019***さおり

10月。

まぁちゃんドイツに研修に行ってて、もうすぐ帰って来るって時に今度は私が中国に研修ツアーに行ってきて(´;ω;`)

まぁちゃんとずっと会ってなさすぎてやばかった・・・

ついでに幼なじみのみんなとも顔を会すことがなくて、そろそろ私、きつい・・・

 

(なんだか、最近、全く会ってなくて・・・)

(それは自分が選んだ道だけど)

(やっぱり、ちょっとうらやましい・・・)

 

 

中国から帰ってきて、速攻まぁちゃんにあったことを話して、

まぁちゃんもいろいろ話してくれて、

2週間くらい会ってなかったから、2人共話したりなくて、その日は一緒に寝た。

 

 

きつかったわ本当に・・・

 

 

「じゃあ、今日は自主練だけだから、先に帰ってもいいかなぁ?」

「珍しいね、さおりが早く帰りたがるの」

「ああ、もちろんいいに決まっている。まなみが待っているだろう」

「え、柳すごいね・・・バレた?」

「氷帝がドイツへの研修旅行だったと聞いている。こちらの中国研修と入れ違いだったから、なかなか会えなかっただろう」

「そうなんだよね・・・ちょっと最近まぁちゃんとあんまり遊んでなかったし」

「そういうことなら、早く帰ってあげなよ。しっかり相手してあげなよ」

「幸村ありがとう!」

「ま、いっつも俺らが独占しちまってるしな」

「部活でだけどな」

「うむ。たまには姉妹でのんびりしてくると良い」

「まなみさんによろしくお伝えください」

「プリッ」

「みんなありがとう!!じゃあ、お先に帰るね!お疲れ様でした!」

 

 

 

こうして、まぁちゃんと久々に遊ぶために、早く帰ったのだった。

 

 

 


 

 

 

「あれ!?きみ早いね!?」

 

 

帰るとまぁちゃんがのん気にアイスを食べていた。

もう10月なのに、この人は1年中アイス食べてるな・・・

 

 

「うん、今日はね、自主練の日だったから、みんな筋トレだけなんだわ!だから早く帰って来れた」

「そうなんだ!」

「うん、きみと遊びたかったしね!みんな早く帰りなって言ってくれたさ!」

「やった!!!立海優しいなぁ~」

「うん、みんなきみによろしくって言ってたわ!」

「そうかい!!じゃあ、早速何して遊ぶ!?」

「私、撮りだめてた烈火の炎見たいな・・・」

「烈火の炎かwwwじゃあアタシ隣で年末漫画描いてるわ!」

「あ、私も書きながら見るわ!」

「そう言えば、手紙来てたよ、母さん言ってた」

「え!」

「白石からだわ!」

「ほんと!どれ!?」

「そこのFAXの上」

 

 

 

見ると、いつも白石くんがくれる白い封筒を見つけた。

私は手を洗って、部屋着に着替えてから、部屋でその手紙の封をあけた。

 

 

 

「あれ、シャープどこいったかなー」

「ああ、まぁちゃんのシャープペンこないだ落ちてたみたいで、お母さんが私の机に置いといたわ」

「そうか。あ、これきみの下敷き。幽白のやつ」

「あ、ありがとう探してたw」

「ちょっとだけ借りてた」

「うん、全然いいよ」

「白石なんだって?」

「なんかね、来月学祭あって、女装喫茶やるらしいよ」

「そうなんだ」

「うん」

「テニスのこととか書いてないの?」

 

 

テニスのこと

 

 

まぁちゃんのその質問に一瞬固まってしまった。

 

 

(テニスのこと・・・)

(あれから、)(そんな話できない・・・)

 

 

今年の夏。

立海と四天宝寺が当たった試合。

 

 

あの時の彼の悔しそうな顔を見てから、私はテニスの話が出来ずにいた。

 

 

それは、彼も。

 

 

(白石くんからも、テニスの話・・・来なくなった)

(テニス部のみんなと遊んだとかって話は書いてくれるけど・・・)

(テニス自体の話はなくなったな・・・)

(前はもっと、テニスの話書いてくれたんだけど・・・)

 

 

それは、寂しいことだったけど、けど私はあの時の白石くんの顔を思い出すと、

どうしても簡単に話題にできるようなことではような気がして。

 

 

(普段は鈍いって言われる私だけど、)

(さすがにあの時のあの顔が忘れられなくて)

 

 

泣きそうだった

 

悔しそうだった

 

 

(そりゃそうだよね)

(自分が部長になって、初めて負けたんだもん・・・)

 

 

だから、私も余計なこと言わないって決めた!

 

 

「テニスのことは全然書かないよ。白石くん、なんの女装するか悩んでる」

「バカだな」

「テニス部で女装喫茶とは書いてたよ。あの、小春ちゃんだっけ?きっと似合うよね。四天宝寺の1年生とかも可愛い顔してたからきっと似合うよね、あと、忍足くんだっけ?氷帝の忍足くんの従兄弟とかも、こないだ夏に試合した時キレイな顔してたから女装似合うよ」

「・・・」

 

 

私は、何気なく、烈火の炎のビデオを用意しながらそう言ったら、

なぜだかまぁちゃんは何も言わなかった

 

 

(あれ?)

 

 

後ろを振り向くと、

 

なんだかまぁちゃんが悲しそうな顔をしていた

 

 

「え!?どうした!?」

「え、なにが?」

「なんでまぁちゃんそんな泣きそうな顔してるの!?」

「してないよ」

「え、してるしょ!!!どうして!!?私なにか悪いこと言った!?」

「いや、全然。あえて言うなら、とらおのこと考えてた」

「え!?そうなの!?」

「とらおもう平のこと諦めればいいのにと思って」

「そうだねぇ、それは難しい問題だよね」

「私にすればいいのに・・・」

「その方が幸せになれるわ!」

 

 

 

(なんだろ?)

(気のせいだったのかな?)

 

 

 

じゃあ、年末漫画かこー

 

 

 

2人でそう言いながら、たくさん話ながらその日は遊んだ。

 

 

 

(白石くんの手紙の返事も書かないとな)(中国で買ってきた絵葉書いれよっと・・・)

 

 

 


 

 

 

次の日。

 

 

昨日は早く帰らせてもらったから、みんなにお礼を言わなくちゃ。

 

そう思いながら部活に出た。

 

先に着替えて、ボールの準備をしたり、いろいろしていた時。

 

ぼちぼちみんなも集まって来た時に、集合の声がかかった。

 

 

 

そこには、

 

 

 

神妙な顔をした、真田と柳がいた。

 

 

 

 

「・・・幸村が倒れた」

 

 

 

 

(え?)

 

 

 

 

一瞬、真田が何を言っているのかわからなかった。

 

昨日の帰りに、駅で倒れて病院に運ばれたって。

 

 

 

 

(うそでしょ・・・?)

 

 

 

 

でも、私が聞いたのはそれだけだった。

 

今はまだ誰にも会える状態じゃないから、落ち着いたらみんなでお見舞いに行こうって柳が言うから、そうしようと思ったけど・・・

 

 

 

 

(私、昨日早く帰りたいなんてワガママ言うんじゃなかった・・・)

(ちゃんと幸村といればよかった・・・)

 

 

でも、きっと、

 

 

すぐに元気になって、テニス部に戻って来てくれる。

 

 

まだ何もわからない私は、

深く考えずに、

ただ、そう思っていたんだ。

 

 

 


 

 

 

それから1週間後。

 

みんなで幸村のお見舞いにいった。

 

 

 

 

「・・・幸村、大丈夫か」

「ぶちょー!」

「よ、幸村くん!」

「騒がしくするなよ」

 

 

 

病院なんてあまり来たことがない私も、なんだか、怖いと思った。

 

 

 

真っ白な壁。

真っ白な天井。

真っ白なカーテン。

真っ白なシーツ。

 

真っ白な、幸村の顔。

 

 

 

まるでこのまま、いなくなっちゃうんじゃないかって思って、

なんだかとっても怖くなった。

 

 

 

「お花持って来たの・・・花瓶に入れて来るね」

 

 

 

私はお見舞いに持って行ったお花を花瓶に入れるため、

逃げるように、廊下に出た。

 

 

 

そして、

 

 

 

戻る時に聞こえた、

 

 

 

幸村の悲痛な叫び声

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テニスの話をしないでくれと言ってるんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ああ・・・)

 

 

 

 

 

 

その一言で理解してしまった。

 

 

 

 

 

幸村はもう、

 

ラケットが握れないのかもしれない。

 

 

 

 

あれだけテニスに打ち込んでいた幸村が、

 

もうラケットを握れないなんて・・・

 

 

 

 

それは、私たち立海テニス部の試練として乗り越えないといけないものになってしまった。

 

 

 

 

 

 

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