008***さおり

こんなに大人数での練習試合は初めてで、まぁちゃんも来てくれたし、今日の合同練習は本当に楽しかった。

練習も終わって、帰る前にみんなで交流していた時間。

私は1人、氷帝の水飲み場でドリンクの容器をすすいでいた。

家が近いからこのまま帰っていいって言われてるし、これくらいはしなくちゃね。

(まぁちゃんが待ってるから早くしないと…)

 

コートのほうからは、楽しそうな声が聞こえてくる。

他校の人たちと交流することはいいことだなって思いながら、賑やかな声を聞いていた時、

 

「手伝うで」

 

そう言って、私の隣にやってきた人がいた。

 

「白石くん!」

「これ、すすげばええの?」

 

そう言って、白石くんは着ていたジャージを腕まくりした。

 

「え!いいよいいよ!私の仕事だから!」

「この量1人でやるの大変やろ!ええから手伝うって」

「別にいいのに…みんなといろいろ話したいことあるでしょ?」

「まぁあるけど…これが最後ってわけやないしな。これからも会うから別にええねん」

 

そう言いながら、白石くんは私を手伝ってくれた。

なんだか、その気遣いが嬉しくて、

夏の大会の時もいつも気遣ってくれたし、本当に優しい人だなって思った。

 

「…白石くんありがとう、白石くんって優しいね」

「え!?普通やで!?」

「普通じゃないよ。うちの部員のみんなもすごい優しいけどね、でもジロちゃんとかがっくんとかけっこうひどいこと普通に言うし」

「え、じろちゃん?がっくん?」

「あ、氷帝の、芥川慈郎と、向日岳人だよ。幼なじみなの」

「そうなんや!!だから楽しそうに話してたんや!」

「楽しそうに話してたかな?普通に話してたつもりなんだけどな」

「あーでも、幼馴染なら、兄弟みたいな感じやん?」

「まぁそうなんだけどね。でも、白石くんは優しいよ。クラスの男の子たちとかと比べても優しい」

「そんなに褒めても何も出ないで!あ、飴ちゃんあるわ、飴ちゃんあとでやるわ!」

「なにそれ!飴ちゃん?面白いこと言うね」

「え!?俺おもろい!?」

「うん、面白いよ」

「そっか…おもろいって言われた…」

「あ、ごめんね、嫌だった?」

「イヤなわけあるかい!めっちゃ嬉しいわ!」

「え!嬉しいの!?」

「当たり前やん、大阪人にとって、おもろいなんて最高の褒め言葉やで!」

「そうなんだ!じゃあ今度から大阪の人に会ったら、面白いですねって言うね!」

「いや、そういうことやなくてな・・・」

「ん?」

「うん…前さんのがおもろいわ…」

「え!?私はつまらない女だよ!」

 

 

そんな会話をしながら、2人で手を動かしていたら、あっという間に容器は綺麗になった。

私はお礼を言って、洗い終わった容器を持ってみんなのところへ戻ろうと思った

 

んだけど、

 

「前さん」

 

白石くんに呼び止められた。

 

「ん?」

「あのさ…」

 

白石くんはそういうと、少し照れたようにしながら、

ポケットからPHSを出して、

 

「アドレス、教えてくれへん?」

 

そう私に言った。

 

(あ、白石くん、PHS持ってたんだ!)

(ホント、みんな持ってるなぁ~)

(すごいなみんな…)

 

「…ごめんね」

「え!?あ!や、やっぱり、あかんよな!いきなりすまん!」

「え、違うの、PHS持ってないの」

「え?」

「私、PHS持ってないからごめんね…」

 

(まぁちゃんなら持ってるんだけどな…)

 

そんなことを思いながら、白石くんを見た。

 

「そうなんか!いや、俺こそすまん!俺の周りもみんな持っとるから、つい前さんも持っとると思うて…」

「…手紙じゃダメかなぁ?」

 

私がそういうと、白石くんの動きが止まった。

あ、やっぱりダメだったかな?

 

「あのね、ペンパルって知ってる?外国の人と英語で文通するの…けっこうそれが楽しくてね、私文通好きだなって思って…でも、文通なんて嫌だよね」

「イヤやない!」

 

私の声に被せるように、

白石くんはそう言った。

 

「あ、すまん、大きい声出して」

「ううん」

「文通、ええやん。おれ文通したことないけど、楽しそうや」

「うん!楽しいよ!じゃあちょっと待ってね」

 

私は、試合中にいつでも気になったことをメモできるように持ち歩いているメモ帳とペンをポケットから取り出した。

そして、それに私の名前と住所を書いて、白石くんに渡す。

 

「はい、これ私の住所ね。暇な時に手紙ちょうだい!」

「おん!おおきに!帰ったらすぐに書くわ!」

 

白石くんは私の住所を書いたメモを見て、ニコって笑ったあと、

それをポケットにしまった。

 

そして、

 

「ほな、いこか」

 

と、私が持とうとしていた容器の入ったカゴを先に持って、歩き出した。

 

(わ!)

(白石くん・・・やっぱり優しい・・・)

 

私は白石くんのその後について、みんなのところへ向かったのだった。

 

 


 

 

 

atobe2「だから、何度言わせんだ!お前はこっちに来いって言ってるだろ!」

manami1「うるせ!立海のが居心地良いんだよ!」

yukimura「まなみが良ければずっといていいんだよ?」

mukahi「もうまなみって呼び捨てかよ・・・」

manami1「いいんだ・・・みんな優しいから・・・」

atobe2「おい!そんなうっとりした顔すんじゃねー!」

 

saori1「まぁちゃん、また跡部くんとケンカしてたの?」

manami1「あ、さおちゃん早く帰ろう!」

saori1「うん、解散したらね」

shiraishi1「前さん、これどこに置いたらええの?」

saori1「あ、ありがとう白石くん!これ、今バスにつんじゃうよ!」

yukimura「…なんで白石くんと一緒にいるのかな?」

saori1「あ、洗うの手伝ってくれたんだ、白石くん優しいよねー」

yukimura「へぇ…」

mouri(プププ…オモローwww)

 

taira「白石!何してんねん!そろそろ帰るで!支度せぇよ!」

shiraishi1「あ、はい、今行きます」

kenya「ほな、またな!」

manami1「・・・」

kenya「シカトせんで!」

manami1「次回あるの?今回で最終回じゃない?」

kenya「あるある!絶賛連載中やで!次回を乞うご期待!」

manami1「そうか、じゃあ今度は大阪の美味しいもの持って来てね」

kenya「おん!わかった!任せとき!」

 

 

 

こうして、楽しかった一日が終わって、まぁちゃんや幼なじみのみんなでお家に帰ったよ。

白石くん、本当にお手紙くれたらいいなぁなんて考えながら、その日はお布団に入るのでした。

 

 

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