012***まなみ

2年になったら、レギュラー争いだなんだって、3バカは忙しくなって、

「新入生はいってきたんだ~」と喜ぶさおちゃんも相変わらず忙しくて、

 

 

「結局暇なの私だけかよ!!」

 

 

誠に遺憾ではありますが、どうやらそのようです。

 

 

 


 

 

 

 

アンタ暇なんだからおつかい行って来てよ

 

母さんにそう言われて、仕方なく買い物に行く。

ちゃんとおとなしくおつかいにいくアタシえらいだろ・・・

ハーゲンダッツにつられたとかそんなことよりも、とにかく偉い・・・

 

GW中の商店街は、いつもよりも少し賑やかで、

この街の人はせっかくの休みなのにどこにも行かないのかなぁって思っていた。

 

 

 

「おっちゃーん、ひき肉300gちょうだい」

「おう、まなみちゃんおつかいかい?えらいじゃねーか」

「でしょ?」

「はは、コロッケおまけしてやるから、一緒に食べな」

 

 

一緒に?

 

どういうこと?

 

 

そう思って、店の角を見てみると、

 

 

 

(あ!)

 

 

 

「よ!久々やな!」

 

 

 

そこには、金髪のおしたりがいた。

 

 

 

「おしたりけんや・・・」

「おう、元気やったか?」

 

おつかいえらいやん!

 

そう言いながら、コロッケを頬張っている。

なぜだ?

こいつは大阪の人間ではないのか?

なぜいつもここにいるんだ!!

 

 

「謙也くんもすっかり常連だな!」

「おっちゃんのコロッケめっちゃうまいで!大阪でも、急に食べたなんねん!」

「嬉しいこと言ってくれるじゃねーか!」

「こっち来たら絶対食べたくなる味や!」

「よ~し!もう一個食べてきな!」

「ほんまに!?おおきに!!」

 

 

・・・全く、遠慮というものを知らないやつだ。

 

アタシに、ひき肉とコロッケを渡したおっちゃんは、

「これ、謙也くんに渡してくれ!」と私にコロッケを差し出した。

 

 

「・・・はい」

「おおきに!」

「ちょっとアンタ少しは遠慮しなよ!おっちゃんのお店潰れたらアンタのせいだよ!」

「大げさやな!?」

「はは、謙也くんの何百倍もコロッケ、子供の頃からまなみちゃんにやってるけどな」

「おっちゃんは黙ってて!」

「自分かてもらってるやん」

「おっちゃんのコロッケ、世界一」

「それはわかる」

 

 

そして、青空の下、2人でコロッケを食べる。

これが五月晴れってやつかーとぼーっと空を見上げる。

そう言えば、おしたりけんやは何をしているのだろうか、こんなところで。

 

 

「アンタ、なにしてんの?」

「俺?俺GWやから遊びに来てん」

「遊びに来たのにここにいていいの?」

「いや、俺の家族と侑士の家族で今日はのんびりゆっくり神社巡りするとか言いよんねん」

「うん」

「けど俺、そんなのんびりすんの嫌やんか」

「うん、知らんけどな」

「せやから、俺遊園地行きたい!って言うてん」

「うん」

「ほんだら、侑士が部活終わったら2人で行けばええって親に言われてん」

「うん」

「何が悲しくてアイツと2人で遊園地いかなあかんねん!!」

「ぶふっ」

 

 

おしたりけんやの必死な物言いに、思わず吹き出してしまった

 

(だって!)

(男2人で遊園地ってすごいシュール!)

(しかも、あのメガネと・・・!)

 

きっと乗り物乗る時の目が死んでるんだろうな~って思った。

 

 

「笑うなや~俺これからどないしよ~って思っててんで!?」

「すまんすまん。で、どこの遊園地行くの?」

「ドームシティ一番近いからドームシティ行こうかと思ってんけどな」

 

 

時間も時間やし・・・

 

 

そう言いながら、PHSを見たおしたり謙也は

 

 

「ん!?」

 

 

と驚いたような声をあげた。

 

 

「なに」

「あ、あの~~~~~侑士のあほ~~~~!!!『俺は神社めぐりに合流するから1人で遊園地行ってこい』って~~~~~!!!」

「それはそれは・・・」

「なあ自分暇!?」

 

 

悔しがっていたと思っていたおしたりけんやは次の瞬間、

アタシのの顔を見て、そんなことを聞いてきた。

(表情コロコロ変わるな、こいつ)

 

 

「暇じゃない。おつかい中だし」

「あ!せやんな!ほな、おつかい終わったら暇!?」

「・・・(さおちゃん午後も部活だし、3バカは・・・別にいいか・・・)」

「一緒にドームシティ行かへん!?」

「うーん・・・でもお金ないし」

「前売り券2枚買っといてん!!一緒にいこうや!!」

 

 

そう言って、おしたりけんやは「頼む!」と頭を下げた。

 

 

「うーん・・・まぁ出してくれるならいいけど・・・」

「ホンマ!?ほな、はよおつかい終わらせよ!俺も手伝うで!!」

 

 

そういうと、おしたりけんやは、アタシの持っていた袋をもった。

 

 

「はよいこ!」

「まだコロッケ食べ終わってない!」

「遅いな~」

「アンタが早すぎるんでしょ!」

「ほな、俺も手伝ったるわ!」

「あ!食べたな!」

「はいふへったやろ」

「食べながら喋るな!!」

 

「青春だねぇ~」

 

「おっちゃんうるさい!!」

 

 

なんて勝手な奴だと思いながら、

遊園地なんてアタシも久々だし、少し浮かれている自分がいて

 

 

おつかいを終わらせて、

 

「おかーさん!友達と遊園地いってくる!」

 

そう言ったら、さあすがにお小遣いをくれたから、それを持って2人で出かけた。

 

 

 


 

 

 

 

「サンダードルフィンもっかい乗らへん!?」

「いいよー!」

「なんや、自分、けっこう絶叫系いけるんやな!」

「むしろ大好き!」

「そうなんか、今日、一緒に来れて良かったわ」

 

 

そんな風に、おしたりけんやが笑顔で言うもんだから、

 

 

「あんたホントは、おっちゃんのとこでコロッケ食べながらアタシのこと待ってたんじゃないの?」

 

 

そんな風にふざけて、アタシが言ったら、

 

 

「え!!!???」

 

 

あきらかに動揺して、顔を真っ赤にしているおしたりけんやを見て、

 

 

(図星・・・?)

 

 

なんだか、いろいろとわかってしまった。

 

 

(アタシ、モテるからな!)

(ホント、アタシは罪作りな女だよ・・・)

 

 

「ちゃ、ちゃうねん!!あの、ほんまに!ほんまに侑士と行こうと思うててんけど!!」

「・・・」

「あの!た、たしかに、会えたらええなぁ~とは思うてたけど・・・あ、いや、ちゃうくて!!」

 

 

 

でも、他の男と違ってイヤな気持ちがしないのは何でだろう。

 

 

 

(顔真っ赤にして、)

(必死になっちゃって、)

 

 

 

「・・・ほら、前進んだよ!早く行くよ!」

「!?   おん!!!」

 

 

 

結局、2人でたくさん乗り物に乗って、

夕方には家まで送ってもらった。

 

家にはもうさおちゃんがいて、普通にゲームして遊んだりした。

 

 

 

(・・・楽しかったな・・・)

(なんか、久々に楽しかった・・・)

 

 

 

最近誰も遊んでくれなかったし、

久々にたくさん遊べて、私もストレス発散になったのかもしれない。

 

私は、真っ赤になりながらPHSの番号を聞いてきたおしたりけんやを思い出しながら、

今日のことは誰にも言わないでおこうと思った。

 

 

 

 

けど、

 

山本のおっちゃんが2人で遊園地に言った事を言いふらしたせいで、

3バカにデートだとからかわれるのであった・・・

 

 

コロッケもらいにいってやる!!!!

 

 

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