「さおちゃん…ホントに行っちゃうの…?」
「そんな悲しい顔してもダメだよ、学校の行事なんだし…」
「私もトランクに入っていく!!!!」
10月。
まぁちゃんが私の海外研修でフランスに行くのを嫌がっている。
氷帝のほうが海外行くことが多いのに!
立海には外国語の授業もあるから、海外研修がある。
1年生はフランス!
中学の入学の手引に「入学前にパスポートを取得しておくこと」って書いてたけど、パスポートないと海外研修行けないからね!
海外研修いかない人もいるけど、私は行きたかったから嬉しいや。
まぁちゃんすごいいじけてたし、まぁちゃんのためにお土産をたくさん買って行こうと思ってお土産を選ぶ。
まぁちゃん、カナダとかスイスとかドイツとかに姉妹校あるから、めっちゃいつも海外行くのに・・・
私がいなくなるとめちゃくちゃ落ちこむんだよなぁ。
まぁ海外も喜んで行ってるわけじゃないからなまぁちゃん。
日本が一番好きだし、私と一切連絡とれないからつらいって嘆いてたな・・・
まぁちゃんのためにパジャマとか靴下とか着れるものを選ぶ。
海外のお菓子とかあんまり好きじゃないし、少しにしておこう。
そんな風に思っていた時、
(わ、キレイ)
そんな風に思うようなポストカードが目に入った。
たくさんの花の奥に、エッフェル塔が見えるそんな写真のポストカード。
私はそれを手にとると、彼の顔が浮かんできた。
あの後、
あの練習試合の後、
白石くんは本当に私に手紙をくれた。
練習試合の3日後に届いたその手紙を見た時、私は本当に嬉しくて、思わず笑顔がこぼれた。
きっと、帰ってから本当にすぐに手紙を書いてくれたんだなって思った。
お世辞にもキレイとは言えないけど、男の子らしい文字で、
何も書いていない真っ白な封筒。
その中には、白石くんの好きなものとか学校とか部活の様子や、私の好きなものを聞く言葉もあって、
少し離れたところに住んでいるお友達と文通するということが、楽しく感じた。
白石くんとの文通は、練習試合から1ヶ月くらいしか経ってないのに、もう3回も往復していた。
つい先日届いた白石くんの手紙には、彼の好きだという毒草の話が10枚にも渡って書かれていた。
まぁちゃんには「分厚い手紙だな!」なんて言われたけど、私は私のためにそんなにたくさん手紙を書いてくれたことが嬉しくて、そして毒草の話も面白くて、彼の好きなものをもっと聞きたいなって思ってた。
そんなこともあって、私は毒草のこと詳しくないけど、なんとなく植物を見ると彼を思い出す。
だから、このお花がキレイなポストカードを見ても、彼の顔が浮かんだんだ。
「お、それ買うの?」
私の後ろから、そんな声が聞こえて振り向いた。
「ブンちゃん!」
「土産選び終わった?」
「もう少し選びたいと思ってるけど…ブンちゃんすごいお菓子ばっかり」
「おう!食べたいのばっかりで困るぜ」
「ブンちゃん自分が食べるために買うの?」
「弟たちと一緒に食べるぜ」
「そっか。喜ぶね」
「おう!・・・あー俺もポストカード買おうかなー」
「うん、買いなよ~。キレイなのたくさんあるよ。このベルサイユ宮殿のかいいよね」
「俺、こっちのがいい」
「マカロン!ポストカードも甘いもの!」
「俺らしいだろい?」
そんな話をしながら、私は買い物かごにポストカードを入れる。
(帰ったら、急いで手紙書こうっと…)
そんな風に思いながら、またまぁちゃんのお土産選びをするのだった。
「さおちゃん…」
「お前、真面目に参加しろ!!」
「こんなに運動会でやる気ねぇのお前くらいじゃね?」
「さおちゃんに会いたくて元気出ない…毎年さおちゃん応援に来てくれないと思うと悲しすぎる」
「仕方ねーだろ、立海の海外研修と氷帝の運動会の日程重なってんだから!」
「ジロの作った天使のオブジェ見てみろよすげーから」
「ジロ、マジマジ天才だな」
「ZZZ」
「本人寝てるけどな」
「こんなんだけど天才肌なんだよな」
「まぁ天才って変なやつ多いしな」
「さおちゃん…!」
「まなみうるせーwww」
「いい加減元気だせって」
「海外とか全く連絡とれないからつらい…」
「は?連絡とれるじゃねーか」
「え?とれないじゃん」
「何言ってんだお前、電話すればいいじゃねーか」
「海外電話は高いから出来ないの!!」
「なら俺様が電話してやるよ」
「え!?マジ!?」
「ああ、その代わり真面目に競技に参加しろよ」
「わかった!!!」
「単純www」
「めっちゃ頑張るから!!」
「ああ、そうしろ」
「そこまでして電話したいのかよ」
「運動会頑張る!!」
氷帝は10月はちょうど運動会でした。