「前さーん、来週飲み会やるんだけど来ない?」
「すみません…先約が…」
「えーじゃあ今度は絶対一緒に飲みにいこー!」
「はい…」
あの懇親会を機に、病院の至るところの課の人から声をかけられるようになった。
(こっちが名前を知らない人からにも)
懇親会であんなに盛り上げた司会は今までいなかったと言われ、そして今後もなぜか司会をするように頼まれてしまった。
その代わり今度から懇親会は上司の皆様たちで私の分の会費も出してくれるそうなのでバイト代としてはいいかなと思う!
「ねぇ、本当に打ち合わせしてなかったのー?」
「してないって即興だって」
友だちにしつこく聞かれたこの質問、散々いろんな人にされた・・・
そして、それは向こうも同じようで・・・
「忍足さんも結構あれからいろんな人に声かけられてるって」
「・・・でしょうね」
「まなみも狙っちゃえば?」
「いや、こないだまで研修医の話題ばっかりだったのに何それ!」
「だって私はもう幸せだもーん!」
ずっとあの研修医のことでうるさかった友達は、例の懇親会のゲームで盛り上がり、レントゲン技師の彼氏がいきなりできた。(早いっつーの!)
ノロケひどいから友達やめるかなwとまで思うくらいだけど、まぁ悪い子ではないからね・・・(大人になれ私)(付き合いたてだから仕方ない)
私はと言うと、あれだけ馬が合ったはずの研修医とはあれから全く会っていない。というのも、私は受付、彼は研修医、病棟が遠いし、そもそも研修医とは用事がない。正直、周りから噂されることもあったけど、あまりにも私たちに接点がないから噂もそのうち消えるだろう。
(ドクターとは算出のこととかでめっちゃ話す機会があるのにね。研修医はまだない)
別にどうこうなりたいわけじゃないからほっとこうと思っていた。
――――――――――――
「ってなことがあってさ」
「そうかい、人気者だねきみ」
「人気者なんだわ」
「きみ、研修医の人には興味ないの?」
「さほど」
「イケメン?」
「イケメンはイケメンだね、でもすげーモテるよ」
「あーそうなんだ」
「きみこそ、会社の年下の後輩君どうした?」
「いやーダメダメ、イケメン怖い・・・」
「こわいよね、イケメンが好きなくせにね」
「イケメンは観賞用だわ~」
「わかるわ、男はやっぱり中身と金」
「真面目に働く人ならいいよ・・・」
「イケメンは観賞用だね」
「そうだね。そう言えば新しい舞台のチケットとらないと~」
「好きだね~キャストによっては行く」
「OK」
さおちゃんとくだらないそんな話をしていた
今はとりあえず、楽しいことたくさんあるし~くらいにしか思っていなかった
んだけど、
「まえさん、あめちゃんやるわ」
いきなり例の男が私の目の前に現れた!
「え・・・」
「あれ?あめちゃん嫌い?」
「いや、好きだけど・・・」
「ほなもらって!」
そうやって笑う研修医
(うわ・・・)
(何その笑顔・・・)
(ずるい・・・)
「・・・なんでここにいるの?」
「ん?今診察にきたおばあちゃん送って来てん」
「そう・・・」
「お、患者さん来たわ、ほな」
そういって研修医はすぐに患者のほうに近づいて行った
(あ、)(お礼言ってなかった)
なんとなく研修医のことを目で追う
(すごい優しそうな顔するんだな・・・)(・・・ただのチャラい奴だと思ってたけど、いい医者になりそうじゃん)
なんだか研修医のことが気になり始めている自分がいて
だけど、まだそんな気持ちには気づかないふりをした