(私と同じ顔の女の子?)
(もう一人の姫)
(アタシ、一人娘じゃなかったの?)
(みんな、なにを隠しているの・・・?)目覚めた時 そこにはケンヤの姿があった。
一番に目に入って来たその姿を見て ホッとするのは、なぜなんだろう。
「・・・ケンヤ」
「目、覚めたか?」
「うん・・・」
「頭、まだ痛むか?大丈夫か?」
「大丈夫・・・」
「よかった」
「ずっと傍にいてくれたんだね」
「ま、まぁ、医者やからな」
「うん・・・ありがとう」
「おん・・・」
「さっきの、女の子、」
ズキ
また頭が痛みだす
ズキズキ
「っ・・・!」
「あっだ、大丈夫か!?思い出したらあかん!落ち着いて、」
「だいじょう、ぶ、」
「ええか、とにかく今はゆっくり休むんや。その後のことは、ゆっくり考えようや」
「・・・うん」
心なしか
いつも なんだかツラそうに見えたケンヤの顔が
今はとても 穏やかに見えた。
「・・・ケンヤ」
「ん?」
「・・・もう少し、一緒にいてくれる?」
そう、ケンヤの手を 握ろうと 手を伸ばした
バタンッ
「マナミちゃん!!倒れたって・・・大丈夫!?」
(あっ・・・)
オイカワが入ってきて、咄嗟にその手を引っ込めた。
「・・・なんでお前がいるんだよ」
「あー・・・まぁ、医者やからな」
(・・・やだ)
ケンヤが行っちゃう
(行かないで)
そう思ったけど、 ほな俺帰るわ、今日は寝てるんやで、 と優しく笑って、ケンヤはドアに手をかけた。
「・・・早く帰れよ」
そう、悪態をつくオイカワに
「・・・もし、このまま上手く進むなら 俺もう我慢せぇへんから」
それだけ言うと ケンヤは部屋を出て行った。
「・・・なんだよ、アイツ」
オイカワは ギュウとアタシを抱きしめた。
「あーあ!マナミちゃんは俺のだっつーの。ねぇ」
「・・・うん、でも」
「でも?」
「・・・ごめん、今は一人になりたいの・・・ちょっとゆっくりさせてくれる?」
アタシはそう言って、オイカワの体を少し 体から離した
「・・・わかったよ。じゃあ起きたらまた、ゆっくり話をしようね」
オイカワは少し淋しそうに、部屋を出て行った。
パタン
扉が閉まったのを確認して、アタシは窓の外を見た。
窓から見える城の庭にはバタバタと走る騎士がいた。
お城の中が騒がしい。
(やっぱり、さっきの夢じゃないんだ)
(同じ顔の女の子)
あれは、見間違えなんかじゃないんだ。
ユウジが言ってた、思い出せって このことなんだろうか
みんなが必死に隠していたのは このことなんだろうか
ズキッ
頭が、痛んだ
痛いけど、 なんだかそれよりも、バクバクと激しく動く心臓のほうが 痛かった。
(・・・会いに行ってみようかな)
(会えば、何かわかる気がする)
(モヤモヤひとりで悩むよりも)
(・・・よし!会いに行ってみよう!)
ガチャ
部屋の扉を開けた。
「あ、姫様!ちゅーっす!」
「姫様、今は駄目っすよ~!部屋から出ないようにしっかり見張っておけって言われてるんで!!」
「ノヤ!タナカ!ちょっと、頼むよ、アタシたちの仲じゃん?ね?」
「うっ!カワイイ!」
「カワイイけど、駄目っす!!今日は、マジで叱られるんで、駄目っす!!」
「今度デートしてあげるからぁぁぁ」
「姫様とデート・・・!?マジか・・・!俺はどうすれば・・・!」
「惑わされるなリュウ!姫様もうカレシ持ちだ!」
「・・・やっぱ駄目っす!」
「ケチ!・・・じゃあさ、さっきの女の子が運ばれた部屋教えてよ」
「え!姫様、やっぱ見たんすか!?」
「姫様には絶対に内緒に、って言われてたんすけど!!」
「見たよ!見たら頭痛ひどくて倒れたの。ちなみに今も痛いけどそれよりも興味津々」
「さすが姫様だ!」
「でも部屋の場所も教えられないっす!」
「申し訳ないっす!!」
「それくらいいいしょ!!」
「いくら姫様の頼みでも今回の事だけは駄目なんす!!」
パタン!ガチャリ
「う、うわぁぁぁ!!鍵まで閉めることないじゃないかよぉぉ!!!!!!」
ドンドンドン
扉を叩いたけど 開けてはくれなかった。
小さい頃から従順なカワイイ舎弟のタナカとノヤがここまでするんだ。
思った以上に緊急事態のようだ。
でもまぁ正直 こんなことはアタシには どおってことないことなのである。
「さーてと、行くか」
どっから行くかなぁ・・・まずはあの子がいる場所を探らなきゃだよね。
スーーーー
指の先の色が消えた。
何を隠そう
このアタシ・・・
透明になれるという必殺技を編み出したのだ・・・!!!
(フフフ)
(すごいだろう)
14歳、記憶のないアタシはずっと部屋に閉じ込められてて
外に出たいと毎日思ってたらできたのだ!!
願えばなんでも叶うもんだな・・・
それからはめっちゃ城抜け出しまくっている。ハハハハハ
しかも、ただ透明になるだけじゃないぞ!!
なんと、壁も通り抜けられる!!無音!無臭!!
モンスターにも絶対バレないからね。今まで何度も冒険してきたけど上手いこと助かってきたのはこの力のおかげ。
ちなみに城の倉庫やら図書室から色々物をくすねてきたりもする。
悪いことしてる自覚があるので誰にも言えないんだけどなwww
透明になったアタシは そろりと壁をすり抜ける。
「あー・・・俺姫様とデート一度でいいからしたかったぜ・・・」
「諦めろリュウ・・・俺たちは城の騎士!姫様を守るためにここにいるんだ!デートなんかに釣られちゃいけねぇぜ!」
「そうだな、ノヤっさん!!俺は絶対姫様を守る!!」
あああ・・・タナカとノヤ、ええ子や・・・
後でボーナス出すように騎士長に言っておこう・・・
(ごめんね)
そう思いながら、廊下を走った。走っても無音。ほんとすごいだろ。
城内も侍女や騎士なんかがドタバタと走り回りあちこちで立ち止まっては噂をしていてみんな今回の出来事に興味津々だな~と思った。みんな噂話好きね。仕事しろ!!
ふと、普段使っていない、城の展望台へ続く階段から白衣を着た男性が出てくるのが見えた。
(あ!ケンヤのお父さんだ!!)
(てことは、お医者さん呼んだんだ)
(・・・じゃあこの上に、あの子がいるのかな)
直感でそう感じて、アタシは古い木の扉を開け、暗い階段を上った。
展望台に続く階段の途中に、もう一つ扉があった。
話声が聞こえたから、彼女はこの奥かもしれないと思った。
壁を通り抜けると、そこには 父さんと母さんと騎士長のサワムラと あの子がいた。
「本当に、無事でよかった・・・」
「また会えてよかった・・・」
父さんと母さんは涙を流していた。
私が14歳の時、目が覚めた時も こうして心配そうに父さんと母さんは傍に居てくれたのを思い出した。
そしてあの女の子
やっぱりアタシにそっくりで・・・
ソックリ、だけど、どこか少し違ってて・・・
うつろな雰囲気の 不思議な女の子だった。
「・・・姫はご自分のことは何も覚えていらっしゃらないようです」
サワムラがそう父さんと母さんに伝えた。
(アタシと一緒だ!)
そう思った。
「あ・・・あの、ここはどこですか・・・?」
「もう心配しないで、サオリ」
「おかえり、サオリ、ここがお前の家だよ」
”サオリ”
あの時、ユウジが言ってた名前と同じだ。
(やっぱり、この子のことだったんだ)
父さんも母さんも泣いてる。
おかえり、って言ってる。
やっぱりこの子が、もう一人のお姫様なんだ。
(・・・アタシの姉妹)
「ち、違うと、思います、すいません、私今までのこと何一つ覚えてないんですけど・・・ここは私の家ではないと思います・・・」
布団から少しだけ顔を出した彼女が、おびえた様子で言った。
「・・・いいのよ、焦らなくて」
「先生も記憶以外は健康と言っていたから、ゆっくり思い出すといいよ」
じゃあ一度私たちは席を外すね、と父さんと母さんは戻って行った。
この騒ぎだ、きっと明日の成人の儀は中止なんだろう。その処理でドタバタと忙しいんだろうな、そう思った。
「・・・姫様、ずっとお探ししておりました」
騎士長のサワムラが、膝をついて言った。
「あの、わ、私・・・」
「怖がらないでください。俺が命に代えても必ず姫様を守ってみせますから」
サワムラはそう言って、全然部屋から出て行こうとしなかった。
(くそ!)
(これじゃああの子とお話できないよ!)
その時、大きな声で マナミ様がまた部屋を抜け出したぞー!!! と聞こえてきた。
やっべ!!!!
彼女の居場所が分かったことだし、とりあえず私は、急いで部屋に戻った。
(また明日会いに行ってみよう)
そう思いながら。