少し早めにとったお昼休み
食堂で一人で食事をしていると、
「白石く~ん♥」というあま~い声が聞こえた
(・・・うっ、わ)
思わず、その声に体が止まってしまった
昨日、まぁちゃんに言われたからっていうのと、
それから
(「また明日」って言っちゃったから、)
だから今日は、
彼を避けるために外でランチするのはやめたんだ
だけど、
(やっぱり、)
(やめればよかったかな・・・)
あの可愛い可愛い女子社員達の声が聞こえて落ち込んだ
(前も、そうだったし)
(彼、誘われたら断らないんじゃないかな・・・)
(ひざ掛け買ってきてくれた時は、断ってたけど・・・)
そう思っていたのだけど、
「一緒に食べよう♥」
「すまん、今日はちょお無理やねん」
すまんな、そう声が聞こえた
(あれ?)(断ってる)
私は彼女たちに背を向けているので、状況はわからないけど、
(なんだ、)
(断ってる、)
(ちゃんと、断るんだな・・・)
そう思いながら、また食事に手をつけていると、
「ここ、ええですか」
と声が聞こえた
(え?)
顔を上げると、お盆を持った白石くんが立っていた
「え、っと、」
「あ、誰か来ます?」
「い、いえ、誰も・・・」
「ほな、ええですか?」
「あ、はい・・・」
私がそういうと、彼は隣に座った
(やだ、なにこれ)
(約束してたわけじゃないのに、)
(なんか、嬉しい・・・)
なのに
「・・・あの子たち、大丈夫なの?」
「え?」
「誘われてたみたいだから・・・」
私の口から出るのは、そんな可愛くない言葉
(ホント、かわいくないな私)
「俺が一緒に食べたいのはまえさんやし」
「え、でも、前は一緒に食べてたでしょ・・・」
「あー、まぁ入社してすぐに断り続けて関係悪化さすのもちゃうと思ったんで」
そう彼は言った
(そ、そっか・・・)
(大人だもんね・・・)
(そ、そうだよね・・・)
(人間関係を円滑にしないと仕事しづらいしね・・・)
(そっかぁ・・・)
(女好きってわけじゃなかったんだぁ・・・)
なんだか、ホッとした自分がいた
(やっぱり、決めつけたのは)
(私だった・・・)
「・・・まえさん、昨日『また明日』って言うてくれたから、顔見に来てしまいました」
そんな風に笑う彼に
(ああ、)(嬉しいな)
素直にそう思えた
(私)
(この人のこと)
(もっと知りたいな・・・)
「あ、あのね、白石くん・・・」
自分でもびっくりすんだけど、
ほんと、今までの自分ならありえなくて、
でも、昨日まぁちゃんにあんなこと言われたせいか、
彼の言葉が嬉しかったのか、
「こ、来週の土曜日、空いてるかなぁ」
そんなことを口走ってしまった
(わ、)(あれ!?)
(今、わたし)
(なんて言った!?)
その言葉に彼は、
「・・・」
固まってしまった
(え・・・!!!!?)
「あ、や、ごめんなさい!な、なんでもないから、忘れて、」
「・・・空いてます!!」
「・・・え?」
「空いてます、どこか行きたいとこありますか!?」
そう、大きな声で言った
(わわわ、)
(みんなに聞かれちゃうよ・・・!)
(わー・・・女子社員の視線が痛い・・・)
「えっと、どこかって、わけじゃないんですけど・・・」
「ほな、俺がプラン考えてええですか?」
「う、うん・・・」
「あかん、めっちゃ嬉しい、午後から仕事集中できんかもしれん」
「え!?そ、それはダメだよ!」
「・・・わかってますよ、ちゃんとやりますよ」
「う、うん」
「せやけど、まさかまえさんからそんなこと言われると思わんかったから、」
「うん・・・」
「おれ、嫌われてると思ってたから、」
「き、嫌いじゃないよ!」
今度は私が大きい声が出た
(しまった!)
それを聞いて、
彼はまた嬉しそうに笑った
「・・・ほな、とびきりのプラン用意しとるんで」
「は、はい」
「・・・LINEのブロックは外してください」
「あ!!ごめんなさい!!」
「いや、ええですけど・・・それくらい最低なことしたんで、」
「・・・」
「ほな、あとで連絡しますね」
彼の嬉しそうな顔を見ていると、
なぜだか私の心も温かくなって、
(なんだろう、)(なんか嬉しい)
そう思って、彼と残りの時間会話を楽しんだ