本当は怖いブラック本丸で双子生活 其の二十

「やだぁぁぁぁ!!!!!寂しいよぉぉぉぉ!!!!」

 

 

「やばいわこれ、さおちゃん吐くわ」

 

 

泣き叫ぶ姉の周りでオロオロするだけのこんのすけに、妹がそう言った。

 

 

 

 

 

本当は怖いブラック本丸で双子生活 其の二十

 

 

 

 

 

「極?」

「はい、極でございます」

 

 

こんのすけが新しく政府から持ってきた情報に、首をかしげる。

“極”とは、刀剣男士が修行を行い、心も体も強くなる状態のことらしい。

 

 

「現在極の姿となれる刀剣男士は、短刀の平野藤四郎様、厚藤四郎様、乱藤四郎様、五虎退様の4名です。政府のほうで修行場所の用意などがあるために、徐々に極の姿になれる方も増えていきますが、とりあえずはこの4名ということです。

また、練度も、皆さま60以上ではなければ修行にいけないのですが、ここの本丸の皆さまは先日の本丸襲撃事件で全員練度が上限までいったので、いつでも修行に出すことが出来ますよ。

池田屋の記憶を攻略した際に、刀剣男士たちが持ち帰ったものを使って修行に行きます」

 

 

そうそう、こないだの襲撃事件で敵を倒しまくったから本丸全員練度カンストしたんだよね。

普通の部隊は6人までだけど、あの時は部隊のメンバー全員みたいな感じだったから、誰かが敵倒したら、とにかくその場にいる人全員に経験値入るって感じで完全に無双状態wwwマジであれはひどかったwww

我々の審神者レベルも一気に上がって、いきなり100超えたからビックリしたよwこれで、そこそこレア刀持っててもやりこんでるんだなぁとしか思われないから楽だなと思ってたw

 

 

「極の姿になったものは、今までと比べものにならないくらい強くなり、戦力になりますし、忠誠心も上がるようなので行かせて損はないですよ」

「マジかぁ~どんな感じか検討もつかないけどな」

「7面が実装されて、少し戦力的に困ってる部分は確かにあるよね…極になったら短刀でも7面に行けるのかな?」

「むしろ、極になった短刀ほど7面を攻略するのに向いている方々はいませんよ。というのも、短刀の極は機動が今までよりも上がりますので、高速槍にもやられません」

「あ、そうなんだ、それなら無駄に怪我しなくてすむね!今も別に資源たくさんあるし、手入れするのはいいんだけど、7面行くとボロボロになるから見てられなくてさ~」

 

 

そうなのだ。

先日7面が実装された!ということで、さおちゃんがいろいろ調べながら編成を考え、攻略したのはいいんだけど、カンスト部隊でもボロボロになってたんだよね。

刀装は剥がれるし、重症はいなくても中傷くらいは当たり前だし。カオナシがもうすごい勢いでポンポンしてた。

「3スロのレア太刀で金盾兵ガン詰みなのにそれでもダメだ…」とさおちゃんが嘆いていた。馬も乗れないし、すごく難しいって。何度も周回出来なくて、今後7面に他のステージが実装されたらどうなっちゃうんだろうと、ゾッとしていた。

 

 

アタシは話きいてもちっとも分んなかったけどな!!!!(゚σ・゚)ホジホジ

 

 

つーことで、今後のことも考えて、7面攻略の要となってくれるのであれば、心強い。

 

アタシとカオナシとこんのすけは極の話をしに、広間まで行った。

 

 

 


 

 

 

本丸の広間で、とりあえずいる人だけ集めて、3人で極について話をした。(主に説明してたのはこんのすけだけど)

 

その話をした途端「極・・・」「修行・・・」「・・・強くなる」とそれぞれみんな口にしていた。やはり強くなるということでは、みんな興味深々みたいだ。

 

そして、今現在極の姿になれるという4人は、迷いなく、キリッとした顔をしてアタシ達の前に姿勢を正して座っていた。

 

 

「大将、俺は修行に行きたい」

 

 

そう、口を開いたのは厚だった。それに続くように、他の3人も口を開いた。

 

 

「主さん、僕も修行に行きたい!」

「僕も、主君をこれまで以上に守れるのでしたら、ぜひ行きたいです」

「ぼ、僕も・・・です!強くなって、帰ってきますから・・・」

 

 

 

乱、平野、五虎退が口々にそういうと、それを聞いて、いち兄が感慨深そうにうんうんと隣で頷いていた。

弟たちの成長が嬉しいと見えるw

 

 

 

ま「もちろん、男が強くなるのを止めるようなことはしないぜ!!!」

厚「ほ、ほんとか大将!?」

乱「わぁ~!じゃあ誰から行く?」

こん「普通は、本丸をあけるわけにはいきませんし、1振ずつ行っていただくのですが、ここの本丸は数も揃ってますし、みなさん練度も高いので、特例で4振同時に修行に行っていいとお許しが出ております。修行する時代は皆さんそれぞれ違いますけどね。修行道具なども、先日の本丸襲撃の際の報酬でたくさんもらっていますので、いつでも行けますよ」

平野「では、早速修行に行く準備をしましょう」

五虎「はい・・・ぼく、支度してきます・・・」

ま「うん、まぁ修行って言ったって、ゲート潜って、すぐに行ったり来たり出来るから、忘れ物あったら帰ってくればいいしさ。夜とかも寝るために帰ってくるんだから、荷物は少な目に!パンツあればいいよ!www」

こん「何をおっしゃっているのですか?修行は76時間、4日間ですよ」

 

 

 

 

ガタッ

 

 

 

 

それを聞いた、いち兄とカオナシが正座から膝立ちくらいになったwww

ちょwww

カオナシは表情死んでるからわからんけど、いち兄顔真っ青なんですけどwww

まって、でも4日間とは私も初耳だwww

 

 

 

一期「よ、4日間も、こ、この本丸を、あけるというのですか・・・!」

こん「当たり前です。なんのための修行ですか。新たに力を得るというのはハンパな覚悟ではできませんし、時間もかかるものですよ」

ま「ちょっとそれ初耳だw聞いてなかったしwってか、てっきり、いつも出陣の時も時空超えて行ったり来たり出来るからそんな感じだと思ってた。ゲート通って、向こうで1ヶ月修行したら、数時間後には戻って来れるみたいな…」

こん「なんですかそれは・・・精神と時の部屋じゃないんですからそんなに都合良く行きませんよ。それでも、4日ですむのである意味、精神と時の部屋のような感じではありますが…修行に行く期間は相当長いものと考えられます。おそらく、修行に行かれる皆さんは体感的には年単位ですよ。それが本丸に戻ってくる時は4日間しか経過しないように設定できたのは相当政府も頑張りましたよ。本丸の警護や、戦力的に早く戻ってきていただきたいとは思っているのはこちらも同じですからね。それでも、4日は絶対にかかります」

一期「そんな・・・(絶望)」

カオナシ「・・・(絶望)」

 

 

 

やべぇwwwカオナシといち兄がフリーズしたwww宗三とか江雪とか、他のお兄ちゃんズも顔が青くなってるwww

まぁ、確かに4日本丸からいなくなると聞いたら、ちょっとこっちも覚悟が必要だけどな。寂しい気持ちはわかる。

さすがのアタシもちょっとそれは勇気いるwww

 

 

いち兄とカオナシが固まってしまったことで、その場は少し騒然としてしまった。

 

すると、固まっていたカオナシがどこからともなく、スケッチブックを出して、文字を書いた。

 

 

 

 

『保留!!!!』

 

 

 

 

それをみんなに見せると、カオナシは離れに戻って行ってしまった。

短刀たちが困惑してる。そりゃそうだw

いち兄もいまだにフリーズ中だし。

 

 

 

(あーあ・・・さおちゃん・・・絶対泣いてる・・・)

 

 

 

アタシはさおちゃんの後を追ってこんのすけと離れに戻った。

 

 

 

 

そして冒頭へ戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やだぁぁぁぁぁぁ!!!!!寂しい~~~~~!!!!!」

「きみなー、寂しいからってな、保留にしちゃダメだろ」

「さみしいんだもん!!!!!!!!!」

「バカもの!!!ゾロだってサンジだって、2年間の修行を経て強くなっただろうが!!!!」

「だめぇぇぇぇ!!!!やだぁぁぁぁぁ!!!!!」

「修行なんて少年漫画ではお決まりだろうが!!!!悟空だって、らんまだって、幽助だって、剣心だって、あの花道だって修行してただろうが!!!!!」

「普通に遠征とか行くくらいだと思ったんだもん!!!!長くても朝起きたら帰ってきましたくらいだと思ったんだもん!!!4日なんて耐えられない!!!4日もあの子達がいないのなんて耐えられないよ~~~~~!!!!」

 

 

 

 

わぁぁぁぁぁと泣き出したさおちゃんに、アタシもこんのすけも困ったもんだった。

 

 

 

 

そこへ、

 

 

 

 

「大将、入っていいか?」

 

 

 

 

そう、玄関から声がかかった。この声は厚だ。

さおちゃんは泣き顔を見られたくないのか、すぐに寝室へ隠れてしまった。

 

 

アタシはとりあえず、「いいよ」と声をかけて、やってきた4人を家に招き入れた。

 

 

 

 

 

厚「・・・カオナシの様子がおかしいから、もしかして、ますたぁになんかあったんじゃないかと思ってよ」

ま「うん、まぁ、ある意味大正解だよ・・・」

乱「・・・ますたぁ、僕たちの修行、反対してる?」

 

乱たそが可愛い顔して聞いてきた。みんな心配しているようで、私の顔を覗き込むほんと可愛いな

 

ま「・・・いや、反対というか、まぁ、うーん。っつーか、いち兄どうした?」

平野「いち兄は、武人ですから。修行がどんなに大切なことかわかっています。突然のことで驚いているかもしれませんが、反対はしないでしょう」

ま「そうか・・・(寂しいって顔にめっちゃ書いてたけどな)」

五虎「あ、あの、ますたぁに会せてもらえませんか?」

厚「頼むよ、大将」

 

 

 

その時の4人の目は、本当に真剣な目で、

 

アタシは断らることなんて出来なかった

 

 

 

ま「・・・うん、わかった。待ってな」

 

 

 

寝室で布団の中で泣いていたさおちゃんを無理矢理連れてきて、4人の前に座らせる。

もう、マジで号泣してるよこの人www

 

 

 

厚「ますたぁ、俺たちしゅ「だめ」

 

 

 

厚が言い終わる前に、さおちゃんがそう言った。最後まで言わせてやれよ!

 

 

 

乱「おねがい、ます「やだ」

平野「お願い致「むり」

五虎「ま、ますた「ダメだってばぁぁぁぁ」

 

 

 

何も言わせてもらえないし、こんなにベソベソ泣いているさおちゃんを見たのは初めてだから、さすがの4人も困惑してるみたいだ。

 

もうね、さおちゃんダメだわ、怒るわ!

いつも怒られてばっかりだけど、激おこプンプン丸だわ!!!

 

 

 

「きみ!!いい加減にしなさい!!!この子たちがどんな思いで修業に行くって言ってるのかわかってるの!!??何のために、強くなろうとしてるのさ!!!誰のために!!!!

いつも、あれだけ短刀ちゃんは懐刀だから、最後の砦だって言ってたくせになんだよ!!!懐刀だから、アタシ達を守るために修行にいくって言ってくれてるんでしょ!!!

 

武士のな、男のそういう気持ちを、寂しいからって否定しちゃダメなの!!!わかる!!!???」

 

 

 

アタシがそういうと、さおちゃんは先ほどより、少し静かに涙を流した。

ホント、ショタガチ勢は恐ろしいよ。

マジで号泣してるからねこの人、吐くんじゃないかって思うくらい。

 

 

アタシが怒ったことで、4人はさおちゃんの前に出て、さおちゃんに次々と声をかける。

 

 

 

 

厚「大将の言った通りだ、俺は大将とますたぁを守るために修行に行きたい」

乱「うん、強くなって、もっともっと側で守りたい」

平野「お2人のお力になりたいのです」

 

 

 

3人がそう言ったあと、五虎退が泣いているさおちゃんの膝に手をかけてこういった。

 

 

 

「ぼ、ぼく、こないだの本丸襲撃事件の時に、本当は、すごく怖かったんです…。」

 

 

 

五虎退がポツリポツリと話し始めた言葉を、みんなで静かに聞く。

 

 

 

「あんなにたくさんの時間遡行軍の姿を見て、足が震えて・・・僕の大切なものがなくなってしまったらどうしようって・・・ずっと思っていました・・・。

でも、主様の結界のおかげで、僕たちは守られました。

そ、その時、僕、思ったんです。ぼくは、弱いなって・・・。

ぼく、主様やますたぁにいつも助けられてばかりです。ま、前の主様のことが頭から離れなかった時も、2人は僕たちを見捨てなかったし、助けてくれました・・・。

だから、今度はぼくの番です。ぼく、強くなって、今度は主様とますたぁを守れるようになりたいんです!!守られてるだけじゃいやなんです!!ぼ、ぼくは、2人を守りたい!!!」

 

 

 

 

正直、その言葉にアタシですら涙出そうになったからね。

あの、五虎退がだよ!?弱虫で、泣き虫な五虎退の言葉だからこそ、胸に響いて、生きてるのつらいくらい胸が痛くなった。うちのごこちゃんマジ天使。

 

 

 

 

さおちゃんは、それを聞いて、更にボロボロと涙を流した後、

 

 

 

「ぶ、無事に、帰って来てね」

 

 

 

そう言った。

 

 

 

4人は笑顔で返事をし、無事に4人の極になるための修行が決定したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

って、ほんとめんどくせーわ!!!

泣いてないで修行に行かせればいいしょ!!!

バカだなさおちゃんは!!!!

 

 

 

 

 

 

そして、4人が修行に行く日、お見送りの門の前にはカオナシではなく、ちゃんとさおちゃんの姿があった。

 

 

 

 

 

超号泣してるけどな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

さ「あ、危ないことしちゃダメだからね、元気に、帰って来てね・・・!!!!」(号泣)

厚「わかったわかった、ちゃんと帰ってくるからなますたぁ」

乱「ぼく、もっともっと可愛くなって帰ってくるからね!帰ってきたら、僕にも可愛いネイルしてね♥」

平野「必ず、主君とますたぁの元に戻ってきますから、待っていてください」

五虎「強くなって、戻ってきます・・・!」

さ「うん、うん・・・」(号泣)

薬研「ははは、ますたぁがこんなに泣き虫だったとはなぁ」

一期「お前達・・・本当に気を付けるのだよ」

鯰尾「いち兄も心配しすぎですって!大丈夫ですよ!」

骨喰「ああ、大丈夫だ。こいつらを信じて待っていればいい」

 

 

 

やばいwww粟田口の感動のお別れシーンの中にさおちゃんが号泣してるのがなんかうけるwww

ナチュラルに粟田口に混ざるさおちゃんwww

よく考えたら4日じゃんwww

修学旅行より短くね?www修学旅行とか1週間くらい行ってるもんなwww

4日とかちょっとした連休じゃんwww

なにを今生の別れみたいなことしてるのwww

 

それを見ていた、光忠が「・・・僕も修行にいきたい」とボソッと呟いたのをアタシは聞き逃さなかった。

 

むwりwだwかwらwwwwwww

お前行ってもさおちゃん泣かないからwwwwww

「あ、いってらっしゃい」で絶対終わるからwwwwwww

短刀だから泣いてるだけだからwwwwww

 

 

 

とにかくゲート前がカオスな状態になってたけど、なんとか4人は元気よく旅立っていったよ。

見送ったあと、その場に泣き崩れるさおちゃんといち兄・・・

いち兄はとりあえず見送るまでは我慢してたそうだwww

 

 

それから、毎日手紙が届くたびに泣き崩れる2人がホントおもしろすぎたわ。

 

 

 

 

 

それから4日後―――――――

 

 

「見ろよ大将、オレの新しい姿! これからも、いろいろ支えてやるからな!」

「この新たな力をもって、今後もお供します。……地獄の底まで」

「あるじさん、どうかなあ? ボク、見違えたでしょう。 似合ってる? ねぇ?」

「ご、五虎退、帰ってきました。あの、虎は三匹しか倒せませんでした……すみません」

 

 

「「おかえりぃぃぃぃぃぃ!!!!」」

 

 

立派な姿を見て、またもや号泣するさおちゃんと共に、4人を迎えたよ!

4人ともめちゃくちゃなんか衣装変わってる・・・

っつーか、五虎退の虎めっちゃデカくなってて、他の子の衣装とか目に入ってこないwww虎がすごいwww

 

 

「よ!おかえ・・・」

 

そういって、のん気に近づいてきた鶴丸に、乱たそが足払いをかけ転ばせ、他の3人が周りこんだ。

何をされたのかわからない鶴丸は「???」状態だ。

 

乱「機動もめちゃくちゃ早くなったし、前より力もついたよ♥これで太刀にも大太刀にも負けないからね♥」

 

セコム、マジセコム!!!!

懐刀万歳!!

これでさおちゃんの純潔は守られたwww

 

(鶴丸なら許してくれるだろうと思ってやったらしい、あとから謝ってた)

 

 

 

こうして、強くなった極たちは、7面の周回を余裕で行うのだった・・・。

 

それ以降は修行に送り出すのも慣れて、さおちゃんが泣き崩れるのもなくなったよ!!

めっちゃ泣くの我慢してて、手紙が来る時はいち兄と号泣してるけどwww

 

これだけ強い短刀ちゃんがいれば、我が本丸も安泰だ!

これからは、短刀たちにしっかり守ってもらおうと思う我々でした!

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「貞ちゃんが実装されたらしい」

 

 

 

そう、まぁちゃんが広間でいうと、その場にいた一同は燭台切さんを見た。

 

固まった燭台切さんに「よかったな!」とか「おめでとう!」とか、いろいろな声をかける一同。みんな優しい。

 

呆然としていた燭台切さんは、すぐにまぁちゃんに向き合うと、

 

 

 

「・・・出陣しよう・・・!」

 

 

 

そう、言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貞ちゃんが来ない・・・!」

 

 

今日も悲しみにくれる燭台切さんが私の元にやってくる。どうしてこうなった。

 

あれから、毎日出陣しても、なかなか貞ちゃんが来ず…。

そう考えると、こんなに苦労したの初めてなんだよね…。来ないって思う事はあったんだけど、ここまでじゃなかったというか、貞ちゃんホント来ない。

というのも、周回が出来ない。

なんせ、いくら短刀ちゃんが極になって最強になったとはいえ、極としての練度はまだ低いし、ボスマスに到着するまでにボロボロになってしまう。

刀装が全滅することもあるくらい、敵さんがめっちゃ強い。最強蛍ちゃんでもダメ。

これには他のとこの審神者さんたちもみんな苦労してるみたいで、もうどう頑張っても傷ついたり刀装がなくなるのは仕方がないみたい。あとは極ちゃんの練度をあげていくしかないって。

ということで、あまり無理な進軍ができないから、どうしても一日に2、3回しか7-2にいけない。

イベントみたいにずーっとグルグルできるってこともできないから・・・どうしても手に入れることができないんだよね・・・。

 

 

「はぁ・・・貞ちゃん・・・」

 

 

それにしても、なんでこの人、私のところに来るの・・・?

仕事するために人払いしてる時間に来るんだよなぁ・・・

もちろん、手ぶらでなんか来なくて、手作りのお菓子を毎日持って来てくれるんだけどさ。今日のエッグタルトめちゃくちゃ美味しいんだけどさ。美味しい紅茶も入れてくれるんだけどさ!!!

 

 

「あーあ・・・貞ちゃん早く来ないかなぁ。僕、貞ちゃんが来たらいろいろな話をして、たくさん美味しいもの食べてほしいんだ」

「はぁ・・・」

「あの頃は楽しかったなぁ、貞ちゃんって短刀なのにすごくカッコイイ伊達男なんだ。オシャレでセンスもいいし。だから、僕も貞ちゃんと一緒にいて楽しいんだよね」

「はぁ・・・」

 

 

心閉ざして、パソコンに向かって仕事する。

返事も適当なのに、この人全然気にしてないんだよ。むしろ、自分はのん気にコーヒー飲んでるからね。この家の食器の場所とかすでに把握してるから怖い。

どうしようかと思って窓の外を見る。

 

ああ、ダメだ。

まぁちゃん今日セミなりきり選手権やってるんだった・・・

本丸中の木にいろんな刀剣男士がくっついてるよカオス・・・

いつからうちの本丸は虫だらけになったんですかね・・・

まぁちゃんに至っては、木にしがみつけないから御手杵にしがみついてるわ。落ちないように支える御手杵さんが大変そうだ・・・謎だなあの人・・・

 

 

「お茶のお代わりいるかい?」

「あ、ハイ」

 

 

そして結局、私も甘えてしまうから嫌になるよね。はぁヤダヤダ。

仕事してるから、邪魔はしてこないんだよね。ただ話しかけて来るだけで、別に半分聞いてないし私。それでも別にいいみたいで、ほんとただ話したり、うちにあるレシピ本見て帰っていくだけだから、邪険にもできないや。ほんと、変な人。

 

 

(まぁ・・・でも貞ちゃんは、)(私もめちゃくちゃ会いたい・・・)

 

 

「貞ちゃん早くこないかなー」

「・・・来ますよ、絶対」

「え?」

「貞ちゃん、もうすぐ来ます」

「・・・なんでわかるの?」

 

 

私の答えに光忠さんは驚いたような声をあげた。普段まともに会話してあげないからね。

 

 

「・・・私も会いたいからです」

「会いたいって思ってくれてるんだ?」

「はい。伊達の刀ですし・・・」

「伊達の刀?きみ、そういうの興味あるの?」

「え?はい。私武将で一番好きなの伊達正宗です」

「そうなの!?初耳だよ!?」

「あれ?言ってませんでしたっけ?」

「そんな話してくれたことないよ!」

 

 

そういう話は確かにしたことがない。

なぜなら私はイケメンが(ry)

 

 

「・・・そっかぁ・・・政宗公が好きなんだね・・・それじゃあ、ぜひゆっくり、ふ」

「審神者様、ブラッシングをしてくださいませ」

「うん!おいで!」

 

 

何だか燭台切さんの嬉しそうな声が聞こえたけど、こんのすけがブラシを咥えてやってきたから、キュンとした。こんのすけ可愛い。

燭台切さんはほっといて、こんのすけのブラッシング開始!

気持ちよさそうなこんのすけ・・・可愛い。

こんのすけの目線が燭台切さんを見てるような気がするのは、気のせいって思っておこう。

 

 

「・・・」

 

 

私がこんのすけを相手にしているせいか、燭台切さんは、無言で立ち上がった。

自分の使っていたカップをキッチンで洗うと、そのまま部屋から出て行こうとした。

いつもは、一言言ってから帰るのにおかしいな。

 

 

「・・・お帰りですか?」

 

 

そう声をかけると、燭台切さんは、少し間を置いて、

 

 

「・・・ねぇ、マスター」

 

 

と私を呼んだ。

 

 

「・・・はい?」

「今日の分の出陣、もう終わってるけど、もう一度出陣してきていいかな?」

 

 

本日分の7-2出陣は終わってたけど、そんなことを燭台切さんが言い始めた。

 

 

「え、でも・・・」

「頼むよ」

 

 

 

きみが来るって言うから、なんだか来るような気がするんだ

 

 

 

その言葉に驚いて顔をあげると、燭台切さんと目があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドキッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・なんて少女漫画展開があると思ったか!!!!

 

ねーよ!!!!!!!!!!!!

 

ドキッとしないわ!!!!!!!!

 

イケメン怖いわ!!!!!!!

 

意味わかんないしょ!!!!!!

 

私が言ったって来るかわかんないから!!!!!!

 

 

 

 

 

 

・・・・・・まぁでも、言霊ってあるからね。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・わかりました。7-2に出陣してもいいという方がいるならいいですよ」

「ありがとう。みんなに声をかけてみるよ」

「気を付けてくださいね」

「・・・うん、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

そうして、光忠さんは部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・フラグ」

 

 

 

 

 

 

 

膝の上のこんのすけがそんなことをボソッと呟いたような気がしたけど、気にしないことにした。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――― で、

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたなぁー皆の衆!
へへへ。なーんてね。俺が、噂の貞ちゃんだ!」

 

「貞ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!」

 

「お!みっちゃんか!!!!!」

 

 

 

 

 

 

結局、その時の出陣ではもちろん貞ちゃん来なかったんだけど、(まぁちゃんとこんのすけに超バカにされてた)

三日後の出陣で無事に、貞ちゃんをお迎えすることができました!!

 

貞ちゃん、太ももが眩しいわ!!

 

来てくれてよかったぁ!!資材無くなる前に来てくれてよかったぁ!!

 

うちの本丸も増々賑やかになりそうです!

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