いくら双子で一緒に暮らしてるからと言っても
そう毎日一緒にいるってわけでもない。
さおちゃんは今日とっても珍しく、友達とおでかけに行ってしまった。
(ヒマだ・・・)
もうすぐ年末だし、年末マンガでも描こうかと
近くの文房具屋に自由帳とシャーペンを買いに向かった。
(・・・の、予定だったのに)
結局スーパーの安売りには勝てずに
大量の食料品を両手に抱えていた。
(おも・・・)
おまけにトイレットペーパーとティッシュ箱まで持っちゃってるもんだから
さすがの私も腕がそろそろ限界だ。
(手しびれて来た)
(一旦あのベンチで休憩しよう・・・)
ベンチに向かってよろよろ歩き出す。
そして ドン とベンチの上に重い荷物を降ろしたとき
「あ、みかん!!」
さおちゃんの大好きなみかんが、転がり落ちてしまったのだ!
コロコロ、と転がるみかんを追って
拾って ホッと思い切り頭を上げた その時
ガンッ!
「あだっ!!」
「ったーーー!」
思いっきり 頭をぶつけた。
「ちょ、いった」
振り向くと、若い男らしき人物
「あー、すいませ、」
そう言いかけた私を見て
「あーーーーー!!!!!!!お前!!!!!!」
その男は叫んだ。
「お前!!!あの時!俺のキンタマ蹴り飛ばした女!!!」
「は!!?」
(何こいつ!!!)
(あれ、コイツ、なんか見覚えある・・・)
あっ!!!!!!
「頭悪そうな友人!!!!(白石の!)」
「はぁぁ!?」
お互い一瞬見詰め合って固まった。
(な、なんなのこの男!!)
(いきなり人のことお前呼ばわり!?)
(サイッテー!!つーか何キンタマ蹴り飛ばしたって)
(そんなこと痴漢にしかしてな・・・)
(え、痴漢?)
「あ、あんた、まさか!あの時の痴漢ーーーーー!!!!!!!!」
そう叫んだ瞬間、周りにいた人たちが一斉にこっちを見た
「ア、アホおまっ!ちょっと来い!!!!」
白石の頭の悪そうな友人の痴漢男はアタシの手を引いて 人気のない道へ連れて行った(やべぇやられる!!!)
「ちょっと!!離してよ!この変態!!ベンチに荷物!置いてきちゃったでしょ!?」
「お前があんなとこで人の事痴漢扱いするからやろ!!」
「痴漢に痴漢って言って何が悪い!この変態!!」
「へ・・!?おま・・・ええ加減にせぇよ!」
「大体今まで話したこともない人間にお前呼ばわりされたくないし!!」
「そっちこそ人の事頭悪そうだの、痴漢だの、変態だの!何のつもりやねん!」
「言葉のまんまだけど!」
「はぁ!?」
「はぁぁ!?」
(ムカツクーーーー!!!!!)
くぅぅぅ とニラみ合ってたけど
こんなとこでそんなことしてても仕方がない。
「痴漢男!今回だけは見逃してやる!アタシは忙しいの!じゃーね!」
「ちょお、待て!勝手に誤解して人のこと痴漢扱いするな!」
「ちょっとついてこないでよ!」
「俺かてプライドあんねん!痴漢扱いされて黙ってられるか!」
「何のプライドだか知らないけど、アンタみたいな変態の話聞くことなんてないから!」
「変態ちゃう言うてるやろ!このみかん女!人の話は最後まで聞け!」
「みかん女って何!?やめてよ!」
「みかん持ってるからみかん女やろ!」
「言っとくけどアタシみかんは大嫌いなの!その呼び方やめてよ、痴漢!」
「そっちこそやめぇや痴漢て!」
「じゃあ変態!」
「変態ちゃう!!」
(最悪!なにこいつ!)
(こんな友達持ってるなんて、白石も絶対イヤなやつだよ!!)
言い合いしながらさっきのベンチまで戻ってくると
「ない!!!!!」
買い物した荷物が なくなっていた・・・
「あんたのせいだからね、変態男!」
「なんでやねん!お前が最初から大人しく俺の話聞いとけば問題なかったやろ!」
「何それ、アタシのせい!?信じらんない、警察に突き出してやる!」
「な、なんでや!なんでそーなる!」
「信じらんない!とにかく、携帯持ってないし一旦家に帰らなきゃ」
「携帯、使うか?」
「は?」
「荷物、無くなってんやろ、警察に電話すんなら貸すで」
ん と変態のその男は携帯を差し出した。
・・・・。
「いい。一回帰るから」
「なんで!?」
「あんたみたいな変態男に借りは作りたくないの」
「は?なんやそれ」
「てゆーか、あんたが盗んだんじゃないでしょーね!?どっかに仲間が・・・」
「おらん!つかそんなこと命かけたってせぇへんわ!」
「フン、どーだか。痴漢のすることだしね」
「おま・・・!人のキンタマ蹴り上げて、あごに頭突き喰らわした上にその暴言か!」
「何さ、あんたこそ変態で痴漢のくせに!!」
「暴力みかん女!」
「変態痴漢男!」
(なにこいつ!)
(むーーかーーーつーーーくーーーーー!!!!!)
睨み合って動かずにいた私たちに 聞きなれた声で仲裁が入ったのはしばらく立ってからのこと。
「あー、おった、まなみ~」
(!?)
声の方を振り向くと
そこにはニコやかに手を振っている長身の
「「千歳!」」
・・・・
って、
(今、声がかぶった!?)
「おー、謙也~、久しぶりたいね」
「え、な、なんで!?」
「知り合い!?」
パニくる私たちを前に 千歳はニッコリと笑った。
両手には、私の買った荷物をぶら下げていた。