世界はつまらないものだと思っていた。
『――――番でお待ちの方、お会計の準備が出来ましたので窓口までお越しください』
毎日毎日、相手をするのは病人ばかり
(病院だから当たり前なんだけど)
ここは病院。私は病院の窓口で働いていた。
「ちょっと、具合悪いんだから会計早くしてよ」
「申し訳ございませんが順番ですので・・・」
「具合悪いって言ってるでしょ!?それくらいも対応できないの!?」
(あーつまらない)
病院の窓口なんて、普通の企業の窓口よりもクレームが多い。
毎日毎日毎日毎日毎日毎日
クレームばかり。
(今日帰ったら何しよう)
(疲れたから早く寝ようかな…)
(さおちゃん今日は遅いのかなぁ)
毎日仕事が終わった時のことを考えて生きていた。
それだけが私の支え。
(辞めようかなぁこの仕事)
(別にそこまでなりたくてなったわけじゃないし)
(そもそも医療事務向いてないしなぁ)
そんなことを考えながら過ぎて行く日々だった。
そんなある日 ――――――――――――――――――
「ねぇねぇ、まなみ、新しい研修医の先生見た?」
「研修医?」
同期の友だちにそう聞かれた。
大きな病院だから研修医の入れ替わりも激しくて、周りの医者狙いのバカ女たちはいちいち目を光らせていた。
私はまぁ、合コンもたくさんありますし?何も医者じゃなくても出会いはありますし?
(医者に興味なくもないけどさ)
でも特別惹かれるわけじゃない
「なんかめっちゃかっこいいらしいよ!」
「最近の研修生なんて、けっこうイケメン多いじゃん」
「いやぁなんか今までとは違うんだよね~」
「へぇ」
「興味ない?」
「あんまりないねぇ」
「今度の懇親会来るかなぁ?来たら隣座っちゃお」
「うん、それがいいよ、ガンガン攻めな」
「そうする!」
私の周りにはこんな女しかいないのか
(玉の輿を狙う気持ちはわかるけど)
(ガツガツしすぎ)
男よりも他に楽しいことあるのに
それより今日は何をしようかなぁと帰ってからのことを考えるのだった。