「ねぇ、誰かと付き合ったこと、ある?」
そう聞くと すっごい嫌な顔された。
亮「は?」
ジロ「何?」
岳人「喧嘩売ってんのお前」
琉夏「こいつらに居ると思ってんの?」
琥一「いやオメーにもいねぇだろうが」
俺こん中じゃ一番モテるし! と琉夏が言えば
マジうける俺だC~ とジロちゃんが笑い
俺だってモテるけど付き合わねぇだけだからな! とがっくんが怒り
俺は今はテニスで精いっぱいなんだよ! と亮がかっこつけて
はー、くだらね とコーイチくんが呆れた。
(誰も彼女いたことないのか・・・)
(誰かに相談相手になってもらおうと思ったんだけどな・・・)
「ごめんね、変なこと聞いて」
と、謝ると みんなムキになって 変なことじゃねーし謝んな! って怒られた。こわい。
岳人「大体なんでそんなこと聞くんだよ?」
亮「お前からそんな話するとか珍しいな」
ルカ「好きなヤツでも出来たのか?」
ジロ「え!?なになに!?さおり好きなやついんの!?」
(ドキッ)
みんなに聞かれてタジタジになってしまった。
ど、どうしよう、墓穴を掘った・・・
聞かなきゃよかった・・・
あああ、上手にごまかすことが出来ない私・・・
ああああ・・・
岳人「まさかさおりに好きな男できるわけねーじゃん!一番そういうのに疎いんだから!」
とガックンが言ってくれたので みんなもそりゃそうだなって気がそれて少しほっとした。
ナイス!がっくん、たまにはいいこと言う!グッジョブ!
でも、あれ?なんか馬鹿にされてないか?
亮「どーせまた告白でもされて悩んでるんだろ?」
琥一「お前真面目だからな」
岳人「そんなん気にしなくていいって」
ジロ「まなみ見てみ?告白してくる男なんてボロ雑巾のように断ってるCwww」
琉夏「てかまなみに告白するやつマジで頭おかしいよな・・・その点お前はいいやつだから押せばイケルって舐められてんだよ」
今度そんなことあったら俺たち呼びな?ってか、まず呼び出しされて一人で行くなって危ないから
と、なんだかんだ幼馴染の5人は私には優しくて
落ち込んでるとこうして励ましてくれてありがたい。
まぁ・・・でも普段は容赦なく トロイとかニブイとかつまんねーとか散々ボロクソに言われるんだけどね・・・。
(落ち込んでるときだけはすごい優しいよ)
(・・・ってことは私今みんなから見ても落ち込んでるのか)
そう思うと ますますシュン・・・とうなだれてしまう。
さお「・・・今日はもう帰るね」
琥一「送ってく、バイク乗れよ」
琉夏「さすがコウだね、漢だ!」
ジロ「かっくい~~~」
さお「や、いいよ、まだ明るいし、近いし。コーイチくんこれからバイトでしょ?」
琥一「けどついでだからいいぜ」
さお「ほんとに大丈夫!海の音聞きながら・・・歩いて帰りたいから」
琉夏「まぁさおりはこうなったら絶対バイク乗んないよね、頑固だから」
琥一「・・・わかった、気ぃつけれよ」
岳人「まなみのアホがいたらなぁ」
ジロ「まなみのアホは歌仙さんに宿題やってなくてみっちり怒られてるらしいC~www」
琉夏「しばらく外出禁止らしいよw」
岳人「マジであいつ馬鹿www」
ジロ「リヴァイ先生にもみっちり叱られてんのにwww」
亮「・・・てかさ、お前」
大丈夫?
そう、亮が心配そうに 私を覗き込んで
他の4人も サッと私を見た。
(あれ私)
(今どんな顔してる?)
さお「だ だいじょうぶ!じゃ、また明日ね・・・!!」
そうWest Beachを走って後にした。
(・・・だって、なんて言っていいか自分でもわかんないんだもん)
海の音がザザーと聞こえる。
夕日色に染まる海はとても綺麗だった。
恋愛とか、付き合うとか、今まで本当にわからずに生きてきたから
光忠に「男の言う好きって言葉は本気じゃないから笑顔で断るんだよー」って教わって
何となく前にみんなでそんな話になった時も 男の人は体が女なら相手は誰でもいいのかな って認識で
別に私じゃなくてもいいんだ
って思ってたから、相変わらず 恋だの愛だの興味がなくて。
正直、今の生活はすごく楽しかったし、
それが変わることもないと思っていた。
だからこそ
白石くんに好きだと言われたことは 考えれば考えるほどショックだった。
(好きって、なに?)
(どうして白石くんが私なんか?)
(白石くんも彼女が欲しいだけ?)
(うちの学校女の子少ないからたまたま?)
そんなことを思うたびに ギュッと胸が苦しくなって
安易に いいよ と返事をしてしまった自分を深く恨んだ。
(・・・だって、楽しかったんだよ)
(入学式のあの日 声をかけてくれて)
(なんてかっこいい人なんだとドギマギもした)
(それから学級委員になった時も)
(すぐに副委員長になってくれて・・・)
(どこにいてもにこやかに声をかけてくれて)
(私もそれが嬉しくて笑って答えて)
笑って
いたんだ、いつも彼の隣にいる時には。
その好意が 恋愛のものではないと、思っていたから。
白石くんのことはかっこいいと思ってたよ?
心の中でキャーキャーも言ってたしホワホワもしてた。
でも、私みたいな女好きになるわけないと思ってたから
だから 彼をアイドル化して、憧れの対象として 素敵だと思ってた。
優しくて頭もよくて気が利いておまけに最高にかっこよくて
本当にキラキラと輝く王子様のように感じていた。
(だからこそ)
(怖いんだよ)
女性に困らない彼がなんで私を?
私みたいなのをなんで?
誰かと間違えたんだろうか
手ごろな相手が欲しかったんだろうか
どんな意図で 付き合おうなんて言ったんだろうか
好きなんて
言わないで ほしかったのに。
(あの距離が好きだったのに)
(何も考えずに ただ白石くん本当に優しいなーって浮かれてるだけの日々が)
自分に自信がなさ過ぎて
自分のことを好きだと言ってくれた彼の言葉すら疑ってしまう。
素直に信じて「嬉しい」って感情は生まれて来なかった。
ただただ、なんであんなことを言ったのか、それが本心なのか、何にもわからなくてこわくて疑ってばかりいて。
ネガティブだから 全てマイナスに感じてしまって
モヤモヤと胸が騒いで
彼の事を避けて
彼から逃げて
(学校にも、行きたくないよ)
あの日に戻れたらいいのにって そう毎日思ってる。
(・・・でも、告白断ったとしても)
(あの日々には戻れないな・・・)
(なんか気まずくて・・・)
(だから告白なんかしてほしくなかったよ)
(なんで白石くんあんなこと言ったんだろ)
(今までのままでよかったのに)
(なんで私なんかを好きって・・・)
好きって 言われた。
あの時の彼は 間違いなく、 嬉しそうにしていた。
(わかんない)
(もし白石くんが本当に私の事を好きだとしても)
(それを信じることができたとしても)
(私は、どうなんだろう)
(私は白石くんのこと・・・どう思ってるんだろう)
海に 日が沈もうとしている。
もう東の空には 一番星が輝いている。
(はぁどうしよう)
(どうすればいいのかな)
(まぁちゃんには図々しいって怒られちゃってさ)
(だから私も彼に捨てられるまでは付き合おうって決めたのにさ)
(・・・まだカップルらしいことも一度もしてないし)
(本当にどうしていいのかわからないんだよ)
困ったな
そう思いながらトボトボと 道を歩いていた。
ぬっ
その時だった。
私の目に 暖かいものが触れて 急に目の前が真っ暗になった。
「きゃっ!?」
ビックリして声を出すと
笑い声と共に だーれじゃ! と聞こえた。
(・・・・・誰”じゃ”って)
(そんなの、私の知る限り、)
「・・・むっちゃん」
「お!!よぉわかったのぉ!!」
すごいすごい、とむっちゃんは笑いながら手をよけて 私の隣に並んだ。
「もぉ、ビックリしたよ」
「すまんすまん」
「今帰り?」
「あぁ、バイト帰りじゃ!こんな時間におなご一人で歩いとったらいかんぜよ!!」
もうわしが来たから安心しとおせ!
と、相変わらず楽しそうにむっちゃんは言った。
「さおり、部活帰りながか?」
「うん、部活終わって少しだけみんなでWestBeachに寄ってたよ」
「あいつら~こぎゃん女子ば送りもせんと何しちゅうに!」
「いいのいいの、私が送らなくていいって言ったんだし!」
ちょっと考え事したかったんだ
そう言うと むっちゃんは私の顔をじっと覗き込んだ。
(わ)
(むっちゃんの眼、すっごい綺麗)
咄嗟の事に驚きながら そんなふうに思った。
「・・・さおり、さまーきゃんぷっちゅーんから帰ってきてから元気ないぜよ」
まるで全てを見透かすように むっちゃんは言った。
私は ドキッとしながらも
その綺麗な真っ直ぐとした瞳にそれ以上ごまかしも嘘も効かないんじゃないかと、 なんとなく素直に言葉が溢れてきた。
「・・・あ、あのね」
「どうしたが?」
「わからないの」
「ん!?」
「わ、私にはね、難しいの」
「何がじゃ?」
「・・・恋とか、愛とか、男とか、女とか」
今までの関係が壊れるのが 怖いの
そう話しながら 泣きそうになった私を
最初は驚いて見つめた彼は
次の瞬間には もう
笑顔を見せてくれていた。
「がっはっは、そんなこと気にしちゅうがか!」
「だ、だって、」
「気にしな気にしな!!さおりは考えすぎなんじゃ!」
「そうかな・・・?」
「まーたおっこうなこと言うちょるがや!」
「・・・・」
「さおりはさおりじゃ!わからんかったら無理にわかることなかがよ!!」
「・・・」
「さおり、おんし今なんぼんなった?」
「・・・15歳だよ」
「まだ!15!たったの15やなか!」
まだまだ子供じゃ!わかれ言うほうが無理やき!!
そう、笑って言ってくれるむっちゃんの笑顔には
小さい頃からどれだけ救われていることか。
(・・・そう)
(むっちゃんは 笑ってくれるんだね)
そんなこと、大したことないよ と言うように
私を 励ますように
(むっちゃんはいつも 笑顔で笑ってくれる)
「心配せんでもこれからわかってくるぜよ」
まだ子供やき、無理して大人の真似して恋だの愛だの語ることなか!!
と、
言ってくれたむっちゃんの言葉は
すんなりと 自分の中に溶け込んで
(・・・そうか私)
(考えすぎていたのかな)
(そういうのは大人になれば自然とわかるものなのかもしれない)
ガチガチに これからとうしようとか悩んで落ち込んでたのがばからしく感じて
久々に胸がスゥっと楽になった気がした。
「・・・むっちゃん、すごいね」
「なにがじゃ?」
「むっちゃんの前向きなとこ、すごい好きだな」
「わっはっは!なんちゃーないなんちゅーない!!」
(・・・とりあえず)
(明日は逃げずに 話してみようかな)
夕日に照らされた私とむっちゃんの影は とても長く伸びていた。
家に近づくといい匂いがしてきて
きっと今夜はから揚げじゃ! なんてむっちゃんは相変わらず笑っていた。