クロスオーバー83【さおり/まなみ】

 

 

白石くんに好きな人がいると聞かれてしまった
バスの中はシーンとしてたしみんな聞いてた・・・間違いなく白石くんの耳にも入ってるはず・・・
もしかしたら毎日LINEしてるとかも聞こえてたかもしれん・・・
地獄じゃん・・・
しんどい死にたい・・・

 

白い恋人パークでクッキー作りなうだけど
とにかく無心で作っている
心が爆発しそうだから超無心・・・
いや無心にもなりきれてないけど
頭の中白石くんでいっぱいだよあ゛~~~~~~~~!!!!!!!!!!

 

 

 

「何さっきから急に叫ぶんだよ、びっくりすんだろ」
「情緒不安定かよ」
「だってぇぇぇびえー」
・・・好きな男いるのに他の男とラインしてるのが悪いんでないの?(ボソ)
「んなー!!!きみだって!!!マコちゃんとか!!!!木兎とか!!!毎日ラインしてるじゃん!!!!もとはと言えばきみがねぇ・・・!!!!」
「アタシは友情だもーん、ぷーん」
「は???私も友情だっつってんだろうが・・・!!!!」
「なんかよくわかんねーけど、まなみが悪い(断定)謝れ」
「さおり怒らせたらどうせお前のがベソベソすんだから謝れ」
「どうせまたなんかしたんでしょ、ほらほらさっさと謝りな」
「謝れまなみぃぃ!!!」

 

「やだ!!!!アタシ悪くない!!!!!!!」

 

バーカバーカ!!お前らなんかとクッキー作りが出来るか!くそが!!

 

と文句言いながらまぁちゃんはマコちゃんのいるテーブルに行ってしまった・・・
ほらもう!!そういうところ!!!!!そうでしょ!!!まぁちゃんだってそうでしょ!!!!
友情とか言う割には懐きすぎじゃん!!!普通じゃん、ラインくらい普通じゃん!!!
なんで私がこんなに後ろめたい気持ちにならないといけないのさまぁちゃんの馬鹿・・・!!!!!!

 

「くそが!ってあいつよしこかよ」
「そういや最近顔もよしこに似てきたC~」
「言えてる!!」

 

はぁもう・・・もうやだ・・・
白石くんに聞かれたってだけで地獄なのに・・・
もうこんな気持ちでのんきにクッキー作り出来ない・・・

 

 

「・・・何があったかしんねーけど、楽しみにしてたんんだろ?楽しめばいいじゃねぇか」

 

 

と、大きい体で器用にクッキーを作るコウくんが言った。

 

 

(・・・励ましてくれてるのかな?)

 

 

なんだかんだ落ち込んだら 幼馴染が励ましてくれる。
いつもいつも。

 

 

(まぁちゃんにも言い過ぎたかな)
(どうせ後で仲直りするよね)
(だって今夜は二人きりだし)

 

 

そう思って クッキー作りを続けるのだった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

さおちゃんと喧嘩した。

 

 

(いやそりゃアタシも大声で言っちゃったけどさ)
(同じバスに白石乗ってたのは偶然だし・・・)
(大体危機感ないさおちゃんも悪いんだよ)
(白石が好きならホイホイ他の男と連絡交換したり毎日ラインしたら駄目さ・・・!)

 

 

お友達って言ってたけど
男女の間に友情なんて芽生えると思うか?

 

 

あるわけねぇだろ友情なんかっ!!!!!!

 

 

「まなみちゃん、クッキーの型何にしたの?」

 

ニコニコとマコちゃんが聞いてくる・・・

 

 

(いや、マコちゃんとは友情だな・・・?)
(友情と言うか・・・マブダチ・・・)
(幼馴染のバカたちは兄弟みたいなものだしな)
(家族は家族)
(御手杵は・・・・)
(御手杵はまぁかっこいいけど・・・)
(でもアタシだって忍足謙也の事好きって自覚してから御手杵に近寄らなくなったもん!!!)
(だからさおちゃんもダメでしょ!!同級生ならまだしも見ず知らずの男と友達なんて・・・!!)
(向こうの男の下心見え見え!!!)

 

 

 

私だって自覚のないさおちゃんに怒ってんだ!!
だからまさかのハプニングで白石と同じバスだったとしても知らん!!!

 

 

いや
ちょっと可哀想だけどね・・・

 

 

(アタシも忍足謙也にあんなこと聞かれたら死ぬと思う)

 

 

「・・・まなみちゃんどうしたの?落ち込んでる」
「んー・・・さおちゃんと喧嘩しちゃって」
「あぁ、それで急に来たのかぁ」
「でもアタシ悪くないんだよ!?さおちゃんがさ・・・」
「うんうん、どうしたの?」
「さおちゃんがさ・・・痴情のもつれで・・・」
「え!?急に何の話!?」
「痴情のもつれでそれを指摘したら怒って・・・」
「えぇ・・・そ、それは指摘しない方がよかったんじゃない・・・?」

 

 

マコちゃんは真っ赤になりながらも 早く仲直りしたほうがいいよ とか きっとさおちゃんも今頃落ち込んでるよ? とか色々解決策を考えてくれている・・・
尊い・・・
マコちゃんかわいい天使👼

 

 

「マコちゃんはそういえば彼女とかいないの?」
「え!?い、いないよ・・・!!!」
「いないの?好きな子は!?」
「え!?!?」

 

 

マコちゃん焦ってるカワイイ・・・天使👼

 

 

「もし七瀬遙と付き合ってるなら教えて…誰にも言わないから!!!」

 

 

とこっそり言ったら
え!?ハルと!?そんなわけないだろ?!?!
って真っ赤になって否定してた
え、逆に怪しくない!?こりゃ実は付き合ってるね・・・はぁ~図星かよ~
マコちゃんのためならめっちゃ見守るけど複雑~~~
隣にいる七瀬遙は無心でめちゃくちゃ器用にクッキーを作っている・・・
こいつ・・・絵も上手いしクッキー作りも上手くて憎い・・・おらはこいつが憎い・・・

 

 

いやしかしさおりくんが落ち込みすぎているからどうにかしないとこりゃやばそーだな🤔
怒らせちゃったし・・・🤔
別にアタシ悪くないけどさっ🤔
今夜2人きりなのに遊んでくれなくなるぞ🤔
うーん🤔
どげんかせんといかん🤔

 

マコちゃんとは普通に楽しくクッキーを作り終えたので、さおちゃんを元気づけるために色々考えた。

 

 

 

 

 


 

 

クッキー作りを終えて、クッキー焼けるの待ってる間は自由時間で
まぁちゃんはマコちゃんとベッタリで(自分だって忍足君のこと好きなのにあんなにマコちゃんにひっついて!!)(もーー!!!)
お庭でお花見てたら跡部が来たから跡部と穏やかにお花の種類とかについて話しながら色々見た。
跡部もおとなしく同じテーブルでクッキー作りしてたのはちょっと面白かったな。
昔の跡部ならなんで俺様がこんなこと💢とか言ってやらなかったよね。
高校生になって本当に丸くなったな跡部は・・・顔も良い・・・

 

それからクッキー作りが終わってバスに乗って移動・・・
大倉山でウィンターミュージアムを見学して、サッポロビール博物館に行って、夜ご飯にジンギスカンを食べて・・・

 

ホテルに戻ってお風呂に入ったらまたホールに集まった。これからレクの時間だ。

 

しかし今日一日まぁちゃんは拗ねてて全然一緒にいなかった。
怒ってるのは私の方なのに本当にまぁちゃんは意地っ張りだ。
私は幼馴染やバレー部や田所君たちと一緒にいたり、不二山くんとか、ヒーロー科の女子と回ったり・・・
割とひとりでぼーっとしてても誰かしらが傍に来てくれて一緒に回ってくれたから楽しかったけど・・・

 

やっぱりまぁちゃんが一番気楽で落ち着くんだよな、と思ったのは本音だけど隠しておく。
今回は絶対に私は悪くない・・・

 

 

「なんや色々出し物とかゲームとかするらしいで!楽しみやな!」

それよりあんたら喧嘩したらしいやん、はよ仲直りしてやー!とヒメコが
もう、仲良しなのに駄目じゃない!早く仲直りしないとボク怒っちゃうからね!とディアンヌが
あらやだ旅行に来てまで喧嘩?早く仲直りした方がいいわよ!としのぶちゃんが
みんなにピーチクパーチク言われた。

 

 

(わかってるけどさ)
(こっちは白石くんに好きな人がいるって誤解を招いてしまってさ)
(いや、あながち誤解ではないけどさ)
(色々最悪なのにまぁちゃんとも喧嘩してなんで私が謝らないといけないの・・・)
(もうぐちゃぐちゃだよ)
(やだなぁ、はぁ・・・)

 

 

ホールのステージでは バンド演奏だったり手品だったりお笑いだったりクイズだったり
なんか色々と出し物をやっていた・・・

 

 

(あ、小春ちゃんだ)
(小春ちゃんたちのお笑い大爆笑じゃん・・・)
(よかった、嬉しい・・・けど今笑えない・・・)
(なんかもう元気でない・・・)
(今日絶対ついてない・・・)

 

はぁ、とため息をついたとき

 

 

『じゃあ次はくじ引きで当たった人に みんなの前で何かやってもらいまーす!』

 

って声が聞こえた。

 

聞こえてたけど別に自分が当たるとは思わなかったし いろんなことがあって疲れててボンヤリとそれを聞いていた。

 

 

 

『----さん!---りさん!!お願いいします!』

 

 

ステージで司会の生徒が名前を呼んでいる

 

 

『ーーおりさん!!!2年2組まえさおりさん!!ステージに上がってきてください!!』

 

 

(はっ!!)

 

 

周りのみんなが 私を見ている

 

 

 

(え???)

 

 

「ちょ、さおり!!呼ばれてるで!はよいきや!」
「え・・・?」
「きゃー♥さおり何するの?歌?ダンス?」
「は・・・?え???」
「ほら、みんな待ってるわよ!!」

 

え?

ちょっと待って

当たったの私!!!?!?

 

 

 

「え、むりむりむり!!!!私人前とかほんと苦手だから無理だよ・・・!!」
『まえさおりさーん!はやくしてください!!』
「ほら呼んでるで!!!」

 

「さおりー!はやく行けよーーーって、無理じゃね?」

「さおりにはハードルが高すぎるな」

 

「無理だよ!!!私!!!人前で何かするとかほんとに無理!!!!!」

 

 

 

絶対無理・・・!!!!!!

 

 

 

 

「はーい、アタシ歌うー!!」

 

 

(え?)

 

 

サッと
前の方にいた まぁちゃんが立ち上がった
そしてステージに上がって マイクを握って

 

 

『さおちゃんじゃないけど、2年2組まえさおりの双子の妹だからアタシでもいいでしょ!歌うよ!生バンドやってくれる人いない?』

 

 

まぁちゃんがそう言うと 数人がバンドメンバーとして楽器を手にした。

 

 

 

(あ、忍足君いるじゃん!)
(ドラムだ!!)
(あ、ユウジもいる!!!)

 

まぁちゃんはその演奏に合わせて 歌いだした。
女子が少ないからそれはもう大盛り上がり。
大成功で ステージは終了した。

 

 

(・・・助けてくれたんだろうな)

 

 

きっと、私がこういの苦手なの 知ってるから。

 

(・・・今回は許してやるか)

 

 

そう思って レクが終わったあと 部屋に戻って来たまぁちゃんに話しかけようとした

 

 

「ま・・・」

 

 

しかし

 

 

ずんずん と進んで来たまぁちゃんは がしっと私の肩を掴んで こう言ったんだ。

 

 

「さおちゃん 庭に花火しに行くよ・・・!!!」

 

「え?」

そのまま私はまぁちゃんにズルズルと引きづられるように 中庭に向かった。

(ちなみに夜なのでディアンヌもヒメコももう荷物持って彼氏のところに行ってしまった)

 

 

 

 

 

 


 

 

意地張っちゃってごめんねできなかったから今日は1日中マコちゃんと一緒に回ってしまった・・・
さおちゃんと一緒に見たいところたくさんあったのに・・・
さおちゃん絶対激おこだもん・・・
怖くて近づけないよしくしく・・・・
なんとかしてさおちゃんのご機嫌取りをせねば今日部屋で二人きりだし喧嘩したままはいやじゃ!!!!

 

と思っていたら!
さおちゃんステージに呼ばれて何かしろとか急に言われてるし
はぁ?そんなん無理だろって思って 無茶ぶりヤメレってイラッとしたけど
何よりさおちゃん困ってんだろうなーと思ったから ステージ上って歌ってやったわ!!
女子少ないから何しても盛り上がるんだろどうせ!!!ふん!!!

 

 

 

でもそのおかげで

「歌うまいやん!めっちゃ盛り上がってたで!!」

とドラムをしてくれた忍足謙也とステージの裏でお話が出来た。
死ぬ。
ありがとう神様。

 

 

「そっちこそ、ドラムできるの知らなかった(違う、ドラムうまかったね♥だろうが!言い方!!自分の馬鹿!!)」
「あぁ、昔からドラムやっとんねん」
「そうなんだ、す、すごいうま・・・(もじもじ)」
「リズムめっちゃズレるけどな」
「うっさいわ!」
「ほんまのことやろ」

 

(ドラムうまかったねって言えなかった・・・)
(ユウジめ・・・)

 

ユウジと忍足謙也がわちゃわちゃしてる・・・
でも・・・
忍足謙也のドラムで歌を歌えるってすごい・・・
すごくない・・・?
すごいよね・・・
すごい・・・(ゴクリ)

 

 

「な、お前レク終わった後すぐに部屋戻るんか?」
「なんで?」
「俺ら中庭で手持ち花火するんやけど一緒にやるか?あ、花火の許可は取ってるで」

 

 

ユウジ・・・・・・!!!

お誘いしてくれた・・・・・!!!!!!!

 

 

(ま)
(マジかよ・・・)

 

 

忍足謙也と花火だと・・・・?

 

 

 

(ユウジが神様だったのか・・・!)
(ありがとう神様・・・!!!)

 

 

 

「え、行く」
「ほな中庭集合な」
「らじゃ!他のみんなもいるの?」
「四天だけなー」
「!」

 

(てことは白石もいる!!!)
(これは・・・!!)
(さおちゃん誘わねば!!!)

 

 

「さおちゃんも連れてく!!!」
「ええで、はよ来いよ」
「わかった!!!!!!!!」

 

 

おらはダッシュで部屋に戻って すでに部屋にいたさおちゃんの肩をつかんだ

 

 

「さおちゃん 庭に花火をしに行くよ・・・!!!」

 

 

これで仲直りできるぞやったーーーー!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 


 

 

突然まぁちゃんに中庭に連れてこられて

 

 

(え?)
(うそでしょ・・・?)

 

 

そこには  白石くんの姿が・・・!!!

 

 

(う、う、うそ・・・!!!)
(ど、どうし・・・!!!!!)

 

 

 

隣のまぁちゃんはなぜかものすごいドヤ顔だ・・・
白石くんと一緒に花火する機会作ったのえらいだろと言わんばかりだ・・・
いやえら・・・えらくはないぞ・・・えらいけど・・・?いや今は会いたくなかった・・・
でもさっき助けてくれたしこうして白石くんと会う時間作ってくれたし文句は言えない・・・
まぁちゃんなりにがんばってる・・・

 

 

「さおりーん♥こっちよーん♡」

 

 

小春ちゃんに呼ばれて小春ちゃんのほうに駆け寄った

 

 

「小春ちゃん!花火持ってきてたんだね・・・!」
「いやホテルの人がくれたんよ、花火ここならしてもええって」
「そうなんだ!」
「おいさおり!あんま小春に近づくな!」
「あ、ごめ・・・」
「こらユウジ、そんなん言うたらあかんで」

 

 

そう

 

 

いつのもようにフワッと 白石くんは笑って話しかけてくれた。

 

 

(・・・あれ?)

 

 

それから白石くん、忍足君、ユウジ、小春ちゃん、千歳くんと私とまぁちゃんで花火をした。
花火は綺麗だったし

白石くんはいつも通り変わらなかった。

 

 

彼の笑顔が あまりにも普通で

私への気遣いも 優しさも

全部全部いつもどおりで

 

 

(あぁそうか・・・)
(そうだよね)
(何をうぬぼれてたんだろう、私は)

 

 

 

私に好きな人がいようが 白石くんには全く関係ない話なのに。

 

 

 

好きな人がいるとか、毎日ラインする男の人がいるとか
そんな話を聞かれたところで何もないんだ
彼にはなんてことない、頭に留めることもないたわいのない会話に過ぎない・・・

 

 

(・・・そうだよね)
(白石くんに聞かれたからって、別に・・・)
(彼の中に私はもういないのに)

 

 

ハッキリと わかってしまった
自分のせいで彼を傷つけて、悲しませて
それから好きとやっと気づいても 話すことにできなくて
諦めずに好きでいればいつかは彼が振り向いてくれるかも、もう一度やり直せるかも、なんて 都合のいい話。
そんなことは ありえないんだ。

 

 

(・・・そうか)
(もう終わってるんだ)
(彼の中で私たちは終わってるし)
(再び始まることは ないんだろう)

 

 

無性に悲しくなって  小さな線香花火に火をつけたまま 少しみんなと距離を取った
涙が出そうで、必死にこらえて

 

 

「・・・前さん、どないした?なんかあった?」

 

そう近づいてくる彼の優しさが痛くて苦しくて

 

「・・・なんでもないよ、綺麗だなと思って」

 

俯いて ごまかそうとして

 

「・・・なんでもなくないやろ?泣いてる?」

 

そんなことも見抜かれて。

 

 

「・・・なんでも、ないよ」
「・・・俺、おらんほうがええ?」
「・・・うん」
「・・・そっか」
「うん・・・」
「・・・わかった・・・ほな」

 

 

行かないでって 言えばよかった
側にいてほしいって
あんなことをした私に優しくしてくれてありがとうって

 

 

言いたいのに 言えなかった

 

 

(また傷つけた)
(もうだめだ)
(もう終わりだ・・・)

 

 

ジジジと音を立てる線香花火が 地面に吸い込まれるように落ちて

 

 

(終わっちゃった・・・)

 

 

きっともう私が彼を好きでいるのも迷惑だから もうやめよう

 

そう思って 顔を上げて

 

 

「ほら、前さん!次の花火持ってきたで」

 

 

笑顔でそこに立ってる 白石くんに目を奪われた

 

 

 

(え・・・?)
(なんで?)

 

 

なんでいるの?

 

 

(私さっきまたひどいこと言ったし)
(一人で勝手に落ち込んで)
(また白石くんを傷つけたのに)

(なんで・・・?)

 

 

 

「ほら、花火!まだあるで、やろうや!」
「う、うん・・・うん・・・」
「・・・ごめんな」
「え?」

「・・・ほっとけへんくて、ごめん」

ひとりでおりたいかもしれんけど、 って
白石くんは困ったように笑った。

 

 

(・・・ううん)
(ううん、そんなの)

 

 

ほっとかないでくれて

 

 

「・・・ありがとう」

 

 

 

嬉しくて嬉しくて 涙がこぼれた。
白石くんは困りながらも ほらこれ色変わる花火やで とか そういえば今日クッキー作りで・・・とか
たわいもない話をしながら ずっと傍に居てくれた。

 

 

それがすごく嬉しくて暖かくて

 

 

(あぁやっぱり私 この人が好きだな)

 

そう思って すっかり涙もあがって 笑顔になった。
私の笑顔を見て白石くんも嬉しそうに笑ってくれた。

 

 

 


 

さおちゃんを無理やり連れてきて ドヤ! って思ってたけど
さおちゃん超暗いし・・・
いやそりゃな・・・元々落ち込んでたもんな・・・?
そんなの連れてきたところで話せないよな・・・
Oh・・・
大失敗・・・
むしろ余計なお世話をしてしまった気もする・・・

 

 

「花火綺麗ばい」
「だねぇ」
「どげんしたとー?チラチラさおりんこと見て」
「さおちゃんなんか元気なくてさー・・・」
「なんばしよっとね?」
「いや、なんかさ・・・あ!そういえば去年までテニス部だった千歳みたいな話し方する家電好きの先輩ってわかる?」
「んー?熊本出身たい?」
「多分」
「惷先輩やなかとね?」
「あぁ、そうかも・・・それかも・・・」
「惷先輩がどげんしたと?」
「そいつ、多分さおちゃんのこと狙ってて・・・」
「え!?」
「あ、いや、これ以上話すと怒られるな・・・」
「どーゆこつね?」
「いや、これはね、千歳にしか言わないから二人の秘密なんだけど・・・」

 

 

 

千歳にコソコソ話をしていたら

 

じーーーっと 後ろから何やら視線を感じて・・・

 

 

(・・・?)

 

 

振り返ると

 

 

「・・・・・・何ヒソヒソ話しとんねん」

 

 

忍足謙也が 立っていた・・・!

 

 

(ビクゥ!!!)
(ひぇ!!!!)
(忍足謙也・・・・!!!!)
(夜の忍足謙也もいい・・・)

 

 

「お、謙也ー」
「なんや、仲良さそうやな」
「まなみと俺はサボり仲間たい!!」
「なんやその仲間!!堂々と言うことかぁ~!?」
「ははは」

 

 

「おい千歳!!!お前小春から手作りのお菓子もろたてほんまかぁー!!?」

 

ものすごい勢いでユウジがズンズンと向かって来た

「あー・・・怒られそうたい・・・」

千歳はそろりと逃げ出して

 

 

「待て也こらぁーー!!!!聞いてへんぞおれは!!!!!!」
「んもー!千歳くん金欠で食べ物ないって言うてるからあげただけやないのぉー!!!ユウくんに口出しされる問題とちゃうで!!」
「小春の作ったもんは全部俺んや!!!!!俺にはナイショで千歳にはあげるてどういうことやねん!!千歳逃げんな!!話終わってへんで!!!!」

 

 

ギャーギャーと ユウジと小春ちゃんと千歳が走り回る

 

いつもの四天・・・

いつもの騒がしさ・・・

でもそこに混ざろうと思わないのは 今日は忍足謙也が隣にいるからなのか。

 

 

 

「・・・騒がしいやっちゃなー」
「自分だっていつも騒いでるくせに」
「な・・・!そないなことないで!!」

 

 

なんで アタシの口は可愛いこと言えないんだろうか?
ほんと生意気なことしか言えなくて落ち込むわ!!

 

 

(せっかく隣にいるのにね)

 

 

 

「・・・今日歌ったのって」
「ん?」
「姉ちゃんのこと助けたんやろ」
「あー・・・まぁ、さおちゃん人前で何かするの苦手だしさ・・・」

 

 

司会とかそういうのは得意なんだけどね・・・

 

そう言いながら新しい花火に 火をつけた。

 

 

「でも盛り上がったしいいでしょ?さおちゃんがなんかしてもアタシが歌っても大して変わんないよ、女子がステージに上がればとりあえず盛り上がるし」
「まぁ男ばっかの出し物やったからな、女の子出たらそら盛り上がるわな」
「そうそう。あ、そうだ。ドラム、急だったのに引き受けてくれてありがとうね」

 

 

すごく助かったよ

 

 

って言うと 忍足謙也は ええねん って笑った。

 

 

(あ、笑顔)

 

 

花火に照らされる彼の笑顔は
いつもよりも すごく素敵に見えた。

 

 

 

(・・・貴重だ)
(アタシに笑顔を見せてくれるとは)
(なんだろ今日いい日すぎない?)
(もうじき死ぬのか?)

 

 

 

「・・・あんさ、ずっと聞きたいことあってんけど」
「ん?何?」

 

 

忍足謙也に言われて 新しい花火に手を伸ばすのをやめて 彼の方を向いた。

 

 

「・・・いや、なんやろ、あんさ」
「うん」
「・・・なして急に挨拶するようになったん?」
「え?」
「いや・・・ちゅーか、その、あの日・・・バレンタインの日・・・廊下におったやろ?話・・・聞いてたんか?」

 

彼にじっと見つめられて ドキッと心臓が弾けた

 

 

「あー・・・いや聞くつもりはなかったんだけど・・・たまたま聞こえちゃって・・・ごめん」
「いやそれはええんやけど・・・俺の方こそごめんな」
「何が?」
「その・・・・・・感じ悪かったやろ、俺・・・」

 

 

それで気ぃ使って挨拶してくれてんのかな、って思うてたんやけど

 

 

って 忍足謙也は言った。

 

 

(まぁ・・・)
(それもあるけど・・・)

 

 

「・・・感じ悪いって言うか、嫌われてるんだなーって思って」
「や!!嫌いではないで!?」
「でもあんまり印象よくなかったんだな、って」
「いや・・・や・・・ちゃうねん、ちゃうねん・・・(モゴモゴ)」
「いいんだ!アタシも思い当たる節いっぱいあったし・・・嫌な態度たくさん取ってごめんね」
「え!?いや!!そんなことは・・・」
「そんなことあるじゃん、鼻折った時も優しくしてくれたのにひどい態度したし・・・」
「いや、あれは俺が悪いやろ・・・」
「アタシが悪いじゃん!・・・だから挨拶くらいはがんばらないとって」
「え?」
「き・・・嫌われたくなくて」
「き・・・!?は!?」
「アタシ性格こんなだけど・・・嫌いに、ならないで・・・」
「・・・」

 

 

 

精一杯 そう絞り出した言葉

今更だけど あれ?なんかこれって告白っぽくね? って思って 恥ずかしくなった。

 

 

カァァ

 

 

(いや違う)
(断じて告白などではない!!)

 

 

 

 

「・・・嫌いにはならへんよ」

 

忍足謙也の声が響く

 

「色々考えさせてもうて すまんかったな」
「え?なんで忍足謙也が謝るの?」
「・・・その忍足謙也って、やめにせぇへん?」
「・・・(名前を呼ぶのも拒否😰)」
「フルネームやなくて、謙也でええで」
「あ、そういうことか・・・」
「なんやと思うてん」
「ハハ、よかった。名前呼ぶのも嫌がられてるのかと思って・・・」
「せやから嫌やない、て!そうやなくて・・・あの、と、友達にならへんか?」
「・・・え?」
「いや、改めて言うこととちゃうけど・・・なんやろ色々誤解しとるみたいやし・・・」
「え、友達・・・?」
「・・・いややったらええけど」
「友達・・・!?え、いいの!?友達になってもいいの!!?」
「ええで・・・?え?なんかあかんの・・・?」
「え!!だって!!!嫌われないようにしようって思ってたけどまさか友達になれるとは思ってなかったから・・・!!!」

 

 

 

 

友達に・・・!!!!!
なれる・・・・!!!!!!!!!!

 

 

(めっちゃすごい!!!)
(めっちゃ前進した・・・!!)
(歌仙やったよおら!!!!!!!!)
(にこやかに挨拶がんばってみるものだ・・・!!!!!)
(ありがとう歌仙・・・!!!!!)

 

 

 

「すごい・・・嬉しい・・・どうしよう・・・」
「うぇ・・・そ、そんな喜んでくれるとは・・・」
「めちゃくちゃ嬉しい・・・ありがとう!!おし・・・じゃなくて、け、謙也!」

 

 

 

嬉しくて 笑ってそういうと
彼は一瞬固まって おぉ って言った。

 

 

 

あぁ嬉しい

嬉しい

 

 

 

嬉しい~~~~~!!!!!!!!!!!!!

友達に なれた~~~~~!!!!!!!!!!!!

 

 

(余は満足じゃ・・・)
(人生悔いなし・・・)

 

 

「・・・あー、けど大丈夫なんか?」
「え、何が?」
「いや、彼氏・・・とか・・・」
「彼氏!?」
「水泳部の橘と 付き合うてるんやろ?」
「え!?!?付き合ってないよ!?!?」
「え、そうなんか?いつも一緒におるからてっきりそうやと・・・」
「マコちゃんは仲良しだけど!!!お互い好きな人いるし・・・(マコちゃんとハルの禁断の恋がね・・・)」
「え、好きな人おるん・・・?」
「あ!いや!!ちが・・・っ」

 

 

そこまで話してたら  千歳が

 

 

「まなみ~ユウジが怒っとーよ、助けてくれんね!?」

 

 

 

 

ギュウゥゥ  と 抱き着いてきた。

 

 

 

 

「え、ちょっと!千歳・・・!(やばい!こんな目の前で!!)」
「こらぁ!!!!逃げても無駄やぞ!!!そんなチビに隠れとってもなんも隠れてへんわ!!!!」
「ち、ちびとはなんだー!!」
「チビやろチビが!!」
「ユウジだって大して背高くないじゃん!!!」
「あぁ!?しばくぞ!!!!!」

 

 

 

 

そのあとはもうごっちゃごちゃで
みんなでまたワイワイ花火して 花火なくなったから部屋でUNOでもやろうなんて四天の部屋に行って盛り上がった。
消灯時間になって部屋に戻って
よくよく考えたら忍足謙也と友達になれたの超嬉しくてニヤニヤ止まらなかったし
さおちゃんも機嫌直ったからお互い今日会ったことを伝えて 眠りについた。
友達になったって言ったらさおちゃんも喜んでくれたよ!
なんだかんだ楽しい思い出が出来てよかったと思いました!まる!!!!!

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