「ソハヤノツルキ ウツスナリ……。坂上宝剣の写しだ。よろしく頼むぜ」
「……天下五剣が一振り。大典太光世だ。あんた、俺を封印しなくていいのか?」
「相変わらず、きみの鍛刀運はちいとだな・・・」
鶴丸にそう言われた。
期間限定のソハヤノツルキと大典太光世チャレンジ。
もうアタシの鍛刀運を知ってか、誰も賭けをすることはなかったよ!
無事に1発で2振来てくれました!やったね!
ソハヤ「アンタがおれたちの主かい?」
ま「うむ、アタシが主だ」
ソハヤ「そっか!よろしくな主!」
ま「え・・・なんか眩しい・・・何この人・・・ちょっと爽やかでいい」
ソハヤ「はは、兄弟共々よろしくな!」
ま「兄弟なんだ!似てないね!陰と陽って感じ!」
鶴「失礼な奴だな君は・・・」
大典太「あまり俺に近づかないでくれ・・・俺は霊力が強すぎて・・・鳥も殺してしまう・・・」
ま「え?アタシ鳥じゃないから大丈夫だよ」
そう言って、アタシは、おおでん・・・、おでんた?
おでん?おでんなんとかみつよ。
みつよ?の手を取った。(名前覚えられん)
「ね?」と言ったアタシを見たみつよの顔は真っ青で、
ドンッ
「わっ」
後藤「主大丈夫か!?」
ソハヤ「兄弟!?」
みつよはアタシを突き飛ばした後、走っていなくなってしまった。
押されて転んだ私を、「わりぃ」と軽々と抱っこして起こしてくれたソハヤ・・・SUKI。
ソハヤ「悪かったな、兄弟も悪気はないと思うんだが・・・」
前田「主君、大典太さんの非礼お詫びいたします」
ま「ん?なんで前田くんが謝るの?」
前田「僕は、以前大典太さんと同じ蔵に保管されていたことがあり、大典太さんとは長い期間一緒にいた顔見知りなのです」
ま「そうなのか」
前田「大典太さんは、とても心の優しい方なのですが、ご自身の霊力が非常に強いため、近づいて来た鳥を殺してしまったという逸話があり、それを非常に気にしていらっしゃるのです」
ま「へぇ、霊力で鳥って死ぬの?」
ソハヤ「あんまりにも霊力が強いと気絶させることくらいはあるかもな。だが、あくまでも逸話だぜ。それを兄弟は気にしている」
前田「きっと主君を殺してしまうのではと恐ろしくなってしまったのでしょう」
ま「そうなんだ、別に全然大丈夫だけどな」
後藤「大将霊力強いからなー俺らの霊力じゃなんともないぜ」
ま「だよね、まぁうちのまんばってなんか吹っ切れちゃってネガティブじゃないから、みつよにネガティブ男士の称号をあげよう」
鶴丸「随分と不名誉な称号だな」
秋田「しゅくーん!」
ま「お、準備できた!?秋田くん!」
秋田「はい!これが主君の羽です!」
鶴丸「なんだなんだ?何が始まるんだ?」
ま「本丸セミ選手権」
鶴丸「参加する」
ま「うむ、良い選択だ」
秋田「では、会場に行きましょうか?」
ソハヤ「・・・なんだぁ?」
前田「いつもの主君のお遊びですので、ソハヤノツルキさん良ければ参加してみてください」
前田くんからそう言われたソハヤがアタシの後ろをついてくる。
一先ず、この本丸の洗礼だと思って、ソハヤにもセミ選手権に出場させようと思っていた。
大典太光世は天下五剣の一振だった。
霊力が強いと言われ、怪異も病もこの刀を恐れで去っていく。
そのため、人々が病に倒れた時に蔵から出されるだけで、それ以外はずっと蔵の中で眠っていたのだった。
そんな自分が、人間の闘いを終わらせるために協力することに了承した。
理由はいろいろあるけれど、ずっと蔵にしまわれていたため、外に出たいと思ってしまったことも理由の1つだった。
(しかし、また・・・)
(蔵に戻ってきてしまった・・・)
主が自分の手を握って微笑んだ時、こんなに小さく柔らかい手の持ち主を殺してしまうのではと咄嗟に思い、思わず突き飛ばしてしまった。
自分でも驚いた。
驚いたが、この自分よりも遙かに小さな主の命を奪うわけにはいかなかったのだ。
主を突き飛ばして、思わず走って逃げてしまった自分が通りかかったのは、蔵の前だった。
しかし、ここの本丸の蔵は何やら改築されており、蔵書がたくさんあり、非常に明るい。
見たこともないような箱のようなものも並んでいるし、なんだかひんやり涼しい雰囲気だ。
たまたま誰もいなかったため、とりあえず、蔵の一番奥に座り込んでいた。
しかし、この明るさは、落ち着かない。
蔵なのにこんなに落ち着かないとはどういうことだろうかと思ったが、自分がいれるのはやはり蔵だけなのだと思っていた。
「ん・・・」
その時、蔵の階段の上から誰かの声が聞こえて、大典太光世は思わず刀に手をやった。
一体誰なのかとその様子を見ていると、
「ふあぁ~~~~良く寝た・・・」
そう言いながら、長身の男が周りをキョロキョロ見回していた。
同じ刀剣男士なのだろうと思うが、馴染みのない刀のようで、じっとその男を観察してると、
「んあ?お前誰だ?」
そう男が自分を見つけて話しかけてきた。
「・・・あ、お、俺は、」
「見ない顔だな?新人か?」
「・・・先ほど顕現されたばかりだ・・・大典太光世という・・・」
「おでん?」
「・・・大典太だ」
「あ、ああ~なんか聞いたことあるな!なんだっけな、えーっとあの、確か三日月と同じ・・・」
「天下五剣だ」
「あ、そうそう!それだそれ!俺は天下三名槍の御手杵だ。よろしくな」
男は、話しながらも階段を下りて自分に近づいてきて、屈託のない笑顔でそう言った。
「天下三名槍・・・槍か」
「おう、刺すことなら誰にも負けねーぜ」
「ああ・・・」
「あ、でもスイカの種飛ばし大会でも優勝したから、スイカの種飛ばしでも負けねーぜ!」
「あ、ああ・・・そうか・・・」
「んで?お前なんでこんなとこにいんだ?新人は本丸案内されるはずだろ?」
「・・・それが・・・」
「ん?」
「主を思わず突き飛ばして、逃げてきた・・・」
(!?)
そう大典太光世が言った瞬間、とてつもない殺気が放たれた。
一瞬驚いて後ずさりする。
殺気は、先ほどまでヘラヘラと害のなさそうな笑顔を浮かべていたこの男からだった。
「突き飛ばした?お前、あいつのこと怪我させたのか?」
真顔で殺気を飛ばしている御手杵に、冷汗が止まらない。
それもそのはず。
いくら大典太光世が天下五剣で神格が高くとも、先ほど顕現した練度1の身では、練度99の殺気は体を裂くような痛みを伴うものだったのだ。
「すまない・・・俺は、霊力が強くて近づいた鳥も殺してしまった刀だ・・・主の命もとってしまうのではないかと、気が気ではなくて・・・」
そう、言うのが精いっぱいだった。
言い訳がましいが、本当のことを伝えた。
すると、御手杵の殺気が急に止んだ。
「そっか、まだ顕現したてで、良くわかってねーんだな。俺も最初は自分の力わかんなくてさ」
そうして、またヘラっとした表情を見せる御手杵に、やっと大典太光世の冷や汗は止まったのだった。
(なんだこいつは・・・)(すごい殺気だった・・・)
「あーでも、大丈夫だぜ?」
「・・・何がだ?」
「主、簡単に死なねーから」
「なぜ、そう言い切れる。俺のせいで命を落としたものも多かった・・・俺は蔵にしまわれているくらいがちょうどいいんだ・・・」
「でも、うちの本丸の蔵、としょかんだしな!」
「としょかん」
「おう、本がたくさんあるところをそう呼ぶらしいぜ!」
「・・・」
「あのな、俺がいうのもあれだけど、あいつは鳥じゃないから簡単に死なねーし、俺が死なせねーから」
(・・・)
大典太光世は目を見開いて、目の前の槍を見た。
その自信はどこから来るのかと思った。
だって、自分に関わるものは命を落とすものも多かった。
なのに、なぜ、言い切れるのだ。大丈夫だと。
大典太光世がその疑問を口にしようとしたその時、
バンッ!!!!!!
「いたぁ!!!!!御手杵!!!!!」
ちょうどその噂の主が現われた。
ま「ちょっと!!御手杵!!セミ選手権御手杵いないと始まらないよ!!!!」
御手杵「うぇーまたやるのかよあれ」
ま「御手杵きてよ!!」
御手杵「やだよ、俺大体アンタを支えてるだけじゃん・・・」
ま「アタシ腕の筋肉ないから負けちゃうでしょ!!!」
御手杵「じゃあやるなよ」
ま「やるよ!!!セミ選手権なんだから!!!」
御手杵「ここ涼しいから出たくねーし」
薬研「そりゃ図書館はクーラー効いてるから涼しいだろうな」
ま「なんでさ!!早く来てよ!!!あと結婚して!!!!」
御手杵「またそれかよぉ~」
薬研「ついでのようにサラッと求婚するのを忘れない大将好きだぜ」
厚「お前もサラッと好きって言ってるじゃねーか・・・」
後藤「御手杵さん頼むよ、御手杵さんいないと大将のやる気が・・・」
ま「御手杵とここにいる!!」
信濃「もー早く御手杵さん来ないと始まらないから早く!」
御手杵「ったく、仕方ないなぁ」
ま「御手杵好き!!」
ピョンと御手杵に抱き着いた審神者を見る。
なんだこの簡単に自分の刀剣に求婚する主は・・・
そして、なんだかうるさい。
たしかにこれは、
(・・・簡単には死なないかもしれない)
初対面の小さく儚いイメージが崩れていった瞬間だった。
ま「あれ?みつよここにいたの?ソハヤもセミ選手権出るから一緒にやろうよ」
御手杵「ソハヤって誰だよ」
ま「光世と兄弟なんだってー」
御手杵「新人か」
大典太「俺はいい・・・俺は蔵にいたほうが良いからな・・・」
御手杵「さっきから、蔵がいいって言うんだよな」
ま「そうなの?」
審神者は、そういうと、ジッと大典太光世を見つめた。
そして、
「よし!そんなに蔵が好きなら、この図書館の司書さんに任命するわ!!!」
ちがう、そうじゃない
とは言えない大典太光世だった。
好きとか嫌いとかの問題ではなかったのだが、図書館の司書さんとなってしまった大典太光世は、
毎日蔵にいて、この図書館のことを何でも分かる存在へとなるのだが、それはまた未来のお話・・・。
「な、死にそうもないだろ?」
図書館で昼寝をしにきた御手杵にそう言われた大典太光世は、フッと少し微笑んで頷いたのだった。
「何しにきたの?」
「え、」
「何しに来たのって聞いてるの!!!!!」
さおちゃん(NOTカオナシ)がキレた日。
さおちゃんはこの本丸最強と認められました。
それは、ソハヤと光世が来てからしばらく経ったある日。
(今日は何をしようかな)
そう考えながら、池の鯉をジッとみるアタシ。
まぁつまり暇だったからブラブラしていたのだ。
みんな出陣やら遠征やら家事で忙しい時間帯なんだ午前中は・・・。
(鯉・・・顔がキモイなwww)
(パクパクしてるからないつもwww)
(コイキングそのものだwww)
(あ、コイキング大会やろうかな・・・)
(誰が一番コイキングの真似が上手いか・・・)
「主」
ビクッ
足音も全くしなくて、いきなり後ろから声をかけられて驚いた。
「・・・なんだ、三日月か。足音消すのやめろ」
「はは、すまんな。驚かせるつもりはなかったのだ」
そう言うと、三日月はアタシの隣に立った。
三日月は最初の頃に比べたらかなり丸くなった。あのアタシとさおちゃんの式神を笑顔で切り刻んでいたあの頃より。
あの時の三日月は、みんなのために審神者を切って、そして他の引き継ぎ審神者を追い返していたと聞いた。
だから、実はそんなに病んでなかったみたいだね。全部みんなのためにやってたこと。
確かに、あの劣悪な環境にいて、三日月は大事にされてたみたいだし。
ただ、みんながひどいことをされていたのを見て、心を痛めていた。
天下五剣で神格が高く、何より、自分を手に入れるために仲間たちがたくさん傷ついていたと聞かされたら、変な責任感は出ちゃうかもしれないなと思っていた。
「たまには、じじいと話でもせぬか?主とはゆっくりと2人で話したことはないからな」
「そうかもね」
「そなたが来て、この本丸は初めて笑顔を見せた。主には感謝している」
「別に感謝されるほどでもないよ、アタシはアタシのやりたいことをやってるだけ」
「はは、謙遜するな。主は酔狂なことをするが、我々にとっては良い主だ」
「酔狂って意味わかってる?褒め言葉じゃないからな」
「はは」
「・・・最初はびっくりしたよ、布団で寝ることもない、ご飯も食べたことない、お風呂も入ったことない、そんなの普通じゃないもん。アタシはただ普通のことを教えただけだよ」
「それが我々の救いとなったのだ、普通ではないということも気づかなかった」
「DV男は最低だね~マジでキモイわ」
「まぁ今はそなたがいるから良いのだ。過去は過去と割り切れるようになってきた。昔のことでうなされるやつはもういない」
「そう?ならいいけど」
「うむ。先日のたからさがしはなかなか楽しかった。またやりたい」
「三日月、1個も見つけられなかったじゃん!!!」
「はは、短刀たちの偵察力と機動力に勝てる者などおらぬよ」
「それでも楽しかったの?」
「ああ、楽しかった」
「そっか。じゃあ今度床掃除選手権に参加しなよ。三日月一回も出てないの知ってんだから」
「はは、腰が痛くてなぁ」
「じゃあ、明日の出陣なしな」
「あなや」
じじいぶってるけど、見た目は若いのだ。
絶対腰痛いはずはない。
いつものらりくらりと嫌なことを避けているところが、さおちゃんが苦手だというところなんだろうな。
さおちゃんは三日月に近づかないようにしている。
フッと笑った三日月に突然呼ばれた。
「・・・なぁ主」
「ん?」
「俺に神隠しされてくれんか?」
(は?)
その言葉を吐き出した三日月を見た。
にっこりと微笑むその瞳には、昼間だというのにキレイな三日月が浮かんでいた。
なんだか背筋がゾッとするような笑みをたたえる三日月に近づく。
ゴクリ
金色の三日月から目が離せない。
その瞳に吸い込まれるように、
足が動き、
顔を近づけ、
アタシは、
ガンッ!!!!!
「アタシもう予約済みだから!!!」
思いきり頭突きをして、その場を去った。
「あれ?どうしたのきみ」
走って帰ってきたアタシを待っていたのは、さおちゃんだった。
「遊びに行ったんじゃなかったの?」
「さおちゃん何してるの」
「パスタ作ろうとしてた。昼ごはん。食べる?」
「食べる」
まぁあんなことを言われたアタシだけど、正直全く気にしてなかったwww
気にしてなかったから普通にさおちゃんの作ったパスタを食べて、一息ついてアイスを食べていたところで、
「今さ、」
「うん」
「三日月と話してたの」
「うん」
「したらさ、神隠しさせてほしいって言われたさ」
ガシャン
モテる女はつらいよと冗談めいて続けようとしていた言葉は続けることが出来なかった。
「・・・は?神隠し?」
「え、うん」
「神隠ししていいかって言われたの?」
「うん」
「三日月宗近に?」
「うん(あ、やべぇフルネーム言うってことはキレてるこれ)」
「・・・ちょっと行ってくる」
「さおちゃん!?」
「姉審神者様!?」
その場で稲荷寿司を食べてたこんのすけもビックリだ。
外に出る時はカオナシ装備のさおちゃんが、カオナシを着ないで出て行った。
これは非常事態だぞ!!!!!
急いでこんのすけとさおちゃんの後を追うと、広間でお昼ごはんを食べていた三日月の胸倉を掴んで、いるさおちゃんを発見した。
お昼だから全員いるけど、そんなの全く気になってないようだ。
やべぇwwwさおちゃんの地雷踏んだっぽいぞwwwww
口にケチャップつけたまま胸倉掴まれてる三日月がポカーンとしている。
今日のお昼はオムライスだったらしいwww
「何しにきたの?」
「え、」
「何しに来たのって聞いてるの!!!!!」
三日月は相変わらずポカーンとしている。
そりゃそうだwwwいきなりさおちゃんブチギレでなんのこっちゃだわwww
「・・・妹に”神隠し”をすると言ったそうですね?
・・・あなた達は、何のためにここに来たのですか?色恋に溺れるために顕現したのですか?」
やべぇ
さおちゃんの目がマジだ。
めっちゃキレてる。
これエロ本とか見つけたらなるやつ。
さおちゃんに下ネタとかうっかり言っちゃった男子を軽蔑する時のやつwww
「刀剣としての本分を忘れ、色恋に走り、そしてその相手を隠し神域に籠るというのは、私からすると愚の骨頂です。
人の身があるということは、心もあるということなのは理解しています。人に好意を寄せることを非難するつもりもありません。心のままにいかずに苦しむこともあるでしょう。
でも、審神者を隠すということは、この戦いを”放棄”するということです。
”刀剣男士”としての”誇り”を捨ててまで、色恋を優先して本当にいいのですか?あなた達は”刀剣男士”でしょ?それなら、なんのためにあなた達はここにいるの?出会いを求めるためではないでしょう!」
マジなトーンでキレ始めて、さすがのおらもビックリしたぞwww
【速報】さおちゃん真面目モードでキレる【もはやホラー】
「・・・絶対に、これだけは言うまいと思っていましたが・・・妹は「作る」という点では優秀です。鍛刀しかり刀装しかり。
そして妹とは反対に私は「消す」ということが得意なんです。傷を”消して”て手入れをすることも・・・・・・・それから・・・”刀解”も。」
その言葉で、その場にいたみんなが、何かを悟ったようだ。
そうなのだ。
アタシたちは、全く反対の性質を持っている。
アタシは「作る」ことが得意。だから結界とか刀装作りとか鍛刀が得意。
反対にさおちゃんは「消す」ことが得意。手入れで傷を消したり、こないだの襲撃事件の時の敵さんのゲートを閉じたり・・・ね。
そして、一度もやったことがないけど、多分刀解なんて、めちゃくちゃ得意なんだと思う。
「通常の審神者であれば、あなた達の本体に触らなければ刀解できないと思いますが、私は、念じるだけで刀解ができます。どんなに離れていても、念じるだけで・・・」
「・・・それは脅しか?」
「そう、捕えてもらっても構いません。私が刀解をすることは、絶対にこの本丸ではないと思っていました。
・・・あなた達は前任者に兄弟や仲間を折られ、傷つけられ、皆悲しい思いをしているはずです。
・・・それと同じことを私にするなら・・・私の大事な妹を、消したり、隠したりするというなら、私は、あなた達を絶対に許しません」
「自分たちがされて悲しかったりつらかったことを、平気で他の者にすることが出来るというのであれば、私はその方を”神”とも”人”とも認めません。ただの心無い”道具”だと思います。・・・ですから、私はあなた達がただの”道具”になる前に、”刀剣男士”としての誇りを失くしてしまう前に”刀解”します」
しーーーーーーん
その場は静まり返って、さおちゃんの言葉を聞いていた。
突然の刀解宣言にさおちゃん何言ってんだと思うかもしれないけど、さおちゃんはアタシのために激おこなんだぞ!!!
そんな雰囲気とは裏腹に、さおちゃんに愛されてるなぁとアタシだけ感動したwww
「見極めなさい・・・こんな人間の小娘を殺すも隠すもあなたたちには容易いでしょう。
でも、それを本当に”今”やるべきなのか、考えなさい。あなた達には考える”心”があるのだから。あなたたちの成すべきことはなんなのか」
神隠しは今やるべきことですか
その言葉を聞いてハッとする。
あれ・・・?
アタシ・・・
自分から神隠ししてって・・・言って・・・
「どうしよう・・・アタシ・・・御手杵と約束しちゃった・・・」
「え・・・?」
「神隠ししてって言ったら、いいよ、って言ってくれたから・・・」
「わぁ!!!ちょっと!!!タンマタンマ!!!それ今言わなくてもいーだろ!!!」
「・・・私の妹を・・・隠すの?」
ゆらりと御手杵の方を向いたさおちゃんを見て、あの御手杵が顔を真っ青にした。
コエェよwwwホラーだよwwwサスペンスだよwww
さおちゃん完全に瞳孔開いてるよwww怖すぎるよwww
こんなにも私を愛してくれてるんだね・・・キュンとするよ・・・おねえちゃん・・・
ドサッ
三日月の胸倉を掴んでいた手が離されて、三日月が畳に崩れ落ちた。
そして、ユラリと御手杵の前に来たさおちゃんは、今度は御手杵の胸倉を掴んだ。
「違う!!し、死んでから、魂ならって言ったんだよ!!」
「え?」
「そうそう、今神隠しされたらさおちゃんと会えなくなるからさー、死んだあとの魂を神隠ししてって約束したんだわ」
だから、落ち着けとアタシが言うと、さおちゃんは御手杵を掴んでいた手を離した。
ちなみに、この時、周りの刀剣男士たちは顔面蒼白で固まっている。
「そうなの?」
「うん」
「じゃあいいね!」
「うん、いいしょ」
「あーでも来世もきみとまた姉妹に生まれたかったなぁ・・・」
「まぁでも、来世もこの記憶引き継いでくれればいいけど、そうじゃないしね」
「だねぇ、そもそも地球がどうなってるかもわかんないしね」
「確かにwwwこの戦争が終わってるとも限らないしなwww」
「そう考えたら、死んだあとの神隠しは生き残る手段なのかもしれないね!だからOKだわ!」
「OKでたwwwwなんなら一緒に神隠しされようよ!!2人でなら楽しいよ!!」
「そうだね!!そうしよう!!」
「きみめっちゃキレてて怖かったわwww」
「いや、そもそも、生きてるうちにいきなり神隠しっていうのが気に入らないのさ」
「激おこだな」
「当たり前だよ。神隠しなんて最終手段じゃん。最終手段いきなり使うとか、どんだけ自分に自信ないんだって話しだよ」
「www」
「せっかく人の体あるんだから、まずは人のやり方で口説いてみろっつーの!」
「口説くwww」
「同意の上での神隠しなら何も言わないわ!むしろお幸せに!って感じだよ!でも一方的な神隠しは絶対だめ。意味わからん。何しに来た」
「まぁなぁ、女王になるのやめるのも同意の上だしな」
「そうだわ、同意の上で女王候補やめるのは全然いいんだよねー。あ、少女漫画もっと増やそうよ!ダメだわ、好き=神隠しじゃ!!人の世界には人のやり方があるんだからさー」
「少女漫画を読ませる審神者」
「ムカつくしょだって!少し勉強してほしいわ!私神隠しされたら常にチベスナ顔でいる」
「ちょwwwチベスナ顔の嫁wwwシュールすぎるわwww」
「ホント、意味わかんないし、がっかりだよ。そんな浮ついた気持ちで戦ってる子うちにはいないと思ってたのになぁ・・・」
「うん、きみ、みんなポカーンとして聞いてるけど、忘れてない?」
Σ(゚艸゚;)ハッ!!
「わ、わわわ、す、すみません!!!!失礼しました!!!!」
さおちゃんはポカーンとこっちを見ていた一同を見回した後、顔を真っ赤にして、走って逃げていってしまった。
そして、それを見ていた刀剣たちがあちこちで呟く。
「かっこいい・・・」
「僕・・・今ますたぁに惚れそうになった・・・」
「俺もだ・・・」
「あんなにハッキリ言われると、期待してもらってたんだなって思うよな・・・」
「いや、おれ、検非違使より怖かったぜ・・・」
「>>検非違使より怖かった<<wwwwwwwwwwwww」
元々さおちゃんのことが大好きな短刀たちは、なんだか目をキラキラさせてさおちゃんの話をしていた。。
そしてアタシは、この機会を逃してはいけないのだ。
「とりあえず光忠、」
アタシが光忠の名前を呼ぶと、一同も光忠のほうを見た
「・・・あの人神隠しするの諦めな」
「アッハイ」
全員察した。
「あ、アイス食べてる途中だった!」と妹も離れへ駆けて行ったあと、その場にいた皆が沈痛な面持ちだった。
短刀達だけかっこいいとキャーキャー言っているが、それ以外の刀たちは、審神者の考えを改めて聞き、納得するものも多くいた。
”何をしに来たか”
そう言われると、確かに、自分は戦いに来たのだと身の引き締まる思いだ。
楽しい日常で忘れていたが、自分たちの本分は刀である。
それを思い出させてくれたような気がした。
その様子を見ていたこんのすけが口を開く。
「三日月様は、本気であの方を神隠ししようとされたのでしょうか?」
「それは・・・」
三日月は言葉を詰まらせた。
元々そこまでの気はなかったのだということが、なんとなく感じられた。
ただ、三日月はこのままこの本丸にこの審神者がいてくれればいいと思っただけなのだ。
今まで審神者からみんなを守ってきた身として、再びあんなことにならないように。
「審神者様は、皆さまのことを本気で大切に思っています。
それと同時に、この戦いに真摯に向き合ってもいるのです。
刀の付喪神である皆さまを戦に送り込む。その本分を彼女たちは正しく理解しています。
だからこそ、神隠しを行い、審神者を攫い、この戦いを放棄するような真似は絶対にしてほしくないと思ったのでしょう」
戦いを放棄・・・
確かに言われてみるとそうだった。
審神者がこの戦の指揮をとっている以上、その審神者を隠してしまうことは、この戦いを放棄するということと同じことだった。
「それに、この本丸は皆さまにとっても、非常に良い本丸なのです。それを神隠しをして逃してしまっても良いのでしょうか?」
確かに前に比べたら天国と地獄。
全く違う生活を送れているが、この本丸の”価値”についてはピンとこないものも多かった。
「皆さまをただの”道具”としてしか見ない審神者様のところでは、ほぼ間違いなくブラック案件に発展いたします。それは前任者がそうでしたので大体理由はわかるでしょう。”代わりのきく物”として無理な出陣・傷ついたまま放置・虐待・刀解を繰り返し、心身ともに刀剣男士たちが弱っていくケース。審神者を殺して闇落ちするという刀剣男士の方もしばしば見られますね。
また、逆に皆さまを”人間”としてしか見ていない審神者様ですと、断然神隠しの確率が高くなります。審神者様の好意に刀剣男士たちが懐柔され、そしてそれは徐々に狂気じみた愛情に変わっていく…。優しい審神者様は強く言えずにいつの間にか隠されるという案件が後を絶ちません。
そして、皆さまを”神”としか見ていない審神者様の場合は、皆さまとの距離ができ、”神”として崇めているうちに”人間より偉い自分たち”という認識にそれは代わり、立場が逆転いたします。審神者様の言う事を聞かない傲慢な神になり、完全に主従が交代するというケースです。」
ゴクリ
誰かの喉の音が大きく聞こえた。
確かに言われてみるとそうなのかもしれない。
審神者の手腕は、戦の方法でも、本丸の運営方法でもなく、
刀剣男士との距離の取り方、接し方にあるのかもしれないと誰もが思った。
元はブラック本丸の刀剣男士だった一同はあの地獄を思い出す。
言われてみると、”道具”としてしか扱われなかった自分たちは、闇落ち一歩手前のところを今の審神者に救われたのだ。
「いずれも実際に多いケースなのですよ。問題が発覚する本丸は全て、どのように皆さまと関わっていくか分からない審神者様の本丸ばかりなのです。
では、皆さまと正しく関わって行くためにはどうすればいいか。
答えは簡単です。”刀剣男士”として接すればいいということ。”刀”としてのあなた達を認め、しかし、”人”の身と心があることを理解し、”神”としての存在も忘れない・・・。それが”刀剣男士”として扱うということです。
あなた達の刀としての本能である戦いたい気持ちを尊重し、けれど人の心があり苦しんだり悩んだりするということにも心を置き、そして何百年も存在し続ける付喪神であるということを認識していることこそが、あなた達との正しい付き合い方です。」
今の主はどうだろうか。
今の自分たちは、”刀剣男士”であろうという意識が強くみられる。
それは、彼女たちが自分たちを”刀剣男士”として接してくれているからだと、改めて気づいた。
「見た目が子供の短刀たちを”弱い”と言い、前任者は練度を上げる必要はないと言いました。しかし、姉審神者様は短刀を”強い”と言いました。さすが懐刀だと。短刀は自分たちの誇りであると。
あれだけ人々から綺麗だと大切にされてきた三日月宗近様や宗三左文字様を他の皆さまと区別することなく、戦に出すこともまた然りです。刀として、”綺麗”という言葉よりも、”精強”であるという言葉が似合うようにと、贔屓することなく、全て等しく扱っておられますよね。その証拠に、今やこの本丸の皆さまは全員練度が上限となりました!全ての刀剣を揃え、尚且つ、練度を上げていくということは、本当に難しいことですが、それを今は姉審神者様の采配でこなしております。それはあなた達を”刀剣”として扱っているため」
気付けば、涙が頬を伝っている短刀たちもいた。
言われてみるとそうなのだ。
役立たず、代わりはいくらでもいる。
そんな言葉を浴びせ続けられた自分たちのことを認めてくれて、練度を優先的に上げようとしてくれた姉審神者の采配を思い出した。
懐刀として、これ以上の喜びはないのだ。
「そして妹審神者様は、皆さまの心の内を助けられております。人の身というものは、ただの刀であった時よりも難しいものでしょう。時には悩み、時には喜び、痛みや温かさを感じられるもの。不安定になられる方も多くおりますが、その心を支えてくださっているのが、妹審神者様なのです。この本丸に笑顔が絶えないのはなぜでしょうか?戦場に行っても、必ずや皆さまが帰りたいと思える場所を作った、妹審神者様のおかげなのです。せっかく人の身を持ったからには、それを楽しめるようにと人の身としての在り方を、あの方は表していらっしゃいます。それはまた、皆さまを”人”として・・・いえ、”家族”として扱っているため」
あの地獄の中では、みんな笑顔を忘れていた。
それが、今はこうしてみんな笑顔でいられるのだ。
毎日毎日、騒がしいと思えるくらいの元気があるあの主のおかげで、いつも本丸から笑顔が絶えることはなかった。
「さあ、皆さま。わたくしはここまでバランスのとれている本丸を知りません。刀剣として生き、人として生き、そして神として生き、その全てをひっくるめた”刀剣男士”としての存在を認めている本丸は、この本丸以上にありません!」
みんな一同に、息を飲む。
そして、こんのすけの言葉に耳を傾ける。
「・・・そんな、素晴らしい環境を放棄し、神隠しをなさるというならどうぞご自由に。付喪神である皆さまの決定に政府は逆らうことはできません。ただ、見す見すこの生活を手放すのは勿体ないと、いち管狐であるわたくしは思うのです。
神隠しをされた後の、この本丸が、再び心無き審神者によって虐げられ仲間が危険に冒される可能性があっても良いと言うのなら、神隠しも御止め致しません。
・・・長々と失礼いたしました。それでは、わたくしも、離れに戻りますね。失礼いたします」
「ちょwwwお前wwwこんのすけwwwまた言いすぎだからwwwおまっwww煽るの上手いなほんとwww」
「もーこんのすけってばー煽るねぇ」
「申し訳ございません・・・ついつい熱くなってしまい・・・」
「うけるなホントwww」
「ペッパーくん動画でいつも煽ってるこんのすけ見てハラハラするよ私は・・・」
「っつーか、普段あいつらにイケメンだとショタだのでビジュアルでキャーキャー言って隠れてるきみが、まさかこんなにキレだすとは思わなかったwww」
「いや、それとこれとは話が別だよ。彼らが何をしに顕現されたんだってことだよ。戦争でしょ?命かかってんだよ?なのにのん気に神隠しとかしてる場合じゃないしょ!!!!!そういうのは全部終わってからにしろや!!!!」
「めっちゃキレているwwwいいじゃん別にwww人間だものwww」
「人間じゃないから、あの人たち刀剣男士だから」
「でも、仕方ないよ・・・心があるっていうのは厄介だよ・・・おらもさ・・・御手杵に会うたびに結婚してって言っちゃって・・・」
「いや、もうそれ半分ネタ化してるじゃん」
「本気だよwww」
「私は、この戦いに真剣に挑んでるよ。全員が傷つかないように考えて、いつも無事に帰ってくるようにって思ってる。それなのに、のん気に恋愛して審神者神隠ししましたー!ってなったら、戦う事を放棄してるってことじゃん。マジで許せないわそういうの」
「厳しいなぁきみは・・・まぁ、そればっかりになってもやだけどな」
「恋愛しにきてないから。戦争しにきてるから私」
「うん」
「あの人たちのこと、人間と思ってないし。刀だよ。神だよ。でも人間の心もわかる刀剣男士だと思ってるよ!!!!だから愛してるけど、人間に対する愛じゃないからねこれ!!!!!!」
「うける熱い」
「でもビジュアルはダメ。絶対許さん」
「www」
「神様ってずるいよね・・・人間の希望とか憧れとかいいところ全部吸い取ってるから顕現したら絶対イケメンだもんね・・・ビジュアルがもうほんとにダメ」
「ほんとwwwきみwww言ってることとやってることが違いすぎるわwww」
「私はこれからも素顔を隠して逃げ続けるけど、神隠しとかやるとか言い出したらブチギレるから・・・」
「大丈夫だよもう。なんかもうきみのこと怖すぎてみんなガクブルしてたから」
「ええ~・・・短刀ちゃんに嫌われたらどうしよう・・・」
「短刀はかっこいいって褒めてたから大丈夫だろうw」
「ならいいか」
「うん、いいよ。それより、こんのすけが、期待に満ちた目でこっちを見てきてるよwww」
「こんのすけ、油揚げ・・・だね?」
「はい!こんのすけ頑張りました!」
「おめー煽っただけだろwwwまぁでも、これで(光忠の)神隠しの可能性が減ったならそれでいいか!」
「そうだそうだ、神隠し反対!きみが三日月さんに連れて行かれなくてよかったよ。私やっぱり三日月さん苦手だな」
「ずっと言ってるよなwww泣くぞ天下五剣www」
「えー・・・同じ天下五剣でも物静かな数珠丸さんと大典太さんと全然違うよね・・・」
「数珠丸いいよな、数珠丸。あとでモフモフしてこよ」
「モフモフならぜひこのこんのすけを!!」
「こんのすけは私がモフモフするね♥」
こうして、姉審神者のブチギレ事件のおかげで、この本丸の神隠しの可能性はなくなったのだった。
そして、みんな姉を二度と怒らせないと心に誓った。
【ブラック出身の刀剣たち】
ブラック本丸出身の刀たちは、前のような審神者が来てこの幸せを壊されてはいやなので、審神者を隠してしまおうと考えるものもいた。
あくまでもブラックだったから正常に物を考えられなかったのと、執着心が強くなってしまったため。
やっぱりブラック出身の子たちは少しヤンデレ気味だった。
でも、今回の件があってから、確かにその通りだと思ったのと、刀としての本分を思い出したので、考えは正常に戻る。
この後は、審神者から人間の幸せを学び、主の最期をきちんと見届けようという考えになる。
【新しく顕現された刀たち】
ブラックだったのを聞いていた子と、知らなかったから驚いた子がいた。
考えは元々まともで、主は人間としてきちんと輪廻転生したほうがいいよねって考えの子しかいない。
そのため、今回三日月の件があってから、古参の刀たちを少し警戒するようになるけど、それも杞憂で終わる。
とにかく、主の人間としての生を全うしてほしいと思っている。
だって、人間ってそういうもんでしょ。
【三日月】
ちょっと冗談(あわよくば程度)で言ったのに姉審神者に超怒られて、あの後泣いた。
頭突きも痛かったから泣いた。
元々優しくてポワポワした性格なのに、ブラック本丸のせいで多少の性格の歪みはある。
でもとりあえず、本気で神隠しをする気はない。
【御手杵】
思わぬところで魂の契約がバレてびっくり。
でも、姉も認めてくれたみたいなので、主の死後は魂もらおーっとのん気に考えている。
【光忠】
今回の件で、神隠しではなく、「人間の方法でなら口説いてもいいんだね!?」と思ってしまった超ポジティブ。