「御手杵って普段何してるの?」
アタシの質問に、みんな
「さぁ?」
と首を傾げた。
御手杵は普段何しているのだろうか。
あれから、御手杵がアタシと付き合ってる宣言をしてから、
何が変わったかというと、はっきり言って何も変わっていなかった。
相変わらず連絡もほとんど来ないし、一緒に帰ったりデートもない。
向こうがアタシのことを気にしている様子もない。
本当に何も変わらないのだ。
わかってるよ。
御手杵はそういう人だって!!!
長船みたいに愛を囁くタイプじゃないのもわかってる!!
むしろ、そういう人は苦手だから、御手杵は御手杵でいいんだ。
でも、せっかくこうして同じ人間として生まれ変わったからには、高校生というこの時期を謳歌したいんだよ!!!
青春したいよアタシだって!!!!
という思いから、みんなに御手杵のことを聞いても謎である。
「あいつ、いる時は俺らとつるんでるけど、いきなり帰ったりいなくなることも多いぜ?」
と同田貫が言ってた。
実際そうなのだ。
人間として再会してから、向こうは何も言ってくれないし、いなくなることが多い。
そう、なかなか会えないのだ。
会えないからこそ、会った時に「好き!」とか「結婚して!」とか言っちゃうんだけどね・・・。
なんかあんまり相手にされてなくて・・・。
ただ、やっぱり嫌われていなかったのと、実はけっこう言われて嬉しかったのでは?ということが考えられるので、これからはもっとかまってもらうために動きたいと思う。
「主、今角を曲がりました」
アタシに電話で逐一御手杵の行方を報告するのは、先日記憶を思い出したばかりの長谷部。
あの後、職権乱用で住所を調べて家までやってきた長谷部はアタシに今までの無礼を土下座した。
今世は今世だから自由に生きなよ・・・もう同じ人間だから主従関係じゃないし・・・
と思ったんだけど、相変わらずアタシを主と呼んで敬ってくる。
いまだに主って呼ぶ人たちも多いから、別にいいんだけどね。
ただ、先生がそれだとダメだろw母さんいきなり先生きたから、またアタシが何かしたかと思って青ざめてたしw
まじで急な家庭訪問とかやめてくれwww
長谷部が今世でも何か手伝いたいというので、ひとまず御手杵の尾行をお願いしておいた。
長谷部・・・人間になっても機動おばけだな・・・。
長谷部が送ってくれるグーグルマップのアドレスを確認しながらアタシも御手杵の後を追う。
ちなみに鳴狐も一緒に尾行してくれている。
鳴狐の狐は奇跡的にしゃべる狐として生まれ変わったけど、普段はただの襟巻と化している。
確かに現代で狐しゃべったらビビるわ。
狐がしゃべらないと、鳴狐は無口だから、尾行向きだ。
「主、こっち」
「うん、こっちだね・・・ドキドキするわ・・・御手杵なにしてんだろ・・・」
「(すぐにわかりますよ!長谷部殿の尾行で御手杵殿の居場所はばっちりですから)小声」
「うん、狐小声でも声高くて響くからしゃべるの控えようね」
そうして、最終的に長谷部と合流したその先は。
「焼き鳥屋・・・?」
なぜか、焼き鳥だった。
でも、まだ閉店している時間だし(夕方だから)なんで御手杵が入っていったのかわからない。
「確かにここに入っていったのですが・・・あいつこんなところでバイトしてたのか」
先生の顔を覗かせる長谷部。
おう、確かに焼き鳥とかお酒があるところでのバイトは、うちの学校ではNGだ。
普通にコンビニとかファーストフードとかGSでのバイトならいいんだけど、お酒を扱っている飲食店は禁止。
そりゃそうだよなーと思いつつ、入っていった焼き鳥屋を見る。
うん、旨そうだ。
「長谷部・・・お腹減った・・・」
「え!?」
「焼き鳥食べたい・・・」
「え、いや、さすがに俺の立場でそれは・・・」
「生徒と焼き鳥屋に入る教師・・・(ボソッ)」
「やめろ鳴狐」
「だってさ焼き鳥の看板見てたらお腹すいちゃったよ」
「しかし、店も5時からでまだ開いていないですし・・・」
「じゃあ一回帰って着替えてくるから、長谷部おごってよ~~~」
「おごって」
「お前もか!さすがにちょっと、生徒と店に入ることはできませんので、他の者も呼んで落ち合いましょう・・・」
ということで、制服から一回着替えて焼き鳥屋に集合になった。
今日は家にいたさおちゃんも焼き鳥食べたいってことになったから、お母さんに言って二人で焼き鳥屋に向かった。
お母さんにお金渡されてお土産頼まれたしw逆にご飯作らなくていいから楽とか言われたw
長谷部は先に入っていて、たまたま会った風を装うことになった。
ということで、選ばれた大人は・・・
「来たか」
のんびりとした空気を纏ったこの人!
鶯丸だった。
そして、
「おい、貴様!!なぜこいつらと待ち合わせなどしている!?まさか援助交際などしていないだろうな!?」
大包平もいた。大包平はたぶん、騙されて連れてこられた系だな・・・。
大包平は記憶がない真面目なお巡りさんだ。
何度か鶯丸の家に呼ばれた時に会っているので、我々のことも知っている。
ただ、どうして鶯丸が我々JKと知り合いなのかが不思議らしく、いつも援助交際じゃないかとハラハラしている。
そんな反応が面白いのはわかるけどね!!!!!
とにかく連絡の取れて暇な大人組が今日はこの人たちだけだったので、仕方ない。
大包平は非番だったようだ。
鳴狐も合流して、5人でお店に入る。
うーん、御手杵の姿はない。
一先ず開店と同時にいたのであろう、長谷部が席をとっていて、偶然を装って合流した。
席とってた時点でアウトだけどな。
そんで、焼き鳥食べた。おいしかった。
途中で何度かトイレに行くふりをして厨房を偵察に行っていた長谷部が、
「主、ちょっと、」
というから席を立った。
御手杵がいたのだろうか。
「御手杵見つけた?」
「厨房の奥のドアが開いた時に、一瞬長身の男が見えました」
「え!?本当!?御手杵かな!?」
「おそらく」
「何してるんだろう!?」
「主、もし俺の予想が当たっていたら、そろそろ外に出て待っていたほうがいいかもしれません」
けっこうお腹いっぱい食べて18時になっていたので、お土産用の焼き鳥を鶯丸と大包平に受け取ってもらうようにお願いして、先に外に出た。
さおちゃんも「美味しかったね~」と満足そうだったので良かったけど、御手杵どこだ!?
こうして、外に出て待っていると、脇の通路から、長身の男が・・・
「え!?御手杵!?」
思わず声が出て、御手杵が振り向いた。
「ん?あれ、こんなとこで何してんだ?」
御手杵は、そういって近づいてきた。
「貴様、ここでバイトしているのか」
長谷部がそういうと、「あーばれたか」と御手杵は言った。
御手杵「うちの学校酒があるところでバイト禁止だから隠してたんだけど、先生にばれたらもうダメかなぁ」
ま「え、御手杵何してるの!?ホールにはいなかったよね!?」
御手杵「うちの焼き鳥食べたのか?美味かったろ?」
ま「うん!めちゃくちゃ美味しかった!!」
長谷部「主、話がずれています」
鳴狐「美味しかった」
さ「美味しかったねぇ」
御手杵「だろ?美味いだろ?あれ、俺が作ってんだ」
そういって、御手杵は少しどや顔をした。
何それかわいい、かわいいけどどういうこと
さ「御手杵くん、焼き鳥作ってたの?」
御手杵「ああ、ここで串刺しの下ごしらえのバイトしてんだ」
刺すことだけは得意だからな
と、前世と同じことを言う御手杵に、あの頃を重ねて懐かしくなってしまった。
そうか・・・相変わらず刺してたのか・・・
でも、なんで?
ま「だからいつも早く帰ってたの?」
御手杵「おう、学校終わってすぐから仕込みすんだ。終わるの早いし、時給高いし、けっこういいバイトだぜ?」
ま「そうなんだ・・・」
長谷部「待て、お前の家庭はわりと裕福な家庭だったはずだが・・・金に困っていないだろう?なぜバイトなんてしてるんだ?」
長谷部がそういった。
え、そうなんだ。御手杵裕福家庭だったの?
御手杵のこと全然知らないや・・・やっぱりもっとたくさん話したい・・・
そう思ってショボンとしていると、
「そりゃ、結婚するためだけど?」
と当たり前のように、御手杵が言い出した。
????????????
え???????
「だって、結婚したいって昔から言ってるだろ?俺、どうしたら結婚できるか人間になって考えたけど、やっぱり金がないと結婚できないらしいからなー。堀川にも男は甲斐性だって言われるし、今のうちから働いてるんだぜ」
ま、俺なりに考えてるからさー
と御手杵は言った。
まって。
まって。
SU☆KI☆
なにそれ~~~~~~~~~~~~~~~~
御手杵が尊い~~~~~~~~~~~~~~~
なにそれなにそれ~~~~~~~~~~~~
聞けば、中学の頃から新聞配達もやっていて、高校入ってからもすぐバイト探したらしい
なにそれなにそれ~~~~~~~~~~~~
御手杵の行動って全部アタシのためじゃん~~~~~~
なにそれ~~~~~~~~~~~~
嬉しすぎて死にそう~~~~~~~~~~~
長谷部「お前・・・お前は本当に昔から・・・はぁ・・・」
さ「え?結婚って本気なの??え、ってか御手杵くんってまぁちゃんとの結婚資金貯めるためにバイトしてるってこと?まぁちゃんがいつも結婚してって言ってるから????え、すごいね!!めちゃくちゃ純粋じゃない!!???こんな男の人この世にいるの!?」
鳴狐「・・・よかったね」
大包平「おい、土産用の焼き鳥受け取ったぞ・・・ってなんだお前?高校生か?お前らいい加減帰らないと補導するぞ!!」
鶯丸「よくわからないが、丸く収まったようで良かったな」
うんうん、良かった・・・!
良かった・・・?
え、いや、良くないな??????
待って待って、違うな?????
これって本末転倒とかいうやつじゃない?????
将来のために今忙しくて、この青春を一緒に過ごせないとか!!!
アタシは!!!!
今!!!!
もっと!!!!
かまって!!!!
ほしいの!!!!
ま「うれしいけど、違うよ~~~~~~うわ~~~~~~ん」
もう何がなんだかわからなくなって泣き出したアタシに、一同焦っていた。
いや、ほんとね、うれしいけど、そうじゃないというかなんというか。
大包平「おい、女を泣かせるなんて最低だぞ!!」
御手杵「え~~~~~???俺何かしたか?????」
鳴狐「・・・直接的にはしてない」
長谷部「主、どうか泣き止んでください!!」
さ「(長谷部先生、なんでさっきからまぁちゃんに敬語なの??)まぁちゃん、気持ちわかるよ」
ま「・・・さおちゃん・・・わかってくれる・・・?」
さ「うん、まぁちゃん御手杵くんともっと遊びたいんだよね」
ま「うん・・・そう・・・」
さ「御手杵くん、確かにまぁちゃんは結婚してほしいって言ったけどさ、そのために今ほっとかれるのは嫌なんだよ」
御手杵「そうなのか?」
さ「あのね、やっぱりね、好きな人とは一緒にいたいんだよ」
御手杵「将来一緒にいるからいいんじゃないのか?」
さ「将来はそうかもしれないけど、高校生の時間は今しかないんだよ?大人になってから高校生の時なにしてたかなーと思っても、まぁちゃんとの思い出何もないんだよ?」
御手杵「うーん・・・言われてみればそうだな」
さ「それに、あんまり放置しすぎるとね、まぁちゃん他の人のところ行っちゃうよ?まぁちゃんモテるし・・・加州くんとか付き合いたいって言ってたし」
御手杵「それはだめだ」
さ「でしょ?女ってね、やっぱり一緒にいてくれる人がいいと思ってしまうものだよ。(少女漫画の受け売りだけど)」
御手杵「そういうものか・・・?前から約束してるのに?」
さ「(前から・・・?)うん、だから、将来のことはさ、大人になってからでも考えられるしさ、就職してからでもいいと思うよ。それまでバイトはもちろんしていいと思うけど、もっと遊ぶ時間も作ろうよ。」
御手杵「うーん」
さ「御手杵くんさ、ほとんどみんなと一緒にいないでしょ?だから、もっといる時間増やしたら?まぁちゃんとも一緒に遊ぶ時間増やしたら、きっと楽しいよ」
御手杵「わかった、そうする」
さ「わかってくれて良かったよ!」
さおちゃん・・・!!!
さおちゃんの必死の説得によって、御手杵が何かを理解してくれたようだ!
御手杵は昔から女心がわからないからね・・・
こうしてはっきり言ってくれたなんてよかったよ・・・!
それから------
御手杵は、バイトの時間を減らして、時間を空けてくれるようになった。
御手杵は生まれた時から前世の記憶があったから、人間らしくないというか、槍の記憶をより濃く受け継いでいるのかもしれないって鶯丸が言ってた。
だから、意識が人間じゃなくて槍に近くて、ただただ純粋にアタシのために行動してただけだって。
これからは、人間としてたくさん楽しめってお茶を飲みながら言う鶯丸の言葉に感動したわ!!!
はぁ・・・まじでか・・・。
全部今までの行動もすべてアタシのためとか、まじで感動してしまうわ・・・。
はぁ・・・今日も御手杵が尊い。
前よりは一緒に帰る時間も増えたし、デートもできるし、
やっぱり今世は報われました♡
【IF】本当は怖いブラック本丸のみんなで転生してみた3 完