4月。
いよいよ私たちも3年生になりました!!!!!!!!!!
テニス部も全国で有名なのでたくさんの部員が入りました。
中でも…
「先輩!これここに置いていいでヤンスか?」
し
い
た
か
わ
い
い
いや~~~~~~~
もうね!しい太は可愛いね!!!
去年の赤也も可愛いと思ったけど、しい太かわいいね!!!
他の1年生も可愛いんだけど、しい太めちゃんこ可愛い!!!!!
しい太はちょっと雑用っぽいことやってて、私のこと手伝ってくれることが多いからね。
他の子よりも話すし、とにかく可愛い。
可愛いとしか言わないけど、可愛い。
かわいいよーーーーーー!!!!
「先輩、ニヤニヤしてどうしたでヤンス?」
「しい太かわいくて」
「いや、お前しい太と身長かわんねーじゃん」
「身長関係ないじゃん」
「先輩!俺は!?」
「赤也大きくなっちゃったから…」
「え…」
「お前はwww身長関係ないんじゃなかったのかよwww」
「たるんどる!!来月は幸村も退院するんだ!気をひきしめんか!!」
そう!
私の機嫌がいいことにはもう1つ理由があって・・・
幸村が退院するの!!!!
まだ学校に来たり、部活に戻るのは無理できないみたいだけど、
それでも退院するって聞いて本当に嬉しい!
(リハビリ、頑張ったんだって!)
(かなり動けるようになったって教えてくれた!)
(幸村も嬉しそうだから、私も嬉しい!)
(そしてしい太が可愛い!)
3年生になって、最近は良いことづくめで、
幸村のことが悲しくて泣いてばっかりだった私だけど、
やっと、気持ちが浮かんできたんだ。
(もう少し・・・)
そして、今、私は緊張で口から心臓が出そうになっていた。
なぜかというと、
今日は・・・
白石くんの誕生日なのだ!!!!
実は、2月の私の誕生日。
白石くんから電話が来た。
ビックリした。
「サプライズやで!」って笑ってたけど、本当に驚いて…
だから、私も「誕生日に電話する!」って言ったものの…
(緊張する・・・)(吐きそう・・・)
白石くんが帰って来るのは7時。
今日は、部活は自主練だったから、早めに帰ってきた。
あまり遅くに電話しては悪いから、7時になった瞬間に電話かけようと思って!
電話の前で緊張しながら正座している私を見て、まぁちゃんが「そこまで緊張しなくていいしょ」と言っている。
でも、緊張するしょ。
7時。
白石くんは、部活から帰ってきただろうか?
あまりこの辺では聞きなれない市外局番を押す。
それから、うしろの数字も。
(あー、緊張する…)
プルルル…
(吐きそう・・・)
プルルル…
電話のコール音が鳴って、増々緊張してしまう。
ガチャ☆
(わっ!)(だ、誰か出た)
(白石くんかな!?)
『もしもし?』
(あ、女の子の声!)
電話の先の声は女の子。
おそらく、白石くんのお姉さんか、妹さん…だと思う。
「あ、あの、まえと申しますけど…」
『え!?』
「くらのすけくん、いますか?」
『あ、はい、今代わります!』
そして、電話の先から、『くぅちゃーーーん!!でんわーーー!!』という声が聞こえた。
(く、くぅちゃん???)(え?白石くん、くぅちゃんって呼ばれての?)
(・・・・・・・・)(ふふふ・・・)(かわいい・・・)
なんだか、ほっこりしてしまった。
そして、電話の向こうから、慌てた声の白石くんが・・・
『え、ちょ、前さん!?』
「くぅちゃん、お誕生日おめでとう!」
『・・・おおきに。っちゅーか、くぅちゃんって聞かれてもうたんか・・・』
「うん!可愛い呼ばれ方だね!」
『あー、妹やわ・・・』
「妹さんか!」
『おん・・・え、よく誕生日覚えてたな!』
「覚えてたよ!去年もお祝いしたよ、手紙だったけど」
『まさか、電話来ると思うてなかったから油断してたわ・・・』
「白石くんも、誕生日に電話くれたじゃない」
『いや、せやってまえさん恥ずかしがり屋やし、家電とかかけてくると思わんかった・・・』
「PHSだとサプライズにならないでしょ!」
『ああ・・・せやなぁ』
「15歳になったね」
『おん、お先にやな』
「私はこないだ14歳になったばっかりなのに・・・」
『はは、せやな!まえさんこないだ14歳になったばっかやな!』
「笑いごとじゃないよ~なんか子供だよ私」
『前さんはそのままでええよ』
「え、」
『そのままでおってな』
「えー、それっていつまでも子供のままってことじゃん」
『そういう意味とちゃうけどな』
「さおちゃん、代わって」
いつの間にか私の背後にまぁちゃんがいた。
「あ、まぁちゃんが代わってって言ってるから代わっていい?」
『おん、ええで』
まぁちゃんもお祝いを言うんだ!と思ったんだけど・・・
「死に一歩近づきましたね」
それだけ言うと、また私に受話器を渡して、どこかに行ってしまった。
まぁちゃんは自由だな!
「え!?ごめん!!」
『・・・いや、あの子らしいわ!!!めっちゃうける!!』
「えー、ホントごめんね・・・」
『いや、楽しかったわ!そんなこと誕生日に言われたことないわ!!』
「言うのはまぁちゃんくらいだよ、ホントにごめん・・・あとで怒っておくね・・・」
『いやいや、ええねん。気にせんで』
「うん・・・」
『あ、それより、幸村クン大丈夫!?』
「ああ!あのね、来月退院するんだよ!」
『え!そうなん!?』
「うん!」
『それはよかったなぁ!』
「うん、またリハビリとかあるし、予選とか関東大会には出れないけどね…」
『いやいや、退院出来るだけええやん!良かったやん!』
「うん、よかったぁ」
『長かったもんなぁ・・・』
「うん・・・8か月・・・」
『8か月か!長かったなぁ、幸村くん頑張ったなぁ』
(・・・)
こういう時、白石くんは優しいなって思う。
幸村が倒れたって聞いて、喜んだ人は全国にたくさんいたと思うけど、白石くんはその中に入っていないと思ってた。
白石くんは本当に心から幸村を心配してくれてる。
それがわかるから、白石くんって、良い人だなって思うんだ。
「・・・そうなの、頑張ったんだ」
『おん、せやな』
「ありがとね、白石くん、心配してくれて」
『え!?そないなお礼言われることしてへんけど!?』
「ううん、本当に心配してくれてるのわかったから、ありがとう」
『・・・そないなこと言われると照れるなぁ』
「白石くんは、もっと照れればいいね。あんまり照れてるとこ見たことないし」
『え、いや、いつも照れとるやん!』
「そんなことないよ、あんまり照れてるとこ見たことない」
『前さん、いつも素直に褒めてくれるからめっちゃ照れとるけど!?』
「えーほんとかなー」
『ほんまやで!』
「そっかぁ、じゃあ信じよう」
『ありがとうございます!』
「あ、そういえば、ごめんねこんな遅くに。これからパーティーじゃないの!?」
『ああ、パーティーっちゅーほどのことでもないけどな』
「ごめんごめん、遅くに帰って来たのに!」
『ああ、ちょうど帰ってきて手洗ってた時に電話して焦ってもうたわ(笑)』
「そうだったんだ!ごめんね、ご飯食べて!」
『おん、おおきにな!』
「ううん、こちらこそ!」
『ほな、また手紙かくな』
「うん、私も書くね」
『ほなな』
「うん、バイバイ!」
こうして、ちょっとだったけど電話を切った。
お誕生日、ちゃんと直接おめでとうって言えてよかったよ。
(また電話くれるって)(ふふ、やったぁ・・・)
大事な文通相手との楽しい時間を過ごしたのだった。