本当に優しい人な気がするんだけど・・・)

(こんなに素敵な人だから、彼女いないわけ ないよね)

 

 

 

「あ、いや、白石さんも テニスやってたのかな って」

「おぉ、なんで知ってるん?せやで、これでも全国4位の部長や」

「全国4位って・・・ことは、千歳も知ってるんですか?」

「え!?千歳!?千歳のことも知ってるん!!?」

 

 

 

白石さんは スゴイな! とすごく楽しそうな笑顔をこの私にも向けてくれたのだ!

 

 

 

(どどど、どうしよう!)

(動悸が止まらない!)

 

 

 

 

「千歳とはどこで?」

「家が隣で・・・」

「え、ホンマに!?ホンマかい!知らんかったわー、今の家行ったことないしなぁ」

 

 

 

それから まぁちゃんは痴漢がどーのとかまだずっと怒っていて

白石さんは やたら楽しそうに笑っていて

私は少し緊張が取れて 一緒に笑えるようになっていたと思う。

 

 

 

 

「トイレタイム」

 

まぁちゃんがおトイレに席を立った時

 

「さおりちゃん」

 

真面目な顔で 白石さんが私を呼んだ。(ドキっと してしまった)

 

「は、はい」

「さっきも言うたけど、これも何かの縁やと思うねん」

「は、はい」

「ほんでな、出会ったのも3度目、3度目の正直やろ」

「は、はい」

「よかったら、なんやけど。お友達になってくれへんかなぁ」

「は、はい!!(喜んで!!)」

「番号交換せぇへん?」

「は、はい!!」

 

白石さんは携帯を取り出して じゃ俺が赤外線で送るわー と言った。

私も慌てて 携帯を取り出して必死に赤外線受信を探す。(番号交換なんて滅多にしないからわかんないよ!)

 

「はい、送信完了、と」

「しらいし くらのすけ?」

「せや。俺の名前」

「か、可愛いですね・・・(はっ!)」

 

(間違えた!可愛いって!私のバカ!可愛いって何!かっこいいじゃないの!?)

 

「じゃ、じゃなくて、えーっと」

「プッ おおきに!可愛いなんて言われたん初めてやわ」

「は、はぁ」

「俺も思うてんけど、」

「あ、」

「さおりちゃんのこのリンゴのストラップ むっちゃかわええ」

「こ、これは あの、まぁちゃんとおそろいで(まぁちゃんはミカンだけど)」

「さおりちゃん 初めて会うた時も、2回目に会うた時も、ほんで3回目の今日も」

 

 

なんや真っ赤やし、リンゴみたいで可愛らしいわ リンゴの国のお姫様みたいやん

なんの気なしに笑った彼のその笑顔に

 

 

 

 

 

(・・・・・・ダメだもう)

 

 

 

 

 

( 落 ち た )

 

 

 

完全にもうこの想いから引き返すことは出来ないと

失恋するのをわかっていながら 腹を括るしか私には出来なかった。

 

 

 

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