一緒におればええってみんなに言われて、早速次の日。
5時に起きて、支度して、5時45分には彼女の泊まっている管理小屋の前で待っとった。
(ストーカーとちゃうからな!)
中1の頃から、彼女と文通していて、
今、
彼女のことを友達ではなく、好きな子として見ているなんて、正直自分でも信じられへん。
でも、文通していた期間が長かったおかげか、彼女の好きなこととか考えとか、そういうのをかなりわかっているし、ずっとええ子やって思うてから、自然な流れなのかもしれないと思う。
一番は、俺も、彼女も成長したことがきっかけなのかもしれん。
(成長期すごいな)
(1年で雰囲気全然ちゃうしな!)
自分のために近づいた俺のことを、前さんは
”優しい”
と言った。
優しいから一緒にいてくれるとそう言った。
(ホンマはきみのことが好きだから一緒にいたいなんて、)(言ったらきみはどんな顔するやろな?)
優しいのは俺ではなく、前さんだと心の中で思いながら、
「前さん、探索いこか」
「うん!」
「どこ行きたい?」
「海!」
「海!(笑)山やなくて海でええの?」
「うん、海大好き!」
「ほなら、ちょっとだけ海のほう行ってみよか?自由時間午前中までやし、あんまり長くおれんけど」
「うん」
「妹さん何しとるんやろな、妹さんに会いに行く?」
「まぁちゃんは・・・うーん。まぁちゃん自由だから、昼寝したり、1人でフラフラ遊んだりしてると思うよ。昨日も夜蟹捕まえたって言ってたし」
「ほんまかいな、めっちゃ自由やな」
「時間ある時にまぁちゃんと遊ぶし、別に夜でも会えるからいいよ。なんか昨日ちょっと楽しそうだったから、1人で楽しんでるのかもしれないし」
「そうなんか、ほなとりあえず、浜辺のほう行ってみる?」
「うん」
こうして俺たちは、海のほうに探索にきた。(ホンマは探索は山側のほうがええんやろうけど・・・)(自由時間やしええよな!)
「わぁ、すごく海がキレイ!」
「ほんまやなぁ」
「やっぱり、湘南とか横浜の海と違うね!」
「そら、南の島やからなぁ。透明度がちゃうよな」
「うん!すごいキレイ・・・!」
「こんなキレイなら泳ぎたくなるな」
「でも、みんな水着ないんだよね?」
「せやねん、残念なことに」
「金ちゃんって、服で泳いでここまで来たんだよね?」
「せやで」
「すごくない!?私水着来てても泳げないよ!?」
「金ちゃんを普通と思ったらあかんねん・・・」
「すごいなぁ・・・私運動神経悪いから、羨ましい」
「あー悪いって言うてたよな。運動神経悪く見えへんけどな」
「私の運動神経の悪さは、立海のみんながよーく知ってるよ・・・」
「よく運動部のマネージャーやろうと思うたな!普通運動苦手やったらイヤやないの?」
「ね・・・よく言われる・・・。亮ちゃんとかジロちゃんとかがっくんがテニス部入るっていってたからね、じゃあテニス部入れば試合で会えるかもしれないって思ったから入ったんだ」
「意外と不純な理由やった!」
「そうなの!そしたらめちゃくちゃ忙しくてびっくりだよ!私、立海のテニス部が全国一とか知らなくてさ」
「あー・・・それはキツイよな・・・」
「うん、土日も練習あるし、本当に大変なんだけどね」
「おん」
「みんなすごく良い人で手伝ってくれたりするし、やっぱり私、みんなが頑張ってる姿みたら頑張らないとって思って・・・」
「・・・おん」
「だからね、」
「・・・」
「負けないよ、全国大会」
そう言って、彼女は真っ直ぐ俺を見た。
去年、立海との試合で負けた後、
正直悔しさもあり、テニスの話題が出来へんかったから、
今ようやく、テニスの話題が出来たのやった。
(せやな・・・)(もう、今年は今年って気持ち切り替えへんとな・・・)
きちんと、俺が前を向いてるのか、
彼女なりの確認やったのかもしれん。
少し緊張した面持ちの彼女に笑みがこぼれる
「ふっ・・・俺たち四天宝寺も絶対負けへんで、めっちゃ練習したんやからな!」
「!? うん!!」
俺のその言葉を聞いて、「お互い頑張ろうね」と嬉しそうに笑う彼女。
(ああ・・・)(そういうとこが、)
(ホンマに好きやなぁ・・・)
たったの少しの時間でどんどん彼女のことが好きになっていく。
自由時間が終わるまで、もう少し一緒におりたいと、俺はもう少し砂浜を歩くのやった。
(はぁ・・・昨日めっちゃかわえかったな・・・)
仲直りしよ!
そう言うた俺に、とびきりかわええ笑顔を見せてくれた彼女。
彼女の笑顔を見た瞬間、完全に落ちました。はい。
正直、今までもええと思うてました。
けど、もう久々に会ったら完全に好きやと思いました。
(会えない時もずっと気になっとったしな・・・)(意識しとったってことやろな・・・)
(っちゅーか、めっちゃかわええわホンマ・・・)(あー・・・仲直りできてよかった・・・)
しかし、
仲直りしたのは良いものの、
彼女は海側に行ってもうた・・・
(やから会えへんし、男しかおらん中に女一人やし心配・・・)
めっちゃ心配やわホンマに・・・
それにしても、昨日の白石はあかんかったな!
あれはあかんわ!
完全に「おれも!」って言えへん雰囲気やったし!あんな風に相談されたら気軽に「俺も!」って言えなくなるやん!!!
ずっと文通続けてた白石がめっちゃ悩んどるのに、やっと仲直りしたばっかの俺が「俺も!」とか言えんやん!
そもそも、みんな俺らが会ってたことよう知らんしな・・・
(はぁ・・・どないしよう・・・)
そう思いながら、水を飲む。
はぁ。
後で作業に水汲みもあったな・・・
そんなことを考えながら。
すると
「ええ加減にせぇよ!小春と2人きりになれへんやん!」
そんな聞き覚えのある声が聞こえて振り向いた。
そこには、海側にいるはずの、
ユウジと小春と財前と・・・
それから・・・
(!!!???)
(なにしてんねん!!)
なぜかまなみがいた。
(え、めっちゃユウジの腰にだきついとるやん!)(なんで!?)
(なんでそうなってしもうたの!?)(え!?知り合いやないよな!?)(短時間で何があったん!?)
おれが賑やかな様子を眺めていると、ユウジが俺に気付いて近づいて来た。
「謙也!」
「な、なんや、どないしたん山側きて・・・」
「こいつのねぇちゃん知らへんか!?」
「へ?」
「なんや気に入ってくれたのは嬉しいんやけど、ユウくんにくっついて離れへんのよ・・・」
「俺にもくっついてきて訴えてやろうかと思うてます」
「なにおう!?同じ女子中学生に抱き着かれて嬉しくない男子中学生はいないだろ!」
「嬉しいわけないやろ!アホか!小春以外に抱き着かれてなんで嬉しいねん!」
「貧乳やし」
「よし、財前はあとでもっとギュッギュッてしてやるからな!」
「・・・」
「え・・・いや、ほんまになにしてんねん・・・」
「せや、抱き着くなら謙也にせぇや、謙也なら喜ぶで」
「・・・(真顔)」スッ
「お、離れた」
「絶対抱き着かない」
「ガ━━(;゚Д゚)━━ン!!」
「あらら、嫌われちゃったわね、謙也きゅん」
「こいつの姉ちゃんどこやねん!ちゃんと見張っとけ言うわ!」
「えー・・・どこ行ったんやろ・・・さっき白石と一緒におったのは見たけど・・・」
「え、白石と?やっと自覚したのあいつ」
「え?まなみん、蔵リンのこと知っとるん?」
「自覚ってなんや、お前なんで白石の気持ち知ってんねん」
「え?わかりやすくない?去年うちにご飯食べに来たことあったけど、無自覚でさおちゃんのこと好きだろうなって思ってた」
「・・・やるなお前」
「おう」
「(え?もしかして俺の気持ちもバレバレ?え?バレバレなん?)」
「っちゅーか、ほんまに迷惑ですわこの人、謙也さん見張っといてくださいよ」
「え!?いや、けどまなみ海側やしなぁ・・・俺これから仕事割り振られとるし・・・」
「え・・・?謙也きゅん・・・」
「謙也・・・お前なんで、まなみって呼んでんねん」
「え!?(しまった!)」
「まって・・・そういえば・・・1年生の頃の練習試合で・・・謙也きゅんと話してなかった・・・?」
「さすが小春!よう見とるな!」
「確か・・・氷帝の子らと一緒に話してた時におったような・・・」
「なんや、謙也さんの嫁か」
「よ・・・!?」
「おや、まなみじゃないか」
「あ、れんじー
」
「昨日探索の時に少し捕れた木の実があるのだが食べるか?}
「たべるー
」
「では、炊事場へ向かおう」
「うん
」
)))))
「はぁ・・・やっと解放されたわ・・・」
「もう山側に熨斗つけてくれてやるわ!」
「・・・」
「謙也きゅん?」
「え、謙也どないしてん」
「めっちゃフリーズしとるやん。おもろ」カシャ
(ええ~~~~~~~~)
(めっちゃ立海の柳になついとるやん!!)
(ユウジにも懐いとったし・・・)
(先行き不安や!!!)
そういえば、跡部にも気に入られてたなーとなんとなく思い出して、
この恋が前途多難であることを改めて認識したのだった・・・。