042***さおり/謙也

(はぁ~のんびりしたなぁ・・・)

 

申し訳ないことに、倒れてから一日寝ていた私。

1日を無駄にした感もあるし、迷惑をかけてしまって本当に情けないなと思っていた。

けど、みんな心配してお見舞いに来てくれたし、1日中白石くんがついててくれて水分とってたし、何よりまぁちゃんがマンゴー持ってきてくれて食べれたから、かなり体調も回復していた。

不甲斐ない私にみんな優しくしてくれて感謝だよ…。みんなとても優しい…感謝…。

 

とにかく汗かくし、気持ち悪いからシャワー浴びたかったんだけど、まぁちゃんが戻ってこない…。

一体何をしているんだと思って、とりあえずパジャマとかの準備をしていたら、まぁちゃんが戻ってきた。

 

「あれ!?きみ寝てないとダメじゃないか!」

「大丈夫だよ、もうかなり回復してるし、普通だよ」

「でも、念のためさ・・・」

「一瞬倒れちゃっただけなのに、心配しすぎだよ」

「心配はするよ」

「そうだね、私もきみが倒れたら心配するな🤔」

「そうでしょ」

「とりあえずシャワー浴びようと思って。シーツも枕カバーも変えたいし…」

「それはそうだね。予備のやつあったよね、シーツ変えてあげよう」

「大丈夫だよ、出来るよ」

「じゃあ一緒にやろう」

「うん、わかったよ」

「まずはシャワーあびようか」

「そうだね」

 

シャワー室は狭いけど、いつも通り一緒に入ってから、シーツと枕カバーを変えた。外行った服で寝てたし気持ち悪かったんだ…良かった。

寝る準備も早めにして、今日は早く寝るぞと決意する。

 

「きみどこ行ってたの?」

「ん?」

「今、どっかいってたしょ」

「あー・・・謙也のとこ」

「・・・謙也って忍足くん?きみ、ずいぶん仲良くなったね???」

「え、いや、別に」

「そうかぁ、忍足くん明るいし、きみと話合うんだね」

「え!そう思う!?」

「うん、思うよ。ノリ良さそう」

「そうなのさ!話してると楽しいのさ!!」

「そっかぁ良かったねぇ」ニコニコ

「明日もね、ちょっと謙也と出かけてくるからね」

「うん、わかったよ」

「きみは、ここから出ちゃだめだよ!寝てて!」

「えーもう寝てるの飽きたよ~大丈夫すぎるよ」

「ダメだよ!念のため!」

「本当に大丈夫なのに・・・むしろきみのが水分とってるか心配だよ」

「たくさん水分とってるし、たくさん食べてるし、たくさん寝てる」

「健康的だね!」

「うむ、とても健康だ」

「まぁいいや、したら無理しないことにするよ」

「うん、そうしてくれ」

 

まぁちゃんが「明日の準備しなくちゃ」と言って何やら準備を始めた。

懐中電灯とかロープとか軍手をリュックに詰めてるけど、どこにいくんだろう?

宝探しかな?宝探しするってずっと言ってるしなまぁちゃん。

まぁ、何はともあれまぁちゃんが楽しそうで何より。

 

「きみ、今日はゆっくり寝てほしいよ、朝早く起きちゃってるよ毎日・・・」

「大丈夫だよ、実はね・・・」

「うん」

「じゃーん、跡部くんにもらったアイマスク!」

「なに!?」

「アイマスクどっかの小屋の中にあったから、持ってきてくれたよ。寝不足ダメだって」

「ほんとー!良かったしょ!」

「朝明るくて5時くらいに目覚めちゃってたし、ちょっとゆっくり寝れたらいいな・・・」

「そうだな!きみ寝れるといいな!」

「うん、たくさん寝たい」

「したら明日の準備も終わったし寝よう」

「うん、じゃあお休み」

「おやすみー!」

 

★🌙★

 

次の日。

 

その日は早く寝たっていうのもあるし、アイマスクのおかげで朝もゆっくり寝れて7時までぐっすり眠れた。

 

(あーいつもより遅くまで寝れたなーごはんもう食べてるかなー)

 

目が覚めて、そんなことをぼーっと考えながら支度をして、ロッジを出て炊事場へ行く。

案の定、みんな集まってごはんを食べ始めるところだったみたいで、私の顔を見てみんな驚いた顔をしていた。

 

 

「まえさん!もう大丈夫なん!?もっとゆっくり寝てても良かったんやで!・・・っちゅーか、ご飯持ってこうと思っとったんやけど・・・」

「うん、心配かけてごめんね。もう大丈夫だよ。今日お手伝いできなかったね、ごめん」

「いや、そんなん全然ええんやけど・・・」

「ちょうどよかった、おにぎり作ったんだ。食べるか?」

「橘くんありがとう!じゃあいただくね」

「ああ」

「まえさん、こっち座ろ」

 

そう言う白石くんのあとについていく。

白石くんの近くの席は埋まってたけど、金ちゃんが早食いしてちょうど食べ終わったからと席を譲ってくれた。金ちゃんは食後のトレーニングとか言って走っていってしまったけど、食後に運動して横っ腹が痛くならないか心底心配である。

橘くんの作ってくれたおにぎりは塩が効いていてちょっとしょっぱいけど、私のためなんだろうなと思うとちょっと嬉しくなる。おにぎりも小さめで、あの大きいな手で私が食べる小さいおにぎりを作ってくれたかと思うと微笑ましい気持ちになって少し笑ってしまった。

おにぎりを食べながら斜め向こうを見ると、もうとっくに朝食を食べ終わったような忍足くんと目が合った。もちろん謙也くんのほうだ。

 

「体調大丈夫なん?」

「うん、大丈夫だよ。忍足くんまぁちゃんの相手してくれてありがとね」

「謙也でええで」

「わかったよ。謙也くんのおかげでまぁちゃん楽しそうだから良かったよ」

「え!?ほんまに!?」

「うん、昨日とても機嫌がよかったから」

「わーまじかー」

 

そう言って、謙也くんが照れたように俯いた。耳が赤い。

 

これにはさすがの私も気づいてしまった。

 

普段にぶいにぶいと言われる私でも。

 

 

 

さては、まぁちゃんのこと好きですね!?

 

 

 

よし、そうとあれば、私がひと肌脱ごうではないか!!

あの人見知りのまぁちゃんが謙也くんと一緒にいて楽しそうだから、きっと悪いことではないと思う!!

ふふふ・・・一度恋のキューピットとやらをやってみたかったんだよね・・・😇私はまぁちゃんの恋を応援する!!(←余計なお世話)

 

 

 

「謙也くん、ちょっとお願いがあるんだけど」

「ん?なに?」

「今日まぁちゃん、おでかけするの楽しみにしてたんだけど、まだ寝てるの。良かったら起こしに行ってあげてくれないかな?」

「え!?!?!?」

「・・・謙也声でっかいわ」

「あ、す、すまん!!え!?ちゅーかええの!?」

「うん、私食べ始めたばっかりだし・・・謙也くんが起こしてくれたほうが早く支度できるでしょ?」

「おおおおう!わ、わかった!!!」

 

 

そういうと、謙也くんは急いで立ち上がって管理小屋のほうに向かって行った。

 

 

「なるほど、そういうことだったと」

「え・・・あいつまさか・・・」

「まぁちゃんのことはまかせたから、これでOKだね」

 

 

周りのみんなの驚いた顔を見ながら、おにぎりを頬張るのであった。おにぎり美味しい!

 

 

(私めちゃくちゃいいことしたな!)

 

 

 


 

■謙也ver

 

 

まなみのねぇちゃんに起こすのを頼まれた俺は、今まさに管理小屋のドアを開けるところやった。

 

(うっわ~~~めっちゃ緊張する!!!)

(起きとるやろか?)

(起きてたら怒られるかな・・・!?)

(いや、でもおれは姉ちゃんに頼まれたし・・・!これは俺の使命や・・・!)

(だ、大丈夫や・・・落ち着け俺・・・!)

(落ち着け・・・落ち着け・・・)

(・・・や、無理やな・・・落ち着かれへんな・・・!)

(お、女の子を起こすとか・・・)

(寝起きとかやばない・・・!?)

 

しかも好きな子の寝起きとか

 

心臓バクバクで口から飛び出しそうっちゅー話や!!

 

 

そーっとドアノブを回してドアを開け、部屋に入る。

昨日も来たばかりの部屋は、人がいないこともあって少し広く感じる。(昨日はめっちゃ人もいたしな)

 

ベッドを見ると、片方のベッドに人のふくらみがあることを確認した。静かに上下するそれを見て、心臓がドキリ高鳴った。

 

 

(ね、寝てる・・・!)

(寝顔・・・)

(え・・・寝顔見てもええんですか・・・?)

(やば・・・今年一ついてる出来事とちゃう・・・?)

(こんな幸せなことってある・・・?)

 

 

いつもドタバタうるさいと周りから言われる俺が!今だけは世界一静かな男になろうと、そーっと彼女が寝ているベッドに近づいた。今なら忍者にもなれそうや。

 

 

そして、彼女の顔が見えるところまで来ると、そっと顔を覗き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

あああああ・・・

 

 

めっちゃかわええ・・・

 

 

いつもあれだけ元気な彼女の寝顔は、まだまだ中学生らしいあどけないもので。

 

 

(あ~・・・)(やばい・・・)(目離せん・・・)

 

 

女の子の寝顔を見るのなんて初めてで、ドキドキしながらもついつい見てしまう。

俺はしゃがんで彼女の顔を見た。あまりの可愛さににやける顔を片手で隠しながら。

 

 

(ほんま、かわええな)

(横向いて丸まって寝とる・・・)

(・・・かわええ)

 

 

よかった、ここに来て彼女と話せて。今なら心からそう思う。

一年前、彼女とケンカしてめっちゃ落ち込んで。それでも、また、こうして一緒にいられることが幸せで。

 

 

(帰ったら、また別々の生活になってまうけどな・・・)

 

 

それぞれの生活が始まって、そこに彼女の姿はないけれど。きっと、彼女のことを考えると幸せだし、頑張ろうって気持ちが沸いてくる、そんな風になるんやろなと感じた。

 

 

(・・・ま、帰る前にもう少し一緒におるけどな)(思い出、作ろ)(ほんで、また会えるように頑張ろう)

 

 

がんばる

 

 

そう決めたら、照れる気持ちよりも、前向きなやる気がわいてきて、

 

(よしっ!)

 

俺の原動力になる彼女はすごいなーと思いながら、彼女に声を掛けた。

 

 

「起きやー、起きんと遅刻やでー」

「んー・・・」

「あと30秒以内に目ェ覚まさんとこのまま抱っこで食堂連れてくで~(はは、眠そうやな)」

「は・・・?」

「あと20秒やで~(目少しずつ開いてる、かわええ)」

「え、謙也・・・!?え?さおちゃんは?」

「二言目には『さおちゃん』やなぁ・・・。ちゃんと目ェ覚めた?」

「なんで!?え!?ちょっとなんでここにいんのさ、さいてー」

「怒らんといて!!そのさおちゃんに頼まれたんや!さおちゃん食堂でご飯食べ始めてるで」

「・・・さおちゃん体調大丈夫そう?」

「昨日より顔色もええし、大丈夫やって本人も言っとったしな。おにぎり食べてたから食欲もあるんとちゃう?」

「そっかぁ、よかったぁ」

「ほな、朝飯いこ。外で待っとるから」

「あー別に戻ってていいよ、支度遅いし」

「女の子が支度に時間かかるのは知っとるわい!俺もええもん見れたし、待つくらいいくらでもするわ」

「寝顔見るなんて卑怯な・・・口開いて寝てたしょ」

「いや、口閉じてたで」

「不細工だったしょ、白目むいて。マジで記憶から消してほしいし、あとで刑に処すわ」

「なんやそれ!白目むいてへんで!!怒らんといてって!」

「許すまじ」

「あー・・・とりあえず外で待っとるな」

「待つの嫌いな謙也のこと待たせるわ」

「いくらでも待てるわ!ほな、支度してな。あんまり遅いと先にみんな探検いってまうで」

「あ、そうだった!支度する!」

 

 

ガバッとベッドから飛び起きて、寝ぐせで毛先が少しはねている髪を揺らしながら、彼女はパタパタと洗面所に向かって行った。

俺は外に出て彼女を待つ。

 

 

(いくらでも待てるな)(待つ時間も楽しいとか・・・)(あんなに待つの嫌いな俺が・・・)

 

 

今日も彼女と一緒にいられることに感謝しながらこの後の予定を考える。

「待たせる」って言いながらきっと早く支度するように今ごろ焦ってるんやろなと考えながら、彼女のことを待つのやった。

 

 

 

 

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