Xmas≪さおり≫

12月1日。

クリスマスは嫌いじゃない。

むしろ、大好きだ。

 

特に彼氏と過ごしてどうのって思い出はないんだけど、毎年まぁちゃんと一緒に小さなパーティーして楽しんでいるし

街に流れるクリスマスソングも鈴の音もきれいなイルミネーションも

私はすごく 気に入っていた。

 

世の中がクリスマスムード一色の中、それでも寒いだけで雪が積もらないこの東京の街をぼんやりと歩く。

雪が積もって寒い寒いと思ってた札幌も今では懐かしく感じた。

バイトや大学があるから札幌に帰るのはいつもクリスマスが終わってからで、ファクトリーの大きなクリスマスツリーもここ数年は全く見ることはなかった。(恵美子から写真は送られてくるけど)

 

今日は学校が終わって、バイトもないし少し帰り道にショッピングに出た。

ヨドバシで新しいゲームをチェックして、寒いからカフェに寄って、それから夜のイルミネーションが輝くオシャレな街を歩いて

 

ふと、私の足を止めたのは 小さな雑貨屋さん。

 

(わ、かわいい)

 

ウィンドウから見えた、小さなネックレスがそれはもう可愛いデザインで私好みだったのだ。

 

(あれ、可愛いな)

(クリスマスも近いし、自分にご褒美で買っちゃおうかな)

 

そのまま私は店の中に入って そのネックレスを間近で見ようと近づいた。

 

(近くで見るとますます可愛い!!)

(これいいな・・・)

(あ、値段もそんな高くないや)

(これなら買える!)

 

そう思ってネックレスを手に取ろうとしたとき

 

(!!)

 

もうひとつ伸びてきた手に 思わず自分の手を引っ込めた。

 

「あ、すいません」

 

相手の顔は見てないが、私は咄嗟に頭を下げて謝った。

 

「や、こちらこそ、すんません」

 

男の人の声が聞こえて、頭を上げてチラッとその人を見た

 

(わ)

(すごいイケメン!!!!)

(かっこいい!!!)

 

思わず固まった私に

 

「俺、店員さんに在庫聞いてくるんでどうぞ」

 

と、超絶イケメンは微笑んで レジの店員さんに話しかけに行った。

 

(わーーー)

(すごい!)

(譲ってくれた!)

(中身の伴ったイケメンだ)

(すげー)

(これ彼女幸せ者だわ!!)

 

そう思ったのだが

レジで何やら困ってる店員さんと彼。

 

ハッと私の申し訳ないスイッチが反応してレジに近づいてみると

 

「もう在庫がなく、入荷も未定で最後の一点になります」

 

と店員さんの声が聞こえた。

 

どひゃーーーー!!!

これ一個しかないんかい!!!!!!

そんなん私が自分のために買ったらもったいないわ!!!!

これ彼女さんへのプレゼントにすべきだわ!!!!

あー、彼女さんうらやましい・・・!

どうかお幸せに・・・!

 

そう思いながら「あ、あのぉ」と超絶イケメンに声をかけた。

 

「これ、どうぞ」

「え?」

「いや、私ただ見ようと思っただけなので・・・」

「ええんですか?」

「(関西弁だ!)(かっこいいな!)あ、はい、全然大丈夫です」

「ほんまですか、ありがとうございます!」

 

その人は心からホッとした様子で嬉しそうに笑った。

あぁ、笑顔も素敵だしやっぱり彼女さん幸せ者だな・・・

 

「これがええって言われてて・・・ほんま助かります、ありがとう」

 

そう言う彼に頭を下げて私はそそくさとお店を後にした。

街にはマライアキャリーの恋人たちのクリスマスが流れていて

赤や青や黄色のイルミネーションが輝いて

 

(クリスマスっていいなぁ)

 

そんな風に思って

なんだか幸せな気分で 私はそのまま家路についた。

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