024***さおり

8月。

関東大会が終わり、夏休みに入って、

これから全国大会という時に、真田に言われた。

 

 

「全国大会の前に、無人島で生活し、精神と肉体の鍛錬の合宿に行く!」

 

 

え・・・

 

無人島・・・

 

 

無人島・・・?

 

 

南の島!?

 

 

ワァァァァ♥

 

 

バカンス!?

 

 

 

一瞬バカンスに行けるかと思って喜んだんだけど・・・

 

 

 

「あ、レギュラー以外はいけないことになってるんだ。もちろんマネージャーも」

 

 

 

そう、幸村がつけたした。

 

 

 

えええええ

 

 

 

幸村はいよいよ全国大会からテニス部に戻ってきたよ!

これはもう期待出来るね!

 

幸村が帰って来た時は、みんなでお帰りなさいパーティーしようかって話にもなったけど、

関東大会で優勝できなかったことで、そんなことしてる場合じゃないよねって言って、結局いつも通り練習に励んでたんだ…。

 

幸村が帰ってきたタイミングでバカンス!?

 

って喜んだんだけど…

 

 

 

「私バカンス行けないの・・・?」

「バカンスではない!鍛錬だ!合宿だ!」

「で、でも南の島なんだよね?海とかあるんでしょ?」

「うんあるよ。でも、食べ物も全部自分たちで捕ったりしないといけないし、女の子には危ないよ」

「いわばサバイバルですね」

「そ、そっか・・・バカンスというよりサバイバルか・・・じゃあ、行かなくていいけど・・・海・・・」

「海なら毎日見てるだろい」

「お、沖縄の海みたいな・・・綺麗な海・・・見たい・・・」

「残念だけど、今回はさおりは留守番だね」

「わ、わかった・・・」

 

 

 

 

こうして、私は、南の島の合宿に行くことは出来ないと言われた。

 

 

 

 


 

 

 

「行こう」

 

 

家に帰って事情を話すと、まぁちゃんがそう言った。

 

え?

むしろ、テニス部とは関係ないまぁちゃんが行こうって言うの???

 

 

「え、きみどういうことそれ、きみ行くの?」

「行くよ」

「え!?行くの!?」

「うん、だってさ、今日さ、3バカにさ」

「うん」

「自慢されたさ」

「え?」

「南の島いってくるって、お前みたいに暇じゃなくて忙しいって」

「あー・・・いいそう・・・」

「合宿のくせに!あいつらは私に自慢するんだ!!!」

「う、うん・・・」

「だからムカついた」

「そうか・・・」

「アタシは着いて行くことに決めたよ」

「決めたのかい!」

「決めた。南の島でバカンスだ!」

「えええ~どうやってさ~」

「良い考えがある」

「何?」

「船は榊グループの船って言ってた」

「氷帝の?監督?」

「そう。そして、跡部もスポンサーとして一枚かんでるらしい」

「おお、跡部くんが絡んでるのはなんか軽く聞いたわ!招待されたとかなんとか」

「そりゃ南の島で合宿とか、跡部くらいでしょ考え付くの」

「・・・まぁね」

「だから、明日作戦決行してくるから!」

「え!?明日!?」

「うむ、まぁアタシに任せてくれ!」

「・・・心配だなぁ~忍び込む方法考えるんじゃないよね~」

「いや、合法で行ってみせるから大丈夫」

「う、うん、わかった、きみを信じるよ・・・」

 

 

 

そうして、やたら張り切っているまぁちゃんに、任せてみようと思った。

 

(本当に大丈夫かなぁ~?)

 

 

 

 


 

 

 

次の日。

 

 

 

「さおりくん、聞いてくれ」

「うん、どうだった!?」

「無事に榊監督から、乗船OKの許可が出たぞ!」

「え!?すごすぎる!!どうやったの!?」

「それがね・・・あいつらの応援団ってことになってる」

「え!?」

 

 

 

「全国大会で頑張る彼らを応援したいんです!先生、お願いします!!テニス部のみんなの応援をさせてください!!私、船の中でこれから全国大会を頑張る彼らに音楽で激励します。私のお姉ちゃん、ピアノ弾けるので、姉はピアノで、私はファゴットで!私たち、今でもみんなの為に曲を一生懸命練習してて…いつ披露するか考えていたんです。合宿の話を聞いて、船の中しかないって…。姉は立海の生徒ですし、全国のテニス部の選手がいる場で披露したいんです。激励したいんです…だって…私たち仲間だから…私、テニス部のみんなの事、心から応援しているんです…。だから、お願いします!邪魔はしませんから、私も連れて行ってください!お願いします!」

 

 

 

「みたいなことを必死に訴えた」

「ひええ~~~~」

「そしたら、榊先生泣いちゃってさ~」

「え…?」

「榊先生、音楽の先生だから、同じ音楽を愛するものの気持ちはわかるとか言い出してwww」

「ええ・・・」

「だから、当日まで練習頑張るぞ!」

「なんてことをしてるんだきみは!時間ないしょ!!」

「うん、出発まで、3日!」

「ええ~!?無理だよ!?」

「大丈夫だ、ずっとピアノを習っていたきみならできる!」

「うえええむりぃぃぃ!きみだって、中2から初めて出来るの!?ってか、ファゴットとピアノってどんな組み合わせさ!?」

「いいからがんばるんだよ!!激励終わったら、榊グループの他の南の島のホテルに連れてってくれるから遊んでていいって」

「マジ?やる」

「さおちゃん、双子の維持見せてやるぞーーーー!!」

「おーーーー!!」

「あ、ちなみにサプライズってことになってるから、みんなには内緒でな★」

「おおう・・・」

 

 

 

こうして、謎のまぁちゃんのやる気によって、私たちは南の島に行くことになったのだった…

 

それから、3日間・・・地獄の特訓の始まりだった…

 

 

(でも、バカンスの為なら頑張る!!)

 

 

 


 

 

 

そして、当日。

私たちは、充分な支度をして、船に乗り込んでいた。

もちろん、みんなには内緒で。

 

 

 

「なんか、緊張する…」

「大丈夫だよ練習したから」

「ちゃんと弾けるか心配だよ…」

「大丈夫大丈夫」

「それにしても、きみ、このドレスどうしたの」

「なんか榊先生からの差し入れ」

「榊先生、きみのこと信じすぎじゃない!?どうなってるの!?」

「榊先生、アタシのこと大好きだからな!」

「そうなのか…。こんな立派な衣装で緊張するよ…」

「ああ・・・サプライズだから出ていけないの悲しい・・・早くご馳走食べたい・・・」

「あ、フォアグラあるって、伴先生が言ってたなぁ」

「マジで!?早く終わらせて食べよう!!」

「ううっ・・・緊張して食べるどころの話じゃないよ・・・」

 

 

 

そんな話をしていたら、

 

 

 

バチン

 

 

 

会場の電気が落ちた。

 

 

 

榊「諸君、きみたちをぜひ激励したいというゲストがいるので、前の舞台を観てくれ」

 

 

 

そう、榊先生がマイクで喋って・・・

 

ライトが当てられたカーテンの後ろから、私たちは出て行ったのだった・・・

 

 

 

「・・・は?」

「さおり・・・?」

「あぁ!?」

「なんでお前らがここにいんだよ!?」

 

 

 

「ふふふ・・・驚いておるな・・・」

 

 

 

(ううっ・・・緊張する・・・)

 

 

 

私は、ピアノの前に座り、楽譜を開いた。

 

そして、まぁちゃんは、

ファゴット・・・かと思いきや、ファゴットは自力で練習するのはやはり難しかったようで、

マイクの前に立った。

 

 

 

「みんなのために歌いますみんな、全国大会頑張ってね

 

 

 

そうして、私が弾きはじめたのは「負けないで」

その私の演奏に合わせて、まぁちゃんが歌う。

 

あ、なんかチラッと見えたけど、榊先生泣いてる・・・

本当に泣いてる・・・

 

 

 

こうして、私は曲を無事に弾き終わり、まぁちゃんは歌いきったのだった。

 

 

 

パチパチパチパチパチパチパチ

 

 

 

拍手喝采・・・とまではいかないというか、

幼なじみのみんなは野次を飛ばしているけど、大体のみんなは拍手してくれた。

こうして、緊張のステージは無事に終わったのだった。

 

 

 


 

 

 

「で、なんでいるのかな?」

「幸村怖いよ、怒んないで!」

「怒ってはいないよ、そのドレス可愛いし…2人共似合ってたし、激励だと思えば嬉しかったよ」

「ほんと!?」

「でも、それはそれ、これはこれ。なんでこの船に乗ってるの?危険だからダメだって言ったよね」

「ううっ…やっぱり怒ってるー!!」

 

「お前ら何してんだよ!?」

「その衣装やばE~。おっぱい目立つ~」

「は?こいつ貧乳だぜ?むしろえぐれてるから」

「よし、今すぐ海に投げ込んでやるから甲板でな」

「まなみさ~ん俺たちのためにありがとうございます!俺感動しました!」

「お~、チョタは良い子だね!」

「ったく・・・今すぐ降りろとも言えねーし」

「榊先生がOKしたからな。この船の所有者がな!!」

「…まぁ先生も何か考えがあるんだろうが…」

「は!?そう言えばお前らに構ってる暇はないんだった!フォアグラー!!」

 

 

 

だーっ!!!!

 

 

「ふぉ、ふぉあぐ・・・」

「あ、わり!これで最後だった!」

がーーーーーーん!!!

「伴さんと最後の晩餐・・・ぷっ」

「ダビデ!!」

「わっバネさんタンマ!!!」

「許した」(イケメンだったから)

「え?」

「きみたち双子なの?」

「俺たちも双子だよ」

「おお、双子仲間か!」

「俺たちは六角中なんだ、きみは?」

「アタシ氷帝、さおちゃん立海」

「さおちゃんって…あっちの子か?なんかめっちゃ泣きそうになってるけど」

「過保護な人たちに怒られているからな、そろそろ助けに行くか」

「女の子にモテモ・・・え!?お話しする前に行かないで!」

 

 

 

こうして、まぁちゃんが幸村に怒られている私を助けに来てくれて、ご飯を食べたあと、私たちは部屋に戻ったのだった・・・

 

 

 

「はぁ・・・フォアグラは食べれなかったけど、美味しかったな・・・」

「私全然食べた気しなかったよ~」

「怒られてたからなきみ」

「危ないからってすごい怒られたわ・・・」

「過保護だなぁ」

「は~もうお風呂入ろう~」

「うん、このドレスぬ・・・」

「・・・?まぁちゃん?」

「まって、」

「ん?」

「きもちわるい」

「え!?」

「え、めっちゃ船揺れてない!?」

「うん、揺れてると思ってた!」

「ちょっと電気めっちゃ揺れてる!!」

「あ!本当だ!落ちてきそうなくらいでしょ!」

「やば・・・しぬ」

「まって、酔い止め飲んだけど、これはヤバい・・・」

「きみ・・・アタシより胃弱いからやばいでしょ・・・」

「あ、やば、意識したらもうダメだ、トイレ・・・」

 

 

 

バチッ

 

 

 

「最悪!停電だ!!」

「やだやだやだやだ!!!」

「え!?しかもめっちゃ斜めになってきた!!」

「まってまって!!やばい!!なんで!?」

「そういえば、なんか榊先生が言ってたけど・・・なんだっけな・・・」

「え!?きみちょっと!!やだよ!!」

「やべぇ・・・ここでジ・エンドか・・・」

 

 

 

バンッ!!!!

 

 

 

「何やってるんだ君たち!!逃げるぞ!!」

「え!?何が起こってるのさ!?」

「船が座礁したんだ!!」

「えええええ~~~!?」

「ほら!!早く来いって!!」

「いやだ!!!」

「!?」

「まぁちゃん早く逃げようよ!」

「アタシは!このスーツケースの荷物を!諦めたくない!!」

「あ、私もだ~大事なものたくさん入ってる~~~!」

「ったく!そんなこと言ってる場合じゃねーだろ!」

「いやだ!」

「わかった、じゃあみんなで運ぶから早く救命ボートに乗るんだ!」

「頼んだ!」

「よろしくお願いします~~~~」

 

 

 

 

こうして、私たちは、夜の海に救命ボートで投げ出されることになった。

想像以上のひどい嵐と、沈んでいく船を見ていると、体の震えが止まらなかった。

救命ボートもひどく揺れて、

 

 

 

「あ、思い出した。『何があっても部屋から出ないように』だった」

 

 

 

そう、まぁちゃんの呟きが聞こえたような気がするけど、

 

私はそのまま意識を手放した。

 

 

 

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