029***さおり

洗い物を終えて、そのまま不二くんたち青学の皆さんとお話しをしていた。

青学の皆さん、前も練習試合とかで何回かお会いしてるけど、こないだの試合で負けたからちょっとなんか怖いというか、あまり印象良くなかったんだけど、みんな良い人たちばっかりだったよ!

不二くんだけじゃなくて、菊丸くんとか、河村くんとか、大石くんとか優しいし、手塚くん面白いし!

桃城くんも海堂くんも越前くんもなんか可愛かったな。

乾くんはちょっとよくわからないけど…柳と仲良しなんだから、良い人だよねきっと、うん。

 

 

(楽しかったなぁ・・・)

 

 

( ゚д゚)ハッ!

 

 

あれ・・・?楽しかったなぁじゃないよね・・・?

あれ??それじゃだめだよね???

 

 

 

あれ、今私たち

 

 

 

遭難してるんだった!!!!!

 

 

 

なんか、普通にいつものメンバーいるし、白石くんとかもいて、大人数ですっかり忘れてたけど!!!

私たち遭難してるんだった!!!!!!

 

あ~~~~~・・・

忘れてたよ・・・

サバイバルというより、のん気にバカンス気分だったわ・・・

だって、そもそも私たち、バカンスに連れて行ってくれるって話だったからね・・・

 

 

 

馬鹿だな私は・・・

普通にこんな状況で楽しんでしまった・・・

 

 

 

ショボン

 

 

 

とぼとぼと真ん中のコテージに戻ろうとした時、後ろから声がかかった

 

 

 

「まえさん」

「あ、白石くん!」

 

 

 

声の主は、白石くんだった。

今日は何かと縁があるなぁ。

 

 

 

「コテージまで送っていくで」

「え、大丈夫だよ、近いし」

「暗いし危ないやんか」

「大丈夫だよ、変な人いないでしょ」

「変な人・・・おらんくても、虫とかヘビとかおるで」

「あーーーーそれは怖いな、じゃあお願いします」

「はは、任されたで」

 

 

 

どうして白石くんがいたのかなぁとか、一瞬頭によぎったけど、

きっと白石くんのことだから、1人でランニングでもしてたんだろうと勝手に納得した。

 

 

 

「・・・随分楽しそうやったな、青学のみんなと」

「あ、うん、楽しかったよ!いやー、関東大会負けちゃったからさ、青学の人たち怖いイメージあったんだけど、すごいみんな良い人だった!!」

「怖いイメージあったんか」

「うん、海堂くんとか桃城くんとか怖いなって・・・、あと手塚くんも無表情で怖いなーって思ってて・・・でも良い人だったよ!不二くんとか優しかったよすごく!向こうに帰ったら、撮った写真見せてくれるって約束したんだ」

「え!?」

「あ、あと不二くん、サボテン好きなんだって!白石くんと話合うと思うよって言っておいたよ!」

「え、あ、俺!?」

「うん、あとね、写真も教えてもらう約束したんだけどね、白石くんの手紙に入れる予定だから感想教えてね!」

「おん・・・」

「不二くんって、ルドルフの不二裕太くんのお兄さんらしいんだけど、お姉さんもいるんだって。白石くんもお姉さんいるし、やっぱり女兄弟いる人は物腰が柔らかいなぁって思ってたよ」

「・・・」

「それからね、越前くんはけっこう生意気なんだって。金ちゃんは可愛いけど、素直すぎて大変だから、白石くんも大変だろうなぁって思ったり・・・」

「・・・」

「あ、海堂くんはランニングが好きなんだって!白石くんと一緒だね!」

「・・・ちょ、ちょお」

「ん?」

「その辺で勘弁してもらえへんかな・・・」

 

 

 

そう言って、口元を隠す白石くんは、なぜか顔が真っ赤だった。

 

なんで!?

 

 

 

「白石くん、なんか顔赤いよ!?暗いのにわかるよ!大丈夫!?熱中症とかじゃないよね!?」

「いや、これは前さんのせいやで・・・」

「え!?私なにかしたの!?」

「無意識かいな・・・」

「え?何が?」

「・・・いや、やって・・・いや、やっぱりええわ」

「え、言ってよ!」

「せやって、おれの勘違いやったらイヤやし!!!」

「え、何が!?白石くん何いってるの!?」

「いや、引かれたらいややし・・・」

「もう、ちゃんと教えてよ!」

「いやー・・・」

「白石くん、教えて!」

 

 

管理小屋の前で足を止めて、白石くんと向かい合う。

歯切れ悪そうに、白石くんは、モゴモゴ言うばかりで、ちゃんと答えてくれない。

あーとか、えーっととか。

そんな言葉で誤魔化してる。

 

もう、私鈍いからちゃんと言ってくれないと気づかないんだから、教えてほしいよ!

 

 

「・・・わかった、それじゃあ、言ったらすぐに逃げていいから」

「え」

「言ったらもう走って行っていいから、教えて!」

「・・・ええの、言っても」

「うん、絶対怒ったりしないから!」

「・・・わかった、ほな言うで」

「うん!」

 

 

白石くんは、意を決したように、私を見て、

 

 

「前さん、青学のやつらと話してる時、俺のことばっかり考えてくれてたんやなって思って嬉しくなった!ほな、おやすみ!」

 

 

そう言って、走って行ってしまった。

 

 

 

(・・・)

(・・・・・・)

(・・・・・・・・え?)

 

 

 

ほんと!?

私、白石くんのことばっかり考えてた!?

 

あれ!?

 

 

 

(写真を教えてほしいと思ったのは・・・白石くんとの文通に入れたいなって思ったからだし・・・)

(不二くんからサボテンの話聞いて、きっと白石くんと話合うよって言った・・・)

(女兄弟って聞いて思い浮かんだのは白石くんだったし・・・)

(ルーキーが生意気って聞いて、部長頑張ってる白石くんを思い出したな・・・)

(あと、海堂くんがランニング好きって言って思い浮かんだのは・・・)

 

 

 

 

( ゚д゚)ハッ!

 

 

 

 

まってまってまって!!!??

え!!???

恥ずかしい!!!!

やだやだ!!

 

 

私!

何言ってんの!?

 

 

 

白石くんのことばっかり・・・

そういえば、不二くんに「白石と仲良いんだね」って言われたっけ・・・

 

 

 

わぁぁぁぁ

 

 

恥ずかしすぎる!!!

 

 

もう!!

 

 

そりゃ、白石くんも顔赤くなるよ!!!

 

 

 

(明日白石くんに謝らないと・・・)

 

 

 

なんだか、私まで顔が真っ赤になって、

そのまま隠れるように、管理小屋の中に入った。

 

 

 

(あれ?)

 

 

 

管理小屋の中は真っ暗で、まぁちゃんの姿がない。

 

 

 

(まぁちゃんどこ行ったんだろ?)

(寝るって言ってたんだけどなぁ・・・)

(ちゃんと海側のほう手伝いに行ってるのかな?)

 

 

時計を見ると、もう8時過ぎ。

おかしいなぁって思って、とりあえず本日2度目のシャワーの準備をしていると、

 

 

ガチャ

 

 

ドアの開く音がして、ドアのほうを見た。

 

 

 

「あ、まぁちゃん帰って来たね!」

「うん」

「どこ行ってたの?海側お手伝いしてたの?」

「いや、ちょっと蟹とってた」

「あ、そうなんだ、とれたかい?蟹」

「うん」

「よかったねそれは!私シャワー浴びようと思うんだけど、一緒に入る?」

「うん、入る」

「・・・ねぇ、きみさ・・」

「うん」

「何かあったの?」

「え」

「なんか、嬉しそうだよ」

「全然普通だよ!ほら、シャワー入ろう!」

「・・・うん?」

 

 

 

なんだか様子がおかしいまぁちゃんと一緒にシャワーに入った。

でも、やっぱりなんかご機嫌なような気がするなぁ。

 

シャワーを浴びて、寝る準備をして、9時も過ぎたし2人共布団に入った。

我々寝るの早いからね!

 

 

 

「明日、朝何時って聞いた?」

「え、何も聞いてない」

「そうなの?山側6時起床って言ってたなぁ手塚くん」

「え!?早すぎない!?」

「ご飯作るんだったらそれくらいだよね~お母さんもそれくらいに起きてるし」

「アタシはいいや、寝てよう」

「いいね、きみは自由だね」

「うん、自由だぞ」

「そっかぁ、私はまた明日みんなのお手伝いしようっと・・・」

「うん、きみはえらいな」

「遭難してるんだもんね私たち・・・出来る限りのことはしないとね・・・」

「なんとかなるよ」

「そう?のん気だねきみ」

「心配しなくても大丈夫だよ」

「心配・・・はしてないよ、元々この島で合宿だったって言ってたし、もしずっと帰らなかったら学校とかで捜索初めてくれるはずってみんな言ってたし」

「そうか」

「きみは、何を持って大丈夫って言ってるのさ?何もしてないのに」

「わかるからね、アタシは」

「わかるのか!すごいなぁさすがきみだね」

「うん」

「じゃあ、眠いから寝ようか・・・」

「うん」

「明日も頑張らなくちゃ・・・」

「うん」

「おやすみ・・・」

「おやすみ」

 

 

 

そう言って、私たちのサバイバル生活1日目は終了した。

明日からもっと基盤をしっかりしていかないといけないから大変だなぁってウトウト考えていたら、

「ふふっ・・・」ってまぁちゃんの嬉しそうな声がして、

あーやっぱりまぁちゃんなんかいいことあったのかなぁって思ったけど、

疲れて眠かった私は、言葉を発することも出来ずに眠りについた。

 

 

(明日は先生方を見つけられますように・・・)

 

 

 

+20