ゆうしから、”あとべ”についていろいろ話しは聞いとったけど・・・
まさかここまでとは思わんかった・・・
練習試合をやるって聞いたのは、その前日のことやった。
急なことで交通手段やってないし、どないすればええんや?と思うとった俺たちの前に
当日現われたのは、1台のバスやった。
四天宝寺のテニス部には充分すぎるバスでなぜか関空まで移動する。
そこには「ATOBE」と書かれたりっぱな飛行機があって、あれよあれよと言う間に飛行機に乗せられ、
ほんで、1時間程度で東京へ。
跡部財閥の所有する空港に下りて、そっからバスであっという間に氷帝や。
ゆうしのとこに遊びに来たりすることがある俺は、いつも新幹線でどんなに頑張っても移動時間4時間はかけて東京まで来るのに、
この日は所要時間2時間弱。
ほんま恐ろしいわ・・・金持ちの考えること怖い。
まぁでも、あの!今年の大会で優勝した立海と!練習出来るならええけどな!
すごいわ!こんな機会ないとなかなか練習でけへんもんな!
そう思って、いざ氷帝のグラウンドに下りた。
「・・・ホンマに来たな」
ゆうしが先におって、俺を見て声かけてきたで。
「おう、すごいな~あとべ!めっちゃすごいやん!」
「すごいっちゅーか、こわない?このノリで北海道連れてかれたりするんやで・・・」
「いや、それめっちゃ怖いな!」
「あーん?お前が忍足のイトコか?」
噂の跡部が話しかけてきた。
「せやで!お招きありがとうな!」
「ふん、これくらい大したことねぇよ。それより、しっかりと練習して俺様に早く追いつくように腕を上げろよ」
「え・・・すごいな・・・あとべ・・・めっちゃえらそう・・・」
「せやからいつも言っとるやんか」
「おん・・・ほんますごい・・・・・・・・・・・・・ん?」
俺はそこで、
ある1人の女生徒に気がついた。
(あ!)
(あれ!!)
(あの子やんか!)
俺はその姿を見て、思わず話しかけに向かった。
「よお!来てたんやな!」
「・・・」
「え!?無視せんで!?」
「・・・ん?アタシ?」
「おう!こないだ会ったやんか!覚えてへん?」
「誰だお前」
「え!?覚えてへんの!?」
ショックや~と落ち込む俺に、
「・・・いとこでしょ」
そうボソッと彼女は呟いた。
(あれ!?)
(覚えててくれた!?)
「おん!忍足謙也やで!覚えててくれたんやな~」
「名前までは覚えてなかった」
「え!?ひどいな!」
「そういうアンタもアタシの名前覚えてないしょ?」
「覚えてるで!まなみやろ!」
「覚えてた!」
「せやから覚えてるって言うたやんか!」
「アタシにとっては名前よりもあのメガネのイトコということのほうが衝撃的で・・・」
「・・・俺が何やねん」
いつの間にか側に来ていたゆうしがイライラした様子で話しかけた。
ホンマに仲悪いんやな・・・!
「こっちくんなメガネ」
「俺の話しとったから来ただけやんか」
「え、なしてそこまで仲悪いねん・・・」
「生理的に受け付けない」
「こっちこそお断りやで、こんなゴリラ」
ゆうしとまなみの睨み合いが始まった時、
なぜか、跡部まで側にやってきた
「まなみ、お前こいつと知り合いなのか?」
「アンタに関係ないじゃん」
「関係あるだろ」
「ねーよ!」
「ふん、本当に気が強いな・・・だが、そういうところ嫌いじゃないぜ?」
「やめろ(真顔)」
「え・・・何なん・・・?え、2人、どういう関係なん?」
「こいび「いわせねーよ!?」
全然違うし!!ほんと頼むから勝手な事言うなよ跡部!
そう、まなみは怒っていた。
(え、ほんまに!?)
(どういう関係なん!?)
(1年でか、彼女おるとか・・・)
(早すぎひん!?)
(あ・・・でも、ちゃうな、まなみは否定しとるしな・・・)
(ちゃうって信じよ!)
「あーもう、跡部うざいからテニス見に来たくなかったんだよ!さおちゃんもなんか変な男と話してるし!!なんなのマジで!」
そう怒っているまなみの視線の先には、
まなみにソックリな女の子が
なんと白石と話していた。
(え!?)(なんで!?)
(いつの間に仲良くなったんや!?)
(一緒におるの立海のゆきむらやない!?)
(え、すごいやん!)(なんでぇ!?)
「あー・・・マジ無理だわ・・・ほんと・・・さおちゃんとこ行く・・・」
「おい、お前は俺の隣に座って、応援してろ」
「断る」
「なんでだ!」
「アホか!さおちゃん以外は応援しないって決めてんだよ!!」
そう言いながら、彼女は、ソックリな女の子のところへ走っていた。
「え?あのソックリな子だれ?」
「あの子はあのアホの双子のお姉さんや」
「あ、そうなんや」
「なんで氷帝きたのがあのアホなんやろ?あの子のほうがええよなぁ」
「それはしらんわ」
「ふん、おい、そろそろ試合するぞ」
まなみが、双子のねーちゃんのところに行ったことで機嫌が悪くなった跡部は、
その後無茶な練習ばかり要求してきたで・・・
四天宝寺では考えられんくらいの量の練習や試合をこなしたわ・・・
なんか機嫌めっちゃ悪いってゆうし言っとったけど、
(やっぱり、)
(まなみが原因かいな・・・)
なんとなく俺も彼女のことが気になって、
その日、
何度も彼女のことを目で追ってしまうのだった。
(立海のやつらと仲ええな!!)(めっちゃ笑っててずるいわ!)
(・・・俺もいつか)
(あの笑顔向けられたいわ・・・)