海側へ無理矢理連れていかれて、とりあえずまずは探索するから着替えて来いって言われた。
さおちゃんとチームが分かれてしまった悲しみに暮れながら管理小屋に戻ると、さおちゃんがいて、大喜びで一緒にシャワーを浴びたのだった。
(お風呂がないのが不満だけど、シャワーあるだけまだマシかな)
「荷物無事で良かった・・・!」
「ね、スーツケースってすごいね。中濡れてなかったね」
「これ榊グループで開発したスーツケースだからなぁ。防水仕様なのかなぁ」
「すごいねぇ」
「わぁい、自由帳も無事だぁ!」
「え・・・きみこんなところで漫画描く気だったのかい」
「うん」
「すごいなきみは・・・」
「きみは?ゲームボーイ無事だった?」
「無事だった!ポケモン無事で良かった~」
「よかったなぁ」
「シャンプーとかタオルも無事でよかったわ」
「ね、ホントにね。シャワー浴びれて良かった・・・シャワー管理小屋にしかないっぽいじゃん?」
「みんなに申し訳ないね・・・」
「いいよ、男と女じゃ違うんだから。海とか川でいいしょ」
「そんな・・・野性的な・・・」
「だって、ここサバイバルする合宿所だから」
「そっかぁ・・・」
「はぁ・・・じゃあこのままゴロゴロしようぜ」
「え?」
「はぁ・・・ベッド最高だな・・・ふかふか・・・」
「私、白石くんと探索の約束してるから行くね。虫よけスプレー持って行くね」
「え」
「じゃあね~」
パタン
あれ、さおちゃんが行ってしまった。
・・・
・・・・・
・・・・・・・・・
な~に~が~白石だ~~~~~~~~~
なんださおちゃんめ!!
浮かれ過ぎにもほどがあるだろ!!
なぜ立海で行動しない!!
なぜ白石と行動する!!
そりゃ久しぶりにあって嬉しかったのかもしれないけど!!!
・・・久々・・・
・・・そう・・・
久しぶりに会ったんだ・・・
久しぶりだったんだよ・・・
(・・・なんかでかくなってたなぁ・・・)
(アタシ見て驚いた顔してた・・・)
(そりゃそうだよな・・・)
アタシも久しぶりに会ったんだ。
おしたりけんやに。
1年ぶりに。
あれから、去年の大会の後から、どうしても気まずくなってしまって、もう連絡が来なくなった。
最初はアタシ悪くないと思ってたけど、時間が経つと言い過ぎたかなぁ・・・ってちょっと思ったりして・・・
うん・・・
でも、あいつも言いかえしてきたしおあいこだ!って自分に言い聞かせてた。
(この前の山本のおっちゃんの話が本当なら・・・)
(会いに来てくれてたのかなー)
アタシに何か話があったんだろうか。
山か海か選ぶ時に思わずあいつの事を見てしまった。
目が合ったけど、
一瞬で、
(反らされた・・・)
私の視線はそれから、あいつと合う事はなかった。
むかつく
ホント、むかつく
そんで
最悪・・・
だから、アタシは海側で、
あいつに会わないようにしようと思ったんだ・・・
ドンドンドンドンドンドン!!!
「ねぇねぇまなみ!何してんの!?うんこ?ねぇうんこ?」
「や、やめろよジロー・・・」
「女性にそれはひどいですよ!」
「大丈夫大丈夫!まなみ女じゃないC~!」
「このまま海に沈めてやろうか?????」
「うわ、鬼だ・・・」
「今から寝るとこだったのに!何しにきたのさ!」
「もう探索始まってんだよ」
「まなみさんを迎えに来ました!」
「チョタ可愛い・・・でも、パス。寝る」
「なんだよ、やる気ねぇな」
「やる気なんてあるはずないよ」
「一緒に探索しようぜ、お前宝探し好きだろ?」
「・・・宝探し・・・?」
「ああ、この島なんかありそうじゃね?」
「(亮まなみの扱い上手いな~)大判小判が埋まってるかもしんない!」
「わぁ、夢がありますね!」
「だが、断る!」
「なんでだよ」
「アタシは宝探ししたい時に宝探しするんだ!人に言われてするもんじゃない!」
「そうかよ・・・んじゃいーわ、あとでな」
「まなみさん、また~」
「俺もまなみと寝る~!」
「ダメだ、行くぞ」
なぜか氷帝メンバーがやってきた・・・
あいつらは、私のこと大好きだよなほんと・・・
(みんなと一緒に探索しても良かったけど、)
(でも、なんか)(今はそんな気分じゃないんだよなー)
そう思って、アタシは枕に顔を埋めた。
「白石く~ん!!」
私は、シャワーを浴びて、着替えてから、白石くんが待っている山側のロッジへ向かった。
「お、前さん」
そう言って私のほうを見て笑う白石くんを見て、ドキリと心臓が高鳴った。
やっぱり、白石くん、すごくかっこよくなってるね。うん。
(なんだか、知らない男の人みたいだな・・・)
(本当に、いつも文通してるあの白石くんなのか疑っちゃうよ)
「ごめんね、お待たせ!」
「いや、大丈夫やで。金ちゃんがうろちょろしとったから、ちゃんと手伝うように言ってたとこや」
「あ、そうなんだ!部長大変だね」
「せやなー、癖の強いのばっかりやからな。でも楽しいで」
「楽しいならよかったよ!・・・あ、これ虫よけスプレー!白石くんにかけてあげるね!」
「え、ほんまに!?おおきに!」
そう言って、私は、白石くんにシューッと虫よけスプレーをかけた。
「大体大丈夫だと思うよ!」
「すまんなぁ、俺ら荷物船の中に忘れてもうた・・・」
「そうなんだ・・・金ちゃん追いかけるのに夢中で?」
「いや、スピードめっちゃ速くてな。モタモタしとったら見失いそうやったから必死で・・・」
「そうだったんだ・・・金ちゃんすごすぎるね・・・」
「あ、俺も前さんにスプレーしたるわ!」
「あ、自分でしてきたから大丈夫だよ!」
「そう?」
「あーでも、首の後ろ出来てないかも・・・ちょっと首の後ろお願いします」
私はそう言って、軽く下の方で縛っていた髪を上にあげながら後ろを向いた。
「・・・」
でも、一向にスプレーがかかる様子はなくて・・・
「えっと・・・白石くん・・・?」
「あ!!!すまん!!!!」
「え、どうしたの????」
「あ、いや、何でもあらへん!すまん!!ホンマにすまん!!!」
「え、別にそんなに謝ることないけど・・・ホントにどうしたの???」
「ああああホンマにすまん!そのままでおってな!」
シューーーーー
今度はちゃんとスプレーがかかったけど、なんだか量が多いような・・・?
冷たくて身じろぎしながら、白石くんを見る。
「白石くん、もういいよ!ありがとう!」
「あ、おん!」
「けっこう首にかけると冷たいね」
「せやな・・・」
「あれ?どうしたの?なんか疲れた顔してない?」
「いや、なんでもないねん・・・」
「そう?これから探索するの大丈夫?出来る?」
「おん、大丈夫大丈夫・・・」
「本当に大丈夫かなー?じゃあ、いこう白石くん」
「・・・はい!」
こうして2人でロッジの中を探索する。
「変わったもんはないなぁ」
「あ!シーツたくさんあったよ!」
「お、ほんまや」
「これで毎日シーツ洗えるね!」
「せやなぁ、暑いから汗かくやろうし良かったわ」
「でもどこで洗うんだろう・・・?」
「あー洗濯機とかロッジの中にはあらへんかったなぁ」
「洗濯機は管理小屋にもなかったんだよね・・・」
「ほな、川・・・とか?」
「川・・・」
「川しかないよなぁ・・・」
「え・・・大丈夫なのかな・・・?なんか・・・いろいろと・・・」
「せやなぁ・・・一応サバイバル用の合宿所やし、そうなることも想定してるんとちゃう?」
「そうなのかな?とりあえず、他の人が洗剤見つけてくれてるといいなぁ・・・洗濯したいもん・・・」
「女の子やなぁ」
「え?なんで?」
「いや、みんな一張羅やん?けど、服より食料とかのほうが心配しとるからみんな」
「あ、ああ~」
「女の子はまた別のところでも悩むんやな」
「うん、そうだね。でも、みんなより恵まれてるよね・・・着替えとか私たちだけだもんね持ってるの・・・なんかごめんね?」
「いや、それはええねん!むしろ、前さんが困らなくてよかったわ!」
「し、下着とか・・・あの、短パンで新しいのあるから・・・もし、新しい下着履きたかったら、私の短パンで良ければパンツ代わりにして・・・いいよ?」
「え、下着?」
「・・・うん」
「・・・」
「・・・」
「・・・プッ」
「・・・?」
「はーはっはっはっはっは!!!!前さん!!!何言うてんねん!!!めっちゃおもろいなやっぱ!!!!」
「え!?」
「はははは!!!せっかくやけど、遠慮しとくわ!!はっはっは!!!」
「も、もー!そんなに笑わないでよ!!」
「せやって!そんなこと言うとは思わんから!!」
「ええ~・・・」
「はははは!!ホンマ、前さんといるとおもろいわ!!」
「笑わないでってば~~~」
こうして、しばらく白石くんが笑ったあと、
見つけたものの報告をするため、手塚くんたちの待っている場所に戻った。
白石くんは、ずっと楽しそうにしてくれて、ずっと隣にいてくれたから、なんだか私もこんな状況なのに、とても楽しく感じた。
(でも、やっぱりあんなに笑う事ないと思うよ!)