Xmas24≪まなみ≫

電車から降りて家までの帰り道。

おしたりけんやは何もしゃべらなかったけど、私の横にただ並んで歩いていた。

 

(さむ・・・)

(早く寝よ)

(あ、さおちゃんと少しBASARAやるんだ)

(島左近マジイケメン・・・)

 

ボンヤリとそんなことを考えて

マンションの前について、足を止めた。

 

「・・・じゃあ私はここで」

「あっここなんや」

「はぁ、それでは」

「あ、ちょ、待って」

「え」

「あの」

「ハイ・・・」

「あの、今日、あそこで会うたの、偶然やないねん」

「え」

「・・・今日、クリスマスやし、忙しいのわかっとるけど一目だけでも会えたらなって思うて」

「え!?」

「いや!ストーカーとちゃうで!?そんなんとちゃうけど・・・なんや1日中悩んで、けど、やっぱ俺、なんも言うてへんのにこのまま諦めるんも嫌やなって思うて」

「へ!?」

「それで会えたらええなと思うて店の方行ってみたんやけど、たまたま帰り道見かけて困ってるように見えたから助けたんやけど」

「えぇぇ」

 

(おしたりけんや!)

(私があんなキツイこと言ったのに・・・!)

(それでもまだ諦めてなかったの・・・!?)

(こいつは・・・強敵だ)

 

いや、いい意味でね。

 

「助けてもらえて助かりました」

「あ、ほんま?それはよかったわ」

 

おしたりけんやはやっとホッとした笑顔を見せた。

やっぱりこの人はかっこいいなと思った。

 

「あー、せやったらもう、フラれるの前提やけど、言わせてもらうわ!!」

「はぁ・・・」

「俺もう三十路手前のオッサンやけど!!きみのことが好きです!一目惚れでした!もっと笑顔が見たいと思います!絶対大切にします!よかったら俺と付き合うてください!」

 

おしたりけんやは、そう、真剣な顔で私を見ながら言い、頭を下げた。

そうか。そうきたか。

なんだ、クリスマスだからかな、悪い気はしないぞ。

 

「・・・」

 

黙っていた私にしびれをきらしたのか、彼は頭を上げて私をじっと見つめた。

 

「・・・・・あかん、よな」

「・・・」

「や、わかってたことやし!けどどうしても気持ちは伝えたかってん!聞いてくれておおきにな!」

 

ほな俺帰るわ、寒いからはよ中入り と切なそうに笑う彼に

 

「・・・私は」

 

今度は私が 答える番。

 

「え?」

「私は、ほんとは」

「うん」

「すっごいワガママだしめちゃくちゃ引きこもりで」

「え!?」

「正直外に出るのもめんどくさい、働きたくない、lineもめんどくさい、電話はもっとやだ、遊びに行くより家で寝てたい」

「えぇ」

「バイトも本当にめっちゃがんばって笑顔作ってるけど本当は人と話すのもめんどくさくて」

「え!」

「・・・けど、美味しいものはすごく好きで・・・」

「・・・」

「こないだ連れてってくれた焼肉・・・超美味しかった・・・(´q`)」

「お、おう・・・」

「だから、また、美味しいご飯食べに連れてってくれますか?」

「え!!」

「・・・お友達 から じゃ、 ダメですか?」

 

そう言うと おしたりけんやは見る見る間に笑顔を作って

 

「ダメやないッ!!!!お、お友達からで!!お願いします!!」

 

そう叫んだ。

(笑顔かわいいなおい)

 

「え、俺、絶対あかんと思うてたから・・・友達からでも全然ええわ、嬉しい・・・」

「次は鍋がいいな・・・もつ鍋が水炊き・・・」

「おぉ!ええところ知っとるで!!おっちゃんに任せとき!!」

「おっちゃんwいや、言うほどおっさんに見えないよ」

「ほんま!?けどもうすぐ30やし!あれやで、枕とかもうオッサンの匂いするで・・・」

「え・・・それやばい・・・」

「引かんとって!!」

「自分で言ったんじゃんw」

「・・・こんなおっさんでも付き合うてもらえる可能性あるやろうか」

「ほんとに嫌ならきっちり断ってるからwww」

「!! そ、そうか・・・ほな俺がんばりますわ・・・」

「期待してますwww」

 

そう、彼と微笑みあって

 

(あぁ、こんなクリスマスも 悪くない)

 

そんな風に 思った。

 

そして寒いからさっさとマンションに入ろうとしたとき
近くに停まる車を発見・・・

 

(!!?)

 

ちょっと待って

 

車の中で

 

さおちゃんが

 

白石というアホに

 

頭を・・・・撫でられている・・・・・!!!!!!

 

ダッ!!!

 

突然走り出した私に驚いて 慌てながらなぜかおしたりけんやも後をついてきた。

 

バンッ

 

車の窓に手をつけば

驚いた顔でさおちゃんと白石はこっちを向いた。

 

既婚者のくせになにやっとんじゃい!!!!

 

と、叫んで、ここだとなんやから、となぜか車に乗せられて驚くおしたりけんやと共に 白石の家へ。

白石の家で言い訳大会とさおちゃんとお付き合いする報告がされ

時計の針が0時を回る頃

 

「マジかよ・・・メリークリスマス・・・」

と絶望して呟いた私だった・・・。

 

Merry Christmas!

 

(白石が独身だったとか)(さおちゃんと付き合うとか)

(今はもう頭の中パニックで)

 

(とにかく今すぐ家に送ってもらって早く寝よう。それしかない。)

+3