中学1年生になった頃。
私は家から少し遠くの学校に通う事にした。
海が近くて、制服も落ち着いていて、学校見学に来たときに一目惚れして、両親にお願いして通う事になった。
一応大学までエスカレーター式なので、OKもらえてよかったよ。
そして!
肝心の部活動なんだけど・・・
何を思ったか、立海の中でも一番大変な部活に入ってしまった私でした・・・
その部活とは・・・
「ボール!早くこっちに持って来て!」
「はい!」
「その後、ドリンクも頼んだぞ!」
「は、はい!!」
運動部のテニス部だった・・・
(なぜテニス部に入ってしまったかというと・・・)
(私の幼なじみがテニス部なので、テニス部入ったら試合で会えるかもね~なんて軽い気持ちでマネージャーとして入ったら)
(めちゃくちゃ忙しかったという話・・・)
地元の友達も誰1人通っていないし、立海のこと全くよく知らないし、中学校の部活がどれほど忙しいかもよく理解していなくて、その結果、今忙しい。
忙しいんだけど、中学1年生で何もよくわかっていない世間知らずの私は、部活ってこんなに忙しいんだ!と普通にすんなり受け入れていた。
(部活ってすごく忙しいんだよ!)
「まえ、おれのタオルを知らないか」
「あ、真田くんのタオル、風で落ちそうだったから移動してたんだ。はい、ごめんね」
「いや、助かった、ありがとう」
「ねぇ、さおり、俺のドリンクある?」
「うん、はい、幸村くんは薄めのドリンクね」
「ありがとう」
「まえ、今日の俺のフォームは録画してあるだろうか?」
「柳くんのフォーム、キレイになってたよ!確認してね」
「ああ、ありがとう」
幸村くん、真田くん、柳くんは、立海テニス部の中で「三強」って呼ばれている。
なぜなら、入学したての頃に、3年生の先輩をボコボコにやっつけてしまったから!
今年の夏のテニス部の大会でもこの3人が出場するみたい!1年生なのにすごいね~
「さおり、今日もみんなで帰ろうね」
「うん!ありがとう!みんなの自主練待ってるね!」
「うん、待ってて」
幸村くんにそう声をかけられる。
みんなで一緒に帰ってるんだ。立海の練習は暗くなるまでやってるから、家が遠い私は少し心配だったけど、みんなと帰ることにしてから怖くなくなったよ。みんなと帰るの楽しくて好き。
練習が終わった帰り道。
「もう少しで関東大会だね」
「そうだね、俺たち絶対負けないよ」
「うん!みんな強いからきっと関東大会優勝できるね!」
「全国大会も、だろ?」
「あ!そうだね!絶対全国でも優勝できるよ!」
「優勝するよ、絶対に」
「楽しみだね!」
そんなことを毎日のように話して、毎日のように優勝をすることを願っていたんだ
————————————————–
そして夏―――――――――――
もちろん、3強の強さにより、関東大会は優勝!
すごいね!優勝するような強い学校に私がいるなんて!
(みんな頑張ってたもんね!)
私は今、全国大会の会場に来ていた。
今年の全国大会は宮城県で開催された。東北初めてで嬉しい。へへ。
少し旅行気分もあって、浮かれていた私は、
ドンッ
「あ、ごめんなさい!」
試合の準備のためにとりに行っていたドリンクの粉を、人とぶつかって盛大に落としてしまったのだった!
「気をつけろよ!」
「ガキが!」
ジャージを着ていたから、どこかの学校の人だと思う。(少し大人っぽかったから、きっと3年生とかだと思う)
(ガキって言われた・・・)(同じ中学生なのに・・・)
箱から飛び出してしまった、ドリンクの粉の袋を1つ1つ拾う
(あ!どうしよう・・・プランターの下に入っちゃった・・・)
何個か植木のところにあったプランターの下に入ってしまい、私はプランターを動かそうと試みた。
でも私の力なんかじゃビクともしなくて、どうせホコリとかで汚くなってるし、諦めたほうがいいかな~なんて考えていたら、後ろから声をかけられた。
「大丈夫?」
私が振り向くと、そこには
「手伝うで」
じゃにーずみたいにイケメンな男の子がそこにはいた。
(わぁ!滝沢くんみたい!)
(可愛い顔してる!)
(しかも関西弁だ)
知らない人に話しかけられて、ビックリしてしまった私に、彼は言葉を続ける
「俺、これ持ち上げるから落としたもん拾って」
「は、はい」
「いくで、せーの!」
そう言って、彼は私じゃ全然持てなかったプランターを少し浮かせた。
「とれる?」
「は、はい!(よかった思ったより全然汚くない!)」
「とれた?」
「全部ひろいました」
「ほな、下ろすから離れててな」
危ないから、
そうその男の子は言った
そしてプランターをそっと下ろし、手をパンパンと叩いて、手についた土をはらった
「全部見てたけど、大変やったな」
「はい、ありがとうございました」
「ええよええよ、きみ、立海大付属の子やろ?」
「はい」
「毎年全国出場して強いよな、立海」
「はい!」
「あ、おれ大阪の四天宝寺の白石って言います」
「あ、私、立海のまえさおりです」
「まえ!珍しい名前やな!」
「よく言われます」
「1年生やろ?俺も1年やから敬語とかええで」
「あ、そうなんだ!なんで私が1年生ってわかったの?」
「ジャージ、新しいし、ちっこいし・・・」
「小さいからね・・・」
「俺も人のこと言えんけどさ、」
「私関西弁の人と初めてしゃべったよ!すごいね関西弁!」
「え!?なんもすごいことないで!普通やで!」
「すごいよ!私家で関西弁の真似したけど、下手すぎて妹にすごい言われちゃったんだ」
「そうなんか、今度機会があれば教えたるで!」
「うん!」
「テニス続けてればまた会えると思うしな、全国大会中ずっとおるし」
「そうだね、えっと、しらいしくん?しろいしくん?」
「しらいしやで!」
「しらいしくん!しらいしくん、またね!私いかなくちゃ」
「おん!ほなな!」
「試合、がんばってね!」
「おん、おおきに!」
「ばいばーい!」
「ほななー!」
(関西弁の人と話しちゃった!)
(これは帰ってからまぁちゃんに報告しないと!)
(まぁちゃん翼宿好きだからきっと羨ましがるぞ~!)
子どもすぎて、何も考えていなかった私は、ただただのん気にその場を去ったのだった