『忍足謙也と 両想いになれますように』
誰にもバレないように 500円玉大奮発して 初詣で神頼みした。
叶ったらいいな、と 思いながら。
「冬休み短すぎる」
そうボヤいた言葉に
「わかる」
「しょうがねぇよなぁ」
と答えてくれるのは ルカとコーイチ。
部活組はとっとと朝練行ったわ!
ジロはまだ寝てるかもしれないけど。
まー「もう少しこたつでぬくぬくしたい」
ルカ「寒いもんねぇ」
琥一「グチグチ言ってねーで急ぐぞ!ほら、降りろよ!」
コーイチがむりやりバイクからアタシと琉夏をおろそうとする。
ちなみにむりやりバイクに3人で乗ってたんだけど、危なくてスピード出せないからコーイチはちょっとイライラしてる。
琉夏「じゃ、まなみ、ジャンケンしよ♫」
まー「やーだーよー!男なんだからゆずれよぉー」
琉夏「女の子扱いしてもらいたかったらもっと女の子らしくすれば?」
まー「は?」
琉夏「ほら、じゃーんけん・・・」
まー「ポン! あ、ああぁぁあ・・・・」
琉夏「ハハ、俺の勝ちー♫じゃ、お先に!」
琉夏はヘルメットつけてコーイチの後ろにまたがった。
コーイチも「わりぃな、リヴァイさんに迷惑かけらんねぇからよ」とか言いながら容赦なくバイクで走り去ってしまった。
(・・・・・)
え!?
ひどくない!?
置いていかれたけど・・・・!?
え!?うそでしょ!?
あいつらほんとにアタシのこと好きなのか!?!?
信じらんねぇ!!!!!
「やばい、遅刻したら廊下立たされる・・・」
こんな!寒い真冬に!3学期の初めから!!!立たされてたまるか!!!!!!
と、思いながらも 100%間に合うわけがないので
案の定アタシは廊下に立たされてしまったのだ・・・・・・・
寒い・・・・・・・・・・・・・・
(最悪だ・・・)
(寒すぎる・・・)
(廊下寒すぎる死ぬ・・・)
(これはあれだな・・・)
(女の子は下半身冷やしちゃいけないんです!!ってリヴァイに訴えよう)
(あいつ、意外とわかる男だからな)
(よし、そうしよう)
そう、教室に入ろうとした その時。
「あ」
(!!!!)
お
忍足!!!
謙也!!!!!!!!!
ブワッ
体中が急激に熱を帯びるのを感じた。
忍足謙也を見ただけで
熱くて、痛くて、苦しくて、つらくて
どうしようもないのだ。
(な、何か言わなきゃ!何か言わなきゃ!!何か言わなきゃ!!!)
なのに言葉が出てこない。
何か言いたいのに 頭の中は真っ白で目も周るし心臓がバクバクしている。
言葉の代わりに出てくるのは冷や汗ばかりで
せっかく今 廊下に二人きりなのに・・・・・・
ん?授業中なのに・・・?
「なんで?」
単純に疑問を感じて話しかけた私の言葉に
すでに通り過ぎようとしていた彼は 振り向いて
「ん?」
と言った。
死ぬほどカッコイイ。
「あぁ、今実験室におったんやけど、教室から先生のカバン取ってくるように言われて」
そう答えてくれた彼が素敵すぎて 眩しくて 死にそうだ。
どうしよう、どうすれば、どう答えれば・・・・・・
ど・・・
「あぁ、そう」
フイ
(・・・)
・・・・・え?
ちょっとまてアタシ???
フイ???
フイってなんなの!?ねぇ!!!!!!!
またやっちまったよ!!!!!!!!!!!!
フイってやつ!!!!!!!!!!!!!!!!
恥ずかしさのあまりフイってやつ!!!!!!!!
これすごい感じ悪いからやめたいのに!!!!!!!!!
やめたい!!!!のに!!!!!!!!!!
なんで!!!!!!!!アタシのバカ!!!!!!!!
「・・・」
忍足謙也はそのまま また前を向いて 教室まで走って行ってしまった。
あぁ・・・
超絶感じ悪いことした・・・
絶対嫌な気分になったと思う・・・
全然可愛い女になれない・・・
つら過ぎる・・・
このままじゃ嫌われちゃう・・・・
ずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん
悲しく落ち込んで教室に入るのも忘れてイジイジしていると
また彼が5組のドアから出て来て アタシの方に駆けてきた
(何か)
(言いたいのに・・・)
(あんな態度とったらもう・・・話しかけられない・・・)
(顔も 見れない・・・)
(悲しみ・・・)
落ち込んで俯くアタシの前を 彼が通ろうとして
「・・・中、入らへんの?」
今度は向こうから声をかけてくれて バッと顔をあげた。
(やった!!!!!!!)
(声かけてくれた!!!!!!!!)
(やった!!!!!!!!!!)
(次はもうフイしない!!!!!!!)
「今立たされて・・・・・・・・」
( ゚д゚)ハッ!
待て!!!
廊下に立たされてる女子ってどうなの!!?!?
そんな女子いいと思う男子いる!!?!?!?
ちょっとアタシ何してるのほんと!!!!!!バカバカバカ・・・!!!!
「・・・そうかな、ってちょっと思うてたけど」
Σ(゚д゚lll)ガーン
お、思われてた・・・・
「ち、違うの!今日はたまたま!休み明けで体重くて!走れなくて!ちょっと遅刻しただけだし!!」
いつもじゃないんだからね!!!!
と必死に弁解するのも いいわけがましいというかなんというか
また言い方キツイし
可愛くないし
必死過ぎて・・・
(・・・何やってんだろアタシ)
(すっごいみじめ)
好きな人の前じゃ 全然可愛くできないの
(もうやだ・・・)
「・・・ん」
「え?」
落ち込んで俯いたアタシの目の前に 何かを差し出されて パッと顔をあげた。
「ほな」
彼はそれを渡すと 急いでいるのか、走って実験室へと戻って行った。
(え?)
(え???)
(えええ!!?!?!?)
アタシの手には 彼からもらった ホッカイロ。
(どうしよう・・・)
(嬉しい・・・!!!!)
心臓がバクバクして 顔がニヤけて
やっぱり めちゃくちゃ嬉しくて
(・・傘も借りっぱなしなのに)
(ホッカイロまで もらっちゃって)
どうしよう
嬉しすぎて 死にそう・・・!!
(あーもう!!!)
(もうもうもう!!!)
(好き・・・!!!)
(大好き・・・・!!!!)
寒かったはずなのに アタシの心も体もポカポカで
寒さなんて全然気にならなくて
アタシは一人、もらったホッカイロを握りしめて
しばらく廊下に佇んでいた。
(・・・やっぱり)
(忍足謙也は優しい)
(カッコイイのに優しいとか・・・)
(神かな・・・)
(ちゃんと お礼しないと)
(傘も・・・返さないと・・・)
彼に喜んでもらうにはどうしたらいいのか
一人悩むのだった。
冬休み中、部活には行っていたけど特に彼に会うことはなかったから
ついに今日 久々に彼に会うのだ。
部活中は教室も静かだったのに
久しぶりに学校が始まると、廊下もすごく賑やかだな と思ってドキドキしていた。
ガラッ
姫子「あ!さおりー!おはおうさん!」
さお「ヒメコ!おはよ!」
姫子「冬休み中何してたん?部活?」
さお「うん、ほとんど部活だったよ(どきどき)」
そう話していると 澤村くんが入って来た。
(そわそわ)(びっくりした)
さお「あ、澤村くん、遅かったね」
澤村「あぁ、男子更衣室の鍵閉めるように言われたからな」
さお「そうだったんだ」
亮「よ、おはよ」
亮も隣の席について。 お前結局冬休みの宿題あいつらに見せたのか? なんて聞いてきた。
この席になって気楽だし楽しいんだけど
なんとなく淋しい気がするのはなぜなんだろう。
いつも隣の席で笑っていてくれた彼と離れたからなのか
そんな彼を避けるように 冷たくしているからなのか
どっちにしても自業自得な気がして 何か後ろめたいものを感じる。
(・・・)
亮が来たってことは きっともうすぐ白石くんも部活終わってくるだろうなぁ。
あんなことをしてしまってから
彼を傷つけてから
彼に会うのはとっても久々で
だから 前向きにがんばろう って決めても
やっぱりどこか緊張していたのかもしれない。
だってもし
彼が怒って口きいてくれなかったらどうしようとか
冷たくされたらどうしようとか
そんなことだって ありえるわけだから。
(いやだなぁ)
(こわいなぁ)
がんばろうって決めたのに
心臓がバクバクしてくる。
やだなぁ。
会いたくないなぁ・・・・・・・・・
「前サン」
(どうしよう、無視されたら・・・)
(イヤ、そんなことはしないしか・・・)
(でもすごい怒ってるかもしれない・・・)
(あーあ・・・)
「前サン」
(やだなぁ・・・)
姫子「さおり!呼んでんで!?」
( ゚д゚)ハッ!
姫子のその声に ハッとして顔をあげた。
(え?あ、あれ!?)
白石「おはようさん」
そこには彼が 立っていたのだ。
(わ、わ、わ、わ、わーーーー!!!!!)
まさに考えていた人物が突然目の前に現れて 驚いて倒れそうになって
隣の席の亮に お前何やってんだよ って呆れられた。
(しかし・・・!!!)
(心の準備が・・・!!!)
白石「今ちょっとええ?武ちゃんがな、みんなの冬休みの宿題集めて職員室に持ってきてほしいねんて」
一緒にやってもろてもええかな?
と、彼はいつもと同じような笑顔で そう私に言った。
(あ・・・そっか)
(学級代表の仕事か!)
(あぁびっくりした!)
大丈夫だよ、と私は答えてクラス全員分の宿題を集めて 職員室に向かった。
隣には、 白石くん。
(あぁ、どうしよう・・・)
(白石くん、怒ってないかな・・・)
ドキドキ
「あ、せや、今年初めて会うやんな?あけましておめでとうさん!今年もよろしくな!」
「え、あ、うん・・・よろしくね」
「あー、正月食いすぎて体にぶったわー!前さんも美味しいものいっぱい食べたんとちゃう?」
「う、うん」
「けどバレー部すぐ大会あるから部活あったやろ?お疲れ様やったな!テニス部は三が日休みやったし結構のんびり過ごせたわ!」
「・・・なんか亮ちゃんとかも暇そうにしてたよ」
「せやろ!?テニス部結構休みあってな、休み多くても体なまっていかんわ~」
(・・・あれ?)
(あれれ???)
なんか・・・すごく・・・・
普通だ!!!!!!!!!!!!!
(めっちゃ普通だった!!)
(心配すること 何もなかった!!)
(よかった・・・)
(白石くんは・・・こういう人だった・・・)
本当に 優しい人だよね
(だからこそ私は)
(彼の幸せを願ったんだった)
そう思って フと見上げた彼が
「3学期もよろしくな!」
にっと笑って
ドキッとした。
(?????)
でもそんな気持ちには気づかずに
彼の笑顔に救われて 胸がポカポカ温かくなって
すごく安心して3学期を始められたと思った。