2月13日。
今日はバレンタイン前日なのだ。
さお「あれ?きみなんか1個だけ違うの作ってるね」
まー「うん」
バレンタインは全然興味ないイベントだったけど
うちの人達ホワイトデー10倍返しくらいしてくれるし
チビたちは可愛いし
あとついてに幼馴染にあげないと死ぬほどうるさいから毎年あげてるし
なんだかんだ毎年さおちゃんと一緒に厨房(キッチンと呼ぶにはあまりにも広いので)の端っこを借りてお菓子作りをしていた。
さお「御手杵に?」
まー「いや」
今年はもちろん おらは張り切っているのだ。
さお「すごい美味しそうだね、コウくんに?」
まー「違うよ」
明日はバレンタインだから
アタシは
忍足謙也に 告白すると決めた。
(・・・ひどい態度ばっかりしてごめんねって謝って)
(ほんとは好きでしたって 言って)
(あと傘も返さないと・・・)
(・・・緊張する)
緊張するけど
恋をしてる、ってそれだけで
ワクワクドキドキして楽しくて
明日喜んでくれたらいいな、とか
手作りにしたら気持ち伝わるかな?とか
色々なこと考えながら作るのは 結構楽しかった。
(お菓子作り苦手だけどね!!!)
(でもがんばるよ!!!)
さお「ラッピングめっちゃ可愛くない!?・・・マコちゃんに?」
まー「違うよ」
さお「え、じゃあ誰に・・・?」
まー「さおりくん」
さお「え?」
まー「アタシは明日、好きな人に告白しようと思う」
さお「え!!?きみ好きな人いたの!?てか告白するの!?」
まー「うむ」
さお「え!!!!!!!誰!!?誰!!?!?私の知ってる人!?」
まー「知ってると思うけどあんまり話したことはないと思う」
さお「え!!!!!!じゃあうちの家族とか幼馴染じゃないんだまぁちゃんの好きな人!!!!」
さおちゃんのその言葉を聞いて 牛乳を飲みに来ていた鯰尾が ブハっと牛乳噴き出して
大変だ~~~~ って廊下をバタバタ走って行ってしまった。
わ!バカ!!言いふらすな!!!
と、思ったけど秒で噂広まるから我が家。もうこれ手遅れだ。
そんなことより
まー「はぁ・・・手作りのお菓子とか重いかな・・・」
さお「全然!!めっちゃいいと思う!!!で、誰なの!?」
まー「・・・まだ告白上手くいくかわからんしとりあえず終わったらきみにだけ教えるよ」
さお「え、マコちゃんじゃないの・・・?」
まー「なぜマコちゃん・・・?一応お世話になってるからみんなと同じチョコはあげるけど・・・」
さお「え~~~じゃあ誰~~~全然わかんない!!2組の人?」
まー「違うよ」
さお「バスケ部の人!?」
まー「違うよ」
さお「わかった!!鳥飼コーチだ!それか土井先生!!」
まー「も~違うって~明日教えるから待っててって~」
さおちゃんがめっちゃ気になっているが まだ内緒だ。
明日の告白の、正直勝率は低いと思ってる。
でも、忍足謙也いいやつだから すぐにフラないで考えてって言えばちょっと意識してもらえるんじゃないかとも思っている。
(・・・とにかく言わないとさ)
(片思い、性に合わないんだもん)
(さっさと告白したい!)
おらは・・・ やる!!!!!!!
そして2月14日 バレンタイン当日。
ドッドッドッドッドッドッドッド
おらは
緊張しすぎて
吐きそうになっていたのだった・・・・・・・・・・
(やっやべぇ・・・・!!!!!!!!)
(好きな人出来たのも初めてだし・・・・)
(もちろん告白も初めてだし・・・!!!!!!)
(すげぇ緊張する・・・・!!!!!!内臓飛び出そう・・・!!!!!!)
(死にそう・・・・!!!!!!!!!!!)
ディアンヌ「はぁ~やっと授業終わったね💛💛💛今日はキングとデートなんだ💛まなみはどうするの???💛」
まー「ディアンヌ~デートかよぉ~~~あ!ディアンヌはどっちから付き合ったの!?告白どっちからしたの!?!?」
ディアンヌ「え💛💛💛ボクたちは小さい時から両想いだったから💛💛💛」
まー「そうだったぁ~~~幼馴染つえぇぇぇ」
ディアンヌ「あ、でも・・・キングってシャイだから、ちゃんとハッキリ伝えたのはボクかも・・・💛」
まー「え!!?!?マジ!?なんて言ったの!!?」
ディアンヌ「愛してるって言ったよ💛💛💛」
まー「すげぇ!!!!ディアンヌ師匠!!!!!すごい!!!!!見習います!!!!!!」
ディアンヌ「え!!?まなみ好きな人いるの!?!?」
キング「ディアンヌ~~~💖💖💖」
ディアンヌ「あ!!キングだ!!ごめんねまなみ!明日話聞かせてね💛💛💛ファイト💛💛💛」
(あー・・・)
(師匠が行ってしまった・・・)
でも、ディアンヌから愛してるって言ったんだ
そう思うと少し勇気が出た。
(がんばろう・・・!!)
チョコと傘を握りしめて アタシは教室を後にした。
(・・・まだ教室にいるだろうか)
ドキドキ
(彼女いるのかも結局聞けなかったけど)
ドキドキ
(部活にもう行っちゃったかな・・・)
ドキドキ
放課後。
5組の教室の近くまで来たけど
人の出入りや廊下で話してる人が気になって 教室から少し離れて そっと様子を見ていた。
出て来たら渡そう、とか 色々考えてたんだけど
教室の前にいた人がどんどんいなくなって
廊下にも誰も人がいなくなった時
キョロキョロしながら そっと教室へと近づいた。
(やっぱりもう部活行っちゃったかな・・・)
(出てこなかったもんな・・・)
ギャハハハハ
その時 教室から笑い声が聞こえて そっと中を覗いた。
(あ!!いた!!!)
そこにはクラスの友達と談笑する忍足謙也の姿があった。
(忍足謙也だ!!!!!!)
(人がいると!!!!)
(緊張するし!!!!)
(向こうも嫌だろうし・・・!!!!)
(教室から出てきて一人になったところで・・・!!!!!)
(チョコ渡す!!!!!)
(傘も返す・・・!!!!!!)
(告白する・・・・!!!!!!!!)
少し離れたところで待ってようと 背を向けた時
「チョコもらった?」
って声が聞こえて ぴくっと 動くのをやめてしまった。
(彼女いるかいないかわかるかもしれない・・・!)
そんなことを思って 思わず立ち止った。
「もらえねーようちの学校女子少ないし!」
「てかうちのクラス女子いないもんなー」
「俺もらったぜ、中学の時からの彼女いるし」
ドキ!
(いや違う!)
(違うな!)
(関西弁じゃないから忍足謙也ではない!!)
気になってまた少し教室を覗き込んだ
いいよなー彼女持ちはって声が聞こえて
じゃあこの学校で彼女にするならだれがいい?って話になって
(え!マジ!?そんな話する!?)
って少しビビりながら 会話を聞いていた。
盗み聞きが悪いってわかってんだ!!!!!
でも気になるから!!!!!
仕方ないだろ!!!!!!💢💢💢(逆切れ)
やっぱヒロアカクラスがどーのとか
おっぱい誰がでかいとか
えぇい!!おっぱいの話はするな!ってイライラして やっぱ向こうで待ってよって思ったんだけど
誰かが 謙也は? って聞くもんだから
また急いで耳を傾けた。
(わ・・・!!)
(ドキドキするよ!!)
吐きそう・・・!!!!
謙也「俺?」
「女子の中で誰好み?」
謙也「うーん」
「あれ?謙也確か2組のあの子可愛いって言ってたじゃん」
(!!)
2組の!!!?!?!??!??
ドキドキで 胸が張り裂けそう!!!!
謙也「あぁ、あの子はかわええな、いつもニコニコしとるし」
(・・・ん?)
いつも、ニコニコ????
(・・・・・・違う)
(アタシじゃない)
(アタシ、忍足謙也の前で一度もニコニコしたことない)
(え・・・まさか・・・)
「2組のディアンヌ、可愛いよな。巨乳だし。でも彼氏持ちで入る隙間ねーよなー」
謙也「付き合いたいとかそんなんちゃうで?可愛いとかの話やろ!?」
(・・・ガーン)
(ディアンヌ可愛いって・・・)
(いや確かにディアンヌめっちゃ可愛いけど・・・)
(いつもニコニコしてるし・・・巨乳だし・・・可愛いけど・・・)
(え・・・めっちゃショック・・・)
「可愛いと言えば同じ2組のまえまなみも顔は可愛いじゃん、謙也なんか鼻がどーこー言ってたけどどうなんだよ?」
!!!!!!
まさかのピンポイント!!!!!!!
アタシのことじゃん!!!!!
やめてやだ!!!!!!!!!!
死ぬ!!!!!!!!!!
(けど聞きたい)
(ワンチャンあるかも・・・・!!!!)
(これで可愛いって言ってくれたら少しは望みが・・・)
謙也「あー・・・・・・俺あの子はちょっと・・・」
(・・・え?)
時が 止まったような気がした
「あーキツそうだもんなー!2組の中でもかなりの問題児って聞いたわ」
謙也「・・・いやええ子やねんけど。俺がめっちゃ嫌われてるってだけの話で。ちょっと怖いだけやねん」
あんなことしてもうたから当然やし仕方ないんやけど
その後の会話は あまりのショックに 耳に入ってこなかった
ただただ あまりの衝撃に足が震え 心臓がバクバクと動いて 息も出来ないくらい苦しくて
(・・・そっか)
(そっか)
(・・・そうだよね)
アタシ、嫌われてたんだね
手に力が入らなくて
ガタンッ
大きな音を立てて 手から傘とチョコが落ちる
(やばい)
(逃げなきゃ)
教室から 誰だ? って声が聞こえて 慌てて走り去った。
(・・・どうしよう)
(どうしよう)
(アタシ、)
荷物を拾ってる時間がなくて そのまま逃げてきてしまって
でもあまりのショックに それ以上は何も考えられなかった。
アタシ、嫌われてたんだ
(でもそんなの今までの態度を考えたら当然このことだ)
(アタシが、悪いんだ)
(いつも冷たくしてキツくあたったのは アタシ)
(自業自得だ)
でも
気が付けば ポロポロと涙が流れた。
(・・・でもさ)
(告白くらい、したかったなぁ・・・)
告白も出来ずに 失恋するなんて。
(失恋ってこんなにツラいんだ)
家にも帰れず 学校にもいられず
ただただ アタシは近くの公園で 泣いていた。
関東では珍しく 私の頭上には雪が降り注いだ。
寒い。
心もからっぽで 悲しいのに、体もものすごく冷たい。
「・・・・・・まなみ?」
その声に 顔をあげた
「どうしたんだい、こんなところで。風邪引くじゃないか・・・・あれ?泣いてるのかい?」
アタシの涙に気付いた歌仙は急いで近づいて
「誰にやられた?」
と 真顔で聞いた。
「・・・アタシが・・・誰かにやられて泣くわけない」
「・・・そりゃそうだね。じゃあ先生に叱られた?」
「ううん」
「まぁ、叱られて泣くたまでもないか・・・じゃあ・・・」
昨日可愛くラッピングしたプレゼントの相手かな?
歌仙のその声が優しくて
アタシは うわーん と思い切り歌仙に抱き着いて泣いてしまった。
歌仙はアタシをまるで子供をあやすように 優しく撫でてくれていた。
「・・・で?とりあえずそいつの名前教えてくれるかな」
「歌仙、目が笑ってない」
「笑えないだろうきみを泣かしたんだから」
泣き止んで落ち着いてから (名前は絶対言わないけど) 歌仙に今までの経緯を説明した。
元々は私が悪いんだと、嫌われて当然のことをしたのだと 説明したのに。
「・・・ほんとに、アタシが悪いんだ。ずっと気になってたのに、上手く話せなくて冷たい態度ばかり取って・・・」
「・・・まぁ、きみは普段から人へすごい態度を取るときがあるからね」
だから日ごろから人には優しくとあれほど・・・ と説教が始まりそうだったので
またメソメソするふりをして止めといた。
いやこういうところが腹黒くて駄目なんだなおらは・・・自分でもわかってる。
「・・・で、これで諦めるのかい?」
「だって・・・もう嫌われてるのわかったしこれ以上どうしようも・・・」
「嫌われてるからこそ、だろ?」
「え?」
「きみ、少しは好かれようと努力したのかい?」
「だからそれは!今日ちゃんと告白しようとして・・・」
「でもこうして結局泣いてるだろ」
「・・・そうだけど」
「ここで負けてもいいのかい?」
「だから!負けるも何も嫌われてるのに近づけないんだってば!アタシが近づいたら嫌な思いさせるでしょ!!」
「・・・でも、嫌われてるってことは、これ以上きみの印象は悪くならないってことだよ」
「・・・」
「あとは、上がるだけだ」
ニヤリ、と歌仙は笑った。
「でも・・・」
「例えば、挨拶はコミュニケーションの基本だ。毎朝笑顔で挨拶してみるとか」
「・・・」
「見かけたら手を振るとか」
「・・・」
「男は女性の笑顔に弱い生き物なんだよ。嫌われてると思って近づかないより、笑顔で挨拶した方が好印象だ」
「・・・確かに」
「いつもの君らしく、怖がらずにやってみなよ。だってこれ以上嫌われることなんてないんだから」
「・・・それもそっか」
これ以上嫌われることがない
(・・・だったらさ)
(告白するとか付き合うとかじゃなくて、)
(彼に、 嫌わない女を目指そう)
せめて、嫌いとか苦手とか そんな風に思われないように
「・・・わかった!!」
「お、元気出たね」
「アタシ、がんばってなかったわ!!恥ずかしくて何にもしてなかった!でももう大丈夫!がんばる!!」
「・・・そうかい、それはきみらしいね」
「そんで嫌われないようにする!!!見かけたら向こうからも話しかけてもらえるくらいにはなる!!」
(好きになってもらえなくてもいい)
(嫌いじゃなきゃそれでいい)
「がんばる!!!!」
そう叫ぶと、 妬けちゃうね と歌仙は言った。
「・・・まぁまた何かあったら言うんだよ、一人で泣いてないで」
「うん!!ありがと!!」
「がんばれ、と言いたいところだけど、上手くいったらいったで相手の男斬ってしまいたいくらい憎いな・・・」
「穏やかじゃないな!!さすが名ばかりの文系・・・」
「名ばかりじゃないよ、それに僕だけじゃないだろう」
「こわいこわい。あー泣いたらお腹空いたわ!寒いし!」
「あぁ、夕飯の足りないもの買ってきたんだった。早く帰らないと燭台切が待ってるな」
「今日の夕飯なあに?」
「ハンバーグ」
「やった!!チーズ乗せてね!」
「あぁ、特別に中にも入れてあげるよ」
「やったー!!」
早く帰ろう! と立ち上がると 歌仙は笑った。
そして雪の中 二人で並んで家路につくのだ。
(明日は笑顔で挨拶しよう)