「マナミちゃん、今日何の日でしょうか?」
そう、オイカワに言われた。
「・・・ふんどしの日かな」
「またまたぁ、わかってるくせに」
「あ、煮干しの日!」
「もう~、今日はバレンタインでしょ!」
「バレンタインかぁ・・・興味ないなぁ・・・」
「ふーん、でも昨日、アイツにプレゼントあげてたでしょ?」
!!!!!
ば、バレとった・・・!!!
(こわっ!)
(ストーカーかよ!!)
「で、俺には?」
「・・・」
「俺のこと好き?」
「・・・」
「マナミちゃん、俺の目、見て」
「・・・」
ぎゅっ(>_<).。oO(見たらきゅんきゅんするからぜってー見ねぇぞ)
「もぉ!今日なんなの全然素直じゃない
」
グッと、オイカワに頬を両手で包まれた。
(◞‸◟).。oO(ま、負けへんぞ!!)
「・・・あとで逆バレンタインでチーズケーキあげるよ」
「え、チーズケーキ!?(゜∀゜)」
あ、しまった(゜-゜)
「・・・俺のこと、好きでしょ」
「・・・うん」
「じゃあさ、」
「うん」
「俺たち婚約してるけど」
「うん」
「17歳の成人の儀が終わったら、すぐに結婚の準備始めようか」
「え・・・?結婚?」
「うん、俺から王様と妃様に話しておくよ。成人の儀で結婚を正式に発表して、それから準備を始めて・・・3か月後くらいには結婚できたらいいよね」
「でも、私まだ成人の儀とか、国の後継者とか自身ないし・・・」
「大丈夫だよ、俺がついてるでしょ?俺に任せれば、全て安心だから」
「・・・うん、そうだね。アタシにはオイカワがいたんだ、絶対乗り越えられる」
(乗り越え、られる・・・)
(のか?)
(ああ、今日も 流される)
(おかしい・・・)
(これは絶対おかしいのに)
オイカワとなら、なんでもできると思う。愛の力ってすごい・・・!
(って、思っちゃう自分!)
(そして逆らえない自分・・・!)
(心が、ザワザワする)
「・・・でもまだ、17歳になるんだよ?結婚って早くない?」
「マナミちゃんモテるからね~、急がないとさ」
「え、モテたことないけどwww」
「だって!昨日だってアイツにプレゼント渡してたじゃん!!俺すっごい怒ってんだからね!!」
「え、でもあれはバレンタインだから、とかじゃないんだよ、ごにょごにょ」
「隣の国王の跡部にも求婚されてるって話じゃん」
「あぁ・・・なんかそんなこと言ってたね」
「だから早く落ち着きたいの!ね、俺のものになって・・・」
(もの・・・)
(アタシはものじゃねぇよ・・・)
(って、思っても言えないんだよな・・・)
(言えないし、なんか 嬉しいきゅーん とか思ってる私がいて)
(おかしい)
(これはおかしいぞ)
(おかしいけど 言えないぞ)
「・・・うん」
「じゃあ俺、王様に話しておくからね!」
「わかった、よろしく!」
オイカワが部屋を出て行った。
ドッと 汗が噴き出した。
え
ちょっと待って
結婚・・・だと・・・?
結婚・・・するって!?
は!?
成人の儀で発表、三か月後に結婚!?
嘘だろ!?!?
やばい、これは、ど、どうし・・・!!
動揺したアタシは お城を飛び出したのだ。
「むーーーりぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!」
って、お城飛び出しても、いつものメンバーには言えない・・・!言えないよ・・・!
だってみんな「せやからいつも別れろ言うてたやろ!」とか「さっさと別れへんからや!」とか絶対言うもん!!
言うもん!絶対色々言うもん!!!
一生懸命みんなの前でオイカワのことイイヤツだよってアピールしてきたけど全然ダメだったもん・・・!!
オイカワ、マジで超タイプじゃないけど、一応イケメンのくくりだし、国のことは一生懸命やってくれるし、アタシには超絶優しいし・・・!!
でも、でも、でも・・・!!!
その気持ちとの葛藤であああああこれじゃいかん!ヤバイ!!と思う自分がいるぅぅぅ!!!!!
ああああああでも好き・・・好きだ、さっき思ったけどやっぱ好きだ・・・
好き・・・
なんだよな・・・
だから、もう・・・結婚しちゃっても いいのかもしれない・・・
「あれ!?こんなところでどないしたん!?」
声をかけられて 顔をあげた。
「・・・ケンヤ?」
あれ、アタシ、気づいたらケンヤの家の近くまで来ちゃってたのか・・・
「またお城抜け出してきたんか?今日、みんな川に魚採りに行っとるで」
「え、アタシも行きたかった・・・」
「姫様、成人の儀の準備で忙しいて言うてたから置いていくってユウジ言うてたで」
「くそ・・・ユウジめ・・・」
「そうや、昨日、ペンおおきにな!めっちゃ使いやすくて・・・・・・あれ?」
ケンヤは、アタシの顔を覗き込んで 何があった? と真面目なトーンで言った。
アタシは驚いて 顔を隠して、何にもないよ、 と小さい声で答えたのだけど。
「・・・何があったん、言うてみ」
(・・・不思議だ)
さっきまで オイカワが好きだと思っていた気持ちが スーーー と消えていく。
やっぱり、どう考えても
アタシ、オイカワとは結婚できない。
(ケンヤに、相談してみようかな)
ユウジやザイゼンには散々怒られたりからかわれたりしてたけど
ケンヤは一度もアタシのこと、バカにしたことはなかった。
いつだって、少しアタシと距離を置きながら それでも彼はアタシの話をちゃんと聞いてくれてたから。
(・・・もし、)
(もしケンヤが)
(結婚するな、って言ってくれたら)
(そしたらアタシ、がんばって オイカワに結婚は出来ないって 言える気がする)
彼の言葉で 全てが、 変わる気がする。
「・・・ケンヤ」
アタシはぐっと顔をあげて 口を開いた。
「どないしたん」
「あのね、」
「おん」
「アタシね、」
「ん」
「・・・成人の儀が終わったら、結婚、 することになったの」
「え・・・?」
ケンヤが 驚いて、かたまった。
わかる。
アタシも 超驚いたもん。
「でもね、アタシ、」
やっぱり自分の気持ちに納得してなくて、結婚するのは・・・
と、言いかけた時だった。
「・・・よかったやん」
信じられない言葉が 耳に入った。
(・・・・え?)
(ケンヤ?)
(今・・・よかった、って、言ったの?)
アタシが 結婚すること、よかったって、思ってるの・・・?
「アイツなら・・・ユウジやザイゼンは色々言うとるけど、俺は、本気で姫様のこと好きやって思うから・・・幸せになれるんちゃうか?」
(幸せに なれる?)
(・・・本気でそう思ってるの?)
(オイカワと結婚したらアタシは幸せになれるって)
じゃあ アタシの気持ちはどうなるの?
「まぁ、ちょお急ぎ過ぎな気もするけど・・・」
「・・・わかった」
スクッ
アタシは立ち上がった
「うん・・・ありがとう、アタシ、がんばるよ」
「あ・・・」
「このこと、みんなにはナイショにしてね!成人の儀で発表してビックリさせるから!」
「ちょ、まっ、」
ケンヤが何か言いたそうだったけど またね、 そう言ってその場を離れた。
(・・・そっか、結婚したらいいのか)
(あのケンヤが言うんだから その方がいいんだろうな)
(コハルちゃんもオイカワのこと好きって言ってたし)
(ユウジやザイゼンが悪くいうけど、そんな悪いやつでもないし)
そうだ、オイカワ、ああ見えてもいいやつだ
(大丈夫)
(信じて結婚しよう)
(大丈夫だ、)
(大丈夫、)
ポロ
涙が、こぼれた。
「・・・あれ」
おかしいな
もう 決めたのにな、結婚するって 決めたのに
「ケンヤも、背中押してくれた、し」
そう、相談したら ちゃんと答えてくれたんだ
ケンヤのこと、信頼してるもん
そのケンヤが 幸せになれるって言ってくれたんだから
だから、泣く必要なんてないのに
ポロポロポロ
涙が 次々と溢れてくる涙を拭きながら
なんでこんなに涙が出るのか
この気持ちがなんなのか
今は何も 考えられなかった。
ただただ 溢れてくる涙に
(・・・・・結婚、するな って 言ってほしかった)
そんな風に思っても それがどうしてなのかはわからなかった。