第6話:サオリ&マナミ

彼がこうして守ってくれたこと 絶対に忘れない。

 

それは11歳の時だった。目の前のモンスターから彼女を必死に守ろうとする2人の少年の姿がそこにはあった。

なぜそのような状況になったのか

まずは数刻前に遡ろう。

 

 

 

 

「精霊の星渡りは300年に1度、数千羽の精霊が夜間に一斉に新しい住処へと移動すること。

移動時は姿を隠しているが、美しい水辺で休憩する際のみ姿を現す。

その姿は色とりどりに輝き、暗闇の中溢れるように光り輝き水辺を美しく飾る。

あまりの幻想的な光景に人々は息を飲み、想い人と共に見たものは永遠に結ばれるという伝説がある。」

 

それが、今夜ってワケ!300年に一度の精霊の星渡りなんてロマンチックやない?♡♡♡

 

と、コハルちゃんが言ったんだ。

そういうキラキラしたお話、すごく好きな私は それはもう目を輝かせて すごい と呟いた。

コハルちゃんの持っていた本に描かれている絵がそれはもう綺麗で

それをこの目で見れるのならば、ぜひとも見てみたいと 強く思った。

 

 

コハル「ウフフ♡サオリちゃんなら絶対見たいて言うてくれると思うたわ!」

サオリ「(ホワホワホワ)」

ノスケ「それどこで見れるんやろ?」

コハル「この辺やったら東の森の奥にあるユニコーンの湖で見られるらしいで」

マナミ「あぁ、あそこ水綺麗だもんな。でもあそこ食人植物のモンスターいるよね」

ユウジ「気を付ければ平気ちゃう?な!コハル!行くやろ?一緒に行こうや!俺らで伝説叶えよ♡」

コハル「めっちゃ行きたいんやけど・・・今日あかんのよ。明日従姉妹のお姉ちゃんの結婚式で今夜は親族でお食事会あんねん」

ユウジ「えーーーー!!!そ、そんな!!!コハルがおらんなんて・・・!!」

コハル「しゃあないやん。みんなで行って来て!ほんでこの前ヒカルと共同開発した景色をそのまま立体的に映せる機械で撮影してきてちょーだい♡」

ユウジ「コハルおらんなんて・・・(絶望)」

キンタロ「えー!ワイ今日新しい冒険の旅に出なあかんねん!!植物モンスターと戦いたかったー!あれ焼いて食うとごっつ美味いねん!!」

ザイゼン「え・・・人食い植物食ったんか・・・(ドン引き)」

キンタロ「美味かったでー!けど今日あかんからまた別の日に行くわ!!」

チトセ「俺も今夜中に壺焼き完成せんと師匠に怒られるから行けんばい・・・」

マナミ「いつも怒られてるなチトセwもっと真面目にやんなよwww」

ザイゼン「俺も今日はパスっすわ。昨日徹夜で作業しとったんで」

ケンヤ「俺も夜抜け出すんはキツイなぁ。こないだ薬の瓶割ってもうて親父カンカンやし・・・」

 

 

ノスケ「・・・サオリは、行くやろ?」

 

 

そう、本の絵をじっと見つめていた私にクラノスケくんが声をかけた。

 

 

サオリ「あ・・・い、行きたいけど、夜にお城出れないから・・・」

チトセ「モンスターもおると、夜は姫様には危険やなか?」

コハル「ほな、撮影してきてもらったん、一緒に見ましょう♡村の人で行く人おらんか聞いてみるわ!」

マナミ「いや、サオちゃん、クラノスケと行ってきなよ?」

サオリ「え?」

 

まぁちゃんのその言葉に驚いて顔を上げてまぁちゃんを見つめた。

 

マナミ「お城からならアタシこっそり出してあげるよ」

ユウジ「お前脱走得意やもんな・・・」

ケンヤ「え、けどええのか?モンスターおるで?」

マナミ「え?クラノスケいるなら大丈夫でしょ」

 

ね、今度はまぁちゃんがクラノスケくんを見てそう言った。

言われたクラノスケくんは目を丸くしながら それでも嬉しそうに、あぁ と頷いた。

 

ケンヤ「圧倒的信頼感!!!」

ユウジ「すごいな!いつもサオリに少しでも危険が及ぶことは猛反対するお前が言うなんてな!!」

マナミ「だってサオちゃんすっごい見たそうにしてるじゃん。サオちゃんこーゆーキラキラした夢の世界みたいなの大好きなんだよ?それにクラノスケいたら安心じゃん?魔法なんでも使えるし、剣術も武術も長けてるし、知識もすごいじゃん。特に植物系に関しては薬草、毒草、火炎草、迷わずに一発で見分けられる。相手が植物のモンスターならなおさら、知識がある分余裕でしょ」

 

 

(じーん・・・)

 

(ま、まぁちゃん・・・!)

 

 

まぁちゃんがそんなにクラノスケくんをかってくれてたなんて・・・!

嬉しくてすぐにクラノスケくんを見つめた。

 

 

ノスケ「・・・えらい期待されとるな。まぁ、その通り、サオリのことは守る自信あるで」

 

どうする?行く? と聞くクラノスケくんに

 

「行く!!!!!」

 

と、私は笑顔で応えた。

 

マナミ「よし、じゃあ今夜はうまくサオちゃん外に出すからクラノスケは裏門の近くで隠れて待ってて、確か裏に昔抜け道掘ったはずだから」

ノスケ「了解やで!」

マナミ「じゃあアタシは城の騎士連れてコハルちゃんのために撮影してくっかな」

ケンヤ「え!マナミも行くんか!?こーいうの興味ないと思ってたわ!」

マナミ「いやだってユウジ絶対行かないだろうから撮影してきてやらんと・・・」

ユウジ「俺コハルおらんなら行かん」

ザイゼン「姫自ら率先してカメラマンてwwwww」

コハル「マナミちゃんごっつ男前やん・・・♡」

マナミ「仲いい騎士いるんだわ、タナカとノヤね。うるさいけど元気だし面白いしカワイイしいいよ」

ケンヤ「え、あいつらか・・・」

マナミ「結構強いんだわ」

ケンヤ「や、ほな俺一緒に行くわ!!」

マナミ「なんでだよ・・・お前じゃお供にならんだろ・・・なんの役にも立たん・・・」

ケンヤ「なんでやねん!!失礼なこと言うなや!!行くったら行く!!!」

マナミ「勝手に一人で行って来いよ!!!!」

 

ぎゃあぎゃあとまぁちゃんとケンヤが喧嘩してたけど そんなのも聞こえないくらい今夜が楽しみで

また私はひとりで夢中でコハルちゃんの本を読み続けていた。

 

 

 


 

 

 

 

「サオちゃん、こっちだよ」

 

こっそり作っだ抜け道にサオちゃんを案内する。抜け道サオちゃんのために昔必死に掘ったからな!全然使ってなかったけど埋められてなかったwwwこの国の警備はどーなっとるwww
アタシの今日のミッションは星渡りを見ているそれはそれは幸せそうなサオちゃんを録画しまくること・・・!

このコハルちゃんから借りた立体に映るメカでバッチリ記録に残すのだよ。

サオちゃんはね、ほんとは撮るの好きだけど撮られるの嫌いで、アタシ撮るの下手だし撮られる方が好きだけどな

サオちゃん、可愛いからな、おらは撮るぞ!そしてクラノスケとの2人の邪魔をするようなヤボなこともしねぇ!あの二人物心ついた時から両想いだからな!クラノスケめっちゃサオちゃんに優しいから信頼しとる!!2人は永遠に結ばれればいいのさ!!

 

ってことで、さおちゃんをコッソリ裏門の近くの抜け道から城の外に出して、約束通り白石にお願いした。

ちなみにもう両親にはオヤスミしたから寝てると思ってるだろうさ。

 

さてと、嬉しそうなサオちゃんを見送ったのでおらも行こうか。

裏門からヒョイっと抜けて、なんかケンヤが一緒に行くとか言い張るから仕方なく行くか・・・

タナカとノヤと行きたかったな・・・あいつらノリいいし・・・姫様ー!って追いかけてきてめっちゃ可愛いし・・・チビだけど・・・

 

 

「よ」

 

 

夜道にビビってキョロキョロしてるケンヤを発見して声をかけると うわぁ!! とめっちゃビビってその場にひっくり返った。

やばいこいつwwwビビりwww面白すぎるwwwwwww

 

 

「マ、マナミか!なんの気配もなく急に背後から声かけんなや!!」

「ビビりすぎだろケンヤwwwそんなんでアタシについてこれるのか?」

「あ、当たり前やん!俺がしっかりお前のコト守ったるから安心せぇよ!」

「・・・って、そんな尻もち付きながら言われてもなwほれ、立てよwww」

「お前が驚かすからやんけ・・・!」

 

 

ブツブツ文句言いながらもアタシが出した手を掴んで立ち上がるケンヤ。

・・・あーあ、いつの間にか手はこんなに大きくなっちゃったんだな

そう思ったことは言わずに、ケンヤと一緒に東の森に向かった。

 

 

「なんか暗いよね、灯り持ってないの?」

「灯りなんて目印になってモンスターに狙ってくれって言うとるようなもんやろ!」

「でも植物系モンスターって火に弱いんじゃないの?あと夜間はあんま活動しないってクラノスケ言ってたから大丈夫じゃね」

「い、一応火薬草は持ってきとるで」

「ウケる!薬草は?」

「ある」

「絶対あると思ったwケンヤいつもシナシナの薬草持ってるよなwwwいつ食べんのwww」

「ええやんけ!もう笑うなや!なんやねん、俺かて色々準備してきてんねんぞ!」

「もう!ケンヤ無理しないで家にいればよかったのに!アタシ別に騎士と一緒でもよかったし・・・」

「や!せやから!それは・・・それは俺が嫌やってんって・・・」

「ケンヤ魔法も使えないしさ、武術と剣術は結構得意みたいだけど、他に特技ないしさ・・・」

「魔法は!ヒーリングちょっと練習しとるとこやし・・・!あと特技ないわけやない!俺めっちゃ足早いし!!」

「足早いけどさwwwそれもう一人で逃げる用じゃんwwwアタシ足遅いもんwww絶対置いて行かれるしょwww」

「置いてなんて行かへん!!!絶対、マナミのこと、守ったるわ!!!」

「・・・」

 

ケンヤがグッと力強くそんなこと言うから

それ以上は何も言えなくなってしまった。

 

(だってお医者さんに何かあったら、街の人みんな困るじゃん)

 

その言葉すらも飲み込んで

胸がドキドキするのをごまかすように

 

それならお手並み拝見だな、と手を差し出した。

ケンヤはその手をグッと握って おう!任せとき! と私の手を引いて前を歩いた。

 

華奢な彼の背中がいつの間にかこんなに大きくなっていて

なんだかケンヤを直視できなくて、アタシは俯いて歩いた。

 

 

ニョロ

 

 

(!?)

 

 

その瞬間、目に入って来たのは 動く草のツルだった。

 

 

ヤバイ

 

 

そう思ったときにはもう アタシの片足にはグルグルと緑の草が巻き付いていた。

 

 

「ケンヤ!離れて!!」

 

 

咄嗟にケンヤを突き飛ばしたと同時に、ツルに足を引っ張られアタシは逆さまで宙に浮いていた。

あぁ油断した。太陽が出ていなければ植物系モンスターは弱ってると思い込んでいた。

素早く草が動いて、短刀を取り出そうとした私の腕も掴まれた。

 

あ、これ詰んだわ

 

「ケンヤ逃げて!」

 

そう叫んだ時にはもう ケンヤの姿はなかった。

 

 

(ケンヤ、逃げたのかな)

(よかった)

(あいつ、街の唯一の医者の息子だもん)

(この国に欠かせない人だからな)

(まぁアタシも姫なんですけどね!)

(次女ですし)

(いいですわ)

 

ズルズルズル

 

気持ち悪い音を立てながら、モンスターの本体が姿を現した。

 

・・・いやこれよくねぇわ!!!!!

全然よくねぇわ!!!!

めっちゃ気持ち悪いわコイツ!!

なにこれ!!!こんなのに食べられるの!!?!?そしてそれをキンちゃんが食べるの!?きもち悪!!

キンちゃんすげーわ!!!!キンちゃんの栄養の一部になるなら本望だけども!だけども!!だけども!!!

 

ツルが伸びてアタシの肢体を引っ張り出した。

やばいこれ食べやすくバラバラにされる・・・!痛い!!いたいいたいいたい!!!!

ケンヤ逃げてよかったとか思ったけど訂正するわ!!!!!!

守るって言ったのに逃げたんなら一生恨む!!いや、幽霊になって取り憑いてやるくそ~~~~!!!!!

 

 

「ケンヤ、助けろーーーー!!!!!!!!」

 

 

シュパッ

 

パラパラパラ

 

 

(!?)

 

 

「・・・当たり前や、守るって言うたやろ」

 

 

どうやったのかはよくわからないけど ケンヤが剣でアタシを引っ張ってた草を切って

気が付けばアタシはケンヤの腕の中にいたのだ。

 

 

「ケンヤ!遅い!超こわかった・・・」

「すまん!荷物の中あさってたら出遅れた!もう大丈夫やで!」

 

 

ほな、反撃行ってくるわ!

 

 

彼はぐっと剣とアイテムを持って まっててな、とアタシを地面に置いた。

危ないよ、とか、行かないで、とか、いいから逃げよう、とか

言いたいことはたくさんあったのに 彼の背中を見てると 大丈夫、そう思えて結局何も言えなかった。

 

 

(大丈夫)

(ケンヤなら、大丈夫)

 

 

いつの間にか 男の子から 男になろうしてる彼の戦いを 無事を祈りながら見つめていた。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「さっきコハルちゃんの本で読んだんだけどね、」

 

これから見に行く幻想的な景色を思うと 自然とテンションが上がっていた。

すごく嬉しくて、すごくすごく 楽しみで!

それで浮かれて、彼に夢中で話し続けた。

 

「赤、青、緑、黄色、紫の光る精霊は発見されてるんだけど、それ以外はいないんだって!」

「そうなんや」

「うん!でもね、私オレンジとか、ピンクの精霊も絶対いると思うんだ!」

「せやな」

「白もいるかも!!絶対きれいだよね!早く見たいなぁ」

「ほんまやな」

 

クスクスと笑いながら彼はにこやかに私を見ていた。

目が合って、なんだか急に恥ずかしさがこみあげてきた。しまった、しゃべりすぎたかもしれない。

 

「あ、あの、ご、ごめんね、私ばっかり浮かれて・・・」

「ん?俺も充分浮かれとるで?」

「でも一人でずっと話しちゃったし・・・」

「ええよ、俺サオリの話聞くのめっちゃ好きやし」

「(テレテレ)・・・今日はついてきてくれて本当にありがとうね」

「ええねん。俺は何としても連れて来ようと思うてたし」

「え?」

「サオリと、見たいって 思うてたから」

 

(カァァ)

 

「あ、ありがとう・・・」

「空飛んで行こう思うたけど、それやと目立つしなぁ・・・こっちの道は足場悪いけど植物系モンスターもおらんし安全やで」

「そうなんだ」

「楽しみやなぁ、星渡り」

「う、うん!」

 

私が見たいから、ついてきてくれたんだと思ってた。

彼はとても 優しいから。

 

でも、こうして彼も楽しみにしてくれてるんだって思ったら、なんだか嬉しくて嬉しくて、足取りも軽くなった。

 

「ふふ」

「楽しそうやな」

「うん、とっても!」

「ハハ、俺もやで」

 

繋いでる手をギュっと力強く握れば 私のドキドキが彼に伝わってしまいそうでますますドキドキした。

あぁ、幸せだなぁ・・・

夜にお城抜け出したことは今までなかったし、規則を破ることは私はとても怖いのだけど

それすら全て忘れて 楽しい! と思ってしまう。彼がいるとこんなにも心強い。

 

「あ、そういえばね、クラノスケくん」

 

そう顔を上げた時

 

彼と繋いでいる手と 反対のもう一つの手が 冷たい何かに掴まれた。

 

 

(!!)

 

 

ビックリして手を引っ込めようとしたけど、その手はギュウと握られていて離れなかった。

 

 

「や、な、なに、なにこれ、なんか気持ち悪い・・・」

「サオリ、どないした?・・・!!」

 

 

瞬間、クラノスケくんがなにかに気づき呪文を唱えると冷たい氷が飛び出して来て

私の手を掴んでいた何かが軽くなって手を引っ込めた

 

 

「ひっ・・・!」

 

 

しかしその手にブランとぶら下がっていたのは 恐ろしい真っ青な腐った腕だった。

 

 

「いやあああ!!」

 

 

振りほどこうとしても取れないその腕を ブンブンと振った

 

 

「サオリ!!」

 

 

クラノスケくんがその腕を引っ張って取ってくれた。

私は泣きながら彼に抱き着いた。

 

 

「なんやこれ・・・ゾンビか?なんでこんなところに・・・」

 

 

そうクラノスケくんは辺りを見渡して 囲まれとる と呟いた。

 

 

「やだ、やだやだやだぁ、」

「すまんサオリ、俺浮かれて油断しとった・・・守るって言うたのに・・・ケガ、してへんか?」

「して、ない、けど・・・気持ち悪いし、怖い・・・ヒック」

「ケガはしてへんのな、よかった・・・。きっと植物系モンスターにやられた死体が精霊達の妖気にあてられてゾンビ化してもうたんやわ」

「そんな・・・」

「大丈夫。さおりはこの中におってな」

「え?」

「・・・できれば目もつぶっててくれんかな?ゾンビ吹っ飛ばすのってけっこーグロテスクやから」

 

 

そう彼は私を安心させるかのように 笑顔を作った。

そして私は彼の作ったバリケードの中で

彼の背中を見つめた。

 

 

いつも穏やかで優しい彼の背中は とてもリンとしていた。

その体で、魔力と膨大な知識を得るためにどれだけ努力をしてきたんだろう。

 

 

(・・・たくさん、努力したんだろうな)

(それを感じさせないようにいつも笑顔で彼はいてくれたけど)

(つらくて、痛くて、苦しくて、きっと私の想像を絶するくらい たくさん修行して、)

(こんなに、こんなに、)

 

 

こんなにも、彼の背中は いつの間にか逞しくなっていて。

 

 

(私の知らないところでも たくさん戦ってきたんだろうな・・・)

 

 

目をつぶって、と言われたけど。

飛び散るゾンビは怖かったけど。

 

 

なんだか彼から目を逸らしてはいけない気がして 私はずっと彼の戦う姿を見つめていた。

 

 

(クラノスケくん、)

(頑張って・・・)

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「うわ、すっごいキレー!ねぇ、ケンヤ!見て!」

 

すごく綺麗だよ、 アタシはそう、疲れてへとへとのケンヤに声をかけた。

 

「あー・・・ほんまや、よかった、見れてよかった、ほんま死ぬかとおもった・・・」

「死ななくてよかったわ!アタシが短刀で助太刀したのもお忘れなく」

「いや死ぬとこやったわ・・・おおきに、強いんやな、マナミは」

「一応武術も剣術も習ってるからね!・・・でもね、ケンヤ」

「ん?」

「・・・すっごい、かっこよかったよ。守ってくれてアリガト」

 

小さな声で呟けば 彼は嬉しそうに笑って 来てよかったぁ!! と言った。

 

ほんと。来てよかった。

一生懸命アタシを守って戦うケンヤを見られたこと

こんなに綺麗な景色をケンヤと見れたこと

アタシ一生忘れないよ。

 

(しかし、すっかりさおちゃんとはぐれてしまった・・・)

(とりあえずコハルちゃんのために精霊を撮影して行かねば・・・)

 

 

「ん?」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「・・・・・」

 

 

それまでグシグシ泣いてた私は

その光景に息を飲んだ。

 

言葉を発することを 忘れてしまうほど

その景色は幻想的で言葉にできないほど美しかった。

 

 

(こんなに綺麗な景色・・・)

(見たことない・・・)

(ううん、きっとこれから先も・・・)

(一生見ることができないと思う・・・)

 

 

先程まで恐怖の涙を流すのも忘れて見惚れていたのに

またポロポロと涙を流した私に クラノスケくんはぎょっとした。

 

 

「サオリ、ど、どこか、痛むんか?大丈夫?」

「大丈夫・・・ちょっと感動しちゃって・・・」

「そっか・・・ほんまにキレイやなぁ」

「うん・・・」

「サオリと一緒に見れてよかった」

「・・・私も」

「一生、結ばれるんやて」

「うん」

「絶対、叶えような」

「うん・・・グス」

 

 

いつまで泣いとんねん、と笑う彼の手が私の頬をぬぐって

そしてその瞬間 精霊たちは 一斉に空へと 舞い上がった。

 

 

「・・・わぁ!!」

 

 

その姿はもう 実際に見た人にしかわからないだろう。

美しすぎて 息をすることを忘れるくらい

そんなにも 輝かしい光景だった。

 

 

「・・・・・妖精たち、新しいおうちに向かったのかな?」

「あぁ、もう旅立っていったわ」

「ありがとう、クラノスケくん・・・クラノスケくんのおかげで最高の日になったよ」

「いや、俺の方こそ」

「クラノスケくん・・・私今日のこと絶対忘れないから。そして、今度は私があなたを守れるように、がんばるからね」

「え?・・・ハハ、なに言うてんねん。サオリはがんばらんでええんやで」

「ううん、姫だからって守られてるだけじゃだめだと思うから、」

「いや、姫やから守るんやないで?それもあるけど・・・好きな子やから、守りたいねん。せやから俺に守らせて、」

「だったら、私も・・・!」

 

 

私も、好きな人だから 守りたいの

 

 

そう彼の目を見つめて伝えると 彼は驚いた顔をした。

笑われるかな、流されるかな

同じ年なのに妙に落ち着いていて大人っぽい彼に、いつもはぐらかされてしまうから。

そう思っていたのに

彼は それはもう嬉しそうに笑って

 

 

「・・・楽しみにしてるわ」

 

 

そう言ってくれた。

 

 

(!)

 

 

「・・・ふふ」

 

 

嬉しくて笑うと 彼は私の手を握った。

 

 

「・・・帰ろうか?魔力結構使っちゃったんでしょ?大丈夫?足も痛いよね、大丈夫?」

「ハハ、バレとったか」

「わかるよ、クラノスケくんのことなら」

「おぉ、そのセリフは胸にグッとくるわ・・・」

 

 

!!?

 

 

じーーーーーーーーーーーー

 

 

「あ、おかまいなく!!」

 

 

そこにはカメラを構えたまぁちゃんと、後ろで泥だらけに汚れたケンヤが立っていた。

 

 

(ひぃ!!!!!)

 

 

サオリ「い、いるなら声かけてよもぉ!!」

マナミ「いやぁあまりにも可愛くて・・・よかったよキミたち・・・」

ケンヤ「うわあ・・・いつもに増してラブラブやなぁお前ら・・・見てるこっちが恥ずかしいわ・・・」

サオリ(カァァァ)

マナミ「これはコハルちゃんと上映会しないと・・・」

サオリ「やめてぇぇぇぇ!!!!」

 

ノスケ「ようケンヤ、随分ボロボロやんか。お前もがんばったみたいやな」

ケンヤ「あー・・・まぁ、そう言うお前もな」

 

クラノスケくんとケンヤがハイタッチをしたのを見届けて

まぁちゃんが さてと、と言った。

 

 

「ここにアタシが持ってきた帰還の翼があります!ボロボロの男子諸君。目的は達したからもうかっこつけないでこれ使って一瞬で帰宅しますか?」

 

 

それを見て コクコクコク と必死に頷くふたり・・・

 

あ、これ予想以上に傷深いやつだ・・・/(^o^)\

 

 

まぁちゃんのアイテムを使って すぐさま私たちはお城へ帰還したのでした。

最高の新しい思い出が心に刻まれて、この大切な日を私はきっと一生忘れることは無いと、そう強く思いながら。

 

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