028***謙也

去年の夏。

2年の全国大会で、俺は負けた。

 

その後、

 

俺のために、

俺の代わりに、

 

泣いてくれた彼女のことを忘れることが出来なかった。

 

 

(あーもうホンマに情けな!!)

(グタグタ落ち込んで、)

(ほんで彼女にあたって・・・)

 

 

彼女の涙を見てから、

俺は、彼女へ連絡も出来へんかった。

 

情けなくて、

どのツラ下げて連絡するんやって、自分の中で葛藤があって。

 

 

何度か彼女の地元にも行って、

ホンマはまた、前みたいに会えたら、

その時はちゃんとあの時のこと謝って、

ほんでまた、前みたいに連絡を取り合えるくらいにはなりたいなって思った。

 

(会えんかったけどな・・・)

 

4月になって、大会に向けて忙しくなって、

彼女の地元にも行けなくなって、

 

テニス部となんら関わりのない彼女とは、

もう会えないかもしれない・・・

 

 

そんなことが頭によぎっていた時だった。

 

 

大会前のサバイバル合宿に来た俺は、まさかの彼女の姿を見つけた。

 

 

 

Σ

 

 

 

その時の俺の心境?

そんなん、言わんでもわかるやろ!

 

 

☆:*:・。゚(゚ノД`゚)゚。・:*゜☆わああああああああああ

 

 

三(‘ω’)三( ε: )三(.ω.)三( :3 )三(‘ω’)三( ε: )三(.ω.)三( :3 )ゴロゴロゴロ

 

 

三三三三三三三

 

 

L(゚ロ゚L)ズン(ノ゚ロ゚)ノドコL(゚ロ゚L)ズン(ノ゚ロ゚)ノドコL(゚ロ゚L)ズン(ノ゚ロ゚)ノドコ

 

 

心の中で大騒ぎやったで!!!☆

 

 

 

1年ぶりのその姿を見たら、

めっちゃ可愛くなってた!!!!

 

めっっっっっっっっっっっっちゃ!!!

かわいかった!!!!!!!

 

いや、ほんまに可愛かったんや・・・

 

去年と背はあまり変わらんかったけど、

それがまたちっこくてかわええなと思って・・・

 

しかも、ドレスみたいな服着とるし・・・

何があったんかわからんけど、すべてにおいてかわいいとしかいえない。

 

いや、とにかくかわええねん!!!

ホンマに、顔を覆って叫びたいくらいやった!!

 

 

・・・どうやら、

 

 

会えない間に、

 

 

俺の気持ちは爆発的に膨らんでしまったようや・・・

 

 

 

彼女と一瞬目が合ったような気がしたけど、

 

 

 

(わあああぁぁぁ)

(めっちゃかわええええええええ)

(上目使いやぁぁぁぁぁぁぁぁ)←背の高さが違うからそう見えただけ

 

 

あまりのかわいさに、ヘタレな俺は、目を反らしてしまった・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

目も合わせられんほどとは・・・

 

 

俺は・・・

 

 

重症や・・・

 

 

 


 

 

 

なんだか、体を動かしたくなって、

食後に少し浜辺を走ってた。

 

(あーあかんわ・・・)

(ホンマにアカン・・・)

 

話しかけたいのに、話しかけることもできないこの状況。

過去の自分を殴ってやりたい・・・

あの時、彼女に言いかえして泣かせた自分を殴りたい・・・!!!

 

 

そんなことをモヤモヤ考えて走っていたら、

 

 

 

ガサガサ ガサガサ ガサガサ

 

 

 

ギャ━━━━━━Σヾ(゚Д゚)ノ━━━━━━ !!!!

 

 

 

なななななななななななななな

 

なんや!!!!!

 

 

こ、こんな暗い中で物音がするとめっちゃビビる!!!

 

 

 

なんとなく、今日は月明かりが眩しいから、周りは見える。

あと、懐中電灯もある!

 

でも、やっぱり暗い中で物音すると、めっちゃビビるな!!!!!!!!

しかも無人島で!!!!!!

 

 

え!?

なんか動物とかおるの!?

イノシシとかおったりする!?

いや、でもここ浜辺やで!?

浜辺で何がおるの!?

え?

亀?

もしかして亀とか!?

え、今産卵の時期なん!?!?

 

 

 

そう思って、おれは持っていた懐中電灯をそっと物音のする方に向けた・・・

 

 

 

(え・・・)

 

 

 

そこには

 

 

 

「な、何してんねん・・・!」

 

 

 

なぜか

 

 

 

大量の

 

 

 

海藻を持った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の姿があった・・・

 

 

 

 

「え・・・ホンマになにしてんの・・・」

 

 

 

 

プイッ

 

 

 

 

けど、俺のことはすぐに無視して、向こうを向いてしまった・・・

 

 

 

(あああああ~~~~)

 

 

 

やっぱり・・・

 

怒っとるよなぁ・・・

 

 

 

けど、

やっぱり、ほっとくことはできなくて、

 

俺は彼女に近づいた。

 

 

 

「おーい、何してんねん」

「・・・」

「おーい」

「・・・」

「おーい」

「うっさいな!」

「お、やっとこっち向いた」

「なにさ!」

「いや、こんな暗いところで何しとんのかなって思うて・・・」

「アンタに関係ないじゃん」

「・・・関係ないけど、」

「アタシとアンタは、赤の他人、なんだから、」

 

 

 

あ、

 

その一言で、去年の彼女との会話を思い出す。

 

 

 

(やっぱり・・・)

(あの時のこと、まだ、)

 

 

 

ズキリ

 

 

 

心が痛む。

 

 

 

一度言った言葉は取り消せない。

そんなことはわかっているけど、俺は彼女を傷つけてしまっていた。

 

 

(お前にそんなこと言われる筋合いないわ!!とか言ったしな・・・)

(きついこと言ったよなぁ・・・)

 

 

そう思って、何かをしている彼女のことをジッと見ていた。

 

 

 

ガサガサガサガサ

 

 

ジーーー

 

 

ガサガサガサガサ

 

 

ジーーー

 

 

ガサガサガサガサ

 

 

ジーーー

 

 

「・・・ちょっと、見るのやめてくんない」

 

「あ、すまん」

 

 

 

やはり気になったのか、嫌がられてしまった・・・

怒らせた・・・やろうか

 

 

 

「何してんのかな・・・思うて・・・暗いし、危ないし、俺手伝うで」

「・・・」

「なぁ、まなみ、」

「なんで?」

「え?」

 

 

「なんで、あんなひどいこと言ったのに、そうやって話しかけて来るの!?」

 

 

アタシのことなんて、嫌いになったんでしょ!?

 

 

そう、彼女は言った。

 

 

(え?)(ひどいこと言ったのおれやん・・・)

(傷つけたのおれやんか・・・)

 

(嫌いになんて・・・)

 

 

 

「・・・嫌いになんて、なるはずないやん」

 

 

 

俺がそう呟くと、彼女はハッとしたように、俺の顔を見た。

 

 

 

「すまん、あの時のこと、ずっと謝りたくて・・・」

「・・・」

「ひどいこと言って傷つけたのは俺や・・・」

「・・・」

「ほんで、お前の言うとおり、あの時の試合、ちょっと諦めてたかもしれん」

「・・・」

「図星なこと言われて、ムカついて、ほんで・・・」

「・・・」

「ひどいこと言って、すまん・・・」

 

 

 

(ああ・・・)

(こうも簡単に言えるもんやったんやな・・・)

 

 

あれから、意地張って、情けなくて、彼女に言えなかった言葉が、

こうしてスラスラ出てきてくれた。

 

 

ザザーーッ・・・

 

 

静かな波の音が聞こえる。

 

 

(この環境、だからやろうか・・・)

 

 

なんだか、心は随分と晴れやかだった。

 

 

 

「・・・・・・・」

 

 

 

下を向いてうつむく彼女を見る。

 

 

 

(はぁ、やっぱり)(このままやったらあかんわ!)

 

 

 

「あーーーーー!もうやめやめ!こんな暗い話いやや!」

「・・・」

「仲直りしよ!」

「・・・仲直り?」

「おん、嫌やんか、まともに話も出来んで・・・せっかくまた会えたんやし、また前みたいに一緒に笑おうや!」

「・・・」

「・・・どう?あかん?」

「・・・」

「・・・」

「・・・いいよ」

「ほんまに!?」

「うん」

「おん、ほな、今日からまたよろしくな!」

 

 

 

俺がそう言って、彼女を見ると、

 

 

 

彼女は、

 

 

 

(え、)

 

 

 

「うん!」

 

 

 

嬉しそうに微笑んだのだった。

 

 

 

(・・・・・・!)

(い、今のはあかん!!)

(やばばばば)

(あかんやろーーー!!)

(その笑顔は反則や!!!!)

 

 

 

俺は赤くなりそうな顔を隠しながら、彼女に話しかけた

 

 

 

「で、何してんねん」

「昼寝してたら、隣にジロが寝てて枕によだれがついたから」

「え」

「仕返しにワカメ被って驚かせる作戦」

「え!?」

「・・・しようとしたら、蟹がめちゃくちゃここの岩場にいて」

「あ、ほんまや!」

「・・・蟹の味噌汁食べたいな・・・と思って・・・」

「おお・・・それは美味そうやな」

「・・・蟹、捕まえられる?」

「おん!任せとき!」

「・・・うん」

「ほな、なんかバケツ用意せなあかんな」

「ここにあるよ」

「お、ほな捕まえるわ!蟹め!浪速のスピードスターが全部捕まえてやるっちゅー話や!」

「・・・けんや」

「ん!?」

「・・・ありがと」

 

 

 

(あ、)(これはもう)

(あきまへんわ)

 

 

 

何に対しての「ありがとう」なのか、それには気づかないフリをして、

「おん」とやっと一言絞り出した俺は、

素直やない彼女の横で、照れ隠しのように蟹をとるのやった。

 

 

(蟹さんめっちゃ捕まえたで!)(けど、俺は山側やったから食べれんかったけどな)

(彼女が喜んでくれたからよしとする!)

 

 

 

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