021***さおり

4月。

いよいよ私たちも3年生になりました!!!!!!!!!!

 

テニス部も全国で有名なのでたくさんの部員が入りました。

中でも…

 

「先輩!これここに置いていいでヤンスか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや~~~~~~~

もうね!しい太は可愛いね!!!

去年の赤也も可愛いと思ったけど、しい太かわいいね!!!

他の1年生も可愛いんだけど、しい太めちゃんこ可愛い!!!!!

しい太はちょっと雑用っぽいことやってて、私のこと手伝ってくれることが多いからね。

他の子よりも話すし、とにかく可愛い。

可愛いとしか言わないけど、可愛い。

かわいいよーーーーーー!!!!

 

 

 

 

 

「先輩、ニヤニヤしてどうしたでヤンス?」

「しい太かわいくて」

「いや、お前しい太と身長かわんねーじゃん」

「身長関係ないじゃん」

「先輩!俺は!?」

「赤也大きくなっちゃったから…」

「え…」

「お前はwww身長関係ないんじゃなかったのかよwww」

「たるんどる!!来月は幸村も退院するんだ!気をひきしめんか!!」

 

 

 

 

 

そう!

私の機嫌がいいことにはもう1つ理由があって・・・

 

幸村が退院するの!!!!

 

まだ学校に来たり、部活に戻るのは無理できないみたいだけど、

それでも退院するって聞いて本当に嬉しい!

 

 

(リハビリ、頑張ったんだって!)

(かなり動けるようになったって教えてくれた!)

(幸村も嬉しそうだから、私も嬉しい!)

(そしてしい太が可愛い!)

 

 

3年生になって、最近は良いことづくめで、

幸村のことが悲しくて泣いてばっかりだった私だけど、

やっと、気持ちが浮かんできたんだ。

 

 

 


 

 

 

(もう少し・・・)

 

 

 

そして、今、私は緊張で口から心臓が出そうになっていた。

 

 

 

なぜかというと、

 

 

 

今日は・・・

 

 

 

白石くんの誕生日なのだ!!!!

 

 

 

実は、2月の私の誕生日。

白石くんから電話が来た。

ビックリした。

「サプライズやで!」って笑ってたけど、本当に驚いて…

だから、私も「誕生日に電話する!」って言ったものの…

 

 

 

(緊張する・・・)(吐きそう・・・)

 

 

 

白石くんが帰って来るのは7時。

今日は、部活は自主練だったから、早めに帰ってきた。

あまり遅くに電話しては悪いから、7時になった瞬間に電話かけようと思って!

 

電話の前で緊張しながら正座している私を見て、まぁちゃんが「そこまで緊張しなくていいしょ」と言っている。

でも、緊張するしょ。

 

 

 

7時。

白石くんは、部活から帰ってきただろうか?

 

 

あまりこの辺では聞きなれない市外局番を押す。

それから、うしろの数字も。

 

 

 

(あー、緊張する…)

 

 

 

プルルル…

 

 

 

(吐きそう・・・)

 

 

 

プルルル…

 

 

 

電話のコール音が鳴って、増々緊張してしまう。

 

 

 

ガチャ☆

 

 

 

(わっ!)(だ、誰か出た)

(白石くんかな!?)

 

 

 

『もしもし?』

 

 

 

(あ、女の子の声!)

 

 

 

電話の先の声は女の子。

おそらく、白石くんのお姉さんか、妹さん…だと思う。

 

 

 

「あ、あの、まえと申しますけど…」

『え!?』

「くらのすけくん、いますか?」

『あ、はい、今代わります!』

 

 

 

そして、電話の先から、『くぅちゃーーーん!!でんわーーー!!』という声が聞こえた。

 

 

 

(く、くぅちゃん???)(え?白石くん、くぅちゃんって呼ばれての?)

(・・・・・・・・)(ふふふ・・・)(かわいい・・・)

 

 

 

なんだか、ほっこりしてしまった。

 

そして、電話の向こうから、慌てた声の白石くんが・・・

 

 

 

『え、ちょ、前さん!?』

「くぅちゃん、お誕生日おめでとう!」

『・・・おおきに。っちゅーか、くぅちゃんって聞かれてもうたんか・・・』

「うん!可愛い呼ばれ方だね!」

『あー、妹やわ・・・』

「妹さんか!」

『おん・・・え、よく誕生日覚えてたな!』

「覚えてたよ!去年もお祝いしたよ、手紙だったけど」

『まさか、電話来ると思うてなかったから油断してたわ・・・』

「白石くんも、誕生日に電話くれたじゃない」

『いや、せやってまえさん恥ずかしがり屋やし、家電とかかけてくると思わんかった・・・』

「PHSだとサプライズにならないでしょ!」

『ああ・・・せやなぁ』

「15歳になったね」

『おん、お先にやな』

「私はこないだ14歳になったばっかりなのに・・・」

『はは、せやな!まえさんこないだ14歳になったばっかやな!』

「笑いごとじゃないよ~なんか子供だよ私」

『前さんはそのままでええよ』

「え、」

『そのままでおってな』

「えー、それっていつまでも子供のままってことじゃん」

『そういう意味とちゃうけどな』

 

 

「さおちゃん、代わって」

 

 

いつの間にか私の背後にまぁちゃんがいた。

 

 

「あ、まぁちゃんが代わってって言ってるから代わっていい?」

『おん、ええで』

 

 

まぁちゃんもお祝いを言うんだ!と思ったんだけど・・・

 

 

「死に一歩近づきましたね」

 

 

それだけ言うと、また私に受話器を渡して、どこかに行ってしまった。

まぁちゃんは自由だな!

 

 

「え!?ごめん!!」

『・・・いや、あの子らしいわ!!!めっちゃうける!!』

「えー、ホントごめんね・・・」

『いや、楽しかったわ!そんなこと誕生日に言われたことないわ!!』

「言うのはまぁちゃんくらいだよ、ホントにごめん・・・あとで怒っておくね・・・」

『いやいや、ええねん。気にせんで』

「うん・・・」

『あ、それより、幸村クン大丈夫!?』

「ああ!あのね、来月退院するんだよ!」

『え!そうなん!?』

「うん!」

『それはよかったなぁ!』

「うん、またリハビリとかあるし、予選とか関東大会には出れないけどね…」

『いやいや、退院出来るだけええやん!良かったやん!』

「うん、よかったぁ」

『長かったもんなぁ・・・』

「うん・・・8か月・・・」

『8か月か!長かったなぁ、幸村くん頑張ったなぁ』

 

 

(・・・)

 

 

こういう時、白石くんは優しいなって思う。

幸村が倒れたって聞いて、喜んだ人は全国にたくさんいたと思うけど、白石くんはその中に入っていないと思ってた。

白石くんは本当に心から幸村を心配してくれてる。

それがわかるから、白石くんって、良い人だなって思うんだ。

 

 

「・・・そうなの、頑張ったんだ」

『おん、せやな』

「ありがとね、白石くん、心配してくれて」

『え!?そないなお礼言われることしてへんけど!?』

「ううん、本当に心配してくれてるのわかったから、ありがとう」

『・・・そないなこと言われると照れるなぁ』

「白石くんは、もっと照れればいいね。あんまり照れてるとこ見たことないし」

『え、いや、いつも照れとるやん!』

「そんなことないよ、あんまり照れてるとこ見たことない」

『前さん、いつも素直に褒めてくれるからめっちゃ照れとるけど!?』

「えーほんとかなー」

『ほんまやで!』

「そっかぁ、じゃあ信じよう」

『ありがとうございます!』

「あ、そういえば、ごめんねこんな遅くに。これからパーティーじゃないの!?」

『ああ、パーティーっちゅーほどのことでもないけどな』

「ごめんごめん、遅くに帰って来たのに!」

『ああ、ちょうど帰ってきて手洗ってた時に電話して焦ってもうたわ(笑)』

「そうだったんだ!ごめんね、ご飯食べて!」

『おん、おおきにな!』

「ううん、こちらこそ!」

『ほな、また手紙かくな』

「うん、私も書くね」

『ほなな』

「うん、バイバイ!」

 

 

 

こうして、ちょっとだったけど電話を切った。

お誕生日、ちゃんと直接おめでとうって言えてよかったよ。

 

 

(また電話くれるって)(ふふ、やったぁ・・・)

 

 

大事な文通相手との楽しい時間を過ごしたのだった。

 

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