にくいにくいにくいにくい
それは人を恨んで姿を現した。
にくいにくいにくいにくい
全てを滅ぼそうと思った。
「・・・お前、は・・荼吉尼天・・・・」
クラノスケくんが驚いたように声をあげた。
「知ってるの?」
「知ってるも何も・・・こいつがサオリに呪いをかけたんや・・・師匠が倒したはずやのに、姿を消して・・・」
「そうだったの・・・」
『許すまじ・・・忌み子・・・妃・・・王・・・賢者・・・お前たちが幸せになるなど・・・許すまじ・・・全て滅ぼしてくれよう・・・』
荼吉尼天は尻尾を一振りした。
ゴォォォ
その一振りで大きな風が吹き 広場に集まっていた人々が飛ばされた。
「ま、まぁちゃん・・・!」
「サオリ!危ない!!」
私はクラノスケくんに抱きしめられ その場に留まった。
そして次に荼吉尼天が尻尾を一振りした時
その一撃で 私たちの城が いとも簡単に破壊された。
「・・・ウソ・・・でしょ・・・?」
(なに、あれ・・・)
(お城にはまだ人がいたのに)
(ウソ・・・ウソだ・・・)
尻尾の一つは大きな鉄の塊に変形した。
人々は逃げ惑ったが
それを楽しそうに追いかける鉄の塊は
次々に人々を潰して行くのだった。
イヤ・・・
「イヤァァァァ!!!やめてぇぇぇ!!!」
『やめてほしいか?忌み子よ・・・』
「イヤ・・・イヤァァァ!!!」
『・・・恨め・・・憎め・・・さすれば我が力となる・・・』
狐は益々楽しそうに尻尾を振った。
下敷きになった人々がどんどん潰されていくのが見えた。
(あ・・・)
(あああ)
(ああああああ)
(私のせいだ・・・私の・・・・)
(私が・・・忌み子だから・・・)
「サオリ!しっかりするんや!!」
クラノスケくんが 私の前に立った。
「・・・クラノスケくん、」
「さっきの、俺守ってくれたサオリ、めっちゃかっこよかったで!」
今度は俺らが・・・国を守ろうや!!
そう、クラノスケくんが 私に手を伸ばした。
・・・そうだ。
負けない。
負けちゃいけない。
私はこの国の第一皇女。
この国を 守る!!
「・・・うん!!」
私は彼の手をしっかりつかんで 立ち上がった。
『小さき賢者・・・汝のことは忘れていないよ・・・大口叩いて我にアッサリとやられた坊や・・・』
「・・・あのままの俺やと思うたら痛い目見るで?前みたいにもう尻尾巻いて逃げられへんからな!」
『フフフ・・・口は達者になったようだな・・・』
そして狐は 遊んでおやり と 尻尾の一本を大きい魔獣に変えた。
グァァァァ!!!
大声で魔獣が叫ぶと、 クラノスケくんに攻撃を仕掛けた。
クラノスケくんは 呪文を唱えてそれに対抗した。
「クラノスケくん・・・!」
サッと クラノスケくんが私に手をかざした。
大丈夫
きっとそう言っているのだと思った。
(クラノスケくんが・・・戦っている)
(たくさん国の人が・・・私・・・守れなかった・・・)
(私・・・姫なのに・・・国の人を守れなかった・・・!)
(私・・・)
(私に出来ることって何?)
(私に、出来ること・・・)
私にしか 出来ないこと
(・・・やらなきゃ)
私はそっと 胸の前で両手を組んだ。
「な、なんやこいつは・・・!!」
「でっけー狐だ!うぇ、獣くさっ!」
「こ、コイツが国を滅ぼす!?わけわからん!!」
「うひゃー!オラわくわくすっぞ!」
「わくわくしとる場合とちゃうやろ!」
「やっと来たねこの展開・・・友情・努力・勝利!プリンセスストーリーはアタシには無理だと思ってた!!」
「アホなこと言うとらんとはよ逃げるで!!あー、みんなとはぐれてもうたけど大丈夫やろか・・・」
「大丈夫だろ。それよりも逃げてる場合じゃなさそうだよ。逃げたらアタシたちの国なくなるわ」
「冷静に言うとる場合か!」
「冷静じゃないよ、こわいよ」
「え?」
「・・・でも、ケンヤがいてくれるから 大丈夫」
「!!」
「ケンヤとなら、なんでも 乗り越えられるって知ってるから!」
(俺となら)
(乗り越えられる、か・・・)
彼女にそこまで言われてかっこつけへん男なんて、おるか?
「・・・よっしゃ!俺も男や!お前とこの国守ってご両親にアピールしたるでぇーーー!!」
そう気合を入れた時やった。
ヒュン
するどい弓矢が頬をかすった。
サァァァ(真っ青)
「・・・う、うそやろ・・・・・」
尻尾の一つが、何千、何万という数の弓矢に変わった。
(あんなん一斉に打たれたら・・・死んでまうで!!)
ヒュン
ヒュン
それは楽しむように一本一本 俺らに向かって飛んでくる。
「おわ!わ、わ!わー!!」
「ケンヤよけるのめっちゃ上手いな」
「関心しとる場合やないやろ!!!」
俺はマナミの腕を引き 危ない! と抱きしめた。
「ふぅ・・・大丈夫か?」
「うむ、今のはかっこよかったぞ」
「あ、ほんま?おおきに・・・って、喜んでる場合とちゃう!!」
その様子が気に入らなかったのか 尻尾の矢は一斉に俺らを指した。
(・・・あかん)
(一気に、来る・・・)
「マナミ・・・!お前だけは必ず・・・!!」
俺はマナミを弓からかばうように 思いっきり抱きしめた。
(どうか・・・)
(どうかマナミだけは助かりますように・・・)
(マナミだけはどうか・・・!)
バババババッ
大きな音と共に 一斉に弓が放たれたのがわかった。
(・・・来るっ!!!)
目をつぶり
腕の中の恋人を命がけで守ろうと 覚悟を決めた
「・・・・・」
のに
「・・・?」
いつになっても弓が当たらなくって 俺はそっと目を開けた。
「・・・え?」
確かに抱きしめとる感覚があるのに マナミの姿が消えていた・・・
それどころか 俺の姿もない・・・ナイ!!どこにもナイ!!!
弓は全て 地面に刺さっとった・・・
「う、うわぁぁぁぁ!!!俺死んだ!!!ついに死んでもうたぁぁ!!!!」
「落ち着け」
そう、 目の前にマナミが現れた
(!?)
「え!?な、なんで!?なんで!?」
「ふぅ、壁とか抜けられるから弓もすり抜けれると思ったけど、ビンゴだったね」
「え、ど、どういう・・・」
「アタシ透明になれる能力あんの!とりあえず話は後だよ!ケンヤ!アイテム袋持ってきてる!?」
「お、おう!今日はバッチリ準備してきてるで!!」
「よし、じゃあ、アタシと一緒なら絶対に攻撃はあたんないから大丈夫!」
マナミがギュッと手を引くから ほんまに大丈夫な気がしてきた!
俺となら大丈夫って言っとったけど、ほんまや、俺たち二人でおれば絶対無敵やな!
尻尾がまた 何千もの弓を形作った。
(こんなところで)
(負けてる場合やない!)
(俺たちの、未来のために・・・!)
「・・・ほな、反撃開始や!!」
俺は持てる限りのアイテムを握りしめて 彼女と共に反撃に出た。
「どないする?囲まれたで」
ユウジさんが言うた。
俺とコハルさん、チトセさんは尻尾の一つが変形した泥モンスターに周りを囲まれとった。
「・・・たくさんの人があの泥に引きづりこまれて出てきぃへん・・・きっともう・・・」
「コハル大丈夫や!!俺が絶対守ったる!!」
「ユウくん・・・」
「・・・泥なら乾かせば固まるけん・・・ばってんここに乾かせる道具なんて・・・」
さすが陶芸家のチトセさんや。
こーゆーんは詳しいな、と思うた。
「・・・そーいや、今日シライシさん奪還て言うてたから今まで作った開発品色々持ってきたんスけど」
「ん!?」
「これ、使えるんちゃいますか」
それは人が背中につけて飛べるように作った 大きなプロペラやった。
「本来は人が飛ぶように作ってんけど、めっちゃ風出るからこれで泥も固められるかもしれん」
「ヒ、ヒカルゥゥゥ!!!」
「でかした!!!」
「・・・ほな、この街の英雄にでもなってきますか」
「準備はよかね!?行くたい!!」
俺たち4人も 微力ながら国を守るために戦うのやった。
『憎いだろう?悔しいだろう?』
闇の中で声が響く
『愛おしい姫君をあの男にとられたんだろう?』
真っ暗な中に 俺一人だけがたたずんでいる
『せっかく我があの娘の居場所へ導いてやったというのに・・・』
「・・・あの小屋に導いたのはお前だったのか」
『姫を見つけて、婚約までしたのに・・・最後にあの男に奪われて つらいだろう・・・悲しいだろう・・・』
「・・・あぁ、ツライよ」
『憎め憎め 愛しき姫君を奪ったアイツを・・・殺せ殺せ全ての生き物を・・・』
「憎い、な」
『そうだそうだ 憎め 憎め 強く憎むほど憎しみは我の力となる・・・我がお前と共に全てを滅ぼしてやろう』
「あぁ・・・憎んでいるよ、とても・・・」
『そうだろうそうだろう・・・憎いだろう、あの男が・・・』
「いや・・・憎いのはあの人ではない・・・憎いのは、自分自身だ」
『何を言ってるんだ・・・お前が憎むのはあの男・・・姫を奪ったあの男・・・』
「・・・俺は、姫が・・・賢者様を守って口づけをした時、 どこかホッとしたんだ」
『・・・』
「・・・あの方にお仕えすると、生涯守ると決めていたのに・・・毎朝怯えて、あなたは誰と尋ねられることが・・・少し・・・怖かったんだ・・・。それを何年もおひとりで毎日毎日彼女の隣でだなんて気が狂ってもおかしくない。なのに賢者様はやりとげた・・・姫様のお相手は、最初から俺じゃない。賢者様だ・・・そして」
俺は彼女を守る、ナイトだ!お望み通りぶった斬ってやるよ!!お前をな!!
そう刀を構え 俺は暗闇を切り裂いた。
(せっかく記憶を取り戻した彼女の平和な世界を守ってやる・・・!)
(俺は俺の、できることを!!)
『ギャアアアアアアァァァ』
大きな叫び声と共に 暗闇が消え、光が広がった。
「・・・フン、第一騎士団隊長を なめるな」
元の世界へ戻った俺は 次の敵へと 刀を向けた。
「あなた・・・私は大丈夫よ・・・」
「ダメだよ・・・共に、共に必ず生き抜いて また一から国を守るんだろう・・・」
「いいの・・・これは私たちの犯した罪への償い・・・」
「違う・・・違うんだ・・・私たちが償うべきは国民の皆様に対してなんだよ・・・こんな・・・こんな・・・」
「足が・・・もう感覚がないの・・・もう私、歩けないのよ・・・ね、あなた・・・泣かないで、顔をあげて」
泣いてる王様なんて みっともないわよ? そう痛みを堪えて妃が笑った。
荼吉尼天の攻撃で落ちてくるガレキから幼い子供をかばった妃は 足が真っ赤に染まっていた。
「一緒に逃げよう、さぁ」
「ふふ・・・逃げられるわけないじゃない・・・あの子たちも必死に戦っているのに」
「そんな・・・」
「あなただけでも・・・国を救って」
「そんなこと出来ない・・・君がいなければっ」
その時だった。
またも、鉄の塊となった尻尾が 二人めがけて降りかかって来た。
「危ない・・・!!!」
王様は 愛しい妃を守り、強く妃を抱きしめた。
「・・・・・・ほーんと、あんたは昔っから その子ばかり守るのねぇ」
あんたがいなくなったら誰がこの国を復興させんのよ、少しは自分の身も守りなさい
そう、声が聞こえて顔をあげると
鉄の塊を片手で抑えた 政子の姿があった。
「・・・政子?来て・・・くれたの?よかった・・・最期に・・・会いたかったの・・・」
「はぁ?ばっかじゃないの?誰が最期ですって?」
鉄の塊を乱暴に投げ飛ばした政子は ツカツカと王と妃に近づいた。
「あんたねぇ!まだ勝負はついてないのよ!?彼はいつか私が手に入れるんだからね!!」
「ふふ・・・負けないわ・・・だって私、彼のことが好きなんだもの」
状況が把握できない王は目をパチクリさせた。
「・・・王よ。あなたは覚えてないでしょうね。この偉大なる大魔法使い北条政子のことを・・・。この子みたいに特別な力を持ってる人は覚えてるみたいだけど」
そう政子が妃を見ると、 ふふ と小さく妃は笑った。
「でもこうして 助けに来てくれたじゃない」
「・・・私が、あの荼吉尼天を生んだのよ?さすがに我が子が悪いことしてたら叱ってあげないとね」
「・・・あなたのせいじゃないわ。それに、私にはこの未来も見えていた・・・なのに・・・親友のあなたにも何も言わなかった・・・言えなかったの、全てが壊れてしまうから・・・ごめんなさい・・・」
「・・・えぇ、今なら・・・わかるわ・・・」
「何度やり直しても・・・最期には・・・だからもうこの未来にかけるしかないの・・・」
先ほどまで優しく微笑んでいた妃は 涙を流した。
「・・・お願い、救ってちょうだい」
「・・・言われなくても、わかっているわ。私の中の 憎しみや恨みから生まれたんですもの・・・私がどうにかしないとね」
政子は魔力を持ち過ぎていた。
闇をも飲み込む力・・・
その力のおかげでこうしてようやく荼吉尼天からの長い支配から逃れられたものの、その身に荼吉尼天という魔物を無意識のうちに呼び込んで憎しみで育ててしまったのもまた 政子なのである。
「・・・必ず、終わらせるわ。そして、また彼をかけて勝負しましょ」
「・・・えぇ、楽しみにしているわ」
「楽しみにっ しないでちょーだいっ!!」
政子は動き出した鉄の尻尾に向かって行った。
強い魔力はほとんど荼吉尼天に吸われてしまったけれど、尻尾ひとつを倒すくらいの力はある。
(ごめんなさい、私ただ・・・)
(あなたたちふたりのことが 大好きなだけだったのよ)
政子はありったけの魔力で 荼吉尼天と交戦した。
「これ、泥多すぎてキリがないんとちゃいますか!?」
「あ、アカン・・・!充電切れや・・・!」
俺らは今世紀最大の大ピンチに遭遇しとった。
せっかくヒカルがワンタッチで広がるでっかい扇風機みたいなん持ってたから 泥モンスターも順調に乾かして剣で粉々にしとったのに。
次から次へと出るわ出るわ、泥のオンパレード!
更に扇風機の充電も切れてもう大ピンチ!!
次々と泥の中に人が吸い込まれていく。
目の前で見ているのに助けられんかった。
(・・・くそ!)
(ここまでか!!)
絶対・・・絶対 何があっても、コハルだけは守ったるねん!!!
「コハル・・・!俺が囮になるからその隙に逃げや・・・!!」
「ユ・・・ユウくん・・・!!」
「コハル・・・わっ!!」
俺は泥モンスターに足を取られた。
「・・・はよ逃げや!!コハル!!」
「ユウくん・・・!いや!一緒やないと・・・嫌や!!」
「そうっすよ、何かっこつけてんすか」
「ユウジがおらんとしまらんけんね」
その足を抜こうと ヒカルやチトセが必死に引っ張った。
けど
もう
あかん
泥が ヒカルやチトセの腕まで伸びていく。
「あ、あかん!!お前らはコハルと逃げや!!!」
(あああああ)
(みんな、泥の中に沈められる・・・!!!)
そう思った時やった。
スパーーーーーーン
「なんやこれー!ぎょーさんおるなぁ!おもろいやんけぇーーーー!!!」
キ・・・・・
「キンタローーーーー(さん)!!!??!?」
「お、おま、今までどこに・・・!?」
「んー?なんや魔王っちゅーの倒して来てな、友達なってん!テニス教えたったんやでー!」
「あかん・・・魔王倒してもうた・・・」
「全クリしおったんかついに・・・」
「てことは世界で一番強いんお前っちゅーこっちゃな」
「・・・キンちゃーん、この泥モンスター なんとかしてくれんね?」
「おー!まっかしときーーー!!」
キンタローは旅の途中でもらったという太陽の剣をかざした。
「これでみーんなカラッカラになってまえ~!!!!!」
・・・勝負は一瞬やった。
「・・・あかんこいつ、チートや」
「ん?なんや?あ、向こうにも強そうなんおるやんかー!ちょお行ってくるわぁーーー!!」
「・・・国救ってきてなー勇者サマー」
伝説の勇者が爆誕した瞬間やった・・・。
「くそっ!どうにも数が多い・・・!」
あの狐のような魔物・・・人々の心も操れるのか・・・
危なかった。
もう少しで心を支配されるところだった。
きっと賢者様を処刑するように国の人の心に入り込んだのもあいつの仕業だったんだろうな・・・。
(じゃないと、あんなに普段穏やかな国の人々が処刑を望んで暴力的になるわけがない・・・)
心を操る・・・なんて恐ろしいやつなんだ。
(・・・俺だって、姫様のこと 心から祝福できてるわけではないからな)
(・・・そりゃあ、悔しいさ)
(ずっと・・・慕っていたんだからな)
けれど。
だからこそ。
ここで負けるわけには いかないのだ。
(大切な人とこの国を守る・・・!俺は騎士だ!)
ズバッ
黒い妖魔をたくさん斬ったが 次々に現れて キリがない。
「はぁはぁ・・・」
息も上がって来た。
(くそ、)
(腕が、上がらん・・・)
(こんなところで負けるわけには いかないのに)
背後に気配を感じた
しまった
そう思って振り返った時
シュパッ
「ダイチさん!!やっと合流出来た!!」
「急に消えたから心配してたんすよ!!」
俺の頼もしい部下たちが 俺の背中の魔物を切り裂いてくれていた。
「ゼェゼェ・・・お前ら・・・」
「しっかりしろよーダイチー!」
「スガ・・・」
「俺たちも、がんばるから」
「ひげちょこ・・・」
そこはアサヒって言ってくれよぉ、とアサヒが嘆くと 周りのみんなが アハハと笑った。
(あぁ・・・そうだ)
(そうだ、俺は ひとりじゃない)
(頼もしいこいつらと・・・国を守っている・・・!)
(俺には、強い味方がいる!!)
「ダイチさん!第一騎士団、全員生存です!」
「おう・・・じゃあお前ら・・・ぶっ潰してやろうぜ!!!」
「いいところだけ持って行かせねぇよ」
「うちも活躍すんもんねー!ねー!赤葦ー!」
ずらっと並んだ第2、第3騎士団。
あぁもうこれ・・・頼もしいってレベルじゃねぇぞ・・・!!?
「絶対勝てる・・・!」
「当たり前だ、俺たちは、勝つ!!」
そうしてこの国騎士一同 剣を構え、妖魔と戦った。
この国を、人を、守るために。
「あかーん!アイテムもう尽きてもうた・・・!」
「あほー!だから考えて使えっていっただろうが・・・!」
ゼェゼェ
ケンヤとふたり、なんとか街の人を救いながら戦ってきたけど
アイテムも体力も底をついた・・・
もう無理・・・!!!!
「マナミ!次・・・来るで!」
「ま、待って、もう透明 なれない、マジ、疲れた・・・」
「・・・ほな死ぬやん」
「/(^o^)\オワタ」
うわぁぁぁぁぁ!!!
最期の力を振り絞って ケンヤがアタシを抱えて走りまくった。
そしてこの時を待ってましたと言わんばかりに
何千もの弓は 一斉にこっちを向いた。
(あ、もう死んだわ)
「・・・マナミ、大丈夫や、絶対 守るからな」
「・・・ハハハ、無理すんなって。ケンヤとなら地獄で閻魔様に下克上も悪くない」
「って地獄行く前提かい!」
「おう、地獄統一しちゃるわ」
「・・・マナミ、愛してるで」
「・・・アタシのが愛してるっつーの!」
「は!?それお前が言うか!?そこだけは譲れへん・・・って、張り合ってる場合ちゃうやろ!」
「ハハ、死ぬ直前までアタシたちらしいね」
「・・・ほんまやな」
ケンヤがギュウと 強くアタシを抱きしめた。
(あーあ、もう一度ゆっくりサオちゃんとお話したかったな)
(でもサオちゃん、記憶戻ったし呪いも解けたしクラノスケも助かったし)
(ほんとよかった)
(・・・幸せになってね)
一斉に 矢が放たれて
(あぁ、こうして)
(好きな人の腕の中で最期を迎えるのも悪くないかもしれない)
死を覚悟して
目をつむった。
キィィィィィン
(え?)
変な音が聞こえて目を開けた。
空中で止まってる たくさんの矢が見えた。
「え・・・これって・・・」
「あのさー!簡単に俺が婚約者死なせると思うー?」
しかも 他の男と心中とかさー、絶対許せないよね!
そう言って
「オイカワ・・・!」
オイカワ率いる 魔術師団が登場した。
「おっせーわお前!!!こっち体力使い果たしてヘトヘトだわ!!」
「ひど!!せっかく助けに来たのにそーいうこという!?」
「あんたなら 来てくれるって、思ってたわ!!!」
そう言うと オイカワは一瞬固まった後 少し間をあけて もう、マナミちゃんにはほんと敵わないな と泣きながら笑った。
「泣くなよオイカワー」
「もう・・・泣くに決まってるでしょ!俺めっちゃ怒ってたんだからね!!」
「怒ってたね・・・激おこぷんぷん丸だったね・・・も~しょうがないしょ、けじめつけないでケンヤに告ったのはアタシが悪いけどさ・・・」
「違う!!そーじゃないよ!!」
「え?」
「全然わかってないよねマナミちゃん、最後に俺が王位欲しかったみたいに言ったじゃん!!確かにみんなそう言ってたよ!?俺が国の王位継承権のあるきみに近づいて王様になる気だとかいつも色々言われてきたけどさ!!」
「え?違うの?」
「違うよ!!!俺が欲しかったのは王位継承権じゃないよ!!・・・きみだよ!!マナミちゃんが欲しかったんだからね!!!ずっとずっと・・・好きだったんだからね!!!」
「え・・・そうだったの・・・?」
「そうだよ!!グスッ、国なんて、正直どうでもよかったよ!俺が欲しいのは君だけだもん!でも、でもさぁ!きみの大切な国だから、俺一生懸命守ったんだよ!!?」
「・・・うん。知ってるよ。オイカワ、いつも国の周りにシールドはってくれててさ・・・魔力すごい使うから、いつもお迎え空飛ばないで馬で来てくれてたもんね」
「・・・馬でお迎えに行くのは王子様みたいでかっこいいからですー!ホウキってださいじゃん!」
「そう?アタシ空飛ぶの好きだよ。星空のランデブー連れてってくれたじゃん。あれ、すごい綺麗だった」
「そう・・・だよ!そうなの!!だから!!グス、きみのこと、めちゃくちゃ大事にしてきたのにさ!!なのにきみ、他の男に目移りするし、超ワガママだし、お転婆だし、俺の気持ちにも気づいてくんないし・・・もう俺の手に追えないから婚約は解消してあげる!!」
「・・・オイカワ」
「でも、1度でいいから ちゃんと魔法のかかってない時に、俺の目を見て笑って・・・俺とデートしてよね!!グスッ」
「・・・当たり前じゃん、チーズケーキ食べさせてくれるって約束したよね?」
「うん・・・っ!うんっ!!グシッ・・・もぉ、俺がんばっちゃうからねーーーーー!!!!」
「おい、オイカワてめーーー!!でっかいシールド疲れんだろうが!攻撃すっからさっさとこっち来やがれ!!!」
「待ってよイワちゃーん!!もう、イワちゃんは情緒がないなぁ!」
「オイカワ」
「ん?」
「・・・ありがとう」
「・・・お礼はデートでいいって言ったでしょ!」
そうして オイカワはホウキに乗って飛んで行った。
(・・・うん)
(うん、ありがとうオイカワ)
(あんたもずっとさ、アタシの傍で 守っててくれたんだよね・・・)
「・・・俺もうしゃべってもええ?」
「あ、ごめんケンヤ」
「元カレとの会話しんどい・・・いや婚約解消喜ぶべきなんやけど・・・え、デート?デートするん?」
「ハハハ、とりあえずこっちはあいつらに任せて、うちらはうちらでできることしよっか!」
うちの魔術師団 めっちゃ強いからさー! とアタシは手を伸ばした。
・・・せやな!けど、治すほうはおれの専売特許やで! とケンヤはアタシの手を握って一緒にけが人を助けに向かった。
「ハァ、ハァ、」
クラノスケくんの息が上がっている。
「クラノスケくん、」
「大丈夫や、サオリは下がっとって・・・」
まだ、いける そう彼は杖を握りしめた。
「もう魔力も残ってないんでしょ?無理しないで」
「今無理せぇへんかったらいつ無理すんねん、好きな女の子が、やっと 幸せに なれそうなんやで?」
「うん、でも、私、クラノスケくんが一緒にいないと・・・幸せになれないよ・・・」
「嬉しいこと言うてくれるやん・・・」
ほな、もう少し がんばらなあかんなぁ とボロボロになりながらクラノスケくんは立ち上がった。
グオォォォ
その時だった。
何度倒しても起き上がる魔獣が 私めがけて攻撃を仕掛けた。
「サオリ・・・!あぶない!!!」
そうクラノスケくんが私をかばって
「クラノスケくん・・・!!」
思わず目をつぶった。
そしてそっと開いた 次の瞬間には
ウオォォォォォ・・・
ドシーーーン
大きな音が響いて ゴオ と風が吹いた。
(!?)
何が起きたのかわからなかった。
そっと目を開けると 目の前には倒れた魔獣
そして
「き、来てくれたのね、みんな・・・!」
森で共にすごした聖獣や精霊、たくさんの仲間たちが集まってくれていた。
(来てくれた・・・!)
(みんなが 来てくれた!!)
「サオリ・・・これ・・・」
「助けてって、お願いしたの・・・私にはこれしかできないから・・・みんなに聞こえるように、助けてって・・・」
みんな助けにきてくれた・・・私たちを この国を 守るために!
精霊がクラノスケくんの周りに集まる。
「! 魔力が・・・これで無敵やで!!」
魔力を精霊にもらい、傷も治してもらった。
クラノスケくんは立ち上がった。
「おおきにみんな!今度は俺がみんなを守る番や!」
そういうクラノスケくんの背中が逞しくて 涙が流れた。
巨人族やゴーレム、戦える魔獣みんなで応戦した。
けれど、何度も何度も蘇るモンスターは 体力や魔力を消費するだけでなかなか倒せなかった。
「ハァ、ハァ、あかん・・・みんながせっかく来てくれたのに・・・」
「クラノスケくん・・・」
「どないする・・・考えろ、考えろ、俺・・・」
「でしたら本体を倒すのが一番じゃないですかね?」
(!?)
その声に 驚いて振り返った。
でも、一番驚いていたのは クラノスケくんだったと思う。
「し・・・師匠!」
「・・・ちゃんと彼女を守り抜いたようですね。よくがんばりましたね」
魔力を蓄えるのに時間がかかってしまいました、遅くなってすいません とクラノスケくんの師匠さんはニッコリと私を見た。
「お久しぶりです、お姫様」
「・・・お変わりないですね」
「えぇ、おかげさまで、若作りは得意なんですよ」
ニコニコと笑いながら
「さ、最後の大仕事です。 みんなそれぞれがんばってますよ。本体を やっつけましょう」
「はい!師匠!」
クラノスケくんは 師匠さんと一緒に立ち上がった。
「クラノスケくん・・・!」
「・・・大丈夫や。絶対、サオリの隣に帰ってくる」
ほんだらさ、告白、させてな
と、少し恥ずかしそうに クラノスケくんは笑った。
涙をぬぐいながら ウン と頷いて 本体の元へ向かい遠くなる彼の背中を見つめた。
「大丈夫ですか?」
ケンヤと一緒に けが人を救助して走り回ってるとき
「あ」
サオちゃんを発見した。
荼吉尼天に吹き飛ばされて心配してたから無事に会えて本当に安心した。
「クラノスケは!?」
「クラノスケくんは・・・本体を倒しに行ったの・・・」
「え、本体ってあれ!?あの空に浮かんでる超でっかいやつ!?」
「うん・・・」
「マジカよ・・・で、この辺はもう落ち着いたの?」
「魔獣が暴れてたけど・・・今は向こうで巨人族とか精霊さんとかが戦ってくれてるよ」
「そうなんだ、じゃあまだ安心できないね」
そう話していた矢先
ズシン!!!
大きな聖獣が倒れてきた
「!!」
「こ、この子は クラノスケくんと一緒に行った・・・」
「え!?」
「早く手当しないと!」
「俺に任せときや!」
「ケンヤ!!」
「どうしよう・・・クラノスケくん・・・」
「・・・大丈夫だよ」
「せっかく・・・全て終わったと思ったのに・・・」
「大丈夫、サオちゃん、大丈夫だよ・・・!信じよう・・・!」
震えるサオちゃんを励ましていると おーい、姫様ー と声が聞こえた。
サオリ「あ、サワムラくん!!」
サワムラ「姫様、敵の尻尾一体、駆逐いたしました!」
オイカワ「こっちもOKだよ~あー疲れた、デート3回してもらわないとね~」
マナミ「オイカワ!」
ユウジ「あー!やっとキンタロー捕まえたでー!こいつ魔物どころか全てを破壊しつくしかねへんで・・・」
マナミ「ユウジ!コハルちゃん!キンちゃん!ザイゼン!チトセ!」
王「サオリ、マナミ・・・!あぁ、あなたたちが無事でよかった・・・!」
サオリ「お父様!お母様!!」
マナミ「え・・・!ちょ、母さんどうしたの足!!」
母さんは足が血だらけでヒィ!となった・・・
「俺が診ます!」
ケンヤが母さんの手当てをしてくれた。
うむ、アタシの彼氏頼もしいぞ!
マナミ「みんな無事でよかった・・・」
サオリ「でもまだクラノスケくんが・・・」
政子「時間がない・・・みんなで行くわよ!!」
マナミ「!? 大臣!!」
サオリ(ガクガクガクガク)
政子「あぁ・・・あなたを痛めつけたのはあの荼吉尼天よ。私はあなたを・・・助けようとしたのだけど・・・ごめんなさい、救えなくて・・・」
サオリ「だ、だだだだだだ大丈夫です・・・・・・」
マナミ「全然大丈夫じゃないね、めっちゃビビってるね」
政子「それより・・・荼吉尼天を倒すには、強大な力が必要だわ」
マナミ「強大な、力?」
政子「みんなで立ち向かわなきゃ あいつは倒せない・・・」
マナミ「え!?アタシたちどうすればいいの!?」
政子「行くわよ。飛べる人は自分たちで向かって!あとはこっちで私が援護するわ!!」
そう言うと 政子は魔法陣を作って呪文を唱えた。
バサッ
マナミ「お・・・おぉ!!」
見事な羽が アタシの背中に生えた!すげぇ、かっちょえぇ・・・!
政子「急いで!!荼吉尼天は少しでも不利になるとまた妖力を溜めるために姿を消すの!!逃げる前に・・・早く!!」
アタシたちは急いで空に浮かぶ荼吉尼天本体をやっつけるため クラノスケたちの元へ向かった。
サオリ「クラノスケくん!!」
ハァハァと肩を大きく揺らすクラノスケくんの元へ向かう。
シライシ「サオリ・・・!」
ユウジ「おう、見ろやシライシ!俺翼生えたで~」
シライシ「みんなも・・・!?どないしてん・・・こっちは危ないから来たらあかんって・・・!」
キンタロ「なんやー!あのでっかいのー!すごいなー!ごっつ強そうやー!」
ザイゼン「おう、アイツな、ラスボスや。いてこましたれやキンタロー」
キンタロ「おぅ!!ぶっ飛ばしてくるわぁ!!」
ひゃっほー!っと飛び込んだキンちゃんに、クラノスケくんが ちょお待ちいやキンちゃん! と慌てて声をかける。
特攻隊長やなー、ほな続こうかー と面白そうにそれぞれが武器を手にした。
これも政子さんの力なんだろう。各々が魔法で形成された個々の武器を持っている。
オイカワ「なんだこれ!すっごい体に魔力満ちてくる・・・!」
サオリ「あの子たちのおかげなの・・・!何万もの精霊や聖獣が力を送ってくれてる!」
オイカワ「ってことは、オレ超無敵ってことだよね~!よーし、かっこいいオイカワさん見せちゃうからマナミちゃんしっかり見ててね~♪」
イワイズミ「無駄口叩いてねーでさっさと行くぞオイカワー!!」
オイカワ「いたっ!いったいよもー!イワちゃーん!!」
シライシ「ちょ・・・そんな、荼吉尼天に簡単に突っ込んだらあかん!!やられるで!」
サワムラ「後方は支援致します!賢者様、どうぞ攻撃に集中してください!!」
シライシ「騎士団・・・!?」
クロオ「空飛んで戦える日がくるとはねぇー!」
ボクト「いっくぜぇーーーー!!赤葦ー!俺に続けーーーー!!」
サワムラ「・・・あなたの大切な姫を・・・国を共に守りましょう」
シライシ「・・・おう、心強いわ!」
ケンヤ「おっしゃー!めっちゃ魔力沸いて来るでー!今ならどんなヒーリングもまかしときぃ!!」
シライシ「・・・ケンヤ!」
みんなが 心を一つにして 荼吉尼天を倒そうとしている。
(・・・すごい)
ゴクリ と息を飲んだ。
キンタロ「ほな俺からいっくでー!!!!ボール7個手に入れて竜の神さんにもらった竜神の剣でぶっとばすわー!!!」
スパッ
綺麗な音をたてて 荼吉尼天の残っていた尻尾が切断された。
ギィヤアアアアアアアア
ザイゼン「え・・・?ボール7個て・・・ドラゴンボールか?」
ユウジ「いやお前最初に突っ込んで最終兵器使うのやめろや!!無敵やんか!!」
チトセ「キンちゃーん、せっかくやし俺らにも活躍させてくれんね?」
キンタロ「えーでー!ワイ腹空いてもう力もでぇへんとこや~ちょっと休憩するわ~」
ザイゼン「めっちゃ自由やな」
翼の生えたキンちゃんはすごいスピードで なんか食うてくるわー! と地上へ降りて行ってしまった。
あぁ・・・キンちゃんいれば一撃で倒せるのに・・・
まぁちゃんが隣で マジであの自由さはヤバイわ今最終決戦だよな・・・? と嘆いていた。
でも子供の頃からキンちゃん変わってなくって嬉しい(感涙)
ユウジ「ほな!次は俺らや!!俺のきっついツッコミおみまいしたるわ!!」
そう言ってユウジがとりだしたのはありえないほど大きいハリセン!!
ユウジ「コハル、いっくでー!!」
コハル「まかしときー!はーい!荼吉尼天さん!あなたカワエエ顔しとるやないのー★アタイの特性匂い袋あげちゃうわん♪これで動きが鈍くなるはずよぉ~それぇ~★シャラララーン!」
ユウジ「コハルー!浮気か!死なすど!!」
コハル「もう、ユウくんったらーん♪ユウくんにも、それぇ~★」
ユウジ「って俺の動き鈍くしてどないすんねん!!一緒に行くで!なんでやねーーーーん!!!!!」
ズビシィッ
『ギャアアアアアア』
ザイゼン「いや・・・いくら魔法で形成された武器言うてもハリセンで吹っ飛ぶって・・・ありえへんやろw」
シライシ「あの二人らしいなぁ」
チトセ「次は俺やけん!俺の武器はコイツたい!!覚悟せんね!!」
必殺・・・・・・神隠し・・・・!!
そうチトセくんが叫んだら 空から地上で荼吉尼天の分身として化けていた尻尾たちが突然現れ本体を攻撃した。
『ギャアアァァァ』
チトセ「ドンドン行くばい!」
ザイゼン「へぇ・・・すごいっすねチトセさん」
チトセ「けどコレ一瞬しか使えんばい」
ザイゼン「ほな俺も行かせてもらうっすわ」
ユウジ「お!ヒカルの武器はなんやー!?」
ヒカル「ほな行くでー、俺の武器、みっくみくにしたるー」
コハル「え」
ジャン!
ザイゼンくんが武器の名前を唱えると そこには超巨大 初音ミクが!
ユウジ「は!?これのどこが武器やねん!」
ザイゼン「めっちゃ可愛いっすわ・・・」
マナミ「ただの趣味!!!!」
シライシ「ザイゼンらしいわ・・・」
ザイゼン「いや、俺のミクちゃんなめんといてくださいよ」
そうザイゼンくんが言うと・・・
『ギャアアアアア』
急に荼吉尼天が苦しみだした。
ケンヤ「!? どないしたんや!?」
ザイゼン「ミクちゃんのハードロックをありえへん爆音でアイツの頭の中に流しとるとこっすわ。音も立派な武器になるんすよ」
サオリ「・・・カッコイイ(ボソ)」
シライシ「!? サオリ!?」
『・・・馬鹿め、こんな攻撃・・・我に効くものか・・・』
シライシ「あかん!また再生はじめとる!!」
オイカワ「じゃあ次は俺たちの番だよねー♪マナミちゃーん!俺頑張っちゃうねー!」
サワムラ「姫様!我々も参ります!」
ハァァァァァ・・・!!!
魔術師と騎士による一斉攻撃・・・
『ギャアアアア!!!!!』
荼吉尼天は魔術師たちの多大な魔力と岩をも砕く強靭な剣の前になすすべもない。
苦しそうに逃げ惑う荼吉尼天・・・
(・・・・・・かわい、そう)
その姿を見て
そう思った。
(荼吉尼天はたくさんの人を殺した・・・)
(たくさん目の前で人が死んだ・・・)
(国中あちこちボロボロで)
(本当に・・・ひどいこといっぱいして・・・)
でもこうやって大勢で 荼吉尼天をなぶって攻撃することと なんの違いがあるんだろう・・・?
(・・・私も、ひどいことされたけど)
(いたくてつらくてかなしくてくるしくて さみしかったけど)
(だけど、だからって)
(荼吉尼天に同じことをしていいって そんなの誰が決めたの?)
「・・・まぁちゃん」
「ん」
「荼吉尼天って、滅んだ方がいいんだよね・・・?」
「そりゃそうだよ!アタシ、あいつがきみにしたこと絶対許せない。国をあんなにして、たくさん人が死んだ。アイツ遊ぶように楽しそうに人を殺したんだよ!?何よりもきみにしたことさ!あいつがしなきゃうちらも何事もなく平和に生きてたのにさっ!!!」
「・・・そう、だよね」
「そうだよ!ほんとあったまくる!・・・・・・でもね」
「うん?」
「荼吉尼天は死ぬほどむかつくけど・・・今こうやってみんなでボコってんの見るのはね、胸糞わりぃ」
「!? だ、だよね!?私もそう思ってたの・・・!」
私たちは 顔を見合わせて頷いた。
「・・・もっと別の方法探してみようよ」
「だねー。ダメなら思いっきりぶっ飛ばしてやっつけりゃいいし」
「・・・やっぱり、お姫様たちはすごいですね」
(!)
驚いて振り向くと そこにはクラノスケくんの師匠さんがいた。
「荼吉尼天は・・・人の憎しみや恨み、妬みから作らた存在です。倒しても倒しても 今も世界中で起こっている戦争や暴力それらが絶えぬ限り、恨みや憎しみを糧にしてすぐに回復して立ち上がる」
「攻撃は無意味ってことですね」
「・・・正直、僕にも正解はわかりません。ですが、僕はあなたたちに全てを委ねたい」
「・・・」
「行ってくれますね?」
(・・・クラノスケくん)
今も荼吉尼天と戦い続けるみんなを、クラノスケくんを見つめる。
(・・・行こう。みんなのために・・・荼吉尼天を 救うために)
私とまぁちゃんは すぐに頷いた。
「行きます」
「やれることはやってくるよ」
彼はコクリと頷くと みんなが荼吉尼天の気を逸らしているうちに荼吉尼天の意志と繋げましょう と言った。
「・・・まぁちゃん」
「大丈夫だ、うちらがやんないとどっちにしても全滅だ」
「・・・うん」
「政子さん聞こえますか?下から援護お願いします」
どこからともなく地上にいるはずの政子の声が聞こえる
「わかったわ!・・・あなたたちにはつらいことばかりさせてしまって・・・申し訳ないわね・・・」
「いいえ、大丈夫です。私たちはこの国と人々を救う義務がある・・・荼吉尼天も、そのうちの一人です」
「まぁ。あんなに泣き虫だったお姫様が・・・逞しくなったわね」
気を付けていってらっしゃい
その言葉を聞いて 私とまぁちゃんは目をつぶった。
(・・・真っ暗)
なんだろうここ
暗くて 寒くて 苦しくて 辛くて 痛くて 重くて 悲しい
「・・・サオちゃん?」
どこにいったんだろう
ひとりだ。サオちゃんがいない。
サオちゃんは無事だろうか。
『来たか 忌み子のカタワレよ』
暗闇の中から 恐ろしい声が響く。
「・・・荼吉尼天か?お前!サオちゃんをどこにやった!姿を現せ!」
『汝に問おう・・・己の一番大切なものはなにか』
「人の話を聞け!」
『答えよ・・・さもなくばカタワレを喰うてしまうぞ』
「サオちゃんを!?やめろ!今答えるから・・・・・大切もの?そうだな・・・」
『富か?名誉か?地位か?名声か?我の見てきた人間は全てそれを求めた・・・お前は一体なにを一番とする・・・』
「うーん・・・一番はまぁ・・・・・・アタシかな!」
『ほう自分とな・・・そうだな・・・人間はみんな自分の私利私欲のためだけに他を殺めてでも全てを手に入れようとする・・・自分が大切だというのもうなずける・・・』
「は?違うよ。そーいう意味じゃないよ」
『なに?』
「自分を愛せないと、人を愛せないんだよ!」
『・・・』
「アタシは自分が好き!サオちゃんを好きな自分が好き!ケンヤを愛してる自分が好き!みんなを大切に思う自分が好き!!そしてみんなに愛されてる自分が大好き!!」
『・・・』
「だから自分が好き!!自分が大事だ!!わかったか!」
『・・・お前は我には眩しすぎる。いらん』
「は?なんだいらんて!失礼な!アンタの大切なものはなんなのさ?」
しーん
「おいなんだ!ひとりにするな!おい!どこ行った!おい!!」
サオちゃんどこだよぉ、と暗くて悲しいその道をトボトボと歩き続けた。
「まぁちゃん・・・どこ・・・?」
なんだろうここ・・・
暗くて 寒くて 苦しくて 辛くて 痛くて 重くて 悲しい
前に私が入れらえた牢屋のような・・・ううん、それ以上にもっともっと淋しい場所・・・
(・・・ここが荼吉尼天の意志の中?)
(まさか、こんな淋しいところが、荼吉尼天のの中だっていうの?)
もしそうなんだとしたら それはとても悲しすぎると思った。
『ほぉ・・・こっちの娘は美味そうだな・・・』
「え?誰?」
『忌み子のカタワレよ・・・汝に問おう・・・己の一番大切なものはなにか』
「え?大切なもの・・・?」
『答えられぬなら食ってやる・・・返答次第では我の住処にしてやってもよい・・・』
心地がよいものなぁ・・・人間の、妬み嫉み恨み・・・
そう、その声は呟いた。
(これは・・・)
(この声は、荼吉尼天なの?)
(・・・なんて 悲しい声なのだろう・・・)
「・・・大切なもの・・・私はひとつじゃないのだけど・・・」
『ほぉ・・・欲張りな娘だ・・・富か?名誉か?地位か?名声か?』
「ううん・・・えっとね、まず、まぁちゃんでしょ?それから両親と・・・ずっと傍で守ってくれたクラノスケくん。あと、お城に住んでる騎士や魔術師や侍女さんも・・・それに街にいるお友達。あ、森に住んでる可愛いお友達もたくさんいるし、国中の人、動物、精霊、魔獣・・・えっとあとは・・・」
『周りの人間が 大切だと・・・?』
「そう、私は周りの人に生かされてるんだって、今回全ての記憶が戻って思ったの。みんながいるから私がいる・・・とてもとても大切なもの」
『・・・お前も、面白くはないな』
「え?」
『よいだろう、会わせてやる』
そう声が聞こえたと思ったら 目の前に突然まぁちゃんが現れた。
「まぁちゃん!!」
「お、サオちゃん!探したよ!」
「よかった無事で・・・」
「ほんまやなぁ~」
『汝らは・・・全く別の答えを出した。しかしそれは真逆の答えでもあり、全く同一の答えでもあった・・・』
「この声、荼吉尼天かな?」
「うん・・・そうだと思う・・・」
『我にそのようなことを言う人間は 初めてだ・・・』
「え、そう?てかそれ、選び方悪いわ!悪い人間ばかりじゃないよ世の中」
「そうそう!私の周りみんなすっごくいい人だよ!みんな同じこと答えると思うよ!」
「荼吉尼天が勝手に悪い人選んでるだけじゃんwwwお前さてはどMだなwww」
「ちょっと、やめなよまぁちゃん・・・」
「してここめっちゃ暗いしさぁ。あんたアタシのこと眩しいとか言ってたけどマジで太陽の光浴びた方がいいわ!スッキリするからな!」
「そうだね・・・。ねぇ、私たちと一緒においでよ。素敵な仲間いっぱいいるよ!」
「あ、いいね。こんな暗いとこにひとりでいるから全て滅ぼすとか過激派なこと考えるんだわ!!ちょっときみは街でパン屋さんの修行した方がいいよ、街のパン屋マジで美味いからね!!」
「そういえばきみ小さい頃からよくお手伝いしてパンもらってたねw」
「働かざるもの食うべからずです!!」
「ね、おいでよ、荼吉尼天」
「そうだそうだ、お前の根性叩きなおしてやるから一緒にこーい」
おーい、聞いてんのか、 まぁちゃんがそう叫ぶと
急に地面が激しく揺れた。
「え、な、なに!?」
『そんなことを申すな・・・忌み子の分際で・・・』
「え、おこなの!?おこなの!?こわ!こんな暗いところ閉じ込められたくないよ!?」
「荼吉尼天!またそうやって一人になっちゃダメだよ!!怖がっちゃダメ・・・!一緒に行こう、大丈夫だから!!」
『怖がる・・・?我が怖がっていると・・・?』
「うん、ここは暗くて淋しくてとても怖いよ・・・荼吉尼天の心の中なんでしょ?荼吉尼天が淋しくて怖いからこんな場所なんだよ。おいで、大丈夫・・・もう、ひとりじゃないよ」
『・・・愚かな、人間め・・・・・愚かで・・・・ちっぽけで・・・弱くて・・・・暖かくて・・・汝らなど・・・・!!!!』
「大丈夫だよ・・・大丈夫・・・」
私は、両手を胸の前に組んで 精一杯祈った
「大丈夫・・・こわいことは何もないよ・・・」
暗闇の中で 私の体が光を出した。その光はどんどんまぁちゃんにも広がって私たち二人の体を眩しく照らす。
『眩しい・・・・!!やめろ・・・やめろぉぉぉ醜い人間めぇぇぇぇぇぇ』
(・・・ううん)
(違う)
(それは 本心じゃない)
「・・・あなた本当は 人間になりたかったんだね」
大丈夫・・・ 一緒に、還ろう
パァァァァァァ
光は私たちだけじゃない
暗闇の中に侵食して周りを明るく照らす
『ヤメロォォォォォォ』
「・・・さぁ・・・おいで」
光に照らされて目の前に 大きな大きな荼吉尼天が現れた。
この距離だ。荼吉尼天が口を開ければ食べられてもおかしくはない。
だけど、私たちが見たものは 私たちの体よりも大きなその眼から、大粒の涙が流れ落ちているところだった。
(・・・ずっとひとりで)
(淋しかったんだね)
「・・・もう大丈夫、一緒に 行こう」
パァァァァァ
ついに光は 荼吉尼天の体からも放たれた
(あぁ)
(荼吉尼天が光ってる)
(大粒の涙をこぼして・・・)
『アリガトウ・・・・・・・・・』
私たちの耳には ハッキリと、そう聞こえた。
(ありがとう・・・?)
(荼吉尼天?)
(どこかへ行くの・・・?)
そして急に私たちの体がふわりと浮かんだと思ったら パァン!! と思い切り、今までいた空間がはじけ飛んだのだ。
「・・・荼吉尼天」
私たちは宙に浮いていて、私はクラノスケくんに、まぁちゃんはケンヤに・・・それぞれ抱えられていた。
シライシ「大丈夫か!?サオリ!!」
ケンヤ「マナミ、ケガ、してへんか!?」
サオリ「・・・荼吉尼天死んじゃったの?」
シライシ「わからんけど・・・突然苦しみだしてそのまま消えてもうた・・・」
マナミ「荼吉尼天・・・可哀想だな・・・」
サオリ「暗くて淋しくて・・・また独りぼっちになるのかな・・・?」
キュウ!
(え?)
突然、鳴き声が聞こえて キョロキョロ辺りを見渡すと
私の手のひらには 小さな小さな 真っ白の狐がいた。
クロウ「・・・おめでとう。あなたたちの、優しい気持ちの勝利ですね。荼吉尼天は、生まれ変わりました。これでもうこの国を滅ぼす悪い魔物はどこにもいません」
師匠さんがそう 私たちの肩に優しく手を置いた。
思わず顔を見合わせた私とまぁちゃんは
「・・・もう悪さすんじゃないよ」
「これからよろしくね、荼吉尼天」
そう小さな小さな荼吉尼天を抱きしめた。
シライシ「サオリが・・・救ってくれたんやな、この国を・・・荼吉尼天を・・・」
サオリ「・・・だって、みんながハッピーエンドのプリンセスストーリーなのに荼吉尼天だけ滅ぼすなんて 可哀想じゃない」
にっこり笑うと それもそうやな、全てを救うのは真実の愛やったっけ とクラノスケくんは笑った。
そして
そのまま私を抱きしめて
シライシ「・・・終わったんやな」
サオリ「・・・うん」
そう、強く抱きしめられた腕は力強く、
彼は私を離すことはなかった。
マナミ「あーあ!結局ここでも真実の愛!所詮プリンセスはディズニーみたいなお話の展開にしかならないってことね?」
ケンヤ「いや、意外とディズニーもガンガン敵倒すけどな!?ま、ええんちゃうの?こーいうのもアリってことで」
マナミ「えー!友情・努力・勝利はー!?みんなでボコるのは好きじゃないけどさぁ!もっと大冒険とかさぁ!」
ケンヤ「・・・少年誌風にしてもうたら俺らきっと永遠に結ばれへんで?きっとマナミずっと冒険しとるやん」
マナミ「・・・そっか!なら、プリンセスストーリーも悪くないか!」
政子「ちょっと、そろそろ降りてくれくれない!?魔力使いすぎてヘトヘトよぉ!羽の維持ができないわ!」
マナミ「おーう、政子おこじゃんかー、昔から政子怒ると怖いんだよなぁ」
サオリ「・・・それじゃあみんな、帰ろっか!」
ボロボロになりながら肩を抱いて喜ぶみんなと 私たちは地上へと降り立った。
私たちの国に 平和が訪れた。