「思い出した・・・シライシ、隠しキャラだ」
そうまぁちゃんが急に言ったのは春休みが終わる3日前でした。
「嘘でしょまぁちゃん嘘と言って・・・!!!!」
持ってたマグカップを床に落とした私はすぐさままぁちゃんに駆け寄った。
「まぁちゃん・・・・!!!!ねぇ!!!!お願い、嘘と言って!!!!」
「嘘じゃねぇし!!!思い出したんだよ、隠しキャラ3人いるって言ったじゃん!!」
「言ってたけど・・・・!!!なんでそれがシライシくんなの!!?」
「知らんよ!!でもいたんだよ、子供の頃社交界で会って身内がイザベラで殺されてて・・・」
「そんな・・・!!!!!だってシライシくん、現実で会ったことないよ!!?」
「それはおらも知らないよ・・・!!」
ってことは・・・
ってことは!!?!?
★主要攻略対象キャラ
・ライアン(王子) → アトベ
・オリバー・ウィリアム(秀才) → ユキムラ
・カルロス(教師)
・ダリル(チャラ男)
★隠し攻略対象キャラ
・アルバート・ウィリアム(隠しキャラ1) → ケンシンくん
・エフォール・シライシ(隠しキャラ2) → シライシ
・ミレー・イチゴ・アワタグチ(隠しキャラ3)→ いちにぃ
「こーゆーこと・・・?」
「おぉ、隠しキャラ埋まったね」
「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないしょ!!!なんでシライシくん会ったことないのに攻略対象なの!?意味がわからない!!」
「いやおらの方が意味がわからないよ・・・大体どう考えてもきみが主人公だと思うんだけど」
「私悪役令嬢だって言ってるしょ!!!!シライシくんにも嫌われたんだよ!?お姉さんのこと・・・こ、殺したから!!!!」
「やめろ・・・!口にしてはいけない!!自分を責めるのはよせ!さおちゃんは悪くないだろ!」
「ちなみにきみがシライシくんと結ばれたらどうなるの・・・?」
「それだけは地球がひっくり返ってもないけど、あいつのルートはイザベラ死す」
「やっぱり・・・!!つか大体死ぬよね!?」
「死ぬね。いとこの二人だけ温情で国外通報・・・でもなんかラジオで監督がその後結局イザベラは死ぬって言ってたらしい」
「・・・終わった・・・・最後の希望も絶たれた・・・・」
「まぁユキムラとケンシンと結ばれる気もないけど・・・」
「ちなみに誰とも結ばれないとどうなるの・・・?」
「ノーマルENDと大団円とBADENDあるよ」
「え、それどうなるの?」
「ノーマルはイザベラ処刑されて主人公誰とも結ばれずに卒業して平和に未来を生きる」
「死んだね」
「大団円はみんなで協力してイザベラをやっつけてみんなで逆ハーみたいな感じでHAPPYで終わる」
「死んだね」
「BADENDはイザベラと討死するんだよ、自分も死ぬしイザベラも死ぬ」
「死んだね。でもきみは絶対死なせない」
「おらもきみは死なせないよ」
「いやもう・・・覚悟は決めてるんだ・・・だって私は罪を背負いすぎた・・・」
「まて、それはイザベラの話だろ、きみはなにもしてない。ただのOLのまえさおりだ!!」
「いや・・・いいんだ・・・気にしないで・・・」
「気になるわwwwきみ死ぬならおらも死ぬから作戦を考えよ」
「作戦か・・・」
「とりあえず色々思い出したし大丈夫、いけるいける」
「すごいノーテンキ!!」
「あと3年あるしね。おらが思うにはある程度みんなきみへ好意を持っているし・・・」
「え、なに言ってるの!?好意!?そんなものないよ!?」
「え???なにを言ってるの?」
「ユキムラもアトベもイザベラのことすごい嫌ってるんだよ・・・今私は見張られてるところ・・・」
「それマジで言ってんの!?」
「え・・・うん・・・」
「・・・ふぅ・・・まぁ・・・そうか・・・そのネガティブなところがきみの良いところでもあるからな・・・」
「ネガティブはいいところじゃないよ・・・」
「とりあえず、本当に作戦立てよ!!あと、おらの推しのダリルまだ出てないし!!教師も出てないしょ?」
う、うん・・・
まぁちゃんが色々思い出したから大丈夫って言ってくれたし・・・
これは心強いよね・・・?
そりゃ私だって罪は償いたいけど死ぬのは怖いし・・・
やっぱり何も知らない世界で一人の時は絶望でもう死んでしまいたいって思ってたけど
まぁちゃんが色々思い出してくれた今まだ死にたくはないよね・・・
「とりあえずダリルに会うのが楽しみだ・・・」
まぁちゃんはなんだかチャラ男のダリルに会うのが楽しみで浮かれている・・・
いや浮かれてる場合じゃないんだけど・・・
結局色々と話し合ったけど、シライシくんのお姉さんを殺したのがイザベラということは事実で今すぐ解決できないし
ダリルと教師まだ登場してないしこれからまだ時間あるから考えようって話になって終わった。
いや私命かかってるんだけど・・・
話し合い終わってる場合じゃないんだけど・・・
そんな場合じゃないけど仕方ない・・・
とりあえず思い出したこと全部紙に書いて、今まで通り1日を過ごした。
さて。
明後日から高校生活が始まるよ。
ちょうどこのゲームが始まるのが高校から。
さおちゃん、よく今までひとりで頑張ったよね、イザベラでさ。可哀想に。
高校は更にさおちゃんを大切にしたいと思う。
なんか今までのおらはティーザーちゃんだったし、ティーザーちゃんとしてイザベラを大切にしてきたけど
これからのおらはまえまなみとしてさおちゃんを大事にするからね!!!!
おらの双子の姉として!!!!
そして全力で守る・・・・!!!!!!!
と、いうことで。
とりあえず最後の春休みは私の育った孤児院へ行くよ。
記憶を思い出してからいろんな記憶がごちゃごちゃになって頭痛いし気持ち悪くて全然動けなくてね。
シスターに帰って来いって言われてたのに帰れなかったから。
ある程度体調も落ち着いたしゲームのこと思い出したこともノートにメモしたし、春休み最終日だけど1度孤児院に帰ることにした。帰らないととにかくシスターがうるさいから。
孤児院はそう遠くないけど歩くと時間かかるからね・・・馬車で行くよ。
「私まで・・・いいの?」
「いいに決まってるしょ!きみだって実家帰らないし暇なんでしょ」
「暇だけどさ・・・」
「だってあれだよ、お隣の弟たちいるよ」
「それな・・・マジで会いたい・・・」
「だろ、一緒に行こうぜ」
「大丈夫かな・・・引かれないかな・・・」
「誰も引かないよ・・・」
「そうかな・・・あ、手土産持っていかないと・・・」
「街に寄って買い物してから行こうか?おらもちょっとお土産見てくる」
そうしてさおちゃんと街に出た。
さおちゃんと別々にお土産を見ながら ブラブラしていると
「あっ」
声が聞こえて振り向くと オシタリがいた。
「よ!」
「お、おお・・・」
なんだかオシタリは気まずそうにした。
(あ、そうか)
(さおちゃんがイザベラだって終業式の日にバレたんだっけ)
(それでこいつ気まずそうにしてんのか・・・)
(ガキだなぁ)
(13歳の時からなんも変わってねぇなぁこいつ)
(まぁ背は伸びたけどな)
「・・・なんか気まずそうだけどさおちゃんのこと?」
「・・・」
「さおちゃんは悪い子じゃないよ」
「・・・」
「あんただって3年間一緒にご飯食べてたからわかるでしょ」
「わかる・・・けど・・・」
「私はさおちゃんの味方だよ。あの子は人を殺すような子じゃないから」
「・・・」
「虫も殺せないような優しい子だから」
「・・・それはわかっとる、」
「わかってるなら、あの子を人殺しを見る目で見るのはやめて、さおちゃんは、」
「わかっとる!!わかとるけど、けど・・・!!」
俺にとってはシライシもシライシの姉ちゃんも 家族みたいなもんなんや
そう、オシタリは泣きそうな顔をして言った。
お姉さんが死んだと聞いた時、自分はもちろん、深く傷つくシライシの家族をずっと見てきたから
自分ももちろんイザベラは許せないのだと。
けど一緒に中等部で過ごしてきたイザベラは優しい女の子で、シライシだって間違いなくそんな彼女に好意を持っていて
でも彼女がイザベラと知ったときの絶望したシライシを見て、せっかく明るくなってたシライシがまたあの頃に戻ったみたいで悲しいって
そうオシタリは言った。
(まぁ・・・気持ちはわかる・・・)
(そりゃね・・・)
(わかるよ、わかるけど、わかるけど!!!!)
(あれはイザベラが悪くてさおちゃんは悪くないんだよ・・・!)
(私だってさおちゃんが大事だ!!)
(なるべく味方を増やしておきたいし・・・)
(どうしたらわかってくれるんだろう・・・)
色々思い出したのはいいけどイザベラとしてのさおちゃんの立場って何も変わらないんだなって改めて思った。
さおちゃんを救うのは思ったよりも難しい・・・
もしかしたら高校3年間もあるなんて、悠長なことは本当に言っていられないのかもしれない。
これはゲームの世界なのか、なんでこうなったのか、私にはわからない。
分からないけどこうしてさおちゃんとこの世界にいるのは事実だ。
そしてさおちゃんが高い確率で処刑される。
それを回避するためにどうしたらいいのか。
回避するすべはあるのか・・・いや、それを私が作らなくちゃいけないんだ。
さおちゃんを処刑させないための方法を探さないと・・・!
アタシの大事なお姉ちゃんだから!!
なんとしてでも守るんだ!!!!!!!!
「・・・アタシもね、孤児院でずっと優しくお世話してくれてたお姉ちゃんがイザベラに処刑されたから気持ちはわかるよ」
「え・・・」
「生まれた時からずっとお世話してくれてたお姉ちゃんだったし、本当に好きだったんだけど。孤児院出身ってだけで汚らしいって殺されたって聞いた」
「なんやそれ・・・」
「許せなかった。絶対仇討ちしてやろうと思ってた。ここに来たのもイザベラに仕返しするためだよ」
「・・・」
「でもね、アタシが出会ったイザベラは、イザベラじゃなかった」
「・・・」
「あの子はね、過去の記憶はあるけど人格が入れ替わっちゃったんだよ。信じて貰えないかもしれないし、そんなことあるわけないって思うかもしれないけど」
「・・・」
「あの子はイザベラじゃないよ。さおり。間違いなく、私の大好きな優しいさおちゃん。そしてさおちゃんは”イザベラ”がしたたくさんの罪を償いたいっていつも胸を痛めてる」
「・・・」
「あの小さな体で潰れてしまうんじゃないかと思うくらい、罪を背負って償おうとしてる」
「・・・」
「イザベラは罪を償うべきかもしれない・・・でも今はもうイザベラはどこにもいないの。ある意味イザベラは死んだの。でもさおちゃんは死んだイザベラの分も罪を償おうとしてる・・・イザベラはもうどこにもいないのに、イザベラの顔や体に入れ替わってしまったばっかりに・・・たまたまさおちゃんがイザベラの体に入っただけなのに・・・みんなから悪人として見られて今まで生きてきたんだよ」
「・・・言ってることがようわからん・・・入れ替わったってなんや?イザベラはイザベラやろ?」
「違うよ、別人だよ!だってさおちゃんがイザベラの体に入ったのが12歳…12歳からイザベラの悪事はピタッと止まってるはず・・・人が変わったように悪さはしてないはずだよ」
「そんなん・・・意味がわからん・・・どう信じろっちゅーんや・・・無理やろそんなん信じるの・・・」
「だろうね。でも、アタシが言えることはあの子はイザベラじゃないってこと。さおちゃんなんだってこと。だからさおちゃんが罪を償うのはおかしいんだよ」
「何言うとるんや・・・?お前もおかしくなったんか?イザベラに洗脳されとるんか!?」
「・・・ダメか・・・伝わらないか・・・」
「お前なんなん?大丈夫か?」
「じゃあ、これだけ言っとくわ。アタシ、イザベラと双子だから。実の妹。アタシ、アヴァン家の捨てられた娘らしいから。だからさおちゃんが罪を償うなら妹のアタシも償うよ」
彼女の罪はアタシの罪だよ
そう言うと、オシタリは やっぱり他人の空似やなかったんや・・・ って呟いた。
「・・・姉妹って分かった途端、味方しとるんかお前」
「違う、そうじゃない」
「世話になった人殺されても、実の姉だったから許したってことやろ」
「だから!!違うってば!!」
「・・・お前、最低やな」
(なんで・・・)
(なんでわかってくれないの・・・!!)
(さおちゃんは、悪い子じゃないのに!!!)
(さおちゃんは!イザベラじゃないのに!!!)
「最低なのはどっち!?」
オシタリはアタシの顔を見てギョッとした。
「噂話にばかり振り回されて、真実はなにも見てないじゃん!!!」
「お、おい、」
「さおちゃんを、見てないじゃん!!!」
「ちょ、お前・・・」
「あの、3年間は、なんだったの・・・!?毎日一緒に・・・4人でご飯を食べたあの日々は・・・一体何だったの!?」
「・・・な、」
「ちゃんと!見てよ!!自分の目で!!!噂、じゃなくて!!!自分の目で見て、自分の気持ちで感じたこと、ちゃんと!!!確かめてよ!!!」
「・・・泣くなや・・・・・・」
ボロボロ涙を流したアタシに、オシタリは慌てていた。
でもさおちゃんをちゃんと見てくれないオシタリが許せなくて。
あんなに仲良かったのに噂を信じてイザベラだからとさおちゃんを嫌いになったシライシが許せなくて。
アタシは荷物を持ってその場から走り去った。
オシタリの声が聞こえた気がしたけど、アタシが立ち止まることは無かった。
悔しくて情けなくて
とにかくひたすら涙が溢れてどうしようもなかった。
上手く説明できない自分が憎い。
さおちゃんはさおちゃんだと、イザベラではないんだと、上手く伝えられない自分がすごく憎い。
(あー悔しい・・・)
(もう、バカオシタリ・・・)
「まぁちゃん、お土産買えた?」
ハッと気づくと 両手に山のように袋を抱えたさおちゃんがいた。
「あ、うん、だいぶ買えたよ」
さおちゃんに見えないように慌てて涙を拭いた。
「・・・泣いてたの?」
さおちゃんがアタシの顔を覗き込む。
「・・・いやなんか・・・久々に孤児院帰るし感極まってね」
「・・・どうしたの?」
「どうもしてないって!!!ほら早く会いたいから行くよ!!」
そう言ってさおちゃんの腕を引っ張って馬車に乗り込んだ。
(そういやさおちゃんも連れて行くって言ってないけど大丈夫かな)
みんなイザベラには恨みを持ってるし・・・
あいつらアサシンだしな・・・
でも、長く帰ってるいちにぃがいるからなんとかなるかな・・・
(それにいい子たちだから!!)
(あの子たちは大丈夫・・・!)
そう信じて孤児院まで馬車でに揺られるのだった。
「ただいまー」
「まぁねぇ!!」
「まぁねぇおかえり!!」
「まぁねぇ会いたかった!!!」
孤児院に久しぶりに帰ると 孤児院のみんなが抱き着いてきた。
はーーーーーーーーーー
マジこいつら天使かな????????
さっきまでの悲しい気持ちが吹っ飛ぶ~~~~~
癒し~~~~
「・・・まぁねぇ、あの人 誰ですか?」
そうアタシの影に隠れて ゴコタイが言うと
みんなが キッと さおちゃんを見つめた。
「あの人・・・」
「まぁねぇにそっくり・・・」
「まさか、あの人・・・」
(あぁ・・・)
(やっぱり、駄目なのかな・・・)
(孤児院からも何人も奉公に行った先輩たちがイザベラに殺されてるし・・・)
(イザベラは憎まれるだけの存在なのかな・・・?)
(でも、そんなの・・・)
(この子たちに恨まれちゃったら・・・さおちゃんがあまりにも可哀想だよ・・・)
どうしよう・・・
心臓が早く動いた。
さおちゃんも 今にも泣き出しそうな顔で俯いている。
(だめだ・・・)
(不安なのはさおちゃんなんだ・・・!)
(私はさおちゃんを・・・守らないと・・・!)
「待って、みんな、あのね、」
そうアタシが口を開こうとしたとき
「お前たち、その方がみんなに話をした サオリさん だよ」
「いちにぃ・・・!」
後ろからいちにぃが来た。
「おかえり、マナミ」
「いちにぃ、あの、話したって、」
そう驚いていちにぃの顔を見上げると
いちにぃは にっこりと笑って、さおちゃんのほうを指さした。
「あなたが サオリさん!?」
「へぇ・・・ほんとにまぁねぇにそっくりだな」
「まぁねぇが2人おるばい!!」
「でも雰囲気が全然違いますね」
「さすが皇族のお姫様ですね」
「ねぇ、孤児院案内してあげるよ!俺についてきて!」
「あ、お荷物お持ち致します」
そう、チビたちはわらわらとさおちゃんを囲みだした。
「あ・・・あれ?」
「言っただろう?離しておいた、って」
「いちにぃ、上手いこと言ってくれたの?」
「いや、本当のことを話しただけだよ。イザベラに出会ったけど彼女は話とは全然違う心優しい女性だったと話したよ」
「それでみんなすんなり納得したの?」
「そりゃすぐにではなかったけど。マナミをどれだけ大切にしてくれているか毎日話したらみんな会ってみたいと言い出してね」
連れてきてくれてありがとう
いちにぃはそう笑った。
(・・・・よかった)
色々思い詰めていたさおちゃんは。
大好きなチビたちに優しくしてもらえたのが嬉しかったのか
大号泣して(引くほどだった)
孤児院を案内してもらい、みんなで遊び、食事を共にし、狭い寝室で雑魚寝をした。
終始笑顔のさおちゃんにおらも心のドロドロが消えていくようだった。
ちなみにシスターが必死に受け身を教え込もうとしていたがさすがにみんなに止められていた。
でもシスターの歓迎によるクッキーはめちゃくちゃ美味しかった。
みんなが受け入れてくれたことがさおちゃんも嬉しかったと思うけど
アタシはもっともっと嬉しかった!!
あとはやっぱり学園でどうさおちゃんの本当の姿をみんなに知ってもらおうか・・・
そんなことをぼんやりと考えていた。