「ただいまー!」
「まーちゃんお帰りー!」
「鳥とれてたー!」
「やったーーー!!今日はお肉食べれるーーー!!」
「外でさばいてくるわ」
「お願い、私野菜切って準備してくるね」
「うん」
ここは深い森の中。
ここには私とまぁちゃんしかいない。
3年前、13歳の時に母が病気で亡くなった。
元々母とまぁちゃんと3人で暮らしていたんだけど、母は体が弱い人だったから下手なりに6歳を過ぎた頃には、家のことはほとんど2人で出来るようになっていた。
家の裏にある小さな滝の水は美味しいから水はたくさんあるし、森の中だからキノコや木の実も豊富。小さいけど手入れをしなくても育つような野菜も育てていた。
もちろん、動物も鳥もたくさんいる豊かな森だったので、たまに罠を張って肉も自分たちでとっていた。捌き方を教えてくれたのは、猟師のおじさん。家の場所は絶対に誰にも教えてはいけないと母が言うので、人が通りやすい道まで行き、猟師をしていたおじさんに聞いたのだ。おじさんは捌き方を聞く小さな私たちにびっくりしていたけど、家が貧乏なので病気の母に肉を食べさせてあげたい(事実)というと快く教えてくれた。ついでに食べれる野草やキノコの知識も教えてくれて、おじさんには感謝しかない。
母が亡くなってからも私たちの生活は何も変わらなかった。
2人で起きて、その日の食事を捕りに行き、ご飯を食べて、家事をして、少しずつ冬の準備をして、そして寝る。
母が言うには寒い地方では「雪」が降るようだが、私たちの家があるところは「雪」が降らない場所だった。それでも寒いし、草木も枯れ、動物たちが冬眠してしまうので、獲物を燻製にしておいたり、暖かい時に捕っていた動物たちの毛皮を町まで売りに行ってそのお金で食べ物を買って過ごす。
たった2人なら生活も余裕だったし、むしろ私たちにとってはこれが普通だったから特に問題もなく楽しく暮らしていた。
2人でいろいろな妄想をしたり、それを紙に書いて遊んだり。
そう、楽しかったのだ。
あの日が来るまでは。
その日、いつも通りの日常を送っていた私たちの元に、
バンッ!!!!!
「おられました!!」
「お二人とも無事です!!」
「「!?」」
たくさんの男の人たちがやってきた。
たまに町に行くといっても、母が私たちの姿を人に見せるなというのでいつも深くフードをかぶっていて周りを見ることはなかったし、こんなにたくさんの男の人たちに囲まれたのは初めてのことで、怖くてたまらなくて、まぁちゃんと手を握っていた。
「や・・・!」
「なに、急に?誰?」
「ま、まぁちゃん、逃げよう・・・」
「うーん、どうやら外にもたくさん人がいるみたいだから難しいな」
「あなたたちに危害は加えません。おとなしく、一緒についてきてください」
「いや、そう言われても・・・それ信じろっていうのが無理だよね?」
「やだ、やだ、こわい・・・」
「さおちゃん、アタシがこいつら引き付けるから、逃げな」
「やだよ!まぁちゃんも一緒じゃなくちゃヤダ!!」
「でも、さおちゃんだけでも逃げてよ」
「一緒に逃げようよ、やだよ!」
「おとなしく従っていただけないのであれば、こちらも手を出さなくてはいけなくなります」
「そういって、最初から手出すつもりなんじゃん!!」
「まぁちゃん!」
「さおちゃんに手ぇ出したら許さないからな!!」
まぁちゃんはそう言いながら、男たちに向かって走っていった。
(まぁちゃん・・・!)
こんなにたくさんの人に囲まれたことないし、怖いはずなのに、まぁちゃんは私のためにめちゃくちゃ暴れて怒ってくれた。
「さおちゃん逃げて!!」
「まぁちゃん・・・!」
「いてっ!噛まれた!!」
「あ、暴れないでください!」
「いって、蹴られた!」
「仕方ない!こうなったら!」
「!?」
まぁちゃんの口元に、布が当てられ、まぁちゃんがその布をとろうとした時、
ガクン
(!!?)
まぁちゃんが突然その場に倒れた。
「ま、まぁちゃん!!」
「大丈夫です、眠ってもらっただけですよ」
「傷は一つもつけてませんよ」
「まぁちゃんに何するの!!!」
私はまぁちゃんに近づいて、まぁちゃんを抱きしめて守ろうとした。
必死だった。
まぁちゃんを守らなくちゃって必死だった。
だけど、
「・・・失礼します。おとなしくしていただいたほうが、運びやすいので」
(あ・・・!)
そういわれた後、布が私の口元を覆い、私も気を失った。
気を失っている間にいろいろと思い出した。
あぁ・・・私はまぁちゃんと双子で、何もない普通の人生だけど、とっても幸せな人生を過ごしていた普通のOLだったな・・・と。
「・・・まぁちゃん!!」
ガバッと飛び起きると、
「・・・ここ・・・どこ?」
今までのベッドどは比べ物にならないくらいフカフカの心地の良いベッドで寝ていた。
なんと着替えもすませてあって、とても肌触りが良い・・・
「・・・これ・・・シルク?」
自分の服装を見て、あまりの高級品に驚いた。
天蓋付きの大きなベッド。大きすぎて5人は余裕で寝れそうなくらい。
周りを見ても、何やら高級そうな絵や飾りも置いてある。
私が起きたことで、近くにいた侍女?のような人たちがせわしなく部屋を行き来しだした。
「〇〇様をお呼びして!」と言っているけど、まだ頭がボーっとしているのでよく聞き取れない。
(私・・・異世界に転生したのかな・・・)
(日本とは全然違う・・・)
前世の記憶を思い出したことで、思ったよりも落ち着いていた。
何より、特に害を加えられた形跡がなかったのが大きかった。
そして、
「ぐ~~~」
私のすぐ隣には、まぁちゃんがいびきをかいて寝ていたからだ。
(幸せそうに寝てるな・・・)
(寝心地良いもんなこのベッド・・・)
(なんなら前世で寝てたベッドよりも寝心地いいんですけど・・・)
そう思いながら、ぼーっとしていると、
「サオリ!!目覚めたかい!!」
そういって、おじさん・・・というよりもめちゃくちゃ素敵なダンディな感じの素敵な男性が部屋に入ってきた。
(誰だろこの人?)
(年齢的には30代半ばくらいかな・・・)
(玉木宏とかディーンフジオカみたいにすごく素敵な人だけど・・・)
(あれ?でもなんで名前知ってるんだろう・・・う~ん、私気絶してたから名乗ってないはずなんだけど・・・)
そう思いながら、不思議そうにその男性を見ていると・・・
「う~~~ん・・・うるさいなぁ~」
まぁちゃんも目覚めた。
「まぁちゃん!?大丈夫!?痛いとことかない!?」
「おはよー。大丈夫だよ。きみは?」
「私も大丈夫だけど・・・はぁ良かった・・・」
「すごく寝心地いいからめっちゃ寝ちゃった。ここどこ?」
「わかんない・・・」
「マナミも起きたね、2人とも手荒な真似をして悪かったね」
「ん?なんでアタシの名前知ってんの?・・・って、超イケメンじゃん、びっくりした」
「え、まぁちゃん?」
「素敵な歳のとり方してる感じがする~」
「ああ・・・ちゃんと全て話すよ・・・」
私たちの顔を見て、少し涙ぐんだイケオジさんは、そう言った後、
「迎えに行くのが遅くなってすまなかった」
私たちに頭を下げた。
まぁちゃんは何言ってんだ?という顔をしている。
(迎え・・・って言われても・・・)(私たち・・・あそこにずっと住んでたし、迎ってなんのこと?)
「私はお前たちの父だよ」
そう言って、イケオジさんはくしゃりとほほ笑んだ。
(え・・・?)
おとうさん?
前世の記憶が戻ったものの、今までの記憶ももちろんしっかりとある。
私たちは物心ついたときから森の中でお母さんと一緒に住んでいたはずだけど?
ってか、
「嘘だ~お父さん死んだってお母さん言ってたもん」
私が思っていたことを、まぁちゃんが言ってくれた。
本当にまぁちゃんは怖いもの知らずだな・・・鹿に乗って帰ってきたという武勇伝もあるくらいだしな・・・(その話は機会があれば・・・)
「え・・・!?私が死んだ・・・って・・・?」
「お母さんにそう聞かされてたよ・・・」
「・・・」
「でも、お父さんのこと愛してたって言ってたよ」
「え・・・」
「お父さんのこと世界で一番大好きだったんだって。会えなくなって悲しいって言ってたよ」
そう、お母さんは、お父さんが死んだからここで3人で暮らしてるって話してくれた。
だけど、お父さんのこと愛していたって、大好きだったって言ってた。
お母さん、いろいろな物語を聞かせてくれてたんだけど(今思うとこちらの世界のシンデレラストーリーを)
どんなお姫様のお話よりも、私とまぁちゃんはお父さんとお母さんの話が大好きで、お母さんに強請って聞いていた。
お母さんは恥ずかしがることもなく、「これが私とお父さんの恋物語なのよ」って聞かせてくれてた。
だからこそわからない。
お父さんがお母さんをとても大事にしていたことは聞いていたのに、どうして私たちはあんなところに住んでいたんだろう。
私がそんな疑問を考えていると、お父さんと名乗る人は、
「そうか・・・エミリア・・・」
お母さんの名前をつぶやいて涙を流していた。
お母さんの名前を愛おしそうに、そして、哀しそうに呼ぶその声に、少しだけ真実味がわいたのだった。
それは双子が産まれる少しだけ前のお話。
この国では王族が一番偉かった。
そして、その次に爵位があり、順位も決まっていた。
公爵
侯爵
伯爵
子爵
男爵
そして、これは王族の次に力のある公爵家の物語。
この国の大臣を代々務めているこの公爵一族は、国の中では王家に次ぐNo2の地位だった。
王族を除けば、爵位の中では断然トップ。
それゆえ、誰がその一人息子に嫁ぐか社交界では話題になっていた。
王家のものと婚約も出来るくらいの高い地位、婦人たちが皆振り返るくらいの容姿、優しい心で民を守る騎士団に所属していたその息子のことを、社交界の全ての令嬢たちは狙っていた。
特に身分の高いものは、我こそはと息を巻いて彼に色目を使うのだった。
女性たちのそんな誘いも笑顔でうまくかわしていた彼は、内心では自分の立場を狙っている女性たちのことをいい印象では見ていなかった。
そこで出会ったのが、子爵の娘の一人の女性だった。
類まれなる美貌の持ち主だった彼女は、社交界の花と呼ばれ、男性から人気があった。
爵位があまり高くはないので、高い地位を築きたい跡継ぎである長男たちは残念ながら結ばれることはないはずなのに、自分の妾にと。
次男、三男は家の跡を継ぐわけではないので、自分が養子に入ると彼女にアピールした。
しかし、それらを笑顔でかわす彼女に心惹かれていった。
同じ境遇の2人は恋に落ちた。
身分の違いから本来であれば結ばれることのない2人だったが、彼女の家族がとても真面目で働き者であり、領地の経営も少しずつ大きくなっていたこともあり、結婚を許された。
そして、2人はめでたく結婚し、翌年には双子の姉妹も産まれたのであった。
順風満帆に見える幸せそうな家族に思えるが、それも長くは続かなかった。
彼女が毒を盛られ、死にそうになったのだ。
身分が低い彼女が、国の最高地位の公爵の跡継ぎの心を射止めたのが気に入らない、ただの嫉妬。
いつ毒を盛られたかなんてわからない。
一命はとりとめたが、彼女はそれまで健康だった体が後遺症で非常に弱くなってしまった。
また、歩いていると上から鉢植えが落ちてきたり、町では見ず知らずの男たちに襲われそうになった。
そして、
その魔の手は自分の大切な子供たちにも及ぶようになった。
犬をけしかけられたり、攫われそうなこともあった。
もちろん、最大の警護をしていても、そんなことが起こるのだ。
だって、彼女はほとんどの令嬢から恨まれているのだから。
ただ美人なだけで公爵の地位と手に入れたと思われているのだから。
彼女は怖くなった。
大切な子供たちに手を出されるのが怖くなった。
屋敷の中にいても毒を盛られ、お風呂に入れる時に誤ってお湯の中に落とされ、
彼女の恐怖が爆発し、耐えられなくなった時。
彼女は逃げだした。
月のない真っ暗な夜、双子の両手に抱え、すっかりと弱くなってしまった体に鞭を打ち走った。
走って走って走って、森の中で迷ってしまった時、1軒の小屋を見つけた。
小さなベッドに子供たちを寝かせ、朝を待つと、机に突っ伏したように亡くなっている老婆の姿を見た。
手にはペンが握られており、日記のようなものを書いていたようだった。
老婆は良いところの令嬢だったが、社交界の人間関係に疲れて一人でここに住んでいたこと。小屋の中にあった家具などはもともとが良いものなので、メンテナンスをすれば使えること、そして、歳を取って自分のことを訪ねてくる人がいなくなったことが書かれていた。
もし、森を彷徨いこの小屋に辿り着いたものがいたらなら、この小屋にあるもの全てをあげるから自分を埋めてほしいということが書いてあった。
このありがたい状況に、彼女は喜び、丁寧に老婆の遺体を埋めた後、小屋を掃除し、そして双子と共に静かに生きていくこととなったのだった。
父だと名乗る人は、涙ながらに話しをしてくれた。
自分もどれだけ彼女を愛していたか、当時は騎士団にいたため遠征も多く彼女を守れなかったことを後悔していること、そして私たちに会えて嬉しいことを話してくれたのだった。
(そんな・・・)
物語のようなそんな言葉にまだ猜疑心が拭えずにいた。母はそんな話は私たちにしなかったのだ。
ただただ、幸せそうに父との思い出を語ってくれた母に、そんな過去があったなんて知らなかった。
「・・・それが本当だとして、なんで家から出て行った後のことを知ってるの?」
まぁちゃんがそう聞いた。確かに不自然だ。
だって、家をついてからのことは誰も知らないはずなんだ。
「・・・君たちを眠らせた後、家の中で彼女の日記を見つけた」
母は高いところに隠していたようで、私たちには見つけられなかったのだという。
「・・・これがその日記だよ」
そうしてその日記を手に取る。
2人でパラパラ読み進めていると、確かに母の字だということが分かる。
娯楽も何もないあの小屋の中で、読み書きを教えてくれたのは母だったから。
そこには、私たちの出生のこと、フルネーム、父親の名前、それから私たちの成長の記録。
元々、令嬢といっても使用人も少ない家庭に生まれたため自分のことはなんでも出来た母は私たちに生きるすべを教えてくれたこと。
自分がいなくなった後も私たちが困らないように。
毒を盛られて悔しい、子供たちの成長をもっと見たい、そんなことが書かれていた。
そして、双子に産んでよかったと。一人では寂しいから、双子で良かった、これからも仲良くいてほしい。
最後には、私たちと父への愛の葉で締めくくられていた。
涙が止まらなかった。
そんな思いで、母が育ててくれていたのなんて何も知らなかった。
いつも笑顔だった母はこっそり泣いていたのだろうか。
父のことを死んだと私たちに教えるくらい、二度と戻らないという覚悟を決めた母の気持ちが痛いほど伝わってきた。
「・・・お母さん、あの森で一人なんだ」
まぁちゃんがポツリと呟いた。
お母さんが亡くなる前に、死んだら裏の庭の大きな石の右側に埋めてと言われていたので、2人で埋葬したんだ。
左側は恩人のものだからと言ってたけど、きっとあの家に住んでいた老婆が埋まっていたんだろう。
まぁちゃんの呟きに、父という人は答えた。
「・・・いや、きちんと連れて帰ってきたんだ。代々の墓場に埋葬するつもりだよ。・・・彼女を埋葬してくれたありがとう」
その言葉にほっとした。
母は、あの森ではなく、きちんと私たちの近くにいてくれる、そんな気がした。
その場にいる誰もが涙を流している時、
「・・・まだ赤ん坊で小さかったお前たちには、いきなり私が現れても父と信じてもらえないかもしれない。だけど、私にはわかるよ、お前たちは彼女にそっくりだから。」
そして、
「突然会ってこんなことを言うのはおかしいかもしれないが・・・抱きしめてもいいかい?彼女が大事に守ってくれたお前たちを、抱きしめたい」
そういった。
私もまぁちゃんも涙ながらに静かに頷き、筋肉質で大きな腕が私たちを包んだ。
その手がとてもやさしくて。
目の前のこの人も泣いていて。
実感がなくて、お父さんとなる人という印象しかなかったけれど、
(お、お父さん・・・)
抱きしめられた瞬間に、「この人が父親だ」とストンと胸に落ちてきた。
私たち2人だけの世界だと思っていたけど、家族がいたことに心が温かくなるのを感じた。
と、まぁ湿っぽい話もありましたが、我々はこの家で娘として生きていくことになりました。
結局、お母さんの命を狙っていた人たちは次々と捕まったらしいです。今ではもちろん危険な人物はいないし、お父様とおじい様で粛清したとのことです。
(ああ、公爵家の令嬢なので「お父さん」ではなく「お父様」と呼ぶことになりました。)
お父様が私たちをどうやって見つけたかというと、元々森に小さな少女が一人で住んでるらしいという噂がずっとあり、国で保護しようとずっと探していたそうだ。私とまぁちゃんそっくりだから、片方がウロチョロしてる時に見られても一人と思われていたんだろうなと思った。
最近は自分たちで捕った獲物や、針仕事で作ったものを町に売りに行くこともあったし、その時に母の顔を知る商人のおじさんに顔を見られ、私たちがもしかして行方不明の姉妹じゃないかと思って何度かあとをつけられてたっぽい。
まじか、多分あとをつけられてのんきに帰ってきたの絶対私だな・・・まぁちゃんそういうの気づいて撒くの得意だし、実際何回か尾行されてたから撒いたとか言ってた時あったし・・・。
まぁそんな間抜けな私の行動が今回の件につながってるんですけどね。
私たちを連れてくるように命令したのは、父だったそうな。藁をもつかむような希望にかけて、我々を捕獲したと。なるほど。
父も今では公務として大臣のサポートと、領地の管理を行っているそう。
おじい様は大臣という地位は退いていないけど、領地の管理は全て父に任せていて、そのうち大臣の仕事も引き継いでのんびりおばあ様と余生を楽しむ計画をしているみたいです。
まぁ、まだあと数年から十年くらいはかかるらしいですが。
父はなんとまだ37歳。おディーン様よりお若かった。父が21歳の時の子供らしいです。母は18歳。
まぁ男性貴族の間では20歳~25歳くらいの間に結婚するのが普通のようなので、早いこともなく普通だったみたい。
その後、おじい様とおばあ様にもお会いしたし、母方のおじい様とおばあ様にもお会いしました。
母方のおばあ様はとても母に似ていたので、歳をとったらこんな感じだったのかなと思って涙が出てきそうになりました。
それぞれ祖父母は泣いていましたが、さすがに私たちはもう泣かずに祖父母を励ます側に。
母が殺されそうになったということで犯人の貴族からの慰謝料や土地を与えられ、今では母方の実家も爵位では2番目の侯爵なんだとか!だから、もう誰も身分でとやかく言う人はいないと胸を張っておられました。よかったよかった。
そんな再会がありつつも、まだ私たちの傷は癒えていないだろうとのんびりさせてもらっていた時、
「ところでさ、さおちゃん。私前世でまえまなみっていう名前だったんですけどね」
と言い出した。
唐突だな!おい!!
「やっぱり!?まぁちゃん、お父様を見たときに『イケメン!』って言うから絶対思い出してると思ったよ!!」
「さおちゃんも?」
「うん、私も・・・普通のOLでした」
「だね、イケメン観に行く、枯れたオタクでしたね」
「いや、きみはモテてたけどね・・・」
「二次元にしか興味なかったよ」
「だよね~」
「ここはあれだね、昔より文明が退化してる感じだから異世界だね」
「ね、私たちも外人っぽい顔立ちだしね」
あの家に鏡なんてなかったから、まぁちゃんとお母さまの顔を見ていたけど、外人なんだよね、かなり美形の。
自分の顔、この屋敷に来てから見たけど、まぁちゃんとそっくりだった。
ピンクゴールドの髪に、緑色の瞳。完璧外人。
でも、なんか美人だったわ。ほんと、前世で外人の美女いろいろ見てきたけど、負けないくらい美人さんだったわ・・・母も父も美形だからな・・・遺伝ってすごい・・・。
「はぁ・・・このタイミングで思い出すなんてな~強くてニューゲームかなこりゃ」
「いや・・・我々育った環境はめちゃくちゃ大変だったものだからね・・・続きからってことだったら・・・強くてコンテニューかな」
「コンテニューか!」
「はぁ・・・これからどうなるのかな」
「金持ちの家で面白おかしく過ごす楽々人生!もう食べ物に苦労しなくて良いよやっほー!」
「いやいや、そんなにうまく行かないと思うよ・・・」
前世で異世界転生モノや、令嬢物語を読みまくっていた私は薄々とこれからのことが分かったような気がする・・・
これからのことを考えると、憂鬱な気分にしかならない私は、ひとまずは今の休暇を楽しもうと思うのだった。
(あ~本当にどうなっちゃうんだろう・・・!)