転生したら推しの世界だった話part1■プロローグ

「あれ…?」

「ここどこだ?」

 

目が覚めると、真っ白で、何もない場所にいた。

本当に白しかない。

上も下もわからない。

ただただ真っ白な世界が広がっているところ。

 

 

 

『目が覚めたかな?』

 

 

 

どーーーーーん

 

 

 

 

 

「え?」

「タモさん?」

 

 

『タモさんじゃないよ、神様だよ』

 

 

「うっそだぁ!!タモさんじゃん!!」

「ま、まぁちゃんなんかよくわかんないけど失礼だよ・・・」

「神様ってこんな感じだと思ってた」

 

 

 

 

『それは人間が勝手に考えたイメージだから』

「そうなのか・・・タモさんは神様だった・・・?」

『タモさんじゃないよ』

「それで・・・神様が何の用なんですか?」

『いや、きみたち死んだんだけど』

「え!?」

「すごいことサラッと言われた!!」

『最期覚えてない?』

 

 

そういわれて、私は目が覚める前のことを思い出そうとする・・・

えーっと確か、テニミュを見るために東京ドームシティホールに行こうとして、

JRで行こうと思ったけど、まぁちゃんが地下鉄にしようって言うから地下鉄を待っていた時、

電車に飛び込もうとしているおじさんがいて、思わず助けようとしたら、

バランスを崩して私が落ちて・・・私を助けようとしてまぁちゃんも・・・

おじさんは助けられたけど、私とまぁちゃんはそのままひかれてしまったのだった。

 

幸いというか、なんというか。

痛みは感じなかったから一瞬でバラバラ死体になったんだろうなと思った。

即死は自分が死んだことも気づかない人もいるというけど、そういうことか。

 

 

「私たち地下鉄にはねられて死んだ・・・んだよね?」

『そうそう』

「え・・・そ、そんな・・・」

「まぁちゃん・・・」

 

 

まぁちゃんが悲しんでる・・・と思った。

そりゃそうだ。

いきなり人生が終了したんだ。

子供も置いて、やりたいこともできず・・・

(私のせいだ・・・)

そう思ったのだけど、

 

 

「テニミュ観る前に死んじゃったよ!!!」

「え」

「せめて観てからにしてよ!!!にちかとハイタッチして今日こそ謙也とって思っていたのに・・・!!!」

「いや、まぁそうだけどさ・・・」

「あと、さおちゃんと同時に死んだら誰がオタグッズの処理してくれるの!?」

「たしかに」

「あとひろしのフィギュア・・・欲しかった・・・転スラの二期も楽しみだった・・・」

 

 

悲しむところがなんか違うと思ったけど、まぁちゃんらしいなとも思った。

 

 

『でね、実はさ』

「うん、なに?」

『きみたちがここにいる理由を説明したくて』

「ああ、うん、なにタモさん」

『タモさんじゃないよ』

「タモさんじゃん」

『タモさんじゃないけど・・・実はきみたち死ぬ予定じゃなかったんだよ』

 

 

「「え?」」

 

 

まぁちゃんと声がかぶった。さすが双子だとかそういうのは今はどうでもいい。

だって、死ぬ予定じゃなかったってどういうこと?

 

 

 

『実はあの電車に飛び込もうとしたの、元々うちの子でね・・・堕天しちゃって・・・人間界に行って、大量殺戮を目論んでたんだ』

 

 

 

神様の話に私とまぁちゃんは???と固まる。

なんだそれ、そんなことあるの?

 

 

 

『実はあの子、体中に爆弾を仕込んでてね、電車ではねられて、それを爆発させて、地下を壊して上の建物も陥没させて破壊しようと思っていたんだ。実際、あのままだったら、まずあの地下鉄に乗ろうとした人間、乗っていた人間はもちろん、その上の近くのビルも陥没して、1000人以上の人が死ぬところだったんだ』

 

 

 

まじか・・・

クレイジーだな・・・天界にもクレイジーな人いるのか・・・

 

 

 

『それをきみたちが助けたことで、人々は救われた』

「え?でも、その場にいた人が死ぬ予定だったんなら、私たちも死ぬ予定だったんじゃない?死なない予定ってどういうこと?」

『いや、きみたち本当は地下鉄じゃなくてJRで行く予定でしょ』

「うん、よく知ってるね」

「まぁちゃんが地下鉄のがいいから地下鉄で行こうって言ったんだよね」

『それが本当はきみたちはJRに乗っていたから被害に合わない予定だったんだよ』

「え、じゃあ死んだのアタシのせいか」

「え、私も助けようとしたから私のせいじゃない?」

『それなんだよ、きみたちがあの子を助けた時に、あの子は人の優しさに触れ正気を取り戻したんだけど、きみたちは予定外に死んでしまったってわけ』

「なにそれ」

「ええ~死ぬ予定じゃなかったとか、無駄死にじゃん・・・」

『無駄ではないよ、たくさんの人を助けてくれてものすごく感謝してるよ』

 

 

ありがとう、

そう神様は言った。

 

 

ありがとうじゃないよwww

我々子供もオタグッズも置いて死んでるんだよwww

ほんと、一言お礼言われたぐらいで納得はできないよねwww

 

・・・まだ死にたくなかった・・・

 

 

『で、きみたちには心から感謝をしているから、きみたちの好きな世界に転生させてあげようと思ってここに呼んだんだ』

「ktkr」

「ええ~驚きの転生もの!前の世界に戻ることは出来ないんですか?子供も置いてきちゃったし・・・」

『それは申し訳ないけど出来ないんだ・・・もう君たちの葬儀は終わってるからね、そういう世界線になってしまった』

「でたでた世界線!」

「え、どんな世界があるんですか?」

『いろいろな世界があるよ。魔物が住んでいる世界、人間がいない世界、海がない世界、地下での生活が発展している世界』

「え、もしかして、それって、あの、」

『もちろんきみたちの望む世界もあるよ』

 

 

それを聞いてゴクリと喉がなる。

私たちの望む世界・・・?

それって・・・

 

 

『あと、きみたちに有利な能力もつけておくね~、次の世界も楽しんで!』

 

 

そういって、姿が薄くなっていく神様・・・

 

 

「え、待って!まだハッキリとどんな世界か言ってないし聞いてない」

『大丈夫大丈夫、わかってるよ、神様だから』

「でも、ちょっと!確認したいから待って!!」

『生まれ変わってくれるかなー?』

「いいともー!!  ・・・ってやっぱりタモさんじゃん!!!!」

 

 

 

 

それっきり

 

神様の声が聞こえなくなって

 

 

私たちはまばゆい光に目がくらんで、目を思い切り閉じた。

 

 

 

 

そして、次に目を開けた時には・・・

 

 

 

 

 

おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ

 

 

 

 

 

ぼやっとした視界の中、声が聞こえてくる

 

 

 

 

 

「おめでとうございます!元気な双子のお子さんです!!」

 

 

 

 

 

(赤ちゃんからスタートか!!!!)

 

 

 

 

 

その時、一から始めなければいけない絶望と悲しみで、

必要以上に大きな声で産声をあげたのだった。

 

 

 

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