「幸村っておそ松お兄ちゃんと仲いいの?」
たまたま目の前に座っていた幸村に聞いてみた。
「んー、いや、仲良いってわけでもないんだけどね」
「あ、そうなの?なんかお兄ちゃん連絡するーって言ってたからさ」
「うん、連絡きたよ」
「え!?なんて!?」
「ふふ、妹をよろしくって」
「そっかぁ~、なんか幸村とお兄ちゃんが連絡先知ってただけでも不思議だなぁ(あのクソニートと・・・)」
「そう?」
「うん・・・なんか幸村とおそ松お兄ちゃんってすごく対極にいるような気がする」
「おそ松さんには借りがあってね・・・それで仲良くさせてもらってるんだ」
「借り?何があったの?」
まさかお兄ちゃん何かやらかしたんじゃないと思ってハラハラしながらそう聞くと、幸村は少しバツの悪そうに口を開いた
「んー、まぁもう時効だから言ってもいいかな・・・」
「え?何が!?(お兄ちゃんまさか犯罪行為を・・・!)」
「実はね、」
「うん!」
「高校の時のテニス部のやつが、暴力事件を起こしたんだ」
「え?」
「もちろん相手が先に絡んできたんだけど、やらなきゃやられるから、そいつも手を出しちゃったってわけ」
「うん・・・え、それ幸村じゃないよね?」
「まさか、俺はたまたまその現場を見ちゃって、どうしようかなーって思ってたんだよ」
「そっか・・・それは困るよね」
「そうなんだよ、暴力事件が発覚したら連帯責任で大会も出られないだろ?」
「うん、そうだね」
「そこにさ、」
「うん」
「きみのお兄さんが通りかかってね」
「え!」
「俺がやったことにするから、行けって言ってくれてさ」
「ええ!?」
「それで俺たちは特に咎められずにすんだって話」
「えええ~~~そんなことがあったんだ・・・」
「うん」
「そんな・・・あのおそ松お兄ちゃんが・・・人助けなんて・・・」
「まぁテニス部の奴は一発だけ殴っただけだったのに、きみのお兄さんは相手が気絶するまでボコボコにしたらしいから俺たちのことなんて話題にも上がらなかったみたいだよ」
「え・・・」
「なんか誰も相手にしてくれなくてイライラしてたからって言ってたよ。腹いせだってハハハ」
「ハハハじゃないよ!!何その理由!?被害者は相手のほうでしょ!!」
「それでも、俺たちは助かったよ。おそ松さんのおかげで俺たちは全国にいけたんだから」
「う、うん・・・」
「それ以来ちょっと良くしてもらってるってわけさ」
「へぇ・・・そうだったんだ・・・」
「うん、あとは妹たちを守れって言われて、」
「え!?なんでそんなこと!?」
「自分たちが卒業するからだろうね」
「え、意味がわからない!え、え、ま、守ってたの・・・?幸村が・・・?」
「うん、テニス部のみんなとね」
「え!?守るって何から!?あ、私高校の時に盛大にこけて鼻の骨にひびはいったけど、誰も助けてくれなかったよ!?」
「いや、そういう助けるじゃなくてね・・・」
「ん?」
「あー・・・まぁさおりはそのままでいいと思うよ・・・」
「なにが!?」
なんだかよくわからないけど、幸村とそんな話をしていて、
(あのお兄ちゃんがねぇ・・・)
意外なテニス部との接点に驚いた
(お兄ちゃんとのことなんて一度も聞いたことないよ・・・)
(知らなかったなぁ・・・)
(お兄ちゃんたまにケンカで停学してたこともあるし・・・)
(人助けっていうよりケンカしたかっただけだよね絶対)
そんなことを考えながら、ふとまぁちゃんの方を見る
(え・・・)
(なんだあの人・・・)
なぜだか、イケメン集団に囲まれて、楽しく騒いでいるまぁちゃん・・・
あの人・・・人見知りなくせに何があってあんなことになっているのだろう・・・
ホント不思議な人だ・・・
(あ、でもめっちゃイケメンいる)
(あれはかなりのイケメンだな)
(仁王くん並・・・いや・・・好みで言うとそれ以上だな・・・)
(ずるいなまぁちゃん・・・)
「さおり、肉食ってるか?」
「もうお腹いっぱいだよブンちゃん」
「んじゃ、デザートいく?」
「うん!いくー♥」
「じゃあ選ぼうぜ」
「うん!」
(こっちはこっちで安心するし楽しいけどね)
――――――――――――――――
「あー楽しかった!」
「楽しかったね~!高校生の時にはお店で騒いだり出来なかったもんね!」
「さおちゃんいっぱい食べたかい」
「うん、食べたよ」
「それはよかったね」
時間がきて、お店から出る時、まぁちゃんと2人で他愛もない話をしていると、後ろから、
「なぁ、二次会いくやろ?」
と、さっきまぁちゃんの隣に座っていた金髪の人が話しかけてきた
(え、すごい仲良くなってるなまぁちゃん)
「二次会ってどこ?」
「カラオケ」
「俺のモノマネ見せたるわ」
「ならいく」
「まぁちゃん行くの?」
「うん、さおちゃんも行こうよ」
「う、うーん、でも帰り遅くなっちゃうよ?」
「それが大学生なんじゃん!!もう高校卒業したんだから大丈夫だよ!!」
「そう?うーんどうしようかな・・・」
「お前何歌うん?」
「TKリスペクト。マークパンサーやってよ」
「ほな俺出来るわ」
「マジ?したら頼むわ」
(あれ?)
なんかまぁちゃん、金髪の人と話してさっさと行っちゃった・・・
あれ?おかしいな・・・
あんなに楽しそうなまぁちゃん見たことないよ?
少しポカンとしながらその様子を見守っていると、私の隣にはまぁちゃんじゃなく違う人が
私が顔を上げてその人を見ると、
(!?)
例のイケメンくんがそこにはいた!!
(わ、わ~~~~!!)
(遠くから見てたらキレイな顔してると思ってたけど、近くで見てもイケメンだし、なんか背も高い・・・!)
(すごい・・・かっこいい・・・)
私が思わず見とれていると、そのイケメンくんがこちらに気付き、
ニコッ
と、私に微笑んでくれた
(~~~~~~~!!!??)
(わ、わ~~~~~~~!!)
(イケメンがこちらを見て微笑んでくれた・・・!)
(ありがとうございます!!!!!!!)
なんだか嬉しくて(イケメン大好きだからね)
ポワポワしながらお店のドアをくぐると、
「さおり」
聞いたことのある声が私の名前を呼んだ
(え?)
そこには・・・
「も~お前達遅いよ、お兄ちゃん湯冷めしちゃうよ」
うちのお兄ちゃんたちが揃っていた・・・
(え・・・なぜ・・・)
(最悪なんだけど!!!)
「え!?え!?なんでいるの!?」
「ん?ああ、風呂屋の帰りにたまたま通りかかったんだよ」
「え!?ここ通りかかる距離じゃないよね!?うちから電車でけっこうかかるよ!?」
「いや、俺は止めたんだよ?止めたんだけど、おそ松兄さんが行くってきかなくてさ・・・」
「な~に言ってるの、2人の心配してずっとうるさかったのチョロ松兄さんでしょ」
バシッバシッ
「い、痛っ・・・!こらっ・・・!蹴るなまなみ・・・!」
「まなみめちゃくちゃ怒ってんねー!」
「もっとやれ」
「え、ちょっとまって、何しにきたの!?」
「だから迎えに来たんだって」
「え、迎えにって・・・」
「・・・くしゅん!」
「ほら、俺たち湯冷めしちゃうから早く帰るぞ」
「え、お風呂セット持ってるってことは本当にお風呂上りなの!?」
「だからそうだって言ってんじゃん、しつこいね~お前も」
「意味わかんないよ!!半纏着て、桶持って、そんなご近所にいく恰好でなんで着ちゃったの!?恥ずかしいよ!」
「僕だって恥ずかしいよ~!だから早く帰ろうよ~!」
「いや、さおりの言うとおりだよな、ごめんななんか」
「だってさー、幸村から送られたきたお前達の写メに知らない男写ってたからさ~、オニーチャン心配でつい来ちゃったんだよ」
「バカなの!?」
「よ、幸村、写メサンキューな」
「いえ、喜んでもらえたみたいで何よりです」
「喜んだ喜んだ、んじゃ帰るか~」
「やだ、アタシ二次会いくから」
「十四松」
「アイアイサー!」
ガシッ
「あ!ちょっと、離して!!」
「さおりも行こう?」
ギュッ
「・・・トド松お兄ちゃん・・・」
そうして、すたすたと歩き出す6人(+1人)
私は「はぁ」とため息を吐いた後、後ろを振り返り、
「ごめんなさい、帰るね!また学校で!」
と言った
(とりあえず、家に帰ったらお兄ちゃんたち怒って、)
(それから、もう一度みんなで銭湯いこう・・・)
非常識な6人だけど、あたしたちが心配でこんなところまで来たんなら
少しは多めに見てあげようかなって思った
(まぁちゃんはブチギレてたけどね)