クロスオーバー70【さおり】

こないだ部活帰りにバレンタインのことバレー部のみんなに言われてから
思ったよりも男子ってバレンタインを意識してるしチョコレートもらいたいんだなって思った。

 

 

確かに幼馴染の特にジロちゃんとかルカとかガックンとかもチョコは?って毎年言うもんね。

亮ちゃんもねだりはしないけどあげると嬉しそうだし、コウくんも甘いものは苦手だとか言いながらめっちゃ奮発してお返しくれるし。

もちろん家族にもあげてるよ!!!みんな紳士だからお返しすごいくれて逆に申し訳ないくらい・・・

 

すごい量のお菓子作るから手作りのお菓子を少しづつあげてるんだけどね!!

 

 

今年はバレー部も増えたし・・・
生徒会はお世話になってるからあげないとダメだし・・・

(というか跡部は毎年チョコあげないと怒るし)

 

うーん、すごい多くなっちゃうな・・・

 

 

 

でも、いつもお世話になってる人たちに!!
喜んでもらいたいから!!!!
だから今年はがんばっちゃうよ~~~~!!!!!

 

 

 

(・・・お世話になってる、から)

 

 

 

笑顔でいつも手伝ってくれる彼の顔が浮かんだ。
実はバレー部とバレンタインの話をしてから その時からなんとなくバレンタインの事を考えると頭に浮かぶんだ。

 

 

 

(お世話になってるから、だよ)
(実は副委員長やってくれてるし)
(校内で一番お世話になってる人だと思うんだもん)

 

 

でも、元カノからのチョコレートなんて 嬉しくないよね・・・

 

 

(・・・今更だし)

 

 

 

あんなことしといて 今更許してほしいとか 気を引こうなんて
そんな図々しいことは思ってなくて。

 

 

でもなぜか
なぜだか わからないけど

逃げ出したのは私の方だし

別れたくて仕方がなかったのも私の方だし

つらくて苦しくて耐えれなかったのも私の方だし

ひどいことしたのも言ったのも私だったのに

 

 

 

(・・・チョコレートあげたい人って言われたら 彼が浮かんだの)

 

 

 

 

おかしいよね。

 

 

 

 

バレンタイン前日、学校帰りにまぁちゃんと一緒にお菓子の材料を買いに行った。
街は可愛い包み紙を持った女の子で溢れていて
みんなバレンタインがんばるんだな、って私までソワソワした。

 

家に帰ってキッチンを借りてチョコレート作り!
今年は人数も多いから生チョコを作るよ。
生クリームで量増しできるし、小さく切っていくつか包んでラッピングすれば可愛く見える優れもの!!

 

(とは言え・・・)
(150人分くらいの分を作るので)
(ちょっと大変なんだけどね!)

 

 

作ってる途中 まぁちゃんが一つだけ明らかに気合を入れたガトーショコラを作っていた。
驚いて二度見した。

 

そしたら突然の好きな人に告白する宣言されてびっくらこいた。
目玉飛び出るかと思った。

 

 

あの!!!!

まぁちゃんが!!!!!

恋!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

(・・・でも)
(毎年超やる気のないまぁちゃんが)
(すごい張り切ってお買い物して)
(張り切ってキッチンでお菓子作って)
(いつ買って来たのかすごく可愛いラッピングまでしてるの)
(本当に幸せそうで、可愛くて)

 

 

うらやましいな、って 思ったよ。

 

 

 

 

(・・・なんでそんな風に思ったんだろうね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてバレンタイン当日。

 

まずは朝食の時にみんなに手作りチョコを渡す。
みんな大喜びですよ。量少なくてごめんね💦って言ってもむしろ謝られたり感謝されたりで本当に喜んでくれて。

 

長船一族(大人)はね・・・
みんな・・・
10倍以上のお返し、期待しててね(ウィンク)ってしてくるからゾッとしたよ・・・。

あまり・・・高いものは・・・勘弁してください・・・・・・・・。
(高いものくれるなら来年からはあげないって言っといた!!)

 

でも!!!!!!!

 

愛する謙信くんは!!!!!

 

すごく喜んでくれて!!!!!!!!!

 

粟田口のかわいこちゃんたちも!!!!!!!

 

幼稚園・小学生チームは!!!!!!!!!!!

 

大喜びしてくれて!!!!!!!!!!!!

 

今日も!!!!!!!

 

尊いです!!!!!!!!!!!(安定のショタ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝からみんな(小さい子たち)の笑顔が見れて嬉しくてホクホクしながら学校(朝練)へむか・・・・

 

 

う途中

 

 

 

 

岳人「おー、さおりー」
ジロ「チョコは???」
ルカ「それチョコ入ってるんでしょ???」

 

うわーーーーー
出たよーーーーーーーー

 

チョコレートのカツアゲ軍団・・・

 

 

 

やめろって、とか言いながら亮ちゃんソワソワしてるし
いつも朝遅いのにコウくんまでいるし

 

ほんと男ってヤツはな・・・!!!!

 

 

さお「もぉ・・・ジロちゃんいつもこんな時間絶対起きてないでしょ?ルカもコウくんも朝練の時間なんて普段登校しないのに・・・」
ジロ「だってチョコほしーC~」
ルカ「今日朝飯抜いてきたから早くちょうだい💕腹減ったー」
さお「ちょっと待ってよ・・・そんなたくさんは作ってないよ?えっと・・・」

 

チョコを渡すとみんな これだけかよとか 少ないとか
ブーブー文句言うの💢
文句言うなら返して💢って言ったんだけど💢
これはこれでもらっとくって💢
もう!!うちの家族と大違い!!
あとでまなみにもたかろうぜとか言ってたけど
まぁちゃんと喧嘩になりそうだな・・・

 

そう思いながら。
部活に行って朝練がんばって
そのあと部活のみんなにも配ったよ!!
先輩たち感動してくれたし、チョコレートあげてよかったなぁってすっごく思いながら 教室に行って。

 

 

 

 

「おはよう」

彼に声をかけられて  驚いて体が大きく揺れた。

 

さお「お、おはよう」
白石「なんや、朝から疲れた顔しとるな?」
さお「い、色々あったから・・・疲れちゃって、」
白石「そうやったんや!平気?無理せんでな!」

 

そう笑って 彼は自分の席についた。

 

(・・・言われなかった)
(いや、当たり前なんだけど)
(バレンタインのことも チョコのことも)
(なんにも・・・)

 

そんなの当たり前のことなのに。
だって私たちとっくに別れてるし 何もおかしなことじゃないのに。

 

(あー・・・・まただ・・・)

 

 

 

わからないけど胸がモヤっとして

 

 

 

(・・・なんでこんなに、)

 

 

 

実は一つだけ多く作ったそのチョコを

自分の気持ちを隠すかのように

カバンの奥深くにしまいこんだ。

 

 

 

 

 

 

昼休みにはまぁちゃんと他の男子へのチョコ配りへ。
すごいお世話になってるマコちゃんにもいつもパンくれる田所くんにも一緒に渡しに行ったし
まぁちゃんに付き合って木兎くんとかユウジくんや、小春ちゃんにも渡しに行った。
(小春ちゃんには私もあげたよ!!友チョコよ~って小春ちゃんからももらった💖)
生徒会室にも行って生徒会のメンバーにも渡した。

まぁちゃん曰く 跡部死ぬほど喜んでた って言ってたけど

跡部高級チョコばっかり食べてるから・・・私の手作りチョコなんて生ゴミみたいなものだろうな・・・

あとまぁちゃんに好きな人にチョコいつ渡すの?って聞いたら放課後って言ってたからめっちゃソワソワした。
なんかこっちがドキドキして吐きそうだよ!!

 

 

 

そんなこんなで
無事にみんなにチョコを配り終わり。
放課後は真面目に部活にも取り組み。

 

 

 

夕方、もう日が暮れて薄暗い玄関で靴を履いた。

 

 

 

 

(・・・まぁちゃんどうだったんだろう)
(告白は無事に成功したのだろうか)
(相手は誰なんだろう・・・)
(マコちゃんでも御手杵でもコウくんでもないって言ってたし・・・)
(同じクラスでも部活でもないって言ってたし・・・)
(めっちゃ気になる・・・)
(成功してたらいいな・・・)
(相手わからないけど・・・昨日すごいがんばって作ってたから・・・)
(まぁちゃんの恋が上手くいってますように・・・)

 

 

 

 

加州「さーおり💖」
安定「一緒にかえろ!」
堀川「荷物重くない?持つよ」
さお「あ、みんなも部活終わったの?お疲れ様!」

 

剣道部の3人に声をかけられて 一緒に帰ることにした。

 

加州「ほら、荷物貸しなよ、俺持ったげる」
さお「いいよいいよ」
堀川「大丈夫?」
さお「うん」
安定「さおり今日部活の人にもチョコあげたんだって?同じクラスのバレー部のやつが喜んでたよ」
さお「あ、うん」
堀川「人数多いから作るの大変だったんじゃない?」
さお「あ、でもなんか作るの面白かったし大丈夫だったよ、むしろ量少なくて申し訳ないよ」
加州「え??申し訳ないのはこっちのほうだよ???」
安定「だけど来年はチョコいらないからとか言えない男心」
堀川「やっぱり貰えると嬉しいから・・・ごめんね」
さお「ううん、ほんとこちらこそ申し訳ないよ」
加州「俺嬉しすぎて神棚に飾った」
さお「ちゃんと食べてね???」

 

 

 

 

 

そんな話をしながら正門についたとき

 

 

 

 

きゃあああああああ❤❤❤

 

 

 

 

と黄色い歓声が聞こえた。

 

 

 

 

(えっ!?)
(なにごと!?!?)

 

 

 

驚いてよく見ると
他校の女子がたくさん校門の外にいた!!!
ほんとにすごい人数で
それはまるでアイドルの出待ちのようだった・・・

 

 

 

「跡部様~~~!!!!チョコレート受け取ってくださ~~~い!!!!!」
「パリから取り寄せた特注のチョコです!!!」
「跡部様~~~!!!!」

 

キャーキャーと、輪の中心には跡部がいた。

 

 

 

(あぁなんだ)
(跡部の親衛隊か)
(さすが跡部だな、中学の時からモテるレベルが世界レベルだ・・・)

 

 

ほへ~と感心していると

 

 

 

「加州くーん!こないだの試合見てました!」
「堀川くん❤これ受け取ってください!」
「大和守くん!ずっと好きでした!!」

 

 

 

 

 

 

 

( ・◇・)

 

 

 

 

 

清光たちが・・・

告白されだした・・・・・・!!!!!

 

 

 

(ほえ~~~)
(え・・・他校の生徒なのに???)
(すごくない???)
(え???なにこれ???)
(え?????モテるの???)
(加州たちって・・・モテるの!!?)

 

 

 

え、まって
めっちゃウケる!!!!!!!

 

 

 

 

 

(家族が告白されてるの複雑だけど)
(加州たち・・・モテるのか・・・)
(知らなかった・・・)
(めっちゃ困ってるしょw)
(まぁうちの家族美形揃いだからな)
(ふふん(`・ω・´)ドヤァ✨)

 

 

 

 

安定「ちょっと・・・!引っ張んないでって💢💢」
堀川「すみません、間に合ってますから・・・」
加州「さおり!ちょっと待ってよ、あーもー!人が多くて進めない!!」

 

さお「先に帰ってるからのんびり来て~」

 

 

 

そういやうちの家族だけじゃなく
学校の男子達みんな文武両道でイケメン揃いだからこの女子の山も納得だなーって思っていた。

周りを見渡せば、確かに跡部だけじゃない。

あちこで色んな男子生徒が女の子達に囲まれていた。

 

(すごいなぁ)

(みんなモテモテだなあ)

(ここの部活強いから全国区で有名だもんね)

(甲子園も出てたしどのスポーツも全国で優勝してるし)

 

 

加州たちも囲まれて動けなくなってるから悪いけど先に帰ろうと思ったら

 

 

 

 

 

 

 

 

「白石くーーーーん!!!!」

 

 

 

 

 

ビクッ

 

その声で 思わず立ち止まった。

 

 

 

 

 

「白石くん!!受け取って!!」
「こないだの試合見てました!!」
「白石さん、チョコもらってください!!」

 

 

 

 

 

 

女の子に囲まれている 彼を見てしまった。

 

 

 

 

 

 

ズキズキ

 

 

(あー・・・)
(なんか・・・)
(嫌なもの見ちゃった・・・)

 

 

 

 

 

 

だから

なんでなのか自分でも   わからないんだってば。

 

 

 

 

 

 

 

(・・・バレンタインって聞いたら1番に彼の顔が浮かんだのも)
(楽しそうなまぁちゃんが羨ましいなって思ったのも)
(今、こうして)
(胸が潰れそうなくらい痛いのも)

 

 

 

 

胸が苦しくて
吐きそうで
つらくて

 

 

 

 

まるで付き合ってたあの時のまま

ずっとずっと

苦しくてつらくて切なくて

 

(・・・別れたのに)

付き合ってたあの時から
何にも変わらず ずっと苦しいままで。

 

(どうしたらいいの?)

(辛くて苦しいから別れたのに)

(別れたらこの苦しみから抜け出せると思ってたのに)

(別れてもずっと同じ気持ちのままなんて)

(すごく優しくて明るくて素敵な人なのに)

(・・・私、そんなに彼のことが嫌いなの・・・?)

 

 

 

わからなくて
モヤモヤして

 

 

ただなんとなくそのまま動けずにいて

 

そして彼と目が合って。

 

 

白石「あ、」

 

 

驚いて、私は逃げるように走り出した。

 

 

 

 

(・・・苦しい)

 

 

 

 

白石くんの 前さん待って って声が聞こえたような気がしたのに
ザワザワとした騒音にまぎれて
聞こえないふりをした。

 

 

 

(・・・なんにも変わってない、私)

 

 

 

 

逃げてばかりだなぁ

 

 

 

 

 

一つだけ、わざと多く作ったチョコ
カバンの底に隠したそれを
握りしめるようにカバンを抱きしめた。

 

 

 

(バレンタインなんて無くなっちゃえばいいのに)

 

 

 

なんだかわからないけど、そんなふうに思った。

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