ず~ん
俺の部屋には今
めっちゃ落ち込んだ白石がおる。
それはもう 中学の頃からの付き合いの俺も見たことがないくらいの落ち込みようでほんまにこいつ大丈夫なんやろかとさすがに心配になるレベル。
(俺も正直人の事心配してる暇ないねんけどな!)
「ほんま終わった・・・」
「いや、誤解なんやから解けばええだけの話やん!」
「誤解やけどそれを真に受けてしまう純粋な子やねん・・・もう何言っても信用してもらえへんわ」
大体、携帯の電源切ってるから連絡つかへんし、と白石は言うた。
まぁあれや。簡単に言うと姪っ子たちが白石のことパパって呼んだんが笑えへん話ってことなんやけどな。
「お前の姪っ子、お前が女と二人でおったらパパって呼ぶようにしつけられとるもんな・・・」
「せやねん・・・!ねぇちゃんが余計な気回すから・・・!」
「しゃーないやん、お前女関係散々やったし、ねぇちゃんも悪い女に引っかからんよう助けてくれたんやん」
「そりゃ何度もそれで助けられたことはあったけども!!!今日!まさか!この大事な日に!パパはないわ・・・!」
「まぁ・・・ないけども」
「ないよな・・・パパはないよな・・・あのドン引きしたさおりちゃんの顔、忘れられへん・・・」
「ドン引きしとったか」
「めっちゃしとった・・・少しずつ後ずさりしとった・・・」
「あぁ・・・もう完全誤解しとるな」
「しとる!!どないしよう!せっかくええ雰囲気やったのに!!弁解の余地なしやで!!」
「え・・・?ええ雰囲気やったん・・・?」
「めっちゃええ雰囲気やった」
「嘘やろ・・・?あんな若い子と・・・?」
「若い子言うてもさおりちゃんキャピキャピしとらんもん。めっちゃクリスマス満喫しとったわ!」
「ほ、ほんまか・・・すごいなお前・・・」
「まさかねぇちゃんたちも横浜におるとは思わんかったー・・・失敗したわー・・・」
「いや・・・ええ雰囲気になっただけでもお前がんばったわ、GJやわ、表彰状もんやで」
「なんでやねん!今もう恋の灯が消えかかってんねんぞ!」
「恋の灯て・・・。いや、お前な、逆にな、おっさんがな、そこまで相手にされただけでもほんますっごいことやって思わなあかんで」
「は?」
「おっさんがな、女子大生とクリスマスデートってすごないか?もうすぐ30やで?30がな?なんやっけ・・・えーっと・・・J・・・D・・・そう、JDとな!クリスマスデートしただけでも奇跡的なことやで!!」
「JDて!まぁJDやな、JDやけどさ、そんなこと気にしとったらいつまで経っても恋愛でけへんやんか。この先どうするん?デートしてもこの子ええなって思うってなかなかもうないことやで。俺はもう年齢とか気にせず自分の好きな子と付き合いたいって思うわ」
白石がそう真っすぐに言うて
(・・・まぁ)
(そうやなぁ)
ほんまは年齢なんて関係ない!て思うても、実際彼女を目の前にするとやっぱどこか年齢が引け目になって。
自分なりに結構わかりやすく押したんやけどな・・・
もうやめてほしいって言われてもうたし・・・
なんなんこれ・・・俺の方が泣きたい気分やわ・・・
「謙也?どないしたん、お前元気ないやんか・・・お前もまなみちゃんとなんかあったんか?」
「なんかあったって言うか・・・」
「ん?」
「なんも・・・ないねん・・・」
「は?」
「なんもないまま、もうこういうのやめてくれて言われてん・・・」
「嘘やろ・・・(絶句)」
「もう諦めるしかないやんか、こんなおっさんがしつこくJDに付きまとったらほんまただのストーカーやで」
「こわ・・・。こわいわ・・・。それはもうがんばれへんな・・・」
「がんばれへんねん。せやからな、」
まだ、頑張る余地があるお前にはがんばってほしいねん
そう言うと、白石は コクリ と頷き、 俺明日さおりちゃんに会いに行ってくるわ!! と闘志を燃やした。
「謙也のぶんも俺がんばるからな・・・!」
「おう・・・幸せになれよ!!!」
俺らは固い握手を交わして、その日はあーでもないこーでもない、と色々作戦を練って一日を終わらすのやった。
(何が悲しくてクリスマスイブをおっさんふたりで迎えなあかんのか・・・)