Xmas21≪さおり≫

12月24日。

今日はクリスマスイブ。

街は最高潮にクリスマスムード全開!しかも日曜日、全国的にクリスマスパーティー開催の日。

今日、ケーキ屋は爆発的に忙しい。うちのバイト先も日雇いのバイトを雇ってるはず。それくらい忙しいのだ。

うん、逆に良かった!忙しくて、よかった!昨日の悲しみを思い出す暇もないくらい忙しいほうがいい!

 
”会いたいと思う回数が 会えないと痛いこの胸が~”

 

電車の中の小さなテレビでバックナンバーのクリスマスソングが流れた。

あー、ドラマのさ、お坊さんのやつかっこよかったな・・・。

グイグイ来てね、よかったねあのドラマ・・・いしはらさとみ可愛いしね・・・。

 

”できれば横にいて欲しくて どこにも行って欲しくなくて

僕の事だけをずっと考えていて欲しい

でもこんな事を伝えたら かっこ悪いし

長くなるだけだから まとめるよ 君が好きだ”

 

(すごい、素敵な歌詞だな)

(・・・そんなこと、言ってもらいたいよ)

 

山Pのお坊さん、かっこよかったんだけど、さ

 

(昨日の白石さん)

(もっともっと、かっこよかった)

 

彼を急に思い出して グッと泣きそうになるのを堪えて

超満員の電車の中で クリスマスソングに耳を傾けた。

 

(・・・いかんいかん。感傷に浸ってる場合じゃないんだ)

 

電車を降りたら店はすぐそこ。

いざ・・・!戦場へ!!!

(そして私はまだこの時白石さんが店のケーキを予約していることをすっかり忘れているのである)

 

 

 

アタフタ ヘ( ̄□ ̄;)ノ ヽ(; ̄□ ̄)ヘ アタフタ

アタフタ ヘ( ̄□ ̄;)ノ ヽ(; ̄□ ̄)ヘ アタフタ

アタフタ ヘ( ̄□ ̄;)ノ ヽ(; ̄□ ̄)ヘ アタフタ

アタフタ ヘ( ̄□ ̄;)ノ ヽ(; ̄□ ̄)ヘ アタフタ

 

 

 

やべぇ!!!!!!!!!

舐めてたわ!!!!なんだこの地獄絵図・・・!!

お店お客さんでごった返してるし!!!今日ケーキ買う人も予約の人もいっぱいで意味わからん!!

バイト全員総出動&日雇いバイトさんいても足りない、人手が足りない・・・!!

 

 

きゃあああああーーー o(T△T=T△T)o  ----!!!!!!

 

 

(はぁはぁ・・・)

(全然休憩も取れなかった・・・)

(めっちゃ忙しい)

(クリスマスのケーキ屋なめたらあかん・・・!)

 

 

でもおかげでなんだかいい気分転換になったような気もする。

 

 

お客さんがすこーし落ち着いたときまた扉が開いたので いらっしゃいませー! と声をかけた

 

 

(あ)

 

 

そこには 今思い出したくないあの人の姿が・・・!

 

 

(白石さん・・・!)

(あ!そういえばケーキ予約してたんだった!!)

 

 

彼は私の姿を見つけると声をかけようとしたのだけど

私は忙しいふりをして(いや実際忙しいのだけど)店の奥に一度引っ込んでしまった。

その隙に違うバイトの子がケーキの受け渡しをして、私も別のお客様の接客をしたからドタバタと時間が過ぎてしまった。

心臓がドキッとして一瞬頭の中真っ白になったけど、大丈夫!接客をしていたらすぐに落ち着いた。

今日バイトめっちゃ忙しくてよかった。ほんとクリスマスとバイトに感謝だよ・・・。

私が気づかない間に白石さんも帰ったみたいで、少しホッとしながらドタバタの中バイトを続けた。

 

 

で、バイトが終わったのは夜9時を回っていた。

いやー・・・忙しかった。いつもなら8時にお店終わるんだけど今日は9時まで延長でやってたからね・・・

そして明日もクリスマスだからね、明日もバイトね。めっちゃ忙しそうだよ。でもまぁ明日は平日だからなんとかなるかな。

店長が今日一日お疲れ様ってめっちゃ可愛いクリスマス用のホールケーキを全員にくれたよ!!

あーまぁちゃん大喜びするなぁ。やったよー嬉しいー今日がんばったかいがあったよー

 

はー疲れた疲れた

 

そう思いながら店を出た私は

 

 

店の前で たたずむその人を見て 足が止まった。

 

 

(え)

 

 

その人はどこかホッとしたような表情で

店から出た私を見つめた。

 

 

(・・・なんで)

 

 

だって今日クリスマスイブだし

ケーキ取りに来てたし

子供たちと今頃楽しくパーティーしてるはずじゃないの?

なんで、なんで?

 

 

声が出ない

足も動かない

 
そんな私をトンと、押したのは店長だった。

 

「ほら、彼氏待ってるじゃん?喧嘩したの?クリスマスなんだから仲直りしないとダメよ!」

 

そう、私は白石さんの前まで店長にグイグイと押され

彼の顔が見れずに 目線を下に逸らした。

 

(・・・どれくらい、待ってたんだろう)

 

彼の指先が真っ赤で 冷たそうだな、とそんな風に思った。

 

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