午前中は白石くんと一緒に海まで探索に行って、
12時ちょっと前に、お昼を作るために早めに炊事場に来た。(もちろん白石くんと)
炊事場に来ると、手塚くんと、それから不動峰中の人たちがいた。
不動峰の橘くんは普段から料理をしてるから、料理得意なんだって。
「お手伝いに来ました~」
「来たで」
「ああ、前と白石か。助かる」
「では、俺たちでおかずを作る。前達はご飯を炊いてくれないか」
「わかったよ」
「前さん、米とりにいこ」
そうして、私と白石くんはお米を取りに行った。
お米は倉庫の中にたくさんあったんだけど、外に出しておくと傷んじゃうからって、倉庫にとりにきてるよ。
これがまたなかなか大変でね。
1回で10kgもお米を炊くよ。
10kgのお米が山のように積んであるから、これを使ってる。
体育会系だから、みんなめちゃくちゃご飯食べるし、本当にサバイバル中かなとも思ってしまうけど、食べないと体力なくなって倒れちゃうし、熱中症対策のためにもたくさん食べたほうがいいんだって。
だから、おかずはなくても、ご飯だけはめちゃくちゃみんな食べるようにしてる。
「お米・・・あった、これだ」
「おお、ほな俺が持つから前さん避けとき」
「大丈夫?えっと、半分なら持てるよ。一緒に持つなら、大丈夫」
「え、前さん持つ気やったん?(笑)俺一人で大丈夫やで、気にせんで」
「そう?ありがとう」
「おん、ほな・・・」
よいしょと、白石くんがお米を持つ。
力持ちだな白石くん・・・
私全然持てないよお米・・・
軽々と米袋を担ぐ白石くんの後を追う。
(あ、そうだ)
「白石くん」
「ん?何?」
「昨日変な事言ってごめんね?なんか嫌だったでしょ」
「え?」
「あのー、私が青学のみんなと話してた時のこと・・・白石くんのことばっかり話しちゃって・・・」
「え!?いやいや、俺全く気にしてへんというか、言うたやん!」
「え、何が?」
「・・・嬉しかったって・・・」
「ああ・・・」
「そやって、誰かと話してる時に俺の事思い出してくれんなら・・・ずっと文通したかいもあったなぁって・・・」
「う、うん・・・」
(白石くん・・・)
(そんな風に思っててくれたんだ・・・)
ドキドキドキドキドキドキ
なんだか、心臓が早く動いてる。
なんだろうこれ。
なんで、こんなにドキドキするんだろう。
2人で赤い顔して炊事場まで戻ると、神尾くんが「あれ!?顔赤いっすけど大丈夫っすか!?」と心配してくれた。良い子。
橘くんが、水を勧めてくれたけど、まぁ大丈夫です。うん。
炊事場について、お米を袋から出して、お米を研ぐ。
お米研ぐのは得意だよ!小学校の頃から先生に「上手」って言われてたからね!
「前さん、上手やな!」
「うん、お米研ぐのだけはね!あんまり料理は出来ないけど・・・」
「料理苦手なん?」
「苦手じゃないけど、うちはお母さんが家事すごいするから私あんまりご飯作ったことないかな・・・。あ、お菓子はめちゃくちゃ作るよ!」
「そうなんや」
「お菓子はお母さん作らないから1人で作るよ。わかったさんとか見て」
「わかったさん!しっとるわ!妹が図書室で借りてきとった(笑)」
「わかったさん小学校の頃から好きだから全部持ってるよ!今度白石くんにもお菓子作ってくるね!」
「え、ほんまに?めっちゃ嬉しい!」
2人で話しながら、ご飯を準備する。
そろそろお腹を空かせた人たちも集まってきそうだ。
午後から本格的に作業に入るって言ってたけど・・・
私に手伝えることがあるのかちょっと不安になっていた。
はぁ、れんじは相変わらず優しくて素敵だった。
(たまに山側もウロウロしたらいいことあるかもしれない・・・)
そう思って、ウロウロしてたら、さおちゃんとしらいしくらのすけを発見した。
なんと、楽しそうに小屋みたいなところに入って、いくではないか。
なんだあの2人は。急接近しすぎだ。
(ま、無意識だけど、絶対お互い好きだし・・・)
(なんかよくわかってないんだろうな・・・本人たち)
(あーでも文通もなんか2人で楽しそうだったしな~)
(・・・さおちゃんとられるの寂しいから邪魔しに行こうかな・・・)
(いや、でもかなり2人の世界すぎて入ってけないぞこりゃ)
そんなことをモヤモヤと考えていたら、
「なにしてんの?」
後ろから突然声をかけられて、ビクッと思わず体が揺れてしまった。
後ろをみたら、金髪の・・・
あれ、さっきそこら辺にいたけど、暇なのかなこのひとは・・・
「びっくりさせるな!(小声)」ゴチン
「いたぁ~なんやねんな!」
「大きい声出すな!(小声)」
「え?何々」
アタシが指をさした先に入る2人の姿を見ると、けんやは「ああ」と言った。
「あの2人かいな。尾行しとるん?」
「尾行じゃないよ、たまたま見かけたから、今邪魔しに行こうかと思ってたとこ」
「え!?そらあかんわ、邪魔はやめたほうがええわ!」
「えーさおちゃんとられるのやだ」
「そらわかるけど・・・ほな、あっちで一緒にあそぼ」
そういうと、
ギュッ
けんやはアタシの手首を掴んで、歩き出した
(わわわ)
「ちょっと!ちょっと・・・!手・・・!」
「いや、やって邪魔しに行くいうから・・・」
「なんだよもう、遊ぶって何するのさ」
「えーっと、かけっこ?」
「ふざけんな」
「え!あかん!?」
「え・・・むしろなんで良いと思ったの・・・?」
「そっかぁ・・・あかんのか・・・」
「ダメに決まってるじゃん・・・絶対そんなんじゃ釣れないよ私は・・・」
「ほな、何でなら釣れてくれる?」
「・・・」
「俺、まなみの好きなもんあんまり知らんから、教えて」
「・・・」
「それはあかん?」
恥ずかしいのか、こちらを見ないけんやの耳が、真っ赤ことに気付く。
(真っ赤になりながらそんなこと言われても・・・)
「・・・食べ物」
「え?」
「おなかすいた」
「あ、そろそろ昼飯やもんな!ほな、海側戻らんとあかんよな!」
「山側で食べてく」
「え、」
「デザート、とりにいこ」
「お、おん!」
「なんか、梨食べたい・・・」
「梨!?は無理やけど、マンゴーならあると思うで!」
「マンゴー(*´﹃`)」
「冷えとらんけど、食事の前に川で冷やせばいけるんとちゃうかな?」
「楽しみ・・・」
「そっかぁ・・・食べ物かぁ・・・せやからいつも山本のおっちゃんのとこにおったのかー」
「・・・山本のおっちゃんには胃袋がっちり掴まれてるから、相当頑張らないとアタシは釣れないよ」
「ほな、がんばらんとな」
そうして、けんやがこっち向いて、ハハって笑うから、
(なにそれ)(ずるい)
どうやら、アタシまで耳が赤いのが感染してしまったようだった。
(なんだよ、)(恥ずかしいわ!)
けんやの言う、マンゴーがなっている木の近くまで
なんとなく恥ずかしくて、無言で到着すると・・・
ガサガサガサガサガサ
「え!?」
「な、なに?」
「え!?クマ!?」
「ここクマいるの!?」
「わからんけど、危ないから下がっとき!」
そうして、アタシをかばうように前に立つ。
アタシはその音のするほうをけんやの後ろからジッと見た。
すると・・・
「めっちゃ美味い~~~~~」
そこには、
「え!?金太郎!?何してんねん!?」
確かさおちゃんのお気に入りの赤髪の少年がいた。
「めっちゃビビった~~~おどかすなや!」
「えーなにー?ワイここで木の実食ってただけやで!」
「え・・・っちゅーか、お前これ・・・食いすぎやろ・・・」
「え?何が?」
「木1本分食べるってどないなっとんねん!」
「え~せやって我慢でけへんかってん・・・」
「もうすぐ昼飯やろ!我慢せぇや!」
「いやや!腹減ったら動けんやろ!!」
「・・・ほな、これは白石に言うしかないな」
「え」
「・・・毒手やな」
「ええ~~~~いやや~~~~まだワイ死にとうない~~~白石に言わんといて~~~」
「アカンわ!!これは大事な食糧なんやで!?みんなやって、食べ物に困ったら食うのに、それをこんなに食いよって!!」
「いやや~~~~~」
(ほうほう)(ちゃんと先輩してるじゃん)
怒っているけんやを横目に、マンゴーをとる。
アタシとさおちゃんの分と・・・
「けんや、マンゴー食べる?」
「んぁ?ああ、俺はいらんで!とりあえず自分の分だけにしとき」
「うん、わかった」
「ホンマに、油断も隙もあったもんやないわ・・・!」
「いやや~~~堪忍してぇな~~~」
白石あんなにやさしそうなのに、なぜ怖がっているのだろうか。
まぁいいや。
「けんや、川いく」
「あ、おん、いこか」
「ワイ、どないすればええの~!?」
「先に戻っとき!このままここにおるとまた食べるやろ!」
「は~い・・・ほな行くわ・・・」
「大丈夫?あの子1人で」
「全然余裕やで、ヘビもクマもやっつけるんとちゃうかな」
「そうか・・・」
「川行って、冷やそ」
「うん」
「は~困ったもんやな、うちのルーキーは」
「けんや、ちゃんと先輩してるじゃん」
「当たり前やん!先輩やし!」
「先輩のイメージなかったわ」
「なんでやねん!」
「なんか、出会った時のまんま、変わってない」
「え!?出会ったのって1年の頃やん!」
「うん」
「背、伸びたで!」
「うん、背はね」
「なんやねん、中身はいつまで経っても子供っちゅーんか!」
「いや~」
「なんやねんな!」
「・・・ないしょー」
「なんやねんそれ」
1人でぷりぷり怒る謙也の隣を歩く。
(本当はあの時と変わらず、)(明るくて一緒にいて楽しいって思ってるよ)
このことはまだ内緒。
さおちゃんと一緒にマンゴー食べるの楽しみだなって思いながら、一緒に川まで向かうのであった。