CASE01 -ガクト-

おれの幼馴染みの話をしよう。

あ、その前に先に言っておく。

おれは氷帝学園中等部3年、向日岳人。向日電気店の長男な。

まぁ姉ちゃんいるけど、家継ぐのは俺だろう。

今俺のベッドを占領してグースカ寝てんのが、隣の芥川クリーニングの次男、芥川慈郎。こいつがとにかく手がかかる。どこでも寝るし、いつまでも寝るし、なぜかよくパンツ一丁になってるし、すんげー大変なの!

同じテニス部だけど、おばちゃんからも先生からも部長の跡部からも「幼馴染みなんだから慈郎を頼む」って・・・。こっちは頼まれたくないっつーの!でも慈郎が寝坊で遅刻したらなぜか怒られんの俺たちだからね!ほんとすっげー迷惑。何しても許される慈郎が悪い。

 

そんでもー1人
「これ最新刊ねーの?」

 

勝手に俺の漫画読んでるこいつは、宍戸亮。

うちの裏に住んでる幼馴染み。こいつもテニス部だからよく慈郎を背負ってる。

一緒に慈郎の世話役、ノリもいいし気は合うな、うん。まぁコイツ天然だけどな!(たまに理解出来ない時がある)

慈郎も寝てる時以外はノリいーし、宍戸も天然でやらかす時とかやたら熱くてウザイ時あるけどいいやつだし、生まれた時から当たり前のように兄弟みたいに育ったし仲いいと思う。もちろん喧嘩もするけどな。

(ちなみに俺の姉ちゃん、慈郎と亮の兄ちゃんたちも3人同学年の幼馴染みだ。)

 

 

それから

 

「おい3馬鹿」

 

そんな俺達をまとめてさんばかと呼ぶのがこの女。

 

「誰かドラクエやれって言ってんだろ」

「やんねーよ!自分でやれよ!」

「レベル上げめんどくせーから見てたいんだよ!」

「知らねーよ!!」

 

かなりワガママで、幼稚園のときから問題児で通ってる(いや、問題児って言うなら俺も慈郎も亮もみんな言われるんだけど)

 

まなみだ。

 

こいつ、慈郎んちとは反対の隣の花屋のゴリラ。

すげー乱暴なのにメス。

すげー自己中。すげーブス。

 

こいつも生まれた時から一緒に遊ぶし親どおしも仲いいしなんせ隣の家だし、the幼馴染みって感じなんだけど

俺の理想の幼馴染みとはかけ離れてる。

女の幼馴染みとかいたら普通もっと嬉しかったりするだろ?

もーぜんっぜん嬉しくねーの!むしろストレスでしかない!暴君かよ!!!

 

「まぁちゃん、やめなよ」

 

そしてそんな暴れん坊将軍を止められる唯一の存在。

それが、まなみと双子の姉、さおりだ。

まぁまなみはアホだし性格悪いけどノリと度胸はいいからなんか企んだ時にはすっげー心強いんだけど、こいつだけは真逆。

真っ先に止めにかかる。

クソ真面目でクソビビリな基本無表情な箱入り娘。マジでシラケる時ある。本気でイタズラ止めに入る時はちょっと引く。

けど暴君まなみをはじめ、俺達全員がこいつには頭が上がらないでいる。

 

なぜなら

 

このさおり

 

実は

 

キレたらめちゃクソこわい。

 

いや、マジで。

 

ジロは1回チビったことがある。

俺も亮もまなみもガチ泣きした。

俺ら4人の間では「さおりを怒らすな」が暗黙のルールとなっている。

ちなみにさおりを泣かすと普段アホなまなみが地球滅ぼしかねん勢いで暴れるからそれはそれでやっかいなんだよな。

普段からヒトラーかと思うくらい独裁者のまなみが意識飛ばして暴れまくる様はほんと恐怖でしかない。

てことで、俺達はさおりだけは怒らせないよう、泣かせないようつとめている。

まぁでも普段は一番生きる気力のないやつだからあんま怒んねーけど。

あと最近知ったけどこいつはイケメン(舞台俳優とか)がとにかく好きでイケメンの話する時のイキイキしてる様は15年間で初めて見る姿だ。

ずっと隠してたけどうっかりバレてからは機関銃のようにイケメンについて語ってくるけど、まぁこんな楽しそうなさおり見たことないから俺らは意外と楽しく話を聞いてやっている。

 

「亮、今日出された宿題やった?」

「あ?んなもんあったか?」

「へー、4組宿題出たのかよ」

「うん、英語のプリントあったよね?」

「げ、英語かよ、プリント無くしたかも」

「あーあ、探した方がいいよ」

 

亮とさおりは何の因果か小学生の時から絶対同じクラスになる。だからなのか、なんか結構こいつら仲いいんだよな。

 

「私帰って宿題やるわ」

「俺もプリント探してくる!てかさおり俺んちでやろうぜ宿題」

「わかったよ、お兄ちゃんいる?」

「わかんねーお前兄貴好きだよな」

「うん、好きw」

 

そうしてさおりと亮は帰っていった。

残されたのはクズのふたりだ。

 

「お前らも帰れよ」

「zzzzzzzz」
「おかっぱ、マリカーやろうぜ!」

「殺すぞてめーお前マリカーくそよえーしやんねーよ! 」

「暇だ・・・」

「帰ればいいだろ!?!?」

「家の手伝いさせられるからやだ」

「じゃあ亮のうち行けばいいだろ!?」

「じゃあ亮のうち行くからガクトもジロ背負って一緒に来て!!」

「何でだよ!?!?」

 

ギャーギャー

 

騒いでると、ガチャっとドアが開いた。

 

(!?)

 

「わり!兄貴友達連れてきてるから出てけって言われたわ!」

「がっくんちで勉強させて~」

「だから何でだよ!?なんでみんな俺んちで集まんだよ!?!?」

 

ギャーギャー

 

まぁこんなのは日常茶飯事で。

こんな感じの俺の幼馴染みたち。

どうだ!なんの魅力も感じねぇだろ!!

うるせーしバカだし疲れるし!!

ほんっとクソみたいなやつらだけど

 

でも、まぁ

 

退屈はしねぇぜ?

 

ってことで、俺の幼馴染みたちと過ごす夜は

今日も遅くまで続くのだった。

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