ここは我らが折衷学園。
桜が舞う今日、私たちの 入学式があるのです!
「もう、高校の入学式なんて来なくていいって言ったのに」
「いけませんよ主!どうしても来られない旦那様と奥様の代わりに我々が来たのですから!!」
「保護者って呼ぶにはまぁ僕らはちょっと若いけどね…あ、見て見て綺麗な桜だなぁ」
「いや~この学園見れば見るほど広いのなぁ~!こいつは驚きだぜ!」
「体育館はあちらですかな」
「長谷部光忠鶴丸落ち着け、いちにぃかっこいい」
まぁちゃんは冷静に見えていちにぃをhshsしている。
私には理解出来ないがいちにぃ大好きだなまぁちゃん。
「ほら主の髪にも桜が」
そう言って手を伸ばした光忠に、少しだけドキリとした。
両親が政府の特殊任務で忙しい我が家では昔から彼らが家族代わりに世話をしてきてくれていた。
おかげで我が家はとても賑やかで両親のいない淋しさは感じなかったのだけど
親以上に過保護な彼らに少々困ってもいた。
(だけど、昔から光忠は優しくてとっても世話焼きで、なんせかっこいいからたまにときめく)
「大体なんで入学式に4人もきてんの」
「これでもボクら4人に抑えた方だよ!?」
「え…」
「行きたい輩が多く、厳選なるくじ引きの結果我々が来ることになったんですよ」
「そーそー。お父さんお母さんおじいちゃんおばあちゃん役の4人を決めたぜ!!」
「いや、おじいちゃんおばあちゃん役いらないから。せめて2人だよね、何で4人もいるの」
「いえいえ、旦那様と奥方様の代わり、しかと我々が引き受けねばなりませんからな」
「いちにぃマジかっこいいhshs」
「いちにぃは他の入学式とかも行くんでしょ?」
「えぇ、日にちがズレていて助かりました。五虎退、前田、秋田は明日が小学校入学式です」
「私も行きたかった…ゴトラタン…」
「鯰尾とか受験生だなー、受験めんどいよなー、あいつ大丈夫かなー」
「なぁに、君が大丈夫だったんだから大丈夫だろぅニマニマ」
「鶴丸国永…主様に失礼なことを言うな」
「鶴丸長谷部うるさい、いちにぃ素敵hshs」
「きみ、いい加減にハスハスやめなよ、いちにぃ困ってるよ」
入学式からこんなに騒がしくていいのだろうか。多分うちは傍から見ても目立つだろうな、と思いながら玄関に向かっていた。
ふと、人だかりが出来ているのを見つけた。
なんだろう、と身を乗り出すとどうやらクラス分けの紙が貼っているようだった。
「クラス分けだね、何組かなぁ」
背が低いので前にいる人が邪魔で見えずにピョコピョコしていると
「さおりちゃんが7組でまなみちゃんが2組だね」
と、光忠が言った。
普段主とか呼ぶくせにたまに名前で呼ぶのほんとときめくからやめてほしい。
「よー、お前ら来てたのかよー」
そうピョコーンと人ごみからジャンプしてこっちを振り向いたのはガックンだった。
「あ、ガックン!」
「(´^ω^`)ブフォwwwジャンプしないと見えないチビがくと乙ww(笑)ww」
「まなみ殺す」
「やってみろ、貴様の相手は俺だクソガキ」
「長谷部うぜーw」
「マジマジどマジでうぜーな長谷部のおっさん」
「(´^ω^`)ブフォッスwwwおっさんやべー。゚(゚ノ∀`゚)゚。アヒャヒャ」
「よぅし、口の聞き方叩き込んでやるチビスケ」
「やめなよガックン、長谷部足早いからいつも捕まるじゃん」
「おー、さおり何組だった?」
ガックンと同じく、幼馴染みの亮が人ごみに押されるように出てきた
「私7組みたい。亮は?」
「お!俺も一緒!」
「ほんと!?よかったァ、心強いよ~」
「まなみは?」
「わしは2組、いちにぃかっこいいhshs」
「げ、マジか!ジロと一緒じゃん!」
「え!ジロちゃんと!?それやばいね、大丈夫かな…大丈夫じゃないよね…」
ジロちゃんと同じクラス…
それは有無を言わさずジロちゃんのお世話係に任命されるのである。
(私もよく面倒見たな)(大体ガックンか亮が見てるけど)
(てかまぁちゃんとジロちゃん同じクラスになるの初めてでは…)
(ある意味まぁちゃんと同じクラスになった人もまぁちゃんの世話するからな…大丈夫かな…)
そう思ったのもつかの間。
「大丈夫だろ?さっき見た感じじゃもーひとり2組いるから」
「えっ!誰?」
「多分そろそろ来んじゃね?」
そう言うガックンにつられ、校門の方を見た
「ほら」
ガシガシと蹴り合いながら
「てめーのせいで入学式から遅刻するとこだったじゃねーか」
「コウが色気づいて髪気合い入れてるからだろ?」
「ばぁか、誰が色気づいてんだっつーの…って、よぉ、お前ら」
間に合ってよかったぜ
と、やってきたのはとても高1には見えないルカとコーイチくん
「…え、どっちが2組?」
聞くとガックンは ん と、コーイチくんを指さした
「コーイチくんか!!なら安心!」
「何がコウなら安心なの?」
ニコニコ笑いながらルカが私の頬を引っ張る
「いだだだ」
するとザワっと殺気立つ長谷部と光忠…
(いちにぃも笑ってるけどピキってしてるこわい)(まぁちゃんはまだハスハスしてる)
「ルカくん、久しぶりだね」
「あ、光忠さんチーっす」
「あんまさおりちゃんのことからかわないでね(ニコッ)」
「わかってますってー、大事にしますからー(ニコニコ)」
長谷部にルカからベリっと引き剥がされて後ろに隠された。ほんと過保護で困る。
「クラス分けかぁー、俺は何組だぁ?」
「コーイチ2組だぜ、ジローと一緒だからよろしくな」
「げ!マジかよ」
「ちなみにまなみも一緒な」
「…マジかよ学校来たくねぇ」
「初日から不登校乙www」
「誰のせいだ、誰の!」
そうしてコーイチくんはベンチで寝てるジロちゃんを抱えてため息をつきながら
行くぞ
と言った。
まぁちゃんはコーイチと同じクラスひゃっほーとはしゃぎながらもいちにぃから離れないし、ルカとニコニコピリピリしている光忠に、クソガキがとか言いながらガックンにおちょくられてる長谷部。鶴丸は勝手に校内探索しようとして、捕まるぞおっさんと亮に止められている。
賑やかだ。
非常に賑やかだ。
(……うん)
(悪くない)
先程まで新しい高校生活が実は不安だった私の気持ちは
今はもうすっかり晴れて自然と笑顔がこぼれていた。