第5話:子供時代

少し時間を巻き戻そう。

それはまだこの国の姫が2人いたときのお話。

 

 

サオリ「お父様、どうしたの?」

父「これから西の森の賢者様がいらっしゃるよ」

サオリ「え!クラノスケくんも来るの!?」

父「あぁ、私は賢者様とお話があるから、子供は子供同士で遊んでおいで」

サオリ「やったぁ!」

マナミ「だったらさ、ケンヤたち呼んで城の庭で遊ぼうよ」

サオリ「うん!」

 

 

その頃の国王はとても心の優しい穏やかな王だった。

姫でありながらも、子供は子供らしく育てばいいと思っていたし、娘たちに勉学や作法を無理強いすることもなかった。

 

 

クラノスケ「お姫様、久しぶりやなぁ」

サオリ「(テレテレ)うん、クラノスケくんも元気そうだね」

クラノスケ「お姫様、今日は何してあそぼか?」

サオリ「あ、あのね、お姫様じゃなくてね、」

クラノスケ「サオリ、やろ?ちゃんと名前で呼ぶって約束、覚えとるで」

サオリ「う、うん(テレテレ)」

 

マナミ「おーい、さおちゃん!みんな来たよー!」

 

ユウジ「サオリ、久しぶりやな」

コハル「サオリちゃん、元気やった?」

サオリ「うん!」

ケンヤ「よぉ、シライシやんか!昨日ぶり!」

クラノスケ「よ、ケンヤ」

サオリ「え、昨日会ったの?」

ケンヤ「珍しい薬草もらいに昨日おとんと西の森行ったんや」

ユウジ「てか俺ら結構会うとるで?」

サオリ「え、えぇ~?お城にも会いにきてよ~」

クラノスケ「ハハハ、来たいんやけど、なかなかお城には気軽には来れへんやんか」

サオリ「そうだけど・・・」

クラノスケ「・・・俺が師匠みたいな立派な賢者になったら絶対この国に仕えてサオリのこと一生守ったるから」

サオリ「え(ドキ!)」

クラノスケ「・・・迎えに来るまで、待っててくれる?」

サオリ「う、うん・・・!!」

 

 

じ~~~~~

 

 

ケンヤ「・・・ほんまお前ら飽きへんな」

コハル「んもう!妬けてまうわぁ♡」

ユウジ「コハル!俺らも!将来の約束!しよ!な!」

ザイゼン「ほんまうざいっすわ」

チトセ「よかねぇ、よかよか(ニコニコ)」

マナミ「大丈夫だよさおちゃん!!!もうすぐアタシがこっそり掘ってる抜け道が完成する!!」

ユウジ「お前姫のくせになにしとんねん」

ケンヤ「完成したらめっちゃ会えるやん!」

マナミ「おう、いつでも会えるぞ!だからさおちゃんも喜べ」

サオリ「それ見つかったら怒られるよ、大臣様めちゃくちゃ怖いじゃん・・・」

マナミ「大丈夫!隠れてやってるから!だからさおちゃんもクラノスケと会いたいときに会えるぞ!」

サオリ「え(テレテレ)」

ケンヤ「俺らもな!会えるな!な!」

マナミ「いやお前はいいわ、アタシは幸せそうなさおちゃんが見たいんだわ、照れてるさおちゃん可愛いから」

コハル「ヒューヒューやで♡」

ユウジ「俺らの次にラブラブやな」

クラノスケ「ハハハ」

サオリ「も、もうやめてよぉ!恥ずかしいから!」

 

今日は何して遊ぶ?

そう照れたサオリが話をすり替えようと皆に聞いた。

 

ケンヤ「鬼ごっこやろうや!」

マナミ「やだよ!あんたの一人勝ちになるじゃん!」

ケンヤ「えー、ほなマナミは捕まえんでやるから」

マナミ「なんだそれwww楽しくねぇだろ!かくれんぼしようよー」

コハル「するするぅ!」

ユウジ「ほな鬼決めジャンケンな!おーにーきーめージャンケンポン!!!」

 

 

サオリ:グー

他全員:パー

 

 

サオリ「(フルフルフル)」

 

マナミ「よっしゃー!さおちゃん鬼ね!!んじゃ隠れるぞー!」

ケンヤ「あ、待ちや!俺も行く!」

コハル「どこに隠れようかしらん♪」

チトセ「ん~昼寝しやすい場所探すたい」

ユウジ「隠れろや!城の庭だけやぞ!!外出たやつ負けやからな!!」

ザイゼン「いや庭だけで充分っすわ、めっちゃ広いやん・・・」

 

 

そう言いながら次々とばらけるメンバーをよそに

いつまでもサオリの傍を離れないクラノスケ。サオリは不思議に思い彼を見て首をかしげた。

 

クラノスケ「しー」

 

そして人差し指を口に当てて いたずらっ子のように笑う彼を見て

自分が今かくれんぼをしていて、そして鬼になっていることなんて全て吹っ飛んでくらいに 彼のその姿に見惚れてしまった。

何て美しいんだろう。こんなにキレイな男の子がいるなんて。恥ずかしくて思わず俯いた。

 

クラノスケ「・・・サオリ、かくれんぼ苦手やろ?」

 

俺が一緒に探したるわ

 

そう笑う彼がやっぱりかっこよくて

コクコクコク と必死に頷いて 彼が差し出した手を そっと握るのだった。

 

そして二人は歩き出す。

そんな平和な日々を当たり前のように過ごしていた 7歳の春のことだった。

 

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