クロスオーバー35 【インターハイ】

夏のインターハイは7月22日~8月20日(開会式は7月28日)だが

ほとんどの競技が7月28日~8月2日までの間に終わってしまう。

今年の開催地は山形・宮城・福島の3県だったためIH出場の高校生たちはみんな会場近くのホテルに宿泊する。

バレーボール男子は山形県

バスケットボールは福島県

今回はIH出場のホテルでのお話。

 

 

 

 

 


 

 

7月31日

バレーボール男子 山形大会出場選手宿泊ホテル

 

及川「無事に準決勝まで勝ち進んだねー♪」

岩泉「は?テメー出てもいねぇのに何ヘラヘラしてんだよ」

及川「岩ちゃん辛辣!!!しょうがないじゃん、俺ら1年なんだし・・・」

松川「来年は出れるようになりたいよなぁ」

花巻「だよなぁ」

及川「へへん、及川さんは来年絶対チームを率いるもんね!」

岩泉「黙れ及川」

松川「調子乗んな及川」

花巻「うぜーわ及川」

及川「ひどくない!?」

松川「1年でレギュラーなの、牛若だけだもんなー」

岩泉「ぜってー負けねぇ」

花巻「俺も・・・ん?あれって、うちのマネージャーじゃねぇ?」

及川「さおり!?え!?何あれなんか絡まれてない!?」

松川「あー・・・他の生徒も泊ってるからなぁこのホテル」

岩泉「・・・ぶっ殺す」

及川「だよね」

 

 

メラッ

 

 

及川と岩泉が殺気に満ちて立ち上がりその後ろをニヤニヤした松川と花巻が追う。

他校とトラブルなんてIH中にありえないのだが止める人がいないこのグループ・・・

もちろん松川と花巻も自分たちのマネージャーが絡まれてるのは面白くないのだ。

 

 

及川「すいませーん、ちょっとツラかしてもらえますかぁ~?」

岩泉「目つぶれコラ」

 

 

●REC

wwwww

 

 

ブチ切れた二人を笑いながら花巻と松川が動画撮影

 

 

さお「え、岩ちゃん?」

 

さおりが驚いて振り向いて

 

「あ?」

「なんだ?」

「やんのかコラ」

 

 

そう言ってさおりを影に隠すのは

 

 

岳人「あれ?岩泉じゃん」

岩泉「ん?向日?」

 

 

テニス部幼馴染三人組だったのだ・・・!!

 

(つまらなくなって真顔で動画を止める松川&花巻)

 

 

及川「あれ?テニス部の・・・」

岩泉「おー、同じクラス」

岳人「よぉ、バレー部!!」

ジロ「いきなり喧嘩腰www」

岩泉「いや、わりぃ!さおりが他校のやつに絡まれてると思ってよ・・・」

及川「テニス部今日からなの?」

亮「おう、今日から泊りで明日から予選開始だぜ!」

岳人「バレー部もう明日で終わりだろ?」

岩泉「あぁ、明日準決勝と決勝やって終わりだから泊まるの今日で最後だ」

花巻「まさか同じホテルとはな・・・」

松川「登山部とレスリング部も同じなのは知ってたけどな」

ジロ「俺ら同じホテルでまなみ悔しがってたよねw」

岳人「あいつどこだっけ今」

さお「まぁちゃん、福島県だよ」

亮「一応マネージャーとしてあいつがIHについてっただけ奇跡だと思うぞ」

さお「まぁちゃん山形の米沢牛食べたがってた」

岳人「だろうなwww」

さお「泣きながら喜多方ラーメン食べるって言ってたよ」

亮「福島の名物wwww」

ジロ「旅行気分wwwww」

 

盛り上がってる3馬鹿とさおりを見て

なんとなーく面白くない及川と岩泉・・・

 

及川「じゃあまなみに米沢牛買って帰らないとねー!さおりー!」

さおり「うん?でも高そうだね米沢牛・・・」

岩泉「駅で売ってる弁当とかなら安いんじゃね?」

さおり「明日帰るしお弁当買って帰ればいいのか」

及川「俺が買ってあげるよ!ね、岩ちゃん!」

岩泉「俺は甘いの買ってく、山ほど」

さお「山ほどってw」

及川「俺も買って帰るよ!山ほど!」

 

 

さおりにも買ってあげるからもうお土産とかいらないよねぇ~

 

と、挑発的な笑顔で及川が言った。

 

 

ムカッ

 

 

その言い方が気に食わない 3馬鹿。

 

 

岳人「・・・へぇ、バレー部は優しいな。俺らあいつに土産とか買うの考えてなかったわw」

ジロ「だねーwまなみだしねw」

亮「あいつに食べ物やっても肥えるだけだしな」

岳人「じゃあ俺あいつに山形の石でも持って帰るわw」

ジロ「じゃあ俺は道端の花を・・・」

岳人「やべーそれwかっこいいww」

亮「キザだなw」

ジロ「だろーw」

及川「・・・え?ひどくない?」

岩泉「幼馴染に石とか花ってねぇだろ」

ジロ「いや幼馴染って言ってもただの幼馴染だしねw」

亮「そんな特別なもんでもねーだろ」

岳人「まぁ俺ら生まれた時からずーーーっと一緒だから兄弟みたいなもんだしなーw」

及川「俺も幼馴染だけどねー?すっごい大事にしてるよーw女の子だしねー」

ジロ「いやまなみは女じゃない」

岩泉「まぁあいつは昔からハチャメチャだけど大切なことに変わりねーだろ」

 

 

バチバチバチ

 

 

謎の火花が飛ぶ中

 

 

花巻「サクランボ美味そうじゃね?」

さお「でもまぁちゃんフルーツより肉のが喜ぶかも・・・」

松川「あ、じゃあこっちだ、米沢牛ビーフカレー」

さお「それ間違いない」

 

 

松川&花巻とネットでお土産を調べるさおりだった・・・。

 

 

 

 


 

 

7月31日

バスケットボール男子 福島大会出場選手宿泊ホテル

 

 

まー「はぁ・・・米沢牛死ぬほど食べたかったなぁ・・・」

田所「ガハハ!こっちはこっちで美味いものたくさんあんだろ!東北はどこも米所だ!」

新開「また喜多方ラーメン食べにいくかい?」

まー「そうだね!もうみんな明日帰っちゃうもんね、最後に一緒に食べよ!」

藤堂「はっはっは!では行こうか巻ちゃん!我らが姫が喜多方ラーメンをご所望だ!」

巻嶋「はー、さっき夕飯食ったのにみんなよく食べるッショ・・・」

 

 

たまたま福島会場のホテルが同じだった自転車競技部に懐いてずっと一緒にいるのはバスケ部のマネージャーとし来ているはずのまなみ。

人見知りなはずが、田所がさおりと同じクラスなのをきっかけに話すようになった。

自転車競技部はみんな優しくてバスケ部よりも懐いていた・・・

 

 

まー「明日チャリ部帰らないで~寂しいよ~お願い!!」

藤堂「おぉ・・・なんて可愛らしいんだ前妹よ!」

新開「ひゅー!オリエンテーション合宿の時は同じテーブルでもあんま話してくれなかったのに仲良くなれて嬉しいぜ!」

まー「だって極度の人見知りだしさぁ」

田所「ガハハ!お前どう見ても人見知りじゃないぞ!」

まー「くまさんには最初から人見知りしなかった、だってくまさんだもの」

田所「くまじゃなぞ!田所だ!がはは!」

 

 

のんきにラーメンを食べに向かっているとき

 

 

虹村「こらぁぁ!!テメェ!!またチャリ部に迷惑かけてんなこら!!!!!!」

まー「ひ、ひえぇえぇぇ!!!虹村パイセンきたぁぁぁぁぁ」

虹村「他の部に迷惑かけたらしばくっつったろ!!!!」

まー「IHちゃんと来たらもう何しても怒らないって言ったのにー!」

虹村「それとこれとは話が別だ!迷惑かけんなこら!!!」

金城「先輩、お疲れ様です」

福富「迷惑などかけられていません」

金城「俺たちが彼女を連れまわしてました、申し訳ありません」

虹村「・・・」

新開「何か彼女に用事でもありましたか先輩」

藤堂「はっはっは!用事があるならお返しするよ先輩!」

虹村(なんだこいつら、何気にこいつのこと守ってやがる・・・気に食わねぇな)

まー「虹村パイセン怖すぎる顔が殺人者」

虹村「あ!?なんつーこと言いやがる!ちょっとこい!お前は明日の打ち合わせだ!」

まー「あああ喜多方ラーメンとチャリ部との素敵な最後の夜が・・・」

福富「先輩」

虹村「あ?」

金城「・・・俺たちの大事な同級生なのでもう少し優しくお願いしますね」

虹村カチン「はーどいつもこいつも今年の一年は生意気だな!大丈夫だ、うちのマネージャーだから可愛がってやるから!!」

まー「(;_;)/~~~チャリ部のみんな~明日気を付けて帰るのだぞ~さらばじゃ~(;_;)/~~~」

 

 

イライラ

 

虹村はイライラしていた

 

 

こんなはずじゃなかった

可愛いマネージャーをGETして部員たちの士気を上げてもっともっと部を強くする思惑があったのだ。

ところがまなみはあっちへフラフラこっちへフラフラ

ちっともバスケ部のマネージャーらしきことはしないし馴染もうともしない。

違う部活へ行ってはキャーキャー騒いで他の部員と仲良くなってくる。

気に食わない。実に面白くない。

バスケ部の士気も大して上がらないままインハイに出場してしまった。

(とは言え、元々バスケ部は強いためすでに明日の準決勝・明後日の決勝を残すのみだったが)

 

 

虹村「おい!お前ら!こいつのことちゃんと見張っとけよ!またチャリ部のとこいたぞ!」

高尾「虹村先輩!ちゅーっす!またチャリ部www好きだねぇwww」

緑間「笑ってる場合じゃないぞ高尾。先輩のあの顔を見ろ。かなりキレているのだよ」

高尾「ブwチw切wれwwwww」

紫原「まなちんさー虹村先輩怒らせるのわかってんのになんで他の部活ばっか行くのー?」

まー「だってお前らチンピラの集まりみたいで全然優しくないんだもん」

黄瀬「え!俺はまなみっちに最強に優しくしてるっすよ♡」

まー「黄瀬うざい」

高尾「wwww」

まー「はぁ、イケメンに会いたい・・・」

虹村「いるだろうがここに!!!」

まー「いやイケメンって中身が伴った人のことだから。パイセンかっこいいけど中身チンピラだからね」

青峰「俺がいるじゃねーか」

まー「は?鏡見てこいやクソが!!」

火神「わかるわかる。イケメンと言えば俺だよな?」

まー「死ね」

高尾「辛辣wwwww」

紫原「もうまなちんにはお菓子やんないかんね」

まー「むっくんはイケメンだよぉ」

黄瀬「俺は!?」

まー「チャラ男」

 

 

そのやり取りを見て虹村は思った

 

こいつは駄目だ、使えない・・・

 

 

今まで女マネもいなかったし、働かないこいつなんかよりも働く部員にマネージャーの仕事させた方が早いのでは・・・

そうだ、こいつ追い回してイライラするのも疲れたしインターハイが終わったらこいつはもう

 

クビにしよう

 

そう思っていた。

 

 

 

 

 

次の日、準決勝。

 

会場にて。

 

 

虹村「・・・まーたあいついねぇな(イライライラ)」

 

高尾「やべぇ、試合始まるっつーのに虹村先輩キレてるぞ!」

緑間「高尾探してくるのだよ」

高尾「ラジャ☆」

黄瀬「俺も行く!」

青峰「どーせどっかの男の筋肉でも追いかけてんだろあいつあほだしな」

黒子「美女がいたらすぐ振り向く青峰くんがそれを言いますか・・・?」

青峰「美女じゃなくて俺はおっぱい見てんだよ!!」

紫原「うわ~余計悪いよね~」

 

 

キョロキョロ

 

 

高尾がまなみを探しに行くと

 

 

まー「だから!!違うっつってんでしょ!!」

 

 

まなみのキーキーする声が聞こえた。

何事かと思って影から見てみると

 

 

「いやお前らの学校実力ねーだろwコネとかドーピングとか色々噂あるからなw」

「金で審判買収してんだろw」

「ほんとクソ学校だな!」

 

 

まー「クソじゃない!!ふざけんな!!」

 

 

まなみが今日の対戦相手に囲まれてからまれてるところだった・・・

 

高尾(う、うわぁ~やべぇ!助けなくちゃ!!)

 

高尾が出て行こうとした、その時。

 

 

まー「うちのバスケ部はみんな死ぬほど努力して、本気でバスケやってんの!みんなバスケが好きで、あんたたちの何倍も何倍も練習してがんばってんだから!!

何がコネだ!何がドーピングだ!!ふざけんな!あんなに頑張ってるバスケ部員、全国どこ探してもうちの部だけなんだから!!私の大切な仲間の事悪く言うな!!」

 

 

 

高尾(´;▽;`)ブワッ

 

 

 

あの!まなみちゃんが!どこの部のマネージャーなのかもはやわからないくらいフラフラしてるまなみちゃんが!!

俺たちの事、大切な  仲間って・・・!!!

 

 

高尾「これもうみんなに報告するしかないっしょ・・・」

 

虹村「その必要はねーぞ」

高尾「!」

紫原「・・・ほーんとまなちんって怖いもの知らずだよね~」

黒子「すごい身長差・・・勇敢だなぁ」

赤司「意地っ張りだしな」

青峰「あほだし」

火神「口悪いし」

黄瀬「とーんでもなく、可愛いっすよね♡」

 

 

どう見てもきゃんきゃん吠える小型犬が大型犬に立ち向かっているようにしか見えないその図は

充分バスケ部員たちのハートを動かしたのであった・・・

 

 

虹村「わりーな、うちの可愛いマネージャーが泣けること言っちまってよ。決着は試合でつけてやるぜ!!!」

 

 

まなみを庇うようにザっと出てきた男たちは 目にメラメラと闘志を燃やしていた。

 

 

まー「???」

 

 

まなみ、無意識のうちに部員たちの士気上げに大成功!!

いいのか悪いのか知らぬ間にクビ回避!(テッテレー)

 

 

 


 

 

山形大会出場選手宿泊ホテル

 

 

さお「ふー、荷物まとめたし行くかな」

 

 

さおりが廊下に出ると

 

白石「あ!前さん!!」

 

偶然、白石に呼びとめられた。

 

さお「あ!白石君!お疲れ様!」

白石「今日もう帰るんやて?」

さお「そうなの。無事に優勝できたんだよ」

白石「そっか!おめでとさん!テニス部も頑張らなあかんなぁ」

さお「うん!がんばってね!!」

白石「ゆうても俺は1年やし応援だけなんやけどな」

さお「私だって応援だけだよw」

白石「や、けど!前さんの応援あったら先輩らめっちゃがんばれると思うから!ベンチにいてくれるだけで心強いと思うで!」

さお「え、そ、そうかな、そんなことないと思うけど・・・」

白石「いや俺やったらめっちゃ元気出るし・・・あ、ロビー行くんやろ?俺も行くからその荷物持つわ!」

さお「え!いいよいいよ!重いし!!」

白石「えぇって、ほら、貸してみ、」

 

 

 

チン

 

 

そこへエレベーターが来て、ふたりの前で扉が開いた。

 

 

 

澤村「あ、前。ん?白石!おつかれ!」

白石「あ、澤村くん、お疲れ様!優勝おめでとう!」

澤村「ははは、ありがとう!俺はまぁ出てないけど・・・」

白石「俺も同じやで(笑)」

澤村「白石もがんばれよ!って、1年じゃ出番ないけど」

白石「ほんまそれな」

 

和やかに

 

エレベーターに乗り込んで 会話を続ける澤村と白石。

 

澤村「お、前、荷物重そうだな。持つよ」

 

そう、澤村がするっとさおりの肩にかかっていた荷物を持った。

 

白石「・・・」

さお「え!重いからいいよ!」

澤村「いいって、気にすんなよ。それより駅で土産買って行かなきゃな。観光できなかったけど何か食べ物くらいほしいよな」

白石「・・・澤村くん、すごいなぁ。行動がさりげなくてめっちゃ紳士やわ」

澤村「ん?何がだ?」

白石「いや、なんでもない(やばい・・・なんか嫌な予感するでこれは)」

さお「テニス部はいつまで試合あるの?」

白石「決勝まで進むんなら7日までやで」

さお「え!長いね!」

白石「せやなぁ、テニスの試合って長い時ほんまに何時間もずっと打ち合いしとるからなぁ・・・」

澤村「バレーもたいがいだけど、テニスも本当に体力いるからすごいよな」

さお「そっか、すごいね!あ、じゃあこれ、白石くん、持ってて」

白石「え?」

 

さおりがポケットから 可愛いお守りを取り出した。

 

さお「バレー部が勝つようにって作ったから申し訳ないんだけど・・・これで優勝したからきっとテニス部もこれで勝てるはずだよ!」

白石「え!ええの?作ったん?手作りなん、これ・・・」

さお「うん!!応援だけでも大切な仕事だよ!!白石君もがんばってね!!」

白石「(じーん)おおきに・・・」

澤村「(いいなぁ・・・)」

 

 

チン!

 

 

エレベーターが音を立ててロビーについた

 

 

ユウジ「遅いで白石!!」

 

呼ばれて白石は じゃあ とさおりと澤村に手を振り、テニス部の元へと走って行く。

 

澤村「じゃあ俺たちも駅までのバス来てるはずだから乗ろうか」

さお「あ、荷物!重いでしょ!もういいよ、ありがとう!」

澤村「大丈夫だって、そんなこと気にするなよ。それよりもさ、」

さお「うんうん」

 

 

バスに向かう二人の後ろ姿を見つけて

 

白石「(ええなぁ・・・)」

 

白石もまた、そう思うのだった。

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