014***さおり

7月初旬。

すっかり夏になって暑くなった。

無事に県大会を優勝して、関東大会も近くなった日曜日。

珍しく午前中だけで部活が終わったので、まぁちゃんと待ち合わせして、まぁちゃんとブンちゃんと3人でホテルのスイーツバイキングにやってきた。

 

marui「やべぇ・・・うまそう・・・」

manami「やばいねこれは・・・」

 

スイーツ大好きな2人の目が輝いていた。

面白いw

 

 


 

 

 

saori1「ブンちゃん、まだ食べるの!?」

marui「まだまだいけるぜぃ☆お前、もう終わりかよ」

saori1「終わりだよ・・・肉が食べたい気分だよ・・・」

manami1「アタシもまだまだいけるー。このために朝と昼抜いて来たし!」

saori1「きみたち見てると気持ち悪くなってくるわ・・・」

marui「ジロ君、元気か?」

saori1「ジロちゃん?元気だよ」

manami1「大体寝てるから元気だな」

marui「そっか」

saori1「ブンちゃんに会いたいってうるさいけどね」

manami1「そうそう、なんかリストバンドあげたんでしょ?」

marui「あれはあげたんじゃなくて、とられたんだよ」

saori1「とられてたね・・・」

manami1「そうなの?でもリストバンド大事そうにしてたわ!」

marui「そっか、ならとられたかいもあったな」

 

 

1年の10月。

氷帝と立海と四天宝寺のみんなでやった合宿の少し前に、

新人戦があって、その時にジロちゃんがブンちゃんの技術に惚れこんで、すっごい嬉しそうにしてた。

(あんなに元気に起きてるジロちゃん久々にみたよ)

 

それから、ブンちゃん大好き人間と化したジロちゃんと、よくブンちゃんの話してたんだよね。

ブンちゃんの作ってくれたお菓子、たまにジロちゃんにあげたりして。

普段寝てるくせに、ブンちゃんの話題になると、目が覚めるから不思議だ。

 

 

marui「氷帝、都大会優勝だろ?関東大会で会うの楽しみだな~」

saori1「そうそう、ジロちゃんが楽しみにしてたよ」

manami1「亮とかも燃えてたよね」

saori1「がっくんもね~」

marui「ふーん。まぁ負けねーけど」

saori1「そうだね、頑張ろうね」

manami1「アタシも、立海応援するわ」

saori1「また跡部くん怒るよ~・・・」

manami1「知らんがな」

saori1「そういえば、ジロちゃん、ブンちゃんと遊びたいって言ってたわ」

marui「マジか。部活忙しいし、なかなか会えないな」

saori1「そうだね・・・」

manami1「ホント、立海忙しすぎだわ!さおちゃん帰って来るの遅いし、悲しい」

marui「だよなー立海練習多すぎだよなー」

saori1「でもブンちゃん、けっこう学校帰りにゲーセン行ったり、ラーメン食べに行ったりしてるしょ・・・」

marui「おう」

saori1「部活前に駄菓子屋いったりさ・・・すごいいろいろ行ってるよね」

marui「あーそうか?」

saori1「そうだよ。私なんて、家遠いから、学校と家の往復だよ」

manami1「さおちゃん大体学校か家だからPHS持ってないもんね」

saori1「うん、大体学校か家だからね」

marui「PHS持てば?遠いからあぶねーだろ?」

manami1「そう言ってるんだけどさ、PHS代もったいないからいいって言うんだよね」

saori1「居場所わかってるんだから大丈夫だよ」

manami1「そうかい?きみと離れてる時にメールしたいよ。今さおちゃん何してんのかなーって思う時とかある」

saori1「部活してるよ」

marui「だな」

manami1「そうだけどさー!」

 

 

確かに、PHSちょっとうらやましいなって思うこともあるんだよね。

なんかみんな持ってるし。

 

(PHSあったら、白石くんともメールのやり取りになるのかな?)

(うーん、でも文通楽しいからしばらく続けたいな~)

 

 

そんなことを考えながら、スイーツを食べ続ける2人を見る。

やばい、本当に見てたら気持ち悪くなってきた^^

なんだこの2人^^

 

 

manami1「はぁ・・・アタシもさすがにそろそろギブアップー」

marui「マジかよ」

saori1「ブンちゃん、まだ食べるの!?」

marui「余裕」

manami1「ひょえーさすがのアタシもちょっとここまで食べる人初めて見たわ」

saori1「ブンちゃん、体重増えたらまた真田くんに怒られちゃうよ

manami1「なにそれうける。さおちゃん何の心配してんの?」

saori1「こないだブンちゃんね、体重計乗ったら重くて真田くんに怒られてて・・・」

marui「重いっていうなって!き・ん・に・く!」

manami1「www  ほんとかよ~www」

saori1「だって、『たるんどる!』って思い切り・・・」

manami1「肉がたるんどるwww」

marui「ちげーから!んだよ、マジで・・・」

 

 

とか言いつつ、手を止めないブンちゃん。

まぁちゃんは休憩すればまたいけそう・・・なんて呟いてるからこっちはこっちで怖い・・・

 

ってか、ブンちゃん、ホント食べすぎだけど大丈夫かな・・・?

まだまだ机には大盛りのスイーツがあるけど、全然手を止める気配がないからハラハラしちゃう・・・

こんだけ食べたら完全に元取ってるな・・・いいなブンちゃん・・・

 

 

そんな時、

 

 

「・・・見られてるね」

 

 

そんな風にまぁちゃん呟いたものだから、びっくりした。

 

 

saori1「え・・・?見られてるってどういうこと・・・?」

manami1「いや、見られてるわ、視線感じる」

saori1「え、何それ!怖い!」

manami1「きっとアタシが可愛いからだ・・・」

saori1「きみモテるもんね・・・どうしよう!」

marui「大丈夫だって、俺が守ってやるから」

manami1「ブン太、すっげーセリフいいのに、スイーツ食べながら言うから台無し」

marui「手は止めない」

saori1「ブンちゃん・・・」

 

 

(え、どうしよう・・・)

(中学生だけで来ちゃいけなかったのかな???)

(どうしよう、怖い・・・)

 

 

そう思っていたら、私たちのほうへ、1人の男の人が歩いてやってきた

 

 

(!?)

 

 

saori1「ま、まぁちゃん・・・」

manami1「大丈夫だよ、ここ人しかいないから。何かあっても何とかなるよ」

marui「俺が守るから大丈夫だって」

saori1「まぁちゃんもブンちゃんもなんでそんなに冷静なの!?」

 

 

そんな話をしていたら、男の人は、私たちの前で足を止めて、

 

「あの・・・」

 

と話しかけてきた。

 

 

「何?」

 

 

それに返事したのは、まぁちゃんだった。

 

 

(まぁちゃん・・・!)

(危ないよ!!!)

 

 

私はハラハラしながら、その場を見守る。

すると、男の人は、スッと私たちの目の前に1枚の紙を出した。

 

(わっ!)

(なになに!?)

 

それが名刺だと気づくまで私は時間がかかったけど、

2人はすぐにそれを手に取って、眺めていた。

 

 

「「ディレクター???」」

 

 

そして、2人は声を揃えてそう言ったのだ。

 

 

「はい、僕は○○テレビのディレクターやってます」

「テレビ局の人が何か用?」

「用事があるのは、そっちの子なんだけど・・・」

「俺?」

 

 

そのディレクターという人は、ブンちゃんのことを指していた。

 

 

「きみ、さっきから見てたらすごい食べるみたいだけど、大食い選手権とか興味ない???」

 

 

その一言で、満場一致で

 

あ、そういうことか

 

と気づく。

 

やだ、やっぱりブンちゃんのこれって、大食い選手権出れるレベルなの???

 

 

「興味なくはないけど」

「本当?きみ、顔もいいし、うけると思うんだよね。中学生かな?」

「はい、中2っす」

「じゃあぜひテレビに出てみない!?この食べっぷりはテレビに出れるよ!」

 

 

(ぶ、ブンちゃん・・・)

 

 

私はなんだか驚いてその様子をぼーっと見てたんだけど、

まぁちゃんは爆笑。

隣でお腹を抱えて笑っている。

 

 

そんなスカウトの人にブンちゃんは少し考えたように黙った後、

口を開いた。

 

 

 

「無理っすね」

「え!?ダメ!?親御さんにはちゃんと連絡して・・・」

 

 

 

 

 

「俺、たくさん食べれるのスイーツ限定なんで」

 

 

 

 

 

そう言って、断ったブンちゃんを見て、更にまぁちゃんが爆笑していた。

 

その後、ブンちゃんが大食い選手権にスカウトされたことは、部活のみんなに知れ渡って、

真田くんが「もう少し自重せんか!」と怒っていた・・・

 

 

 

 

 

「・・・ブンちゃん、普通にご飯もめっちゃ食べるくせに」

「あーいったほうが、すんなり断れるだろい?」

 

 

 

 

 

これが、上手く生きてくために大事なんだぜ

 

 

ってブンちゃんが言ってたけど、わかったようなわからなかったような・・・

 

 

とにかく今日もブンちゃんは、たくさんのお菓子を離さないのでした。

 

 

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